ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

バッチバチですよ、バッチバチ。

では本編どぞー。



第三百九十五話 一触即発

 

 

 

 

 

「……さあ、急いでヘンリーに会いに行こうよ! 早く早く!」

 

 

 一階に下りたアベルは先程【ふくろ】を漁っても何も見つからなかったので早々に諦め、ヘンリー達の元へと急ぐことにしてアリアの手を再び取る。

 

 

「アベル……?(なに? さっきまで色んな人の話を聞いてから行こうって言ってたのに……)」

 

 

 アベルの態度の変化にアリアは首を傾げていた。

 

 

「ほ、ほら、ヘンリー達が待ってるかもしれないじゃないか!」

 

 

 ――デール王! アリアを【モモガキ】如きで懐柔しようったってそうはいかない……!!

 

 

 アリアに【モモガキ】を大量に持たせてデールに話なんかされたら、デールに(なび)いてしまうかもしれないじゃないか!!

 

 

 アリアの気持ちがそんなもので簡単に変わる はずがないと信じてはいるが、彼女は食べ物……特に甘いものに目がない。

 甘いものを食べる時のあの嬉しそうな顔を、自分以外の誰にも見せたくないアベルは先にデールに会ってしまえば防げると踏んだのだった。

 

 だが、アベルの目論見は大体いつも外れる。

 

 

「お待たせ」

 

 

 アベルが まごまごしている間に女性が一階に下りて来ていた。

 

 

「あっ、アリ」

 

「じゃあアリアさん、台所に行きましょうか!」

 

「はーい♪ アベル、私ちょっと台所に行って来るね!」

 

 

 アベルの声を絶妙なタイミングで遮り、女性がアリアに声を掛けると、彼女(アリア)は破顔して女性の後ろについて歩き出す。

 アベルも直ぐに後を追った。

 

 

「っ、じゃあ僕も台所に……」

 

 

 ――アリアを一人にさせられないよ……! 君を一人にしたら何をしでかすか……!!

 

 

 ……アベルは失礼である。

 アリアが心配で堪らないだけなのだが、ちょっと過保護過ぎるかもしれない。

 

 

 そんなアベルの言うことなどアリアが聞くはずもなく……。

 

 

「え? アベルはヘンリー君達の所に急ぐんでしょ? 私、後で合流するから先に行ってていいよ?」

 

「えっ、いや、それはっ」

 

「さっき 早く早くって言ってたよね……? 大丈夫! お土産貰ったらすぐ行くから!」

 

「いや、だから」

 

「あっ、私が迷うから心配? でも大丈夫だよ。このお城は何度も来てるから大体わかるし、わからなくなったら誰かに訊くから!」

 

「アリアっ!」

 

「モモガキ~♡」

 

 

 アベルが何度か止めてはみたが、アリアは手元の【モモガキ】に釘付けで聞いちゃいなかった。

 その彼女の顔が既に幸せそうなので、アベルはこれ以上言っても無駄だと諦める。

 

 

「っ…………ピエール、アリアについて行ってやって……。パペックも……」

 

「…………はい、了解しました」

 

「コキ、コキ、コキッ!」

 

 

 アベルがピエールとパペックに頼むと、二人は頷いてアリアにつく。

 

 

「……貰ったらすぐ来てよね?」

 

「うん! 後でね!」

 

 

 アベルは渋々ながら台所に向かうアリア達を見送ってから、一人淋しく王の間へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(なぜ僕は一人でここに来たんだろう……)

 

 

「ちょっと淋しい……、いつも(・・・)なら……」

 

 

 アベルは独り言を呟き、王の間へと続く階段を上る。

 いつも(・・・)なら仲魔と共に来た王の間。

 

 記憶が降りて来なくとも、その時が来れば ふと思い出し重なることもある。

 

 アリアが一緒だから違ったはずなのに……と思ったが、確かに違うっちゃ、違う。

 独りでここに来たことはない。

 

 

 ――独りじゃヘンリーに上手くお祝いが言える気がしない……!

 

 

(アリアぁ……早く来てよ……)

 

 

 アベルはアリアが早く来てくれるといいのにと願った。

 そんな思いをしながら階段を上がれば、玉座はもう目の前だ。

 

 玉座にはデールが座しており、傍には大臣が。

 二人は何やら話をしていたが、階段を上がって来るアベルに気が付くと一瞬明るい笑顔を浮かべる。

 ところがアベルの後ろに誰も居ないとわかると スッとその笑顔を引っ込めた。

 

 

(クッ! アリアが居なくて悪かったね……!)

 

 

 わかりやすい二人にアベルはムッとする。

 だがアベルは大人だ。

 

 大臣は歳が離れ過ぎているから どうでも良いが、アリア狙いの歳の近いデールに大人の余裕を見せねばと、アベルは口角を上げ挨拶することにした。

 

 

「……こんにちはデール王」

 

「やや! あなたはっ! 兄から あなたのことを色々と聞きました。そして せめて恩返しにと部下達に伝説の勇者のことを調べさせていたのです。かつて勇者の使った盾がサラボナという町にあるそうです」

 

 

 アベルが声を掛けるとデールはさも今 気が付きましたよ、と言わんばかりに落ち着いた声で、アベルが欲しかった【伝説の勇者】についての情報を教えてくれる。

 そんなデールは以前会った時よりも大人びている気がした。

 

 

「サラボナ……?」

 

 

 ――聞いたことがある気がするな……、……どこでだっけ……?

