アベルの急所を当てる回。
では、本編。
◇
……アリアを控室に連れて行き彼女が着替えを済ませた頃、ピエールも頃合いかなとスライムレース場から戻って来ていた。
それから少しして最後にぐったりした顔のレイラがパペックを連れ控室にやって来ると、本日のバイト料を差し出す。
「……これ、今日のお給金……」
「ありがとうございますっ。わ~、こんなに頂いてもいいんですか?」
アリアがもらったバイト料を数えると、1500ゴールドある。
二時間強で1500ゴールドも貰えたのは初めてだ。
以前バイトしていた頃は丸一日働いて700ゴールド程だったというのに、今日のレイラは随分と気前がいい。
「ええ……いいのよ……。アリアちゃんとピエールさんとパペックちゃんの三人分だから……」
「あ、なるほど」
「…………ねえ、アリアちゃん。思い通りにならないことってあるのね……」
いったいどうしたというのか突然レイラが頬に手を当てて“フゥ”と溜息を吐いている。
「え、急にどうしたんですか?」
アリアはレイラの珍しく気弱な態度に面食らってしまった。
「……パペックちゃん、私が命令しても途中から踊り出しちゃって……。お客さんも一緒に踊っちゃうし、私も踊っちゃったし……、その……色々問題が発生しちゃって……」
「す、すみません……」
「ううん、いいのよ。結果的にお客さん達も楽しんで帰って行ったから……。私、他人は皆自分の思い通りに動いてくれるものだと思っていたの……」
「え゛」
レイラの物言いに、アリアは絶句する。
アリアの隣でアベルも何のことだろうと目をぱちくりさせていた。
「……だって、私は美しいでしょ? 男でも女でも、皆、私に見惚れ、私の言うことを喜んで聞いてくれるのよ? でも、それはこの間までね……」
「えと……何かあったんですか……?」
「…………誕生日よ」
「はぁ……おめでとうございます……?」
「めでたくなんかないわよアリアちゃん。また一つ歳を取ったんだもの」
「え?」
「…………若さ」
「はい?」
「私はもう若くない。この美貌も陰りが見え始めたんだわ……。だからパペックちゃんが言うことを聞いてくれなかったのよ……! でも良かった。私結婚するんだもの! これからは旦那のために――……――……――!!」
レイラが一方的に何やら捲し立てるので、アリアも途中途中で合いの手を入れてはいるのだが、話が通じない。
アリアは“パペックは色気がどうのとか気にしてないと思う……”と隣のアベルを見上げ乾いた笑いを浮かべるも、アベルはアベルで困った顔のアリアを見下ろし“困った顔のアリアも可愛い……”と穏やかな笑みでレイラの話など聞いちゃいなかった。
「はぁ、はぁ……。けど仕事も続けたかったな…………。私だって……」
興奮気味に独演会を開き終えたレイラは最後にそう零し、眉を下げる。
彼女はいつも明るく元気で強引な人なのだが、今はどうだろう。何だが情緒が不安定な気がした。
そんなレイラの様子に話を聞いていたアリアは口を開く。
「…………レイラさん……。それ、マリッジブルーってやつですよ」
「……え?」
「結婚前に落ち込んだり不安になったりすることをマリッジブルーって言うんですよ。結婚までに旅の資金をって気持ちはわかりますが、ちょっとお疲れなのでは……?」
嘆きにも似たレイラの呟きにアリアは優しく語った。
「アリアちゃん……」
「私は結婚していないですし、婚約もしていないのでどういう感じなのかは わかりませんけど……。辛い時はお相手に相談してみるのはどうですか?」
「……………………そう、ね。そうしてみようかな……。ありがと、アリアちゃん」
アリアの提起にレイラはハッとした顔で頷く。
と、アリアは目を細めて穏やかに微笑んだ。
「ふふっ、レイラさんお幸せに!」
「アリアちゃんも…………、あ。アベルさん、アリアちゃんのことお願いね。この子、ちょっと抜けてるところもあるけど、いつも一生懸命だし、しっかりしてる方だと思うの。私よりおっぱいは小さいけど、弾力は申し分ないはずよ!」
レイラが自分の真正面にいるアリアの胸を下から両手で自然な動作を装うように持ち上げる。
「っ!?(何っ!?)」
アリアの柔らかい果実が たゆんたゆんと揺れて、アベルは目を剥いた。
――そんな
確かにレイラの爆乳に比べればアリアの方が若干小さいが、まったく問題ない。
アリアの感触などアベルは経験済みである。
強調された たわわにアベルの指先がピクピク。下半身もピクピク。
「レイラさんっ!! 余計なこと言わないでくださいっ!」
――思春期のアベルを刺激しないでっ!
