ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

かつて同じ店で働いた先輩方との交流の回。

では、本編どぞ。



第三百八十五話 古巣

 

「またフロアのあちこちを回るの?」

 

「あ、はい、多分」

 

「アリアちゃん人気だったものね~。馴染みのお客さんが来てたら喜ぶんじゃないかしら」

 

「アリアちゃんが付くと当たりが出るって評判だもの。適度に当たりを出させて注ぎ込ませるのよ、ってレイラさんが指示出してたのを聞いたことがあるわ」

 

 

 アリアは鏡台に置かれた、いつもよりちょっぴり大人びた色付きのリップを塗り塗りしながら先輩方の話に耳を傾ける。

 

 

「え? そうなんですか……? 私はレイラさんに言われて、ただコインを運ぶお手伝いとお客さんの応援をしていただけなんですけど……」

 

 

 ――確かにあちこち行かされてた気がする……!

 

 

 バイト時代、出勤した際に自分に当たりを呼び寄せる力があることなど知らないアリアは、レイラにあちこち配置換えをされカジノ内を一日中歩き回っていた。

 

 普通なら一日一つの持ち場を与えられ、そこで勤務していればいいだけなのに、アリアはカジノ内を三十分単位で移動させられ常に忙しく動いており、終業時にはヘトヘトで、オラクルベリーの町を楽しく歩くなんてことすら殆ど出来なかった。

 当時記憶喪失中のアリアだったが、染み付いていた社畜根性が仇となったのか、レイラの配置換えに何の疑問も持たずこき使われていたのである。

 

 当時のアリアは。

 

 

『お仕事って大変。でもお客さんも喜んで下さるし、週に一度だもの、これくらいなら頑張れる……!』

 

 

 ……健気に文句も言わずに従っていたのだった。

 そのことを思い出すと何だが微妙な気分になる。

 

 

(私、いいように使われていたんだなぁ……)

 

 

 レイラはやり手である。

 

 自分に損になりそうな時は切り捨てることも決して厭わない。

 自信たっぷりで女を前面に出し、言葉巧みに上手く人を誘導して思い通り操る才能が羨ましいような、羨ましくないような。

 それでいて、自身が恨まれないよう配慮も欠かさない。

 

 アリアは彼女のようになりたいとは思わないが、そういうレイラが嫌いではなかった。

 

 そんなことを考えていると、踊り娘の一人がアリアに声を掛けてくる。

 

 

「ねえ、アリアちゃん」

 

「はい?」

 

「そこに立ってるパペットマンて……大丈夫なの?」

 

「あ、パペックですか? あの子良い子ですよ」

 

 

 控室の入口付近で ぽつんと一人置いて行かれたパペックは頭を下げたまま棒立ちしている。

 踊り娘が指を差すとアリアの声が聞こえ、パペックは自分が呼ばれた気がして顔を上げた。

 

 

 カタ、カタ、カタ……。

 

 

 パペックはアリアに向けてステップを踏んでみせる。

 アリアのことを相当慕っているようだ。

 

 

「あら、あの子踊れるの?」

 

「はい。私も今踊りを教わっていて」

 

 

 パペックは踊りが上手なんですよ……と、アリアはメイクを終え立ち上がった。

 

 

「そうなの!? アリアちゃん踊り娘になるの!?」

 

「えっ!? アリアちゃんが踊り娘になったら私達ライバルになるじゃない!」

 

「センターは譲らないわよ!?」

 

 

 踊り娘三人がそれぞれ勝手に話を進めてしまう。

 

 

「あっ、いえっ、そうじゃないんですけどっ」

 

 

 ――私が覚えるのは、戦闘中に使えるものであってですね……!

 

 

 オラクルベリーの舞台は踊り娘達の夢の舞台で、狭き門である。

 アリアは戦闘中に役立つ踊りと、旅先でちょっと路銀稼ぎが出来たらいいなとは思っているが、オラクルベリーで踊るなどとは一言も言っていないのだ。

 

 急にライバルとか言われても、こちとら素人に毛が生えた程度にしか踊れない。

 踊り娘達の美しい筋肉美と自分の貧弱な身体つきを見てみればわかりそうなものなのに……とアリアは慌てて否定した。

 

 

「そうなの?」

 

「私、体力が無いので先輩方のようには踊れませんから……!」

 

「………………それも……そうね。アリアちゃん、ふにゃふにゃだものね」

 

 

 踊り娘の二人がアリアの腕や脹脛(ふくらはぎ)を掴み、揉み揉み。

 筋肉が無いわけではないが、アリアの身体は全体的に柔らかめである。

 

 そして、大きなおムネ。

 凡そ回転に適していない。こんな身体で踊り娘達の激しい踊りなど踊れるはずもない、乳が千切れてしまう。

 

 

「いや~ん、アリアちゃん柔らか~い!」

 

 

 モミモミ。

 

 

「もっと筋肉付けないと!」

 

 

 モミモミ。

 

 

「ちゃんとお肉食べてるの!?」

 

 

 モミモミ。

 

 

 先輩方にアリアはあちこちを揉まれていた。

 

 

「あっ、ちょ、擽ったいですってば……! あははっ! やめ……っ!」

 

 

 ――懐かしいなぁこの感じ……っ!

 

 

 以前もこうして可愛がって(・・・・・)もらっていたなとアリアは擽ったさに身を捩っていた。

 

 

 “ひゃははははっ!!”

