ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

カジノで遊んだ後はラインハットに行きましょう!

では本編どぞ。



青年期・前半【フリーダム・ラインハット】
第三百九十三話 ラインハット再訪


 

 

 

 

 

 明くる朝……。

 

 

 “ルーラ!”

 

 

 アベルの移動呪文を唱える声がオラクルベリー、宿屋の前で聞こえた。

 アベル達は【ルーラ】で漸くラインハットへと赴く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかヘンリーが先に結婚するとはね……」

 

 

 ラインハット城下町からラインハット城を臨み、アベルがボソッと呟いた。

 

 

「ん? 先にって?」

 

「…………僕とアリアが先にすると思ってたから……」

 

「っ! ……や、やだアベルったら……」

 

 

 ――それは無理だよアベル……。

 

 

 アベルの言葉に一瞬ドキッとして照れたアリアだったが、直ぐに哀しそうに目を伏せてしまう。

 

 

「っ…………ははっ、なんてねっ! 冗談だよ……」

 

 

 ――アリア何で哀しそうなの……? 僕と結婚するのは嫌なのか……?

 

 

 アリアの哀し気な瞳にアベルは明るく笑っておどけてみせた。

 そして ちょっぴり泣きそうになってしまいアリアに背を向ける。

 

 

「……アベル……?」

 

「っ……、せっかくだから ちょっと町の人に話でも聞いてみる?」

 

「え? あ、うん……?」

 

 

 アリアが不安そうな顔でアベルを見上げるが、アベルはさっさと行ってしまい、道行くマスク男に話し掛けていた。

 アリアもすぐに後を追う。

 

 

「ヘンリー様が帰って来て以来、この国はいいことだらけだ。ありがてえこったなあ!」

 

 

 そう話すマスク男の表情は読めずともその声は弾んでおり、ヘンリーが戻ってからラインハットが良くなっているのがわかる。

 ニセ太后を退けて以降ラインハットには来ていなかったが、以前来た時よりも町の空気が澄んでいる気がした。

 

 アベルとしては長年生活を共にした親友であり、旅の仲間が減ったことに淋しさと悔しさもあったが、ヘンリーが今 ラインハットという国のこれまでの悪政を善政に変え発展させているというのなら、国に残ると云った彼の言葉は正しかったといえる。

 

 この記憶はまだ降りて来てはいないが、きっと別世界の自分もヘンリーの選択は間違っていないと思っているはずだ。

 マスク男の言葉にアベルは親友が褒められているようで誇らしかった。

 

 

「あの人すっごい嬉しそうだったね。デール君も、ヘンリー君も頑張ってるんだね」

 

「そうだね」

 

 

 町の人の話も聞けたし、城に行こうとアベル達は歩き出す。

 ふと目に留まった立て看板に近付くとアリアが読み上げた。

 

 

「“ラインハット王国に栄光あれ! すべては国民のために!”だって。ふふっ。変わったね!」

 

「ああ」

 

 

 アリアの目が細められると、アベルもそれに倣う。

 その看板は以前ヘンリーが読み上げ苦々しい顔をした看板であったが、今は書き換えられたようだ。

 

 そうして城に向かっていると、にこにこと穏やかな笑みを湛えて散歩している老人が目に入った。

 

 

「ね、アベル、あの人にも話を訊いてみてもいい?」

 

「ん? ああ、じゃあ僕が話し掛けるね。こんにちは、お爺さん!」

 

 

 城に続く跳ね橋の近くに歩いていた老人にアベルは声を掛ける。

 

 

「やあ、旅のお方。わしに何のご用じゃな?」

 

「ヘンリー王子が十年振りに帰って来たとか……」

 

「そうじゃよ。ヘンリー王子はニセの太后をとっちめて、ラインハットを救って下さったんじゃ! そして最近ご結婚されたんじゃよ!」

 

 

 アベルが訊ねると老人がご機嫌な様子で教えてくれた。

 なので、アベルはもう一つ確かめたくて訊ねてみる。

 

 

