どくけし草の可能性を探りたい。
では、本編どぞ。
◇
……そういえばスラりんとパペックが来ていない。
アベルが半ば ぼーっとする頭で部屋の扉を見つめていると扉が開いた。
「主さまっ、主さまっ!」
スラりんの声が聞こえ、スラりんとパペックが部屋に入って来る。
「あ、やあ。二人とも丁度いいところに来たね」
アベルは半身を起こし軽く片手を挙げて二人を迎えた。
「え……丁度いいところ? あ、主さま。パペックはごはん食べられないからボクが全部食べたんだよ!」
「そっか。ありがとう、残したら勿体ないからね」
「主さまはお腹減ってなかったの?」
「う、ん……? うーん…………」
スラりんに問われてアベルは自分の腹を見下ろす。
と。
“ぐ~きゅるるる……。”
今頃になってアベルの腹の虫が鳴き出した。
アリアとのことばかり考えていたから腹が空いていたことなど二の次だったのだ。
「……お腹減ったんだねっ。確かアリアちゃんがパンを持ってたんじゃないかなぁ」
「パン?」
「うん、アリアちゃんの鞄を探ってみるといいよ。アリアちゃんの鞄にはいっつも美味しい食べ物が入ってるんだよ」
スラりんはそれだけ言うとアリアのベッドに飛び乗り、彼女の足元近くで眠り出した。
パペックはアリアのベッドの傍らに座って休み始める。
「……やっぱり、アリアの傍なんだ……」
“ぐ~きゅるるるる。”
アベルの腹の虫が鳴る。
――お腹減ったな……、昼から何も食べてない……いや、トマトは食べたけど……っ!
先程まで火照っていたアリアの顔が脳裏に浮かんでアベルは首を横にふりふり。
このままだと精神的にも肉体的にも飢餓状態で眠れそうにないので、せめて空腹だけでも満たしたい。
アベルはアリアからパンを貰うことにした。
彼女の鞄を探ってスラりんの云った通り、パンを見つける。
「……アリア、パンを貰うね」
鞄から勝手にパンを貰ったところでアリアは怒らないだろう。
アベルはパンを取り出し鞄を閉じた。
「……アリアのあほ……」
「……んぅ……」
彼女から離れる際、アベルはアリアの鼻を抓む。
アリアは一瞬眉間に皺を寄せたものの、アベルの指が離れるとまた穏やかな顔で眠っていた。
アベルはアリアから勝手に貰ったパンを食べ終えると、空腹が多少和らぎ漸く眠りに就いたのだった。
◇
そして夜が明けた――!
アベルは目が覚めるといつものように【ステータスウィンドウ】をチェックしてから、中々起きない隣の彼女に声を掛けることにする。
【ステータスウィンドウ】のアリアの状態の欄には【どく】の表示があった。
(今日は毒か……日替わりで大変だな……って、今まで【どく】なんて表示見たことないんだけど……)
「……おはよう、アリアもうすぐお昼だよ」
アリアに声を掛けながら窓の外を見れば外はすっかり日は昇り、今日は二人共寝坊している。
スラりんが朝早く起きてピエール達に報告に行ってくれたらしく、ピエール曰く「休ませておきましょう」とのことで二人とも爆睡していた。
「……ぅ……ぅーん…………、ぉ、はよう……」
アベルの声に横になったままのアリアが唸り声を上げ、片手で頭を抱えるようにして挨拶を返す。
「……どうしたの?」
「ぅ……、あったま……いたぃ……。ここ、どこ……?」
「頭……!? どっかぶつけ……!?」
アリアが辛そうに眉を顰めるのでアベルは目を見開いた。
昨夜ここに運び込む際、担いだり抱えたりしたが よく注意して運んだはず……とアベルは彼女の傍に寄って様子を窺う。
……特に怪我をしている様子は見受けられなかった。
「っ、ぃや……、これ、違う。多分……二日酔い……ぅぅ……」
頭を抱えるアリアを頭痛と吐き気が襲っている。
前世ではたまに経験したことのあるあの感覚。
――久々にキタ――――っ!
アリアは半身をゆっくり起こすと両手で頭を抱えた。
「二日酔い……、あれか……」
――あれは、辛かったな……。
二日酔いの
「…………はぁ……、昨日お酒を飲み始めたところまでは憶えてるんだけど……その後どうしたんだっけ……」
アリアが声を出すのも辛いのか小さく呟いて「ぅーん……」と唸る。
「っ!? …………っ、うん……。そんな気はしてた……!」
彼女の小さな呟きにアベルは息を呑むと、眉間に皺を寄せた。
「そんな気はしてたって何……? あ、私、昨日どうやってここに来たの? ひょっとしてアベルが運んでくれたの?」
「………………………………………………くっ、運んださっ! 僕が運ばないで誰が運ぶとでも思ってるんだいっ?」
頭を抱えながらアリアがアベルをチラッと見ると、アベルはムッと口をへの字にする。
――アリア、憶えてないんだな……!?
……気付けばアベルは声を荒げていた。
「……なに怒ってるの……? 声、頭に響くから ちょっとボリューム抑え目で……(ぅぅ……頭痛いぃ……)」
「っ……、アリアが忘れてるから……!!」
「……ぇ? 私また何か忘れた……? もぉ~、この頭は記憶をすぐ忘れるのね(痴呆始まってる……?)」
アリアはアベルが何故声を荒げたのかわからず自分の額をぺちぺちと叩く。
昨日アベルが吟遊詩人に話を訊きに行っている間、アリアはお酒を交換してもらい、素晴らしく美味しいお酒を飲ませて貰っていた。
――キャシーちゃんと町を回った時 味見させてもらった地酒、まさか出してもらえるなんて思わなかったなぁ……おいしかった……❤
アリアが飲んだ酒の名は“人生のオマケ”。
ルラフェンの町の人々がひた隠しにする、銘酒である。
それを所持している若者からアリアが来たら飲ませてやってくれとお裾分けしてくれたそうだ。
アリアは一口口にするや否や、その美味しさの虜になってしまい、よせばいいのに一気に飲み干してしまった。
そうして記憶がすっかり飛んでしまっていたということだった。
「……アリアって、残酷だな……」
「なに? 何の話……?(残酷……? 何が……?)」
アベルはアリアから離れ部屋にあったテーブルへと向かう。
席に着くと【ふくろ】から すり鉢とすり粉木、それから【どくけし草】を取り出し、すり鉢の中へ……丁寧に
ごーりごーり。
ごーりごーり。
【どくけし草】を擂り潰しながらアベルが うっとくる青臭い臭いに顔を顰める。
「……ぅ……アベル、なにして……?(何この青臭い臭い……)」
「……毒消し草ってね、
アリアがベッドから下りられずアベルの作業を見つめていると、彼はアリアに顔を向けて爽やかな笑みを浮かべた。
「え……」
「……アリアにうんと苦いの 飲ませてあげるね。二日酔いに効くんじゃないかな?」
――【どく】ってもしかして二日酔いのことなんじゃ……?
アベルは何となくそんな気がして、
ごーりごーり。
ごーりごーり。
円を描くように回したすり粉木が【どくけし草】を粉砕していく。
みるみる内に、緑のペーストが出来上がっていった。
擂る度に増していった臭いも凄まじく部屋が【どくけし草】の臭いで満たされ、緑のペーストは毒々しい色を放っている。
アリアが「ぅ、くさ……!」と鼻を抓んでいたが、アベルは構わず擂り続けた。
【どくけし草】は普段はそのまま軽く噛み砕くか、毒を受けた部位に貼り付ければ効果があるので擂って使うことはあまりない。
何故なら不味いからである。
非常に不味い。
口に入れた瞬間吐きたくなる程の不味さだ。
毒を消すための【どくけし草】はある種毒のような味がするのである。
だが、これが好きというモノ好きもたまにいるというのだから困ったもの。
――昨夜のことを忘れた罰だよ。
アベルは擂り終えた【どくけし草】をコップに入れ、水を注いでかき混ぜる。
そしてそれをアリアに持って行った。
どくけし草のお味は当方独自設定です。
どくけし草はそのまま食すとちょっと不味い。
生で擂り潰すとゲロマズ。苦くなる。
乾燥させてお茶にすればイケル……はず。
イメージ的にはドクダミですかね……。
ドクダミが苦かったかどうかは憶えてないけどもw
アベルは弄ばれたおしおきにアリアに飲ませようとしているわけです。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!