ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

煙草の煙は苦手です。

では、本編どぞ。



第三百七十三話 一服

 

「戦いの後の一服はたまらんね」

 

「サイモン、ゴールド拾ってからにしてくれるかな?」

 

「す、すまない、アリア様」

 

 

 ルラフェンへと戻る間、仲間になった【さまようよろい】の【サイモン】がどこから出したのか煙管(きせる)(くゆ)らせていると、アリアが離れた場所からツッコミを入れていた。

 サイモンは謝罪して慌ててゴールドを拾い出す。

 

 ピエール……いや、アンドレをたまには休ませてやろうということで、サイモンに出てもらっていたのだが、サイモンは戦いの間は頼もしいが戦闘が終わると一服する癖がある。

 

 アリアはサイモンから吐き出される煙が嫌いなようで、サイモンが一服し始めると距離を取っていた。

 

 

「……アベル殿、アリア様は俺のことがお嫌いなのでしょうか」

 

 

 ゴールドを拾うアベルの近くにやって来たサイモンが問い掛ける。

 

 

「ん~……、そういうわけじゃないと思うけどね……」

 

 

 ――君の手に持つその煙管が原因だと思うよ……!

 

 

 アリアがサイモンを避ける理由をアベルは教えてあげない。

 あまり彼女と仲良くなってもらっても困るのである。

 

 そんなサイモンはアリアに一目惚れしたらしく、戦い後に起き上がった際、彼女の騎士を名乗り出ていたのだった。

 

 

 ……それはサイモンが仲間になった時のことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

『お嬢様、お名前はなんと仰るので!?』

 

『お、お嬢様……?』

 

 

 戦闘を終え、サイモンは起き上った。

 アベルが仲間になることを了承した途端、サイモンはアリアの元へと走っていたのだ。

 アリアの前に来るなり恭しく片膝を地面に着け、近くに映えていた花を一輪手にすると、それを彼女に差し出す。

 

 

(うわっ、キザなヤツ……!)

 

 

 アベルは変なのが仲間になったなと思ったが、自分も同じようなことをしていることなどすっかり忘れている様子。

 アリアは「あはっ……ありがと……」と何故かアベルをチラッと見てから花を受け取っていた(アベルもくれたなーと思い出していたらしい)。

 

 

『俺はサイモン。この辺じゃ名の知れた戦士だ。俺のことはサイモンと呼び捨てしてくれ!』

 

『そうなんだ! 私はアリア。サイモン、よろしくね』

 

『おお、アリア様! なんと愛らしい名前だろうか! これまで彷徨(さまよ)い続けて流れに流れ、幾年月。漸く俺にも仕えるべき主が見つかったようだ!』

 

『主って……あなたの主はアベルになるのだけど……? ベホイミ! ……パペック平気?』

 

 

 サイモンの話を聞きつつアリアはゴールドを拾ったり、仲魔の傷を癒したり。

 パペックは回復呪文を掛けてもらうとご機嫌な様子でサイドステップを踏んでいた。

 

 

『どうか俺をアリア様の騎士に!』

 

 

 サイモンがそう云い放ったところで、常に冷静なピエールが珍しく「アリア嬢の騎士は私唯一人! 他の何人たりとも騎士となることは許さん!」と怒鳴る。

 

 ピエールが怒鳴ったことにアベルは驚いたが、仲間にしてしまった以上仲良くやって行くしかない。

 サイモンのステータスを確認してみれば、そこそこ強く即戦力としてパーティーに入ってもらえる。

 

 その代わりに到頭ドラきちが自ら名乗り出てモンスターじいさんの元へと行ってしまった。

 ドラきちとの別れにアリアは切なそうな顔をしていたが、ルラフェンに着く前に相談をしていたため、ドラきち本人の希望もあってか素直に受け入れてくれていた。

 

 

 サイモンは確かに戦闘では優秀だった。

 ところが、戦闘後の一服……は構わないのだが、キャンプや休憩中にアベルとアリアの間に入って来ては話題を自分の話へと変えてしまう。

 

 

 聞けば、彼は【さまようよろい】だからなのか、昔、神の塔にも居たことがあるという。

 神の塔で彷徨っていた時にアリアに似た天使を見たことがあったのだそうだ。

 恐らくアリアの母親なのだろうが、サイモンはどうやらその彼女に一目惚れをしたらしい。

 

 彼女の幻はすぐに消えてしまって それ以降は別の幻ばかり見ていたようだ。

 彼は何年かそこで過ごした(のち)、神の塔から出て彷徨いこの西の大陸まで流れ着いたという。

 

 神の塔で見た天使とそっくりな娘、アリアと出会って再び一目惚れした……ということだった。

 

