ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

太后に一言言わせて!

では、本編どぞっ!




第三百九十九話 太后に一言物申す

 

 

 

 

 

 ……四階へとやって来たアリア達は、護衛の兵士とヨシュアに扉を開けてもらい部屋の中へ。

 

 

「にしてもアイツ、平気そうな顔してたけどアリアにぞっこんだったからな……、失恋の痛手は相当時間を置かないと癒えないんじゃないかな……(って、新しい恋でもすりゃ、オレみたいになるかな?)」

 

「そうですわね……」

 

 

 ヘンリー夫妻はまだ勝手にアベルの失恋について語り合っていた。

 

 

「失礼しまーす。お二人とも おやつの時間ですよ~! 今日は焼き立てモモガキパイだって! ちょっと冷めちゃったけど冷めても美味しいから大丈夫っ♪」

 

「あ、ああ……ご苦労さま。ソファーの後ろにテーブルがあるからそこに置いて………………………………」

 

「ありがとうございま………………………………」

 

 

 アリアは すーっとヘンリー夫妻の前を通り過ぎ、ソファーの後ろにあった小さなテーブル上に【ぎんのトレイ】を置いた。

 

 

「「っ!!??」」

 

 

 ヘンリーとマリアが今横切ったのがアリアだと気付き目玉をひん剥く。

 

 

「アリア!?」「アリアさんっ!!」

 

 

 思わずヘンリーは昔のようにアリアを呼び捨ててしまった。

 

 

「やっぱりお相手はマリアさんだったのね♡ ご結婚おめでとうございます! ヘンリー君もおめでとうっ!」

 

 

 アリアは菓子をソファー裏に置いて戻って来ると、手を組み祈りのポーズで二人に満面の笑みを向ける。

 

 

「っ、あ、ああ……ってアベルは!? アイツしつ……れん……(してないのか……!?)」

 

 

 ――って、ちょっと待て。二人はまさか、まだ友達のままなのか……!?

 

 

 ヘンリーがまたも察してしまい、途中で押し黙った。

 

 

「あ、さっき下で会ったよ? 記念品を取って来るって言ってた。アベルが何か失礼なことでも……? 後で叱っておくね」

 

「あ、いや……(違う、違うよアリア……。あんた相変わらずアベルを弟扱いしてるのか……?)」

 

 

 アリアの言い方にヘンリーは二人の関係が今どうなっているのか訊きたかったが、男であるヘンリーには女の子のアリアに訊き出すことなんて出来なかった。

 

 こんな時は女同士で話してもらうのが一番だ。

 ヘンリーはちらっとマリアに目配せする。

 

 

 ――頼む、マリア! アリアから二人の関係がどうなっているのか訊いてくれっ……!

 

 

 マリアはヘンリーからのアイコンタクトを感じ取り、黙ったまま頷いてから口を開いた。

 

 

「アリアさん……、あなた……! ちょ、ちょっとこちらへ……!」

 

「ん? あ、はい……? え? え?」

 

 

 マリアはアリアの腕をガシッと掴むと部屋の奥、バスルームの方まで引っ張って行く。

 その間に。

 

 

「久しぶりだな、ピエール。元気そうじゃないか」

 

「ヘンリー殿も息災のようで何よりです」

 

「おう、まあね。そいつは新しい仲間かい?」

 

「ええ、パペック殿は……――」

 

 

 ピエールとパペックは部屋に残され、ヘンリーと話をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……その頃、アベルはかつてのヘンリーの部屋で太后と顔を合せていた。

 アベルが部屋に入って来るなり太后は穏やかな笑顔で彼を出迎える。

 

 

「おお! そなたはっ! あの時は本当に世話になりもうした。なぜ あんな事になったのか今となっては わらわにもわからぬが……。魔物らがこの世界を蝕もうとしているのかも知れんの」

 

 

 太后の顔は以前別れた時のように憑き物が落ちたような顔をしていたが、アベルは彼女の話を聞き閉口してしまった。

 

 

(……わらわにもわからぬ……?? なぜ……??)

 

 

 アベルは目の前の太后を前に眉根を寄せる。

 

 無責任に“なぜ あんな事になったのか今となってはわからぬ”と言われてもアベルがヘンリーの立場なら簡単に許せそうにない。

 いや、自分の立場でも許せそうにない。

 

 

 ……なぜ全てを魔物の所為に出来るのだろうか?

 

 

 アベルの父パパスの死の一端には太后が絡んでいるというのに。そもそもアベルは太后から直接謝罪を受けていない。

 確かに魔物が悪さをしている部分はあった。それはアベルも解っているし、認めている。

 だが、すべて魔物の所為にするのは違うのではないか。

 

 

 自己の責任について知らんぷりを決め込む太后にアベルは腹が立ってしまい、一言物申したくて口を開いた。

 

 

「……魔物がすべて悪いんじゃない……幼い頃のヘンリーは愛情に飢えた ただの子どもだったんだ……。デール王を即位させたいがためにやったことだとあなたは言っていたが、……果たしてそこまでする必要があったのか……?」

 

 

 ――この女性(ひと)を責めた所で過去はどうにもならないけど、せめて……。

 

 

 アベルは昂ぶりそうになる神経を落ち着かせるように、ゆっくりと声を震わせながら太后に問う。

 怒鳴りつけるのは簡単だが、それで怯えさせては彼女に気付かせることが出来ない。

 

 

「っ……それは……!」

 

 

 アベルの言葉に太后がハッとして、目を見開きアベルを見上げた。

 

 

「……もっと別のやり方もあったように僕は思う。あなたは僕の親友を傷付けたし、間接的にだけど僕の父を死に追いやった。その罪は……とてつもなく………………重い」

 

 

 ――父さんは毎回、この太后に殺されているようなものだ……。

 

 

 一番悪いのは魔族のゲマ。

 そんなことはアベルにもわかっている。

 

 

 だがアベルは何度もパパスの死を見せられているのだ。その一端に太后が絡んでいるのだから、太后がいくら反省しているとしても許せる訳がない。

 

 これは憎しみなのだろうか。

 ゲマには及ばないが、アベルは太后が憎いのかもしれない。

 

 魔物に唆された部分も多分にあるのだろう。

 だからと言って今は昇華できそうもない。

 

 

 ――だからと言って……反省しているこの女性(ひと)を殺したって気分が晴れるわけでもないし、父さんがそれを喜ぶはずがない……。

 

 

 遣る方ない想いにアベルは拳を強く握