ルーラの行き先はラインハットじゃなかった……。
では、本編どぞ。
第三百八十二話 カジノで大儲け!?
◇
……さて、アベル達が【ルーラ】で何処に飛んで行ったのかというと。
「えっと……、私てっきりヘンリー君のところに行くんだとばかり……」
アリアはアベルの隣で彼の手元を見ていた。
辺りには気分がウキウキと楽しくなるメロディーが流れている。
ここはいったい……?
「…………ハハッ」
アリアの指摘にアベルは頭の後ろを掻き掻き笑う。
「アベルはカジノ好きだねぇ……」
「……アリアは嫌いだった?」
「ううん……、別に嫌いじゃないよ? 収入と支出のバランスさえ取れていればいいと思うんだ」
「収入と支出のバランス……」
――お! 来い来い……!
アベルは目の前のスロットマシンの絵が揃う瞬間を待つ。
勢いよく回りだしたリールが徐々に速度を落とし、ひとつ、ふたつ、みっつ、と同じ絵柄がコインを懸けた位置へと揃っていった。
……そう、アベルの【ルーラ】した先は、眠らない町オラクルベリーだったのだ。
ラインハットを後にしてから寄った最初の町。
前回来た際にアベルは二日間カジノに入り浸り、コイン稼ぎをしたのである。
只今アベルはアリアとピエール、パペックの三者に見守られスロットマシンをプレイ中……。
「ギャンブルって怖いから。気が付いたらすっからかん……なんてこともあったりするのよ?」
「大丈夫! 僕はちゃんとバランスを取ってるよ! おっ! また当たり!」
「あっ、すごい! アベルすごーい!! 二連続で当たりっ」
100コインスロットマシンの中当たりでファンファーレが鳴った。
アリアは喜びのあまりアベルに抱きつく。
「っ…………そう、僕すごいんだ……!」
――あぁ、もう最高っ……!
アリアに抱きつかれてアベルはご機嫌でコインを注ぎ込む。
そうしてスロットマシンに興じていると、一人のバニーガールが背後からアベル達に近付いて来ていた。
「絶好調ですね、お客さま………………って、あら、アリアちゃん?」
「え…………あっ! レイラさん!」
声を掛けて来たのはアリアの元上司、レイラだ。
レイラは100コインスロットを回し、先程からジャラジャラと当たりを出し続けているご機嫌なアベルに声を掛けに来たらしい。
「やだ、アリアちゃん久しぶり~!」
「お久しぶりです……!」
「あら? ちょっと見ない内に何だか雰囲気変わったわね?」
「あ、はい。ちょっとイメチェンして……」
レイラに記憶喪失のことは話していないので、アリアはイメチェンと言っておいた。
「なるほど~って、ねえ……隣の素敵な人ってアリアちゃんのコレかしら?」
「っ、えと……」
レイラにこっそり耳打ちされ、アリアは口篭もってしまう。
――恋人って言ってもいいのかな……一年後に別れるのに……。
アリアは はっきり言えずに笑って誤魔化しておいた。
「…………よしっ、また来た……!」
アベルがレイラとアリアの会話に耳を傾けつつ、スロットの絵柄が揃い始め、小当たりは確定、また中当たりを待つ。
――アリア、何ではっきり言ってくれないんだ……?
はっきり恋人だと宣言してくれないアリアにアベルはちょっと もやもやしてしまった。
そんなアベルのスロットの様子をレイラはじっと見つめていた。
先程から当たりばかり出ているので不正でも行っているのかと疑っていたのだが、アベルはただコインを注ぎ込んでいるだけで、何か不正をしている様子はない。
(これって……アリアちゃん効果かしら……?)
レイラが今度はアリアを見る。
アリアはスロットの様子を手に汗握りながら見ていた。
♪チャッチャラチャチャチャ…………――――チャチャチャチャーーーーン♪
絵柄が見事に揃い、長めのファンファーレが鳴り響く。
またしても中当たり!
大当たりは出ないように調節してあるが、この台は100コインスロット。中当たりを何度も出されては店側は商売上がったりである。
そういえばアリアが傍に居ると当たりがよく出ると客の評判が良かったことをレイラは思い出す。
アリアがここでバイトをしていた頃、客は単にアリアの美貌だけが目当てだったわけではなく、勝利を呼ぶラッキーガールとしてよく指名していたのだ。
スロットであろうと闘技場であろうとスライムレースであろうと……、彼女を傍に置いておくだけでなぜか当たりが出やすい。
(この娘運が良いのよね……。程よく勝たせていっぱいコインを使ってもらうのに丁度良かったのだけど……。一人勝ちされても困るわね……)
レイラは当たりが出て喜ぶアリアに怪しく目を細めた。
「ね、アリアちゃん。彼まだしばらくここに居るでしょう?」
「はい、多分」
「私そろそろ休憩なの。良かったら一緒にお茶しない? あ、ピエールさんも是非!」
レイラはこれから休憩に入るのだと主張し、アリアとピエールをお茶に誘った(レイラはフロアマネージャーなので、ピエールのことも知っており、何度か話したこともある間柄である)。
「アベル」
「ん?」
「レイラさんがお茶しようって誘ってくれて……、まだスロットやってるなら ちょっと行って来てもいいかな?」
「……うん、まだ時間が掛かりそうだ。行っておいでよ」
アベルはコインを掛けながらアリアに顔を向けるとはにかむ。
自分がスロットしているのをただ見ているのも つまらないだろうと、快諾した。
「ありがとっ! なるべく早く戻るね。じゃあピエール君行こっ!」
「では主殿、少々離れます。パペック殿、貴殿はどうされますか?」
「パペック、良かったら一緒に行かない?」
アリアに誘われパペックは「コキ、コキ、コキッ!」と頭と肩を鳴らして嬉しそうである。
アリア達はレイラの後について行くことにした。
アリア達が居なくなった後も100コインスロットを続けたアベルは目を瞬かせる。
「………………あれ……? またハズレ……、さっきまでずっと小当たりだけは外さなかったのに…………??」
アリアが居なくなった途端、100コインスロットの絵柄がはずれ出していた。
アベルは“まあこんなこともたまにはあるか”と、これまで当たった分から比べればなんてことないとコインを注ぎ込んでいく。
――【グリンガムのムチ】まで あともう少しなんだ……!!
アベルはアリアにカジノの目玉景品である【グリンガムのムチ】を贈りたくて以前来た時からコツコツとコインを貯めていたのである。
前回は二日間、ほぼ徹夜で1コインスロット、10コインスロット、闘技場にスライムレースに駆け回って、1万枚まで増やしたところで止めた。
1万枚で交換出来る【キラーピアス】を贈るかアベルは悩んだが、あの頃はアリアと気持ちが通じ合っているなんて思っておらず、押し付けて嫌われても……と、贈るのは止めている。
そして今、二人は“らぶらぶ”である。
アベルはどうせならと25万枚という破格のコイン枚数でしか交換できない【グリンガムのムチ】をアリアに贈るため、カジノに真剣に取り組んでいたのだった。
そして今また、スロットのリールが回り出し、その回転が一つずつゆっくりと止まっていく。
が。
「あっ……! またハズレ……!(おかしいな……なんでだ??)」
――まだまだ! アリア、待っててね……!
アベルは次から次へとコインを
彼はアリアのためにスロットを回し続けるのだった。
アベルは一途だなぁ……。
アリアは前世の父親のギャンブルで嫌な思いをしているはずなのですが、この世界のカジノに借金という概念がないため、平気だったりします。
頭の中で“ここはゲームの世界だから”という認識があるんでしょうね。
あ、良いお年を~!
----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!