「そうなんですね。ヘンリー王子のお相手の女性って……」

 

「ヘンリーさまの奥さまは本当にお優しい人じゃ! わしもああいう人と結婚したかったのう。もう遅いけど……」

 

 

 老人は興奮気味にヘンリーの相手について語るのだが、最後はしょぼんと肩を落としてしまった。

 相手は多分マリアだと思うのだが、結局誰なのかは確認出来ず……。

 

 

「あ……、えと……?」

 

 

 ついさっきまで上機嫌だったのに、えらくしょぼくれてしまった老人にアベルは何て声を掛けていいのかわからない。

 

 

「お前さんもそんな別嬪さんを連れて……」

 

 

 老人はアリアをチラッと見てからアベルを“ジトーーッ”っと睨み付けた。

 

 

「っ、し、失礼しました! アリアっ!」

 

「えっ、あっ、アベル!?」

 

 

 老人の嫉視にアベルはアリアの手を取り、走って城へと向かう。

 背後で「ずるい! わしも可愛い女子(おなご)と手を繋ぎたい!」という声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……アベル達は老人から逃げるように城へと続く跳ね橋を渡り切り、城の扉を前にする。

 

 

「はぁ……、ずるいって言われても……」

 

「フフフッ! おじいさん、独身だったのかな? それとも奥さんが怖い人だったり……? 握手くらいしてあげても良かったのに」

 

「…………させるわけないでしょ…………アリアは僕のなんだから…………そういうこと言うの止めてくれない?」

 

「っ!? ……あははっ…………ん、わかった」

 

 

 城の扉に手を掛けながらアベルが不愉快そうに言うと、アリアは ぽっと頬を染めて頷いた。

 

 

 

 

「ようこそ! ラインハットのお城に!」

 

 

 

 

 城の中へと入ると、穏やかな笑みを浮かべる兵士がアベル達の元へとやって来て迎え入れてくれる。

 以前の待遇と全く違う様子にアベルとアリアは顔を見合わせ微笑み合うと城内を歩き出した。

 

 

「ちょ、ちょっとアベル、すぐ行かないの?」

 

 

 アリアは通路途中にある階段を上ろうとするアベルを引き留める。

 

 

「え? 前に来た時に待機所の兵士に変な奴らが混ざってたから、今はどうかなってチェックしないと」

 

「チェックって……アベルがする必要ないでしょ……さっきの兵士さんも笑顔だったし、きっと大丈夫だよ……?」

 

「いや~、ヘンリーがちゃんとやってるか見極めてやらないと。アリアも気になるでしょ?」

 

 

 アベルはアリアの手を取り兵士の待機所へ行こうと誘う。

 そう、この階段を上がった先は兵士の待機所なのだ。

 

 

「…………ふふっ、しょうがないなぁ」

 

 

 ――片っ端から話を訊かないと気になっちゃうのかな……?

 

 

 ああ、これは主人公の職業病だなとアリアは目元を緩め、アベルに付き合うことにした。

 

 

 

 

 ……二階兵士の待機所にやって来ると、以前居た【さまようよろい】やお喋りなガイコツ、ガラの悪い山賊などの姿は見られず、邪気の無い人間の兵士達ばかりが控えていた。

 待機所にはテーブルが三台置かれているのだが、アベルは一人一人に声を掛けて行く。

 

 

「こんに……」

 

「やや! あなたがニセの太后さまをやっつけてくれた人ですね! お陰で この国も元通り。どうも ありがとうございました!」

 

 

 先ずは一番手前のテーブルに着く兵士に声を掛けようとすると、兵士が立ち上がりアベルに握手を求めて来た。

 

 

「あ、いえ……。あの、ここに居た 魔物達はどうなったんですか……?」

 

 

 アベルは求められるままに兵士の手を握りながら訊ねてみる。

 

 

「ああ、それならここに居る我々で排除致しました! ニセの太后さまが居なくなった途端、あいつら仲間割れを起こしましてね。あっという間に逃げ出していきましたよ。わっはっは!」

