ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

巨大な鍋は人が入れる程の大きさである。

では、本編どぞ。



第三百八十話 巨大な鍋

 

 

 

 

 

 宿屋を後にしたアベルとアリアはピエールに挨拶を済ませ、昨夜同様スラりんとパペックと共にベネット宅へと向かう。

 何度か迷って憶えた道だ、今回はすんなりと辿り着いた。

 

 

「えっと……ベネットじいさんは……」

 

「居ないね……」

 

 

 ベネット宅に入ると、前回巨大な鍋の前に居たベネットが居らず、アベルとアリアは顔を見合わせる。

 

 

「ピキー! 上からイビキが聞こえるよっ!」

 

 

 スラりんが傍の階段上を見上げぴょんぴょんと跳ねるので、階上に耳を澄ませると僅かにイビキの音が聞こえた。

 

 

「上か……! そういえば寝て待つって言ってたっけ」

 

「え!? もう二週間以上経ってるけど まさかずっと眠ってるの!?」

 

「はは……、どうかな。とりあえず行ってみようよ」

 

 

 アベル達は階段を上がりベネットに会いに行く。

 

 二階ではベッドでベネットが鼻提灯を作っていた。

 鼻提灯が大きく膨らんだり萎んだりと呼吸の度に大きさを変えている。

 

 ……随分と気持ち良さそうに眠っているようだ。

 

 

「……ベネットさん、ベネットさん! ルラムーン草を持ってきましたよ!」

 

 

 アベルはベネットの耳元で声を掛けてやった。

 

 

「なんと、ルラムーン草を持って来たじゃと!」

 

 

 アベルに声を掛けられたベネットの目蓋がカッと見開かれる。

 

 途端ベネットは半身を起こすと掛布団を翻し、勢いよくベッドから飛び下りた。

 床に着地するや否や、華麗にくるりと一回転しアベルを見上げる。

 

 

「あ、はい、これです」

 

「これがルラムーン草か。あっぱれあっぱれ。さっそく実験を再開することにしようぞ!」

 

 

 アベルが【ルラムーン草】を差し出すとベネットはそれを受け取り まじまじと見下ろした。

 ……と思ったらすぐさま それを携え階段を駆け下りて行く。

 

 

「あっ、ベネットさん!?(速っ!)」

 

「アベル、追い掛けよう!」

 

 

 ベネットの動きは素早く、アベルの声など無視。

 アベル達も彼を追って一階へ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベネットおじいさんは……あ、鍋の裏!」

 

「ああ、話を聞いてみよう」

 

 

 一階に下りるとベネットは巨大な鍋に向かって眉間に皺を寄せ、何やらブツブツと呟いていた。

 

 

「ベネットさ」

 

「ええい! 話し掛けるでない! よーし今じゃ! ここでルラムーン草を……」

 

 

 アベルが話し掛けようとすると遮られ、ベネットはタイミングを見計らったように【ルラムーン草】を巨大な鍋に投げ入れる。

 

 【ルラムーン草】が投入されて間もなく、巨大鍋から少しずつ くつくつと沸き立つ音がし始めた。

 

 

 それはすぐに……。

 

 

 ぐつぐつぐつ……。

 ぽこっ、ぼこっ、ぽこっ、ぼこんっ。

 

 

 巨大鍋から沸騰したような音が聞こて来る。

 それも湯が沸いた……というよりも、粘度の高い液体が煮え(たぎ)っているような……何だか不穏な空気を感じさせる音だった。

 

 

「……何が起こるんだろう……」

 

「っ、アリア僕の後ろに……」

 

 

 アリアが不安そうに巨大鍋を見上げるので、アベルは彼女を背に匿った。

 すると突然――。

 

 

 

 

 ボカンッ!!

 

 

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ……。

 

 

 

 

 大きな爆発音と共に地鳴りがしたかと思うと、巨大鍋から鍋の口いっぱいに炎が上がり出したのだ。

 

 

「大変っ! 火事になっちゃう! 消火器はどこっ!?」

 

「っ、大丈夫だよ!(消火器ってなんだ!?)」

 

 

 アリアが驚いて声を上げると、アベルは身体を反転させ彼女を抱きしめる。

 

 

「っ、アベルっ、火、火が大きくなってるよ……!! 火事っ! に、逃げなきゃ」

 

「大丈夫! 大丈夫だから……!!」

 

 

 アリアの眼前、アベルの肩越し頭上で巨大鍋の中の炎が段々と大きくなり、部屋の中が煙で充満していく。

 

 轟々、と。

 燃え上がる炎の音にアリアの身体がぶるぶると震える。

 

 

「っ、怖ぃ……っ!(大丈夫なわけないよね!?)」

 

 

 ――めちゃくちゃ燃えてるよ~~~~!!

