意外……でしたね。
では、本編どぞ。
◇
「アリア!」
アベルが少し遅れてカジノから出て来ると、アリアはピエールとパペックと共にカジノ外縁の水路を眺めつつアベルを待っていた。
「……あ、アベル。ふふっ、カジノ楽しかったね?」
「え? あ、うん」
「これお金。ピエール君と話したけど、このお金はアベルに預けておくね」
アリアが先程レイラから貰ったバイト料を差し出して来る。
アベルはバイト料の1500ゴールドを手渡された。
「いいの?」
「うん、アベルは主人公だし、リーダーだし。そのお金を装備品や道具購入の足しにしてもらえたら嬉しいな」
「…………そう……。わかった、じゃあ預かっておくよ」
アリアと居ると不思議なことばかりだなと思わぬ収入にアベルは目を細める。
「ふふっ、それにしてもアベル、スロット長かったね~。前回みたいに また徹夜するのかと思っちゃったよ」
「ははは……」
アリアに云われて、アベルは乾いた笑いを浮かべる。
前回オラクルベリーに寄った際、カジノに二日間入り浸りだったのは他でもない君の所為だよ……とは言わなかった。
「せっかくオラクルベリーに来たし、モンスターじいさんの所に寄って行こうよ(キャシーちゃん元気かな?)」
「そうだね」
アベル達はモンスターじいさんの預かり所を目指し、オラクルベリーの町を歩き出した。
「ね、アベル。コイン結構貯まってたみたいだし……欲しい景品でもあったの?」
歩きながらアリアが訊ねて来る。
「欲しい景品…………あっ! アリア……!」
「ん……?」
「こ、これ……」
アベルは【ふくろ】から可愛らしくラッピングされた箱を取り出した。
「…………何これ?」
「えっと…………、その……」
改まって“プレゼントです”というのは照れ臭い。アベルはどう伝えようかと言葉を選んでいた。
その間にアリアが利き手の人差し指を立てて、破顔する。
「あっ! わかった! アベルってすごいっ!」
「ん?(すごい?)」
「綺麗にラッピングされてるし、これ、お祝いでしょ!?」
「えっ!?」
「ほら、ヘンリー君結婚したじゃない? それのお祝いで用意したのね! さすがはアベル……親友への手土産を忘れないなんて……うんうん。そういう気遣いが出来る男の人って貴重よね……。そっか、それで真っ先にオラクルベリーに……。スロットでコインを増やしていたんだね……さすがだわ……」
――どうしてオラクルベリーに来たのか不思議だったのよね……この後ラインハットに行くつもりなのね!?
アベルって気遣いの出来るいい男ね……、と。
アベルが呆気に取られる中、アリアは独り勘違いでアベルを褒め称える。
「いやっ、違っ、それはアリ」
――ヘンリーに手土産なんかやんないけど!?
途中であっさり離脱し、さっさと結婚した旧親友になど手土産なんかやるものか。
アベルはアリアのために交換したものだと主張しようとしたのだが。
「アベルのそういうところ、素敵よ。ふふっ、自慢の彼氏ね♡」
「っっ!? あ、うん……ど、どうも……」
アリアに笑顔で褒められてしまい、アベルは何も言えなくなってしまった。
――っ、アリアーーっ! 僕は君のためにコレを用意したんだけど……!?
……アベルの気持ちは脆くも崩れ去り、綺麗にラッピングされた【キラーピアス】の入った箱を悲しい気持ちでチラ見し、それを【ふくろ】に仕舞った。
ここで「これは君に」なんて言ってしまえば、アリアが褒めてくれたことが水の泡になってしまう気がして一旦引っ込めることにしたのだ。
ラッピングなんてしてもらわなければ良かったと後悔したが、後悔先に立たずである。
初めて丁寧に包装してもらった体験に、必ずしも初めてが良いこととは限らないんだなとアベルは思った。
「私も何かプレゼントした方がいいのかなぁ……」
「要らないよ。ヘンリーはあの国の王の兄だよ? 何だって持ってるさ」
「そっか……、それもそうだね。お金持ちの欲しいものなんてわかんないし困ったな……」
アリアも何か祝いの品を贈りたいようだが、何を贈ればいいのかわからないようで、腕組みして考え込んでしまった。
こんな時カタログギフトがあれば好きな物を選んでもらえるのに……とアリアはアベルがわからない単語をブツブツ。
相手に喜ばれる贈り物をチョイスするのは中々骨が折れるのである。
そんな彼女の様子を見て、アベルが口を開いた。
「ヘンリーが欲しいのは……」
「ん……? 何がいいかな? アベルなら親友だし、何か思いつく?」
「……君の…………、…………いや、やっぱり何も要らないよ」
――ヘンリーが欲しいのは、記憶が戻った君から昔のように名前を呼んでもらうことなんだと思う……。
アベルは言いかけて、首を左右に振る。
「君の……何?(卵の黄身? ヘンリー君は卵好き?)」
――食べ物がいいのかな……?