 

「すごーい! 兵士さん達って強いんですね!(あのガイコツ怖かったから居なくなって嬉しい……!)」

 

「あっ……、あなたは……?(何て美しい女性(ひと)なんだ……!)」

 

 

 アベルの後ろで話を聞いていたアリアが顔を出し嬉しそうに微笑むと、兵士の頬が ぽっと紅く染まった。

 兵士はアベルの手を握ったままアリアに見惚れ固まっている。

 その瞳にはハートマークが浮かんで、微動だにしない。

 

 

「っ! お、お話を聞かせて下さってありがとうございました!」

 

「え? アベルっ??」

 

 

 

 アベルは握手していた兵士の手をパッと放し、今度はアリアの手を引いてテーブルを離れ彼女を壁際へと追い込む。

 そうしてアベルは片手を繋いだまま、もう片方の前腕を壁に付けアリアを見下ろした。

 

 

「……アリア、僕の後ろで大人しくしてて くれない?」

 

「え? 私暴れてないよ……? 大人しくしてると思うけど……?」

 

 

 ――アベルっ、ドキドキしちゃうから 壁ドンしないで……! ていうか、近いってば……っ! やだ好いニオイがする……なんて肉体美なのっ……。

 

 

 突然頭上から降って来たアベルの声にアリアは内心ドキドキで顔を上げることが出来ず、目前の彼の身体に釘付けになってしまった。

 アベルからは陽の匂いがして、アリアの鼻を擽って来る。

 アリアはこの匂いが好きだ。

 

 ……アベルは知らないが、アベルの身体はアリアの超絶好みなのである。

 

 一部開けたデザインの服から覗く逞しい胸板を見ると、アリアは【ルラムーン草】を採りに行った夜が思い出されて頬が熱くなるのを感じた。

 

 

「そうだけどっ……」

 

 

 ――確かにアリアは大人しいけど、でも、駄目なんだよ。

 

 

 相手が君に夢中になっちゃうでしょーが……!

 

 

 町の外では魔物が。町中では人々が。

 形はどうであれ宿屋で二人きりにでもならない限り、どこに行っても邪魔は入るわけで。

 アリアが浮気をするとは思えないが、アベルはまた邪魔者が増えるのではと気が気ではない。

 

 

 ……ただの嫉妬からであった。

 

 

 格好悪い気がしてそれ以上は何も言えず唇を噛んで黙り込んだ。

 アベルの顔は今、嫉妬に眉根を寄せているが、そんなアベルの様子などアリアは俯いているため知りもしない。

 

 

 

 

(うわぁああ……、アベルの胸板もっと見たぃ……ってしっかりしてアリア()っ! これじゃアベルにも負けない変態だわっ……!)

 

 

 ……黙り込むアベルの一方で、アリアは煩悩をなんとか理性で抑え込み会話に集中する。

 

 

「ぅぅっ、……会話に入っちゃダメだった……?」

 

 

 目線は横に流したものの、アベルの匂いが鼻を擽って来るので、顔は恥ずかしくて上げられなかった。

 

 

「そんなことないけどっ……」

 

 

 アリアの声が悲しそうに聞こえ、アベルは(かぶり)を振った。

 

 

 ――アリア綺麗だから、あんまり他の人に見せたくないだけなんだ……。

 

 

 こんな時、昔のようにアリアの姿が見えなかったら、自分が独り占め出来たのに……とアベルの独占欲が強く出てしまう。

 

 (あまね)く人々がアリアに惚れるわけじゃないが、さっきの兵士はどうみてもアリアに一目惚れしているようだった。

 アリアは誰にでも愛想がいいから勘違いする輩も多い。

 本人は無自覚だからアベルが注意したところで解らないだろう。

 

 アベルは心配で堪らなかった。

 




ラインハットにて町行く人々の話を聞いたりなんだり、情報収集をしつつ……。

……アベルに教えてあげたい、アリアは押せば行ける(多分)。

今回投稿時に加筆したためかなり長めです、スミマセン。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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