 

 

 アリアが涙交じりに笑い転げていると、

 

 

「アリアちゃんお待たせ!」

 

「ひゃはは…………あ、レイラさん!」

 

 

 レイラが控室に戻って来るとパペックの傍から話し掛けて来る。

 と、踊り娘達はサッとアリアから手を放し、自分達のメイクを再開させた。

 

 どうやらレイラの前ではふざけ合うところを見せたくないらしい。

 

 

「ね、アリアちゃん、この子貸して もらってもいいかしら?」

 

「え、パペックですか?」

 

 

 レイラはパペックの両肩に手を置き、アリアに訊ねる。

 パペックはレイラがすぐ傍に居るにも関わらず、アリアしか見ていなかった。

 

 

「ええ。さっきジャグリングしてたから、飛び入りで舞台に立たせようかと思って。魔物がジャグリング……なんて面白いでしょ? お客さんも集まるかなって。さっき客引きに周知のお願いして来たから もうすぐ人が集まって来ると思うの」

 

「なんとっ!」

 

 

 レイラの提案にアリアは驚き目を丸くした。

 

 

「たくさんお客さんが来たら、お給金上乗せしちゃうから♥ どうかしら?」

 

「あ、えと……アベルに訊かないと……」

 

 

 パペックの主人はアベルである。

 アリアがアベルに訊いてみないと返事できないと申し出るが……レイラはやり手だ。

 

 

「アベルさんには訊いておいたわ♥ あなたがいいなら“いいよ”ですって。アリアちゃん愛されてるわね~♥」

 

 

 ……既にアベルの了承を取っていた。

 

 

「あ、っ……も、もぉ……アベルってば……」

 

 

 ――私が決めちゃっていいの……? アベルに一任されて嬉しいような、戸惑うような……。

 

 

 レイラの言葉にアリアは迷ってしまう。

 自分のことならいくらでも使ってもらって構わないのだが、遊びに誘うならともかく、小遣い稼ぎに仲魔を使うようで どうにも気が引ける。

 

 ピエールのように直接交渉してもらえたらいいのに、パペックはアリアを見て踊っているだけで、レイラに従う素振りはない。

 

 勝手に決めてもいいのかどうか……、こういう時意外と優柔不断なアリアだった。

 

 

「……お客さんも集まり始めてるし、ね? いいでしょ?」

 

 

 アリアが黙っていると、レイラは舞台の方をチラ見してから嫣然とした。

 

 

(ああ、レイラさんの美し過ぎる笑顔が何故か怖い……!)

 

 

 断ったら後が怖そうだなとアリアはとりあえず本人に訊ねてみる。

 

 

「っ……、パペック……大丈夫? 出来そう……?」

 

「コキ、コキ、コキッ!」

 

 

 アリアに問われたパペックは身体をくるくると回転させ、ご機嫌な様子でステップを踏んだ。

 

 ……やってくれるようである。

 

 

「……ありがとう……。レイラさん、やってくれるそうです」

 

「やったぁ♥ ありがとう、パペックちゃん♥ あ、アリアちゃん、パペックちゃんに私の言うことを聞くようにって言っておいてね。悪い様にはしないわ♥」

 

 

 レイラが抜け目なくパペックの操縦権を寄こすようにとニコニコ。

 

 

「っ……はい。……パペック、レイラさんの言うことに付き合ってあげてくれる? 舞台を観るお客さんが楽しくなればいいから、あんまり無茶はしないでね」

 

「コキ、コキ、コキッ!」

 

 

 アリアがレイラの手を引きパペックの目の前に立たせレイラを認識させる。

 パペックは今まで気が付かなかったのか、レイラを今初めて見たかのように身を引き驚いた様子で両手を挙げていた。

 その後で了承したのか、ご機嫌なステップを踏む。

 

 

「パペックちゃん、よろしくね♥」

 

「カタ、カタ、カタ……」

 

 

 レイラが握手を求めたものの、パペックはアリアを見てばかりでレイラの手を取ろうとはしない。

 

 

「……パペックちゃんはアリアちゃんしか見ていないのね……(私無視されたの初めてだわ……)」

 

 

 パペックが無反応なので、レイラはさすがに落ち込んでしまった。

 

 

「パペック……。ほら、レイラさんと握手して?」

 

「コキ、コキ、コキッ!」

 

 

 アリアがパペックの手を取り、レイラと握手するよう促す。と、パペックは漸くレイラと握手を交わしたのだった。

 




アリアの思いがけない裏チート能力が発覚w
このお話では特にレベル表記はしていませんが、表記するとしたら現在アベル、アリアは共にLV20位かな。

アリアの能力値は運の良さが際立って高く、LV20で150程あったりします。
アベルはLV20だと31なので、五倍は運がいいという(但しHPは90と低く、MPは120くらい)……ことにしておこうw

マイ裏設定で、スロットマシンは魔力を動力として動かしているので、魔力の強い人の影響で揃いやすくなるとかなんとか……。
他のスライムレースやらなんやらは完全に運ですね。アンドレが参加して毎度勝つわけではないです。
あくまで“勝ち易い”ってだけ。

レイラや一部の人は知っているが、本人とアベルは知らない能力ですね(本人は今回知りましたが)。

控室の踊り娘さん達はアリアを妹のように可愛がってくれていたのです。
レイラも可愛がってくれていましたが、レイラはあくまで自分一番なのでね……(自分ファースト! 度を過ぎたのはいかがなものかと思うが嫌いじゃない)。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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