アリアの仕事といえば、アレですよ。アレ。
では、本編どぞ。
◇
アリア達がアベルの元に戻って来ると……、
「……あっ! やっと当たりが来た!!」
――大分減っちゃったな……、これから挽回しないと……。
アベルは漸く久しぶりの中当たりを出し、ほっと息を吐いていた。
アリアが傍に来た途端、中当たりが出たのだが、そんなことアベルは知らないのである。
「アベル」
「あ、アリア、おかえり」
「うん、どう? 当たりは出たかな?」
「うーん……ぼちぼちかな……。さっきまでハズレが多くて……やっと中当たりが来たよ」
――あ、また当たりだ……不思議だなぁ~……。
アリアに声を掛けられ、アベルは彼女に微笑み掛ける。
リールが回転し、今度は小当たりが出ていた。
「そっか。あのね、アベル」
「うん?」
作業となったコインベットを繰り返しながらアベルはアリアの話に耳を傾ける。
「アベルあとどれくらい掛かりそう?」
「え……っと……。うーん……止めた方がいい?」
アリアが嫌なら切り上げるけど……とアベルは作業的に動かしていた手を止めた。
「あ、ううん、そうじゃないの。待ってる間、私も自由にしてていいかなって」
「え? うん、もちろん。見てるだけじゃつまらないでしょ?」
アベルはレバーを下ろしリールを回転させるとアリアに頷く。
「ううん、見てるの好きだから そんなことないけど……そっか。良かった。あのね、レイラさんにお仕事手伝ってって言われて、ちょっと手伝って来ようかと思うんだけど……」
「手伝い?」
「うん、人手不足なんだって。短時間でもいいから手伝って欲しいって、あ。ピエール君も。……と、あとパペックは一緒について来たいみたい」
アベルがアリアの背後に目を向けると、後ろに居たピエールが頷き、パペックは同意の仕草なのか顔や腕をくるくると回転させていた。
「人手不足……、そっか。僕も手伝おうか?」
「ううん、大丈夫。アベルはコインを増やしたいんでしょ?」
アリアの話にアベルは自分も……とスロットマシンから離れようとしたが、彼女はそれを引き留める。
アベルの邪魔をするつもりはないらしい。
「そりゃまぁ……。中々増えなくて時間が掛かりそうだけどね」
「ふふっ、じゃあ私、その間お手伝いして来てもいいかな?」
「んー……アリアがしたいならいいんじゃないかな?」
アベルは深く考えずに頷いていた。
「ありがとうアベル! じゃあ私もお仕事頑張るからアベルも頑張ってね!」
アベルの了承を得てアリアが満面の笑みを浮かべると、アベルは頬を赤く染める。
「あ、うん……」
――ああ、今日もアリアが可愛い……!
アベルがアリアに見惚れている間に彼女はくるり。踵を返し、レイラの待つバーへと戻ってしまった。
バーカウンターで何を話しているのかは知らないが、レイラと話すアリアが楽しそうに笑っているの見て アベルは目を細める。
その内アリア達はレイラに連れられ舞台へと上がって行った。
「よっし! 僕も頑張るぞ……!!」
アリア達を見送り、アベルは再びコインを賭けてスロットを回し始めたのだった……。
◇
……あれからアリアとピエール、パペックの三人は休憩を終えたレイラと共に踊り娘達の控室へとやって来ていた。
「で、では、私は以前のようにスライムレースを監視していればいいと……?」
「ええ、ええ。アンドレちゃんが出ると賭ける方が多くて、うちとしても助かるんですよ」
レイラはにっこり嫣然と微笑む。
ピエールは控室で踊り娘達が着替えている為、アンドレから降りて背を向けレイラの話を聞いていた。
アベルと再会する前のピエールはアリアの護衛だったが、カジノ内で悪さをする不届き者が当時は居なかったため、アリアの勤務が終わるまでスライムレースの監視をしていたのである。
そして、アンドレはレースに参加。
高確率で首位を取るので、倍率は低いものの大人気だったのだ。
「ウフフ。アンドレちゃんお久しぶりね。最近どうかしら、走ってる? 久しぶりに
ツンツンとレイラが妖しい流し目でアンドレを突いた。
「はわわ……レイラさん相変わらずキレイ……。ボク……いや、私で良ければレースに出ましょう! どうかね、ピエール殿!」
「ははは……、アンドレってば……(急にキリッとしちゃって……)」
「まったく困った相棒だ……」
アンドレがレイラに見惚れ、突然イイ声で喋り出したのでアリアもピエールも呆れてしまう。
「ウフフ。決まりね♥ 一位をたくさん取ってね、そしたら特別なご褒美をア・ゲ・ル♥」
ちゅっ、とレイラはアンドレに向けて投げキッスを送った。
「ピ、ピキー! ご褒美!? ピエール殿っ!! 何をトロトロしているのだ! スライムレースにいざ行かん!!」
「あ、おい、アンドレ! 独りで行くな!」
レイラに投げキッスを送られたアンドレの目にハートマークが浮かぶ。
アンドレがさっさと控室を出て行ってしまうので、ピエールも慌てて追って行った。
「あ、私も行くわ! アンドレ選手が出ること伝えなきゃ。アリアちゃんは着替え宜しくね! そこのタンスに入ってるから。すぐ戻るわ」
「あっ、はい」
レイラも手続きがあるのでピエール達を追って行ってしまった。
「そういえば衣裳って……」
残ったアリアはレイラの指定したタンスへと向かう。
閉じられたタンスを開くと……。
「これ……、かー……!」
――久しぶりだなぁ……バニースーツ……!!
