ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

シスターの云っていた素敵な青年に会ってみましょう。

では、本編どうぞっ。



第三十八話 素敵な青年

 

 二人が教会から出ると、先程シスターの云っていた青年がまだ側で佇んでいた。

 

 

「……アリア、まだ居るみたい。声掛けてみる?」

 

「……うん」

 

 

 先程アリアに褒められ上機嫌になったアベルは、青年に声を掛けようと近寄ってみる。

 そして声を掛けようとした所で青年が振り向いて、逆にアベルに話し掛けてきたのだった。

 

 

「やあ、坊や。お散歩かい?」

 

「うん、お兄さんは何しにこの村へ?」

 

「僕はね、旅をしていてね…………――」

 

 

 青年が優しげな瞳でアベルに話し掛けるので、アベルは警戒しながらもそれに応えていた。

 アリアは黙って二人の話を聞いていたが、時々青年がアリアを見て来る気がして、身体を強張らせる。

 

 

「っ……!?(……え? 今、私と目が合わなかった……?)」

 

 

 どきっ。

 

 

 アリアの鼓動が跳ねる。

 

 青年が話の合間、真っ直ぐにアリアを見つめて来るので、アリアは目をぱちぱちと瞬かせていた。

 

 

「気のせい……よね……?(私が見えるの……?)」

 

「……何が?」

 

 

 アベルがアリアに視線を移し首を傾げる。

 すると、青年が屈んでアベルと目の高さを合わせてきた。

 

 

「うん? 坊やは不思議な宝玉を持っているな」

 

「ん? あ、これ? ゴールドオーブだよ」

 

「そうか、ゴールドオーブって言うんだね。そのオーブを見せてくれないか?」

 

 

 アベルの持っていた袋の口が開いていたのか、ゴールドオーブが見え、青年はそれを見せる様に云ってきたのだった。

 

 

「えー……、やだ」

 

「アハハ……、別に盗むつもりはないよ。信用して欲しいな」

 

 

 アベルが疑いの眼で青年を見るが、青年は優しく目を細めて苦笑していた。

 

 

「……ぁ、笑顔が素敵」

 

「っ……。コホッ、コホンッ……。ど、どうかな? すぐ返すから、見せてもらえないかな?」

 

 

 アリアが青年を見ながらぽつりと呟くと、青年は一瞬息を詰まらせ、咳払いをする。

 頬がほんのりと赤くなったような気がする。

 

 

「……うーん……。じゃあ……、少しだけね。すぐ返してよ?(って、アリアこの人の事そんなに見つめないでよ……)」

 

「ああ、すぐ返すよ」

 

 

 アベルはアリアを横目に、つまらなそうに口を尖らせゴールドオーブを青年に手渡した。

 すると、青年はゴールドオーブを受け取りながら、ちらちらとアリアを何度も見たのだった。

 

 

「……っ?(やっぱりこの人、私のこと見えてる……?)」

 

 

 アリアはただただ驚いて口をぽかんと開けていた。

 そして、青年は立ち上がりゴールドオーブをじっと見つめる。

 

 不意に、

 

 

「ふにゃあ……ゴロゴロゴロ」

 

「ちょっ! プックル、首を掻いてほしいの? ……しょうがないなあ……」

 

 

 プックルがアベルの足元に身体を擦り付けて来るので、アベルはプックルの首元を掻いてやった。

 

 

「……プックル……(急に甘えちゃってどうしたの……?)」

 

 

 アリアはプックルを愛でるアベルを見つつ、青年をじっと見ていた。

 初対面で、もしかしたら自分が見えているかもしれない大人に警戒しているようだった。

 

 

「ねっ、すごく綺麗な宝玉でしょ」

 

 

 一分もしない内にプックルから手を放し、アベルは青年を見上げる。

 すると、青年は穏やかに微笑んで、

 

 

「本当に綺麗な宝玉だね。はい、ありがとう」

 

 

 ゴールドオーブをアベルに戻したのだった。

 

 

「どういたしまして!」

 

 

 アベルは無事返してもらったことに安堵して破顔すると、青年はアベルを見て眉を下げる。

 

 

「坊や、お父さんを大切にしてあげるんだよ」

 

「え……? うん、もちろんだよ。けど……どうして?」

 

「…………、…………ハハ、どうしてもだよ。お父さんは大切だろう?」

 

 

 青年が訊き返され参ったなという顔で、後ろ頭を掻く。

 

 

『ぇっ……!!?』

 

 

 その仕草にアリアが目を見開いた。

 

 

「うん、大切だよ。……って、わぁっ、プックル!? 今度はなになに? あっちに行きたいの?」

 

 

 話途中でプックルがアベルのマントに齧り付いて引っ張って来るので、アベルは「わかった、わかったからっ」と宥めていた。

 

 

 グイグイ。

 

 

 プックルは自宅の方へと戻りたいのか、一向にアベルのマントから口を放してくれない。

 

 

 しょうがないなぁ……。

 

 

 アベルは青年と話の途中ではあるが、自宅の近くの井戸まで駆けっこでもするかとプックルに「井戸まで競争だからね」と言い聞かせていた。

 

 

「僕、もう行かなくちゃ」

 

 

 アベルの言葉に青年は深く頷く。

 そして……、

 

 

「坊や、どんな辛いことがあっても負けちゃダメだよ」

 

「うん。どんなに辛いことがあっても、僕は負けないよ。プックル行こっ」

 

 

 青年がアベルの頭を撫でると、アベルは“アリアも井戸まで競争ね!”と付け加えて、プックルと走って行ってしまった。

 

 

「えっ、わ、私も……!?」

 

 

 急に振られて、アリアも駆け出そうとしたのだが。

 

 

「っ、アリアっ!」

 

「っ……!?」

 

 

 突として青年の手が伸びたかと思うと、アリアの身体が青年に引き寄せられてしまう。

 翼ごと、大きな腕で包み込まれたのだった。

 あまりに突然なことに、アリアは驚き過ぎて瞬きさえ忘れてしまった。

 

 

「…………ぁ、あの……?(やっぱり、この人私が見えてる……!)」

 

 

 

 

「…………ごめんね」

 

 

 

 

「ごめんて…………? え……?」

 

 

 何だか、この人懐かしい気がする……。

 

 どうして……?

 

 

 青年がどんな顔をしてそんなことを言っているのか表情は見えないが、アリアはわけが解らず、耳に囁かれる優しい声が心地良くて、少しぼーっとしてしまうのだった。

 

 

「……君に、一つお願いがあるんだ」

 




照れ屋な青年ですね。
誰なんですかねwww

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読んでいただきありがとうございましたっ!

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