アベルを刺激したくなくて、アリアは慌ててレイラの手を退かせた。
「…………私と違って天然もののいいお乳なのに……。あら、そう? アリアちゃん出し惜しみはダメよ。後で後悔しても知らないから」
「何の出し惜しみですかっっ!」
「ウフフ、何のって……ねえ、アベルさん?」
レイラが流し目を送ってアベルの右胸の中心辺りを人差し指で クリクリっと突く。
「ぁっ❤」
――ビンゴ! そこは、僕のち……っ!?
思いがけず切なげな声が漏れ、アベルはレイラに触れられた胸に手を当てガードした。
(そこはレイラさん、あなたではなくアリアに触られたい……!!)
艶っぽい視線を送ってくるレイラから、アベルは気まずそうに目を逸らす。
「っ、アベル! 大丈夫!?」
「っ……だ、大丈夫……(左胸なら一部開けてるから判るかもしれないけど開けていない右胸の急所を何故一発で……)」
――レイラさんて、スゴイ……!!
何故自分の急所がバレたのかはわからないが、アリアに声を掛けられたアベルの顔は真っ赤だった。
「レイラさん、アベルをいじめないで下さいっ」
「ウフフ。アベルさんて感じやすいのね……カワイイ坊やね……❤」
アリアが抗議すると、レイラは悪ノリしてアベルを下からあざとく見上げ、彼の喉元にそっと指先で触れる。
レイラからは大人の色香が匂い立ち、アリアとは違う妖艶な芳香がアベルの鼻を擽っていた。
(アリアが居なかったら僕はこの人に……?)
レイラの色気に煽られ、アベルは小鼻をひくつかせる。
完全に遊ばれていると解っているが、大人の女性の魅力に抗えない自我の一つがひょっこりと顔を出して、アベルは息を呑んだ。
アベルが弄ばれてもいいかも……なんて思い始める一方で、レイラのアベルを誘惑するような仕草にアリアは頭を垂れた。
「………………………………………………、旦那様に言いますよ……?」
アリアは一瞬黙り込んでから俯いたまま静かにゆっくりと……、だがはっきりと告げる。
……その声はアベルが今まで聞いたことがない程冷たかった。
「ぅ……。じょ、冗談よ……、アリアちゃん怒っちゃイヤぁん。レイラこわぁい。………………………………ひ……引き留めて悪かったわね、元気で旅を続けてね!」
アリアの様子にレイラはぶるっと身体を震わせ、あざとく顎に両手拳を持って来る。
それから気を取り直してアベル達を見送るように手を振った。
「行こっ、アベルっ」
「…………あ、うん」
アリアはアベルの手を取り、踊り娘達やレイラに手を振ってから控室を後にする。
――アリア……助けてくれた……、なのに僕は誘惑に負けそうに……くっ!!
アベルは前を歩くアリアに申し訳なさを感じ、猛省する。
「アリアっ、僕は君だけだy……」
今さら口にしたところで説得力がない気もするが、アベルはアリアを安心させたい一心で語り掛け……と思ったら、アリアが振り向いた。
「レイラさん綺麗だもの、ぐらっとしちゃうよね…………?」
「ぅっ!」
――何で解ってんの……!?
アリアは人の心を読めるのだろうか……。
アベルは笑顔で問い掛けて来るアリアに胸をグサリと刺された気持ちになり、片手で胸元を押える。
「…………アベルはそういうお年頃なんだもの、しょうがないしょうがない!」
――どう考えても誘惑する大人が悪いよねっ。
アリアはアベルの年齢を考えると怒る気にはなれなかった。
レイラは自惚れ屋なところはあるが かなりの美人である。
彼女からの誘いを断っている人を見た事がない。
年頃のアベルが誘惑されたらそりゃ、惹かれるでしょ……と解っているのだ。
「アリア……、怒っていないのかい……?」
「うん、怒ってないよっ。レイラさんいっつもあんな感じなのは知ってるし、彼女結婚するし……。でも、交換所の先輩は未婚だし、恋人居ないし、ダメなんだからね」
アベルが恐る恐る訊ねると、アリアはそんなことを云う。
「え? なに?(交換所の先輩?)」
「……っ、……ほら、行くよ……!!」
「あっ、アリア……!!」
首を傾げたアベルだったが、アリアはハッと口元を手で押えてから走ってカジノを出て行ってしまった。
すぐにピエールとパペックが追い掛け、アベルも後ろに続いた。
わかる方だけわかって頂ければ良いのですが、何か卑猥でスミマセン……。
ホント、スミマセン……、めっちゃ楽しいです……w
たまにはこういうのもええかな……って……。テヘッ。
アベルが敏感という設定……いるのかなwww
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!