アベルが言いかけて止めたため、アリアは首を傾げていた。
「…………ハハ……何でもない。すぐ手に入るものじゃないから今贈るのは無理かなって。手に入ったらコレだよって教えてあげるね」
アベルはアリアの思い出せていない記憶の一部が戻るのか戻らないのか わからず、彼女の負担にならないように伝えるのを止めたのだった。
「そっかぁ……。それが何なのか訊きたいところだけど……、手に入ったらプレゼントしに改めて行けばいいってことかな?」
「そうだね。そんなところ」
「ふふっ、じゃあアベル。その時が来たら教えてね!」
「ああ」
そうしてアベル達はモンスターじいさんの元へと向かった。
◇
モンスターじいさんの元へと着いたアベル達は、久しぶりに預けた仲魔達と顔を合わせ楽しいひと時を過ごした。
仲魔達は皆元気でやっており、アベルとアリアはモンスターじいさんに深く謝意を述べ、食事代など必要経費を払うと申し出たが、モンスターじいさんは仲魔達と過ごせることが何よりも嬉しいから必要ないとのこと(しかもお金には困っていないらしい)。
モンスターじいさんの経済状況は知らないが、彼の見た目は質素。だが実は大金持ちなのでは……とアベルとアリアは考えていた。
金持ちの道楽でなければ、無償で魔物達を預かるなんてことはしないだろう。
ポートセルミにもモンスターじいさんにそっくりの男が居たし、謎の多い人物だが、ありがたい存在であることに違いはない。
『これからもたくさんの魔物を送って来るんじゃぞ、待っておるからな!』
……と、見送られアベル達はモンスターじいさん宅(?)を後にした。
預けた仲魔達は皆変わらず元気でやっていたが、一部の魔物には変化があった。
「まさかキャシーがガンドフとくっつくとはね……(わからないもんだなぁ……)」
モンスターじいさん宅を後にして町を歩きながらアベルは腕組みをする。
「ふふっ、ガンドフって初めて会ったけど、もふもふだったね」
――お目目が大きくて可愛かったな……!
アリアが“初めまして”とガンドフに挨拶しに行くと、ガンドフは嬉しそうに近寄って来たのだが、キャシーが「ダァーサン!」と睨み付けたためガンドフは固まってしまい、アリアに近付くことが出来ず泣いていた。
キャシーには「アリア、またしても! アベルんといい、ダァサンといい……! アタシのダァサンにちょかい出さないでよネン! このモフモフはアタシのなんダカラッ!!」と怒られた。
『だ、ダァーサン……あ、うん、なんかごめんね。ガンドフ……ま、また来るね?』
アリアはガンドフの背に圧し掛かるキャシーに睨まれつつ、ガンドフに笑顔で手を振り、その場を後にしている。
ガンドフは三角座りをしたまま静かに涙を零していたが、キャシーが「ダァーサン♡」と慕って呼ぶと、キャシーの頭を撫でていたので満更でもないようだ。
お喋りなキャシーと無口なガンドフ。
案外いいカップルなのかもしれない。
「ああ、彼は神の塔で仲間になったんだ。神の塔は塔の真ん中に中庭がある造りなんだけど……三階だったか、四階だったかなぁ……ガンドフを連れてキャシー達と戦ったんだよ」
アベルはガンドフがどこで仲間になったかアリアに説明する。
「へ~」
「……その後仲間になったキャシーにガンドフは中庭に向けて放り投げられてね……」
「えぇっ!?!?(どゆこと!?)」
アリアが驚きの声を上げた。
「……あんなことされたのにガンドフはキャシーと……」
――
アベルは自分の命を奪おうとした者と恋仲になるとは思わず、男と女って不思議だなと思う。
「キャシーちゃんチカラ持ちだもんね……」
――ガンドフってドMなのかな……、もふもふなのに……。
アリアもアベルとは違う考えながら、男と女って不思議だなと思っていた。
アベルとアリアがそんな話をしている中、モンスターじいさんの元にいるガンドフは くしゃみをしたとかしないとか。
臨時収入&キャシーの恋愛の回でした。
キャシーちゃん、ガンドフ殺しかけといて恋仲になるとかw
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!