タンスには懐かしのバニースーツが掛けられていた。
アリアはバニースーツを取り出し着替える。
「…………そう、だよね。カジノのお手伝いっていったらコレよね……」
着替えを済ませたアリアは黒髪ウィッグを片手に、空いてる鏡台の席へと着いた。
「「「アリアちゃん、久しぶり~!」」」
「お久しぶりです」
アリアが席に着くと、メイク中の踊り娘達が笑顔で話し掛けて来るので、彼女は頭を下げる。
皆アリアの元職場の先輩だ。
「背中のメイクやったげる~♪」
「ありがとうございます……」
踊り娘の内一人が立ち上がり、メイク道具片手にアリアの背後やって来ると、彼女の髪に触れた。
「アリアちゃんの髪、相変わらずキレ~ね! あ、ウィッグ付ける?」
アリアの髪に櫛を通し、とりあえず背中の傷を隠すメイクを施すため邪魔なので、軽く結んで頭の上に持ち上げ髪留めで留める。
「あ、はい」
「オッケ~。じゃあ背中が終わったら付けるね……と、あら」
バニースーツの背中部分は大胆に開いているデザインなので、背中が丸見えになってしまう。
アリアの背には傷があるため、働く際には背中の傷を隠すための化粧を施していたのだった。
そんなアリアの背を見つめ、踊り娘が目を瞬かせる。
「……? どうかしましたか?」
「アリアちゃん、背中の傷ずいぶん良くなったのね」
「あ、そうですか? 自分じゃわからなくって……。実は今、世界中の教会を回っていて……治療してもらってるんです」
――背中の傷が呪いと関連しているかも みたいなことをフィーロ神父が云っていたっけ……。
サンタローズ教会の神父、フィーロが背中の傷が癒えれば呪いも解けやすいかもしれないと云っていたのだが、逆なのかもしれない。
解呪が進めば傷も消えていくのかも……とアリアは何となく思ったが、はっきりはしなかった。
ただ、確かに背中の傷と呪いは連動しているような気がする。
鏡越しに話し掛けられ、アリアは素直に答えていた。
ここの踊り娘達とは仕事終わりによくお喋りをした仲なのだ。アリアは一番年下(だろうと思われて……)ということもあってか可愛がってもらっていた。
「そうだったのね。うんうん、その成果が出てるのね。これならその内消えるんじゃないかしら。良かったわね」
アリアの背に化粧を施しながら踊り娘が優し気に目を細くする。
この人は以前アリアの背の傷に泣いてくれた人で、踊り娘である自分の背にアリアのような傷を負っていたら立ち直れないと、自分の事のように受け止め彼女の背中にメイクをしてくれたのだった。
「今日は天使の羽を描いたわ。前の黒い蝶々も良かったけど、白い翼もいいわね! カワイイ!」
「あはは……お姉さんメイクアップアーティストにでもなれるんじゃ……」
背中に描いてもらったのはメイクアートである。
アベル達と再会して間もない頃も実はしており、その時は大きな傷を隠すためにウィッグの下で見えにくいが、黒い羽根の大きな蝶が描かれていた。
この踊り娘のお姉さんの配慮で、アリアは背中の傷を気にすることなく仕事が出来ていたのである。
今回は白い羽翼を描いてくれたようで、手鏡で背中を映してもらうと鏡越しに手の平より一回り程小さな翼が描かれているのがわかった。
「ふふふっ、踊り娘が出来なくなったら そっちに転向しようかしらね」
踊り娘のお姉さんがアリアの髪にウィッグネットを被せ、彼女の手にあった黒髪ウィッグを取り上げて頭に被せていく。
その上に【うさみみバンド】を取り付けてくれた。
随分と手馴れた手付きである。
「ふふっ、黒髪も似合うわね」
「ありがとうございます」
鏡台の鏡には、ぱっつん前髪の黒髪ストレートロングのバニーガールが映っていた。
ドラクエ5にはバニースーツが無いんですよ……!
水着もないんですよ!
着せたいですよね……!
着せますよ……! 文字上だけどw
新年早々煩悩に苛まれておりますが、顧みず楽しく暮らして行きたいと思います。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!