思いがけず出会っちゃいましたね!
では、本編どぞ。
「っ、ヨシュアさん……!」
――本当に!? こんな……こんなことって……!!
アベルの記憶の中では、ここにヨシュアが存在したことは一度もない。
どれ程思い出そうとしてもヨシュアがここに居たという事実は思い出せなかった。
……つまり、これは初めての体験なのだ。
ずっとずっとアベルが待ち望んでいた未知の出来事。
今までに一度もなかったこの場所でのヨシュアとの再会に、アベルの目頭が熱くなる。
「っ……(アリア……)」
アベルは急にアリアに会いたくなって、胸が苦しくなった。
――アリア……! 今すぐ君に会いたいよ……!
この再会は小さな変化かもしれない。
だが もしかしたら、未来が変わっているかもしれないのだ。
アベルはアリアに会って、
「ああ、憶えてくれていたのか……! 私も何とかあそこから脱することが出来た……。これも
「っ、ヨシュアさんっ、よくご無事で……!!」
アベルは感極まり、思わずヨシュアに抱き着いた。
「っとと……はははっ、アベルさま。中でヘンリーさまとマリアが待っております。どうぞ中へ」
ヨシュアに背中を軽く叩かれアベルは彼から離れると、ちょっぴり潤んだ目蓋を拭う。
そうして部屋へと入ろうとしたその時、
「……アベルさま。マリアに困りごとがあるようなので、ついでに訊いて貰えるとありがたいのですが……」
「え? あ、はい、僕で良ければ……(困りごと……? 何だ……?)」
ヨシュアに突然告げられ、アベルは目を瞬かせた。
――……こんなこと、一度もなかったよ……ね?
◇
「こいつは驚いた! アベルじゃないかっ! ずいぶんお前のことを捜したんだぜっ」
アベルがヘンリー達の部屋に一歩入ると、ソファーに腰掛けていたヘンリーが立ち上がり駆け寄って来る。
ヘンリーが座っていたソファーにはマリアが腰掛けていた。
「僕を? 何で?」
「うん、その……。結婚式に来てもらおうって思ってな。実はオレ結婚したんだよ!」
アベルが首を傾げるとマリアも立ち上がって駆け寄って来る。
「アベルさま、お久しぶりでございます」
マリアがヘンリーの隣に立ち挨拶すると、ヘンリーは彼女の腰を自然な動作で引き寄せ照れ臭そうに笑った。
「わははは! と、まあ そういうわけなんだ。もしかするとマリアはお前の方を好きだったのかも知れないけど」
「まあ あなたったら……」
ヘンリーの自虐の言葉にマリアは彼を上目遣いに見つめ微笑む。
ヘンリーは「オレのマリアめっちゃカワイイ……」とマリアの笑顔にデレデレと微笑み返した。
二人は寄り添ったまま互いに見つめ合い甘い空気を辺りに撒き散らしている。
(なに……? ヘンリーの顔がキモイ。マリアさんの腰を引き寄せて、見つめ合って二人ではにかんで……。何だ、異様に甘いこの空気は……!?)
――くそっ! 僕だってアリアとラブラブなのに負けた気がするのは なぜだ……!!
いつの間にか自分とアリアよりもラブラブな二人にアベルは敗北感を覚える。
アベルもアリアの腰を引き寄せたことは何度かあるが、彼女はいつもすぐに離れてしまっていたのだ。
アベルとアリアの関係はラブラブっちゃラブラブだが、ヘンリーとマリア程の親密さには追い付いていない気がする。
そんな時ふと、部屋の奥にある大きなベッドが目に入る。
二人が楽々寝られる大きなベッドには枕が二つ……。
そして二人は夫婦だ。
(……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………、そういうことかぁぁああああっっっ!!)
……アベルはすべてを察した。
(勝てる気がしない……! 僕とアリアの方が絶対進んでいると思っていたのに……!!)
――結婚するとそうなの!? ……こうなったらアリアとすぐにでも結婚を……!
……結婚するには何が必要なんだっけ……?
結婚は勝ち負けではないと自分で云っていたアベルだったが、早急にアリアに求婚せねばと気持ちだけが先走ってしまう。
「アベルさまには私などより もっと相応しい女性が きっと見つかりますわ」
“ほら、すぐ傍に……”
マリアは言おうとしたが、一緒だとばかり思っていたアリアの姿がないことにたった今気付き、黙り込んだ。
(ま、まさかアリアさん逃げたのですか……!?)