 

 

 アリアは一酸化炭素中毒になってしまうのではと恐怖を覚え涙目だ。

 異世界に来て魔物に食われるならまだしも、火事で焼死なんてのはごめんである。

 

 

「大丈夫だよアリア! 僕がついてる! ごほっ、こほっ」

 

「っ、アベルっ!! ケホッ、ケホッ」

 

 

 恐怖に震え怯えるアリアにアベルは何度も「大丈夫」だと呼び掛け、抱きしめていた。

 力強いアベルの腕にアリアも必死にしがみつく。

 

 

 そのまま様子を見ていると、轟々と燃え盛っていた音が少しずつ小さくなってくる……代わりに白い煙がもくもくと巨大鍋から溢れ出していた。

 

 

 色の世界を塗り替え……次第に辺りは真っ白に包まれていく。

 それは至近距離だというのに互いの顔も確認できない程だった。

 

 

「ぁっ……! アベルっ」

 

「アリアっ!」

 

 

 アベルとアリアは互いの存在を確認するため、それぞれ名を呼び合う。

 

 

 

 

 ……一瞬。

 

 

 

 

 それは経ったの瞬息の出来事で……。

 

 

 二人が名を呼び合った瞬間、真っ白な視界の中、巨大鍋から爆風が吹き荒れアベルとアリアの身体を宙に巻き上げた――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………どれくらい経ったのだろうか。

 

 まだ然程時間は経っていないように思う……と、アベルが次に目を覚ました時には 煙は煙突からすべて出ていった後で、部屋の中は静かだった。

 

 

「…………っ……痛た…………」

 

 

 アベルは身体を起こし、頭を抱える。

 アリアを抱きしめていたはずなのに、腕の中に彼女が居ない。

 

 

「っ、アリアは……」

 

 

 アベルが辺りを見回すと、近くにベネットが倒れていた。

 アリアの姿はやっぱり見当たらない。

 スラりんとパペックが近くに倒れているので、揺すり起こした。

 

 

 ――先ずはアリアを捜さねば、ベネットさんは後でいい。

 

 

「……スラりん、アリアを知らない?」

 

「ピキー、アリアちゃん……? ううん、知らないよ。けど、さっき風に巻き上げられて……ドスンって何かが落ちた音を聞いたよ」

 

 

 スラりんが先程聞いたという音をアベルに伝える。

 

 

「ドスンって……、どこで?」

 

「んーと、そこの大きな鍋の中かな?」

 

「鍋……!」

 

 

 アベルは巨大鍋に手を掛け、よじ登った。

 

 

「…………っ、アリア……!(なんでそんな所に……!)」

 

 

 巨大鍋を覗くと中身は吹き飛んだのか もう何も入ってはおらず、代わりに鍋の底でアリアが仰向けで倒れている。

 

 アベルはロープを取り出し、スラりんとパペックに引き上げるよう頼んでしっかりと腰にロープを巻き付けると巨大鍋の中へと下りた。

 

 

「アリア、アリア! しっかり……!」

 

 

 アベルが倒れたアリアに声を掛けるが、彼女の意識は戻らない。

 狭い鍋の中、アベルの声が反響している。

 刹那、ぬるっとした感触がアリアの頭を支えるアベルの手に触れていた。

 

 

「っ、何だこれ……」

 

 

 アベルは恐る恐る手元を見る。

 鍋の中は暗いため、はっきりとは見えないがそれが血液だということはわかった。

 

 

「っっ!!?? アリアッ!!(嘘だ……こんな所で怪我をするはずが……!)」

 

 

 アベルがアリアの半身を支えていると、頭から額を伝い(おびただ)しい血液が流れ落ちていく。

 彼女の白い髪が血で染まっていった。

 

 アリアの鮮血に ひゅっとアベルの胸が冷え、血の気が引いていく。

 

 

「っ、マズイ……! ベホマッ!!」

 

 

 アベルはすぐさま回復呪文を唱える。

 すると出血は治まり傷が癒えていった。

 

 

「アリアっ、アリアッ、ねえ、アリアッ!!」

 

「…………………………………………ん……ぅ…………っ、頭痛い……」

 

 

 アリアは眉間に皺を寄せながらそっと目蓋を開く。

 

 

「っ、アリア! 気が付いた!?」

 

「……ん……、なに、アベルどうしたの……?」

 

 

 意識を取り戻したアリアにアベルは問い掛けていた。

 

 

「ごめんっ、油断した……!」

 

「へ……、何が……?」

 

「爆風に飛ばされて、君に怪我をさせてしまって……」

 

「あ、そうなの……? って……ここっ! 狭っっ!! ……っ、……ぃ、イヤァアアアアアアッッ!!」

 

 

 アベルの説明を聞いていたアリアだったが、反響するアベルの声に今居る場所がどこかわからず突然パニックに陥り、耳を(つんざ)く叫び声を上げたのだった。

 




いつも突然何かが起こるのです……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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