 それからは何かとアリアに声を掛けては、彼女が困っているのにも関わらず自分の話を聞いてくれとウザ絡みを繰り返している。

 

 

 ……なものだから、アベルもピエールも当然面白くない。

 

 

 アベルが“自分とアリアは恋人同士だから”と釘を刺しても、サイモンは我関せずで「主殿! 心得ている! 騎士になるために俺をわかってもらわねばならんのです……!」と悪気が無い。

 仲間にしたことを一瞬後悔したアベルだったが、戦闘ではやはり頼もしいので彼と“別れる”という選択は出来なかった。

 

 彼が居るお陰でピエールやアリアが疲れた時、入れ替えが出来るのだ。

 

 

「アリア様、拾って来ました。こちらをお納め下さい」

 

「ありがとう」

 

 

 時は現在に戻り、あれからサイモンはゴールドを拾ってアリアに手渡していた。

 アリアは僅かに微笑んで受け取っていたが、すぐに。

 

 

「アベルー!」

 

「ん……?」

 

「はい、これっ! サイモンが拾ってくれたよ!」

 

 

 アリアはアベルの元へと走り寄り、アベルの手にゴールドを握らせると目を細める。

 後ろでサイモンが、アリアが走り出して「ぁっ」と声を上げて居たが、彼女は知らんぷりだ。

 

 

「あっ、ありがとう、アリア」

 

「サイモンもアベルに直接渡せばいいのにね」

 

「うん……だよね……」

 

 

 手渡されたゴールドと共にアリアの手をつい握る。

 

 

 ――けど、君とこうして触れ合えるから、サイモン様様ってところかな。

 

 

 サイモンはどうにかしてアリアに気に入ってもらえるように動いていたわけだが、ゴールドの管理はアベルなのだ。

 そんなアリアはゴールドを拾うと いつもこうしてアベルに持って来てくれる。

 

 

「……ふふっ、アベルの手おっきいっ!」

 

「はは……、アリアの手は小さいね」

 

 

 アリアの頬がほんのり赤らむと、アベルは優し気に彼女を見下ろした。

 彼女もそっとアベルを見上げはにかむ。

 

 サイモンの行動は多少気に障ることもあるが、思わぬ副産物もあって一長一短。

 アリアがサイモンにあまり近寄ろうとしないのがまた良しであった。

 

 

「じゃあ行こうか」

 

 

 アベルが声を掛けると再び一行は歩き出す。

 森を行き、しばらくすると森の中にぼんやりと灯りが見えて来た。

 

 

「戻って来たね~!」

 

 

 視界の先の人工的な灯りにアリアが ほっとした顔を見せる。

 

 

「今日はキャンプをせずに済みそうだね」

 

「わ~! 今夜はベッドで眠れるのね! 久しぶり~!」

 

 

 アベルが告げると、アリアが嬉しそうに破顔した。

 そうして灯りに近付いて行くと、特徴のある障壁が見えて来る。

 

 

 ……ルラフェンに無事戻って来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「主殿、我々は馬車で休みます故……、健闘を祈ります」

 

「っ……ありがと、ピエール」

 

 

 ルラフェンの町の前でピエールがアベルにサムズアップすると、アベルは頭の後ろを掻き掻き、礼を言う。

 

 その近くでは、アリアと仲魔達が話をしていた。

 

 

「アリア様っ、どうぞ俺も連れて行って……」

 

「パペック、スラりん、おいで」

 

「コキ、コキ、コキッ!」

 

「ピキー、行く~!」

 

 

 サイモンが自分も町に連れて行けと主張したが、アリアはパペックとスラりんを引き連れ町へと入って行く。

 サイモンは煙管を手にしたまま がっくりと項垂れてしまった。

 

 

「あっ、アリア!?(あれ? パペックとスラりんも連れてくの!?)」

 

 

 アリアがパペックとスラりんと共に町へ入って行くのが見え、アベルは声を上げた。

 

 

「これはこれは……」

 

「っ、ピエール、あの二人も一緒みたいだ」

 

「そのようですね」

 

「あとはよろしくね!」

 

 

 アベルは馬車をピエールに任せ、慌ててアリアを追い掛ける。

 

 

「アリア様っ、おっ、俺も行くーーーー!!」

 

「どうどう……」

 

 

 サイモンがアベル達の後を追い掛けようとしたが、ピエールは彼の前に立ちはだかり引き留めていた……。

 




アリアはサイモンが嫌いなのではなく、煙いのが嫌いなようです。
サイモンとサラボナまでに仲良くなれると良いのですが、別の仲魔が入る予定なのでエピソードが思いつかなければモンスターじいさん送りとなりそうですねぇ……。
禁煙させようかな。

あ、メリークリスマース!

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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!
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