――アベルさまのことをあんなに慕っていらしたのにどうして……。
マリアはラインハットを救い、宴が開かれた日にアリアの気持ちを聞き出しており知っている。
ところがアリアはアベルに伝えず逃げたものだと思ったのだろう、目の前の独りでやって来た彼が不憫に思えてそれ以上何も言えなかった。
マリアが察して黙ったなどとは知らず……
「はは……(ずっとくっついてるなこの二人……)」
アベルからはヘンリーとマリアの いちゃつき振りに乾いた笑いしか出ない。
マリアはアリアが居ないことに気付くまでヘンリーを見つめながら話していたので、アベルは勘違いしてしまったのだ。
そういえば、待機所の兵士がヘンリーとマリアの仲が良すぎて“独り者には目の毒だ”と云っていた。
――っ、本当だよ!!
アベルはなぜかイラっとして、目を細めてマリアを見つめているヘンリーに視線を移す。
「とにかくアベルに会えて本当に良かった! 結婚式には呼べなかったけど せめて記念品を持って行ってくれよ。昔のオレの部屋憶えてるだろ? あそこの宝箱に入れてあるからな」
ヘンリーはニコニコと上機嫌で告げると、記念品を勝手に持って行けと云う。
それだけ云って、マリアと手を繋いでまた二人は互いに笑顔で見つめ合ってしまった。
(僕はお邪魔虫ですか、そうですか。せっかく来てやったというのに、勝手に持って行けとは……! さすがはヘンリー! 途中であっさり旅を降りた身勝手な奴だ……!)
アベルはヘンリーとマリアのイチャイチャを まざまざと見せつけられ、頬を膨らませる。
――一刻も早くアリアに会いたい……! この何とも言えない悔しい気持ちを癒してくれるのは僕の天使だけだ……アリア、早く来てっ!
アベルは先程ヨシュアに頼まれたことなど すっかり忘れて踵を返した。
「じゃあ……貰って帰るよ……あ、結婚おめでとう……(アリア遅いな……)」
「おう、ありがとな!」
――……何でアベルの奴、アリアを連れていないんだ……!? まさか別れ……っ!?
アベルが疲れたような顔をして部屋を出て行こうとするので(実際はヘンリーとマリアに辟易していただけなのだが)、ヘンリーはアリアのことが気になっていたが、マリア同様訊けなかった。
夫婦二人揃ってアリアのことには触れずにアベルに笑顔で接する。
“あ、察し。”
……というやつである。
(せっかく先に結婚したオレの言うことを聞いてもらおうと思ってたのに、これじゃ何も言えないじゃないか……、アベル……元気出せよ……!)
ヘンリーはそっとアベルの肩に手を置いて哀憐の情を向けた。
「……ヘンリー?」
――何? なんか気持ち悪い顔してるな……。
アベルの肩に手を置くヘンリーの眉間が歪んで悲しそうである。
アベルは意味が解らず目を瞬かせた。
「あ、いや……、元気出せよ?」
「え? 元気だけど?」
「そ、そうか……。うん! 元気が一番だよなっ!!」
ぽかんとした顔で返事するアベルに ヘンリーは作り笑いを浮かべて「ははは」と棒読みで口角を上げる。
ちっとも笑っているようには見えず、むしろ悲し気でアベルにはわけがわからない。
「ん? あ、ああ……。ところで、記念品って何か訊いてもいいかい?」
ヘンリーの妙な態度が気になりアベルの頭には疑問符ばかりが浮かんでいた。
――なんだ? ヘンリーの奴、急に悲しそうな顔して……。
疑問に思いつつ、アベルは記念品についてヘンリーに訊ねてみる。
するとヘンリーの代わりにマリアが答えてくれた。
「ヘンリーさまとの結婚式ではラインハットのオルゴール職人さんが記念品を作って下さいましたの。でもヘンリーさまったら、なぜ昔のお部屋の宝箱に入れたりなさったのかしら?」
「へえ、オルゴールかぁ……(アリア喜ぶかなぁ……)」
「へへっ、いいからさっさと取りに行って来いよ」
アリアが踊るのに使えるといいなぁ……などとアベルが考えていると、ヘンリーがアベルの背を押し、部屋の扉へと追いやる。
「……そんなすぐに追い出そうとしなくてもよくない……?(傷つくんだけど……)」
「はは……そういうわけじゃないさ!」
「……じゃあね、ヘンリー」
「おう」
アベルはヘンリーにあっさり部屋を追い出されてしまった。
ここに来て未来改変が一つ成就です……! やっと。
小さな歯車から少しずつ別の運命の輪が回り始めましたね~。
そして、察するヘンリー夫妻。
ヘンリー・マリア「「アリアさん居ないじゃん!?」」
ちな、アベルは相変わらずちょいちょいヘンリーに辛辣ですw
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!