 

 

 アベルは【サラボナ】について聞いたことがある気がして黙考してみるが、すぐには思い出せなかった。

 

 大方、別世界での出来事なのだろう。

 ならば その内思い出すはず……と思ったが、どうにもその町の名前が気になってしょうがない。

 

 

(なぜだろう……すごく気になるし、早く思い出したい。)

 

 

 少しでも早く思い出したいと心が急いている気がして首を捻ってみるが、なぜそう思うのかはわからなかった。

 

 

「サラボナは西の国、ルラフェンの南と聞きました。しかし旅立つ前に兄に会ってやってください。兄の部屋はこの上です」

 

 

 アベルが【サラボナ】について考えているとデールが上の階を指差した。

 

 

(そうだ、僕はヘンリーのお祝いに来たんだった。)

 

 

「あ、じゃあ……」

 

 

 アベルは早速上の階へと行こうとするが、デールが何か訊きたそうにアベルをじっと見ている。

 

 

「……何ですか? 何かお訊きになりたいことが?(ははーん、アリアのことが訊きたいんだな……?)」

 

 

 デールの様子にピンと来たアベルは含み笑みを浮かべて逆に訊ねてやった。

 

 

「アリアさんは……どうされたんですか……? まさかお別れしたとか……? っ、どこでお別れになったんですか……!? 彼女は今どこに……あなたが幸せに出来ないなら、ボクが彼女を迎えに行きます……!!(アリアさんを妃に向かえラインハットに更なる繁栄を……!)」

 

 

 アベルに水を向けられたデールは勝手にアベルとアリアが別れたものと勘違いし、玉座から立ち上がる。

 そもそもラインハットを出た時、二人は付き合っていなかった訳だが、デールは以前から付き合っていたと勘違いしているようだ。

 

 

「ちょ、何言って……アリアは僕とラブラブですけどっ!?!? 後から来ますよ……!」

 

「っ…………そう、ですか…………」

 

 

 アベルの返答にデールは玉座に腰を下ろし、しょぼくれて肩を落とした。

 

 アリア関係において今、一番排除したいのは他でもないデールである。

 ヘンリーと違って他に相手も居なさそうで、アベル(自分)という彼氏のいるアリアに岡惚れしている。

 王という絶対的権力者の地位に、若さ、そして【モモガキ】なんていうアリアの好物(チートアイテム)で彼女の関心を得ようとする狡猾さ。

 

 

(……早めに潰すしかない。)

 

 

 アベルはデールにアリアを諦めさせるために ついでに一言言っておこうと口を開く。

 

 

「…………デール王には悪いけど、僕が彼女を手放すことはないよ。あの子は僕にぞっこんだからね。彼女は諦めて別の女性を捜した方がいい。デール王に似合う素敵な女性がきっと居ますよ」

 

 

 その一言にデールが悔しそうに歯噛みすると、アベルは優し気に目を細めて止めを刺した。

 

 

 ――デール王はちょっと脅せば怯むはず。

 

 

 そう考えていたアベルだったが見通しが甘かった。

 

 

「くっ……。…………そう、で…………ですが、後でいらっしゃるんですよね……?」

 

「来るけど……」

 

「……なら良かった。彼女のために美味しいモモガキをご用意しているんですよ。お土産に持って行っていただければと思います」

 

 

 先程まで悔しそうな顔をしていたデールが、アリアが来るとわかった途端穏やかな顔で微笑む。

 デールのその姿は悠然としていた。

 

 

「っ……、そう。それはどうも」

 

 

 ――この間のように怯まない……か、デール王変わったな……。

 

 

 ラインハットを出てまだそんなに経っていない。

 短期間で人はこうも変わるものなのか……いや、王としての自覚が芽生えたということか。

 

 先程待機所で話をした兵士もデールは立派になったと云っていた。お世辞ではなかったようだ。

 

 

(デール王が立派になってしまったらアリアは……デール王を……? いやっ、僕は彼女を信じている……!)

 

 

 アベルはにこにこと余裕の笑みを浮かべるデールに焦りを感じる。

 さっきまでアベルが優勢だったはずなのだが、今はデールが押しているではないか。

 

 最後はアリア頼みであるが、アベルはついじっとデールを強く見つめてしまった。

 デールも黙り込みアベルの意味有り気げな視線を受け止める。

 

 

「「………………………………」」

 

 

 アベルとデールは表面上 穏やかに見合っているが、内面ではバッチバチと牽制し合っていた。

 




デールには金と権力、そして若さが。
アベルには顔と逞しい肉体、そしてループの記憶が。

果たしてアラサーアリアはどちらを選ぶのか……!
現実世界ならどっちを選ぶんでしょうねw(婚活女子なら多分デールを選ぶw)

ただアベルは後に金も権力も手に入れるんよね……。これってアレ?
育てた男が成功するパターン……?

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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