ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

まっず!!

では、本編どぞ。



第三百七十九話 まっず!!

 

「っ、私苦いのキライなんだけど……、あっ、キアリーを使えば……!」

 

「……キアリーなんか使わないよ。ここは町の中だよ? 魔力は温存が基本でしょ? ほら、擂り潰したからきっと効くよ?」

 

 

 アリアが首を横に振り振り、目の前に差し出された深緑色の水溶液が入ったコップから目を逸らすが、アベルは笑顔のまま飲む様にと彼女が受け取るのを待つ。

 二日酔いに効くかは不明だが、そもそも今アリアは毒状態なので効果は見込めるのだ。

 

 

「ぅっ、酷いニオイ……!(色は……青汁みたいだけど……)」

 

 

 ――アベル笑ってるけど なんだか怒ってる……?

 

 

 アベルが引き下がる気配がないのでアリアは渋々受け取り、ちょっとニオイを嗅いでみたが、ツンとしたような刺激臭と共に得も言われぬ緑の香りがして鼻からコップを離した。

 

 

「……一気にどうぞ?」

 

「……っ、アベルいじわるだぁ……!」

 

 

 アベルが優しい瞳で飲め飲めと勧めて来るが、アリアは緑の液体を飲む気になれなかった。

 

 

「……アリア、君、今毒状態だから飲んだ方がいい」

 

「っ、キアリーを……!」

 

「子どもみたいなこと言わないでさ。せっかく擂り潰したんだから飲んでよ」

 

 

 畳み掛けるようにアベルが飲め飲めと推してくる。

 アリアは解毒呪文【キアリー】を望むが却下された。

 

 

「擂り潰したら苦いってわかってるなら、擂り潰さなくても良くないですか?」

 

「……………………まあ そうだけど。アリアが飲みやすいようにと思ってね」

 

 

 アリアが素朴な質問をぶつけるが、アベルは笑顔のままで少し間を置いて答える。

 

 

「っ……、…………あ、私自分でキアリーを掛ければいいんじゃ……」

 

「アリア」

 

「ん……?」

 

「それ、無駄にするの?」

 

「ぅ……」

 

 

 アベルに手元のコップを指差され、アリアは黙り込んだ。

 

 

「飲めないなら、口移しで飲ませてあげようか? 僕も苦いの苦手だけど、アリアのためならいいよ?」

 

「えっ!?」

 

 

 突然の提案にアリアは目を見開く。

 

 

「…………昨夜のこと、何も憶えてないんでしょ?」

 

「っ……??(昨夜って何……?)」

 

 

 アベルが訊ねてみたものの、アリアは何のことかさっぱり わからず首を傾げていた。

 

 

「……アリア、本当に何も憶えてないの……?」

 

「っ、……私、何かやらかしたの……?」

 

「………………やらかしたというか……、未遂というか……」

 

 

 アリアに訊き返され、アベルは困ってしまう。

 どう説明したものか……。

 

 

「未遂……」

 

「…………はぁ。僕、これでもかなり我慢してるんだよね。その気がないならあんまり煽らないで欲しいんだよ」

 

 

 アベルがアリアのベッドに腰掛けて頭を抱えた。

 

 

「煽る……? ……………………ごめん。全然記憶にないや…………………………でも」

 

「………………でも?」

 

「…………憶えていないけど、何だかとっても幸せな気分だった気がするよ……?」

 

「え」

 

 

 アリアが気まずそうに後れ毛を耳に掛け微笑むと、アベルは顔を上げる。

 

 

「……なんだろう……、多幸感ていうの……? 温かくて守られてる感じがした。もしかしてアベルが運んでくれた時、抱きしめてくれたの……?」

 

「アリア…………、………………うん」

 

 

 ――真正面で抱き上げてたからね……!

 

 

 アリアに訊ねられ、昨夜の温かくて柔らかくて程よい重みを思い出し、アベルは頷いた。

 

 

「……私ね、アベルに抱きしめられるとドキドキするんだけど、同時にとっても幸せな気持ちになるんだよね。そんな感覚が薄っすら残ってる……ような?」

 

 

 アリアは昨夜のことをはっきり憶えていなかったが、気分が良かったことだけは憶えている様子で、照れたように上目でアベルを見つめる。

 

 

「…………っ……(カワイイ……!!)」

 

「アベル、運んでくれてありがとね。あと、忘れちゃっててごめん。お酒はやっぱり程々だよね、今度からは気を付けるよ」

 

 

 アリアに見つめられたアベルが息を呑んでいる内に、彼女はお礼と謝罪と改善策を伝えていた。

 

 

「っ!!」

 

「あっ!」

 

 

 アベルは素直に謝るアリアに堪らなくなって、緑の水溶液の入ったコップを奪い取ると一気に自らの口に流し込む。

 

 

「っ、アベルっ!?(うわっ!! 一気に飲んだっ!?)」

 

 

 アリアが驚きに目を剥いている間にアベルは彼女の手を引き唇を重ねた。

 

 

「っ、ンむっ!?」

 

 

 アベルはアリアの口の中へと【どくけし草】水溶液を流し込んでいく。

 

 

 ――いやーっ、【どくけし草】汁が入って来るぅぅううう……!! 口の中緑の(だい)(そう)(げーん)!!

 

 

 ちょ、やめ……! と抵抗するも虚しくアベルの力には敵わない。

 

 

 んぐ……ぉぇっ。と、途中嘔吐(えず)きそうになりながらも、吐き出せば辺りが緑に染まってしまうことは必至。

 アリアは飲み下すしかなかった。

 

 

「…………はぁー……(飲んでくれたな)」

 

「っ、ぅう……(ニガ……)」

 

 

 アリアが飲み下したのを確認するとアベルは彼女を解放し口元を拭う。

 アリアも あまりの不味さに口元を手で覆って込み上げる吐き気を我慢した。

 

 

「「まっず!」」

 

 

 二人は眉間に皺を寄せ同時に口にする。

 

 

「「あ」」

 

「プッ……」

 

「……ふふっ」

 

 

 アベルとアリアは互いに見合って笑ってしまう。二人の口の周りには緑色の水溶液が付着し、何とも言えない酷いニオイを放っていた。

 口を開けば二人の歯も緑に染まっている。

 

 

「アベル、歯が緑だよ?」

 

「アリアもだよ」

 

「「……プッ!」」

 

 

 “あはははっ!!”

 

 

 それを見て二人は更に笑い転げたのだった。

 

 

(……今回はこれで許してあげるよ)

 

 

 記憶はなくとも幸せな時を過ごしてくれていたのならそれでいい……と、アベルは腹を抱えて笑うアリアを優し気に見つめる。

 

 

 ――でも、二度目はないからね。

 

 

 アベルは笑い転げるアリアにそっと顔を近付けた。

 

 

「あははっ…………っ? ……ン」

 

 

 近付くアベルの顔にアリアは笑うのを止め、迫るアベルの唇を受け止める。

 ちゅっ、と小さな水音を立て それは直ぐに離れた。

 

 

「っ……アベル……?」

 

「…………毒消し草水は不味いけど、アリアは不思議と甘いね」

 

「……そ、そう?」

 

 

 アベルの甘い台詞にアリアは照れてしまう。

 

 

 ――めちゃくちゃ緑クッサイままですけど……!?

 

 

 二人の口元からはモワワン……と、緑の香りが漂っていた。

 緑深い森の中にいる気分である。

 

 

「……うん、そろそろ出ようか」

 

「……うん」

 

 

 そうして二人は漸く宿屋を後にしたのだった(ちなみに【どくけし草】汁は二日酔いに覿面(てきめん)だったようで、アリアは即回復している)。

 




アベルは優しいので緑汁を自分で飲んで分け与えましたとさ。

二日酔い=毒というのには理由がありまして……。
アルコールが肝臓で分解されてできるアセトアルデヒド(毒素)が二日酔いを起こす原因なので、毒素イコール毒……ってことにしました。
なので、二日酔いになったらどくけし草茶かどくけし草汁、どくけし草だんごとかを食すと治るという設定に……。
いや、普通にどくけし草を使用するだけでもいい気がしますがね、色んな使い道を考えるのも面白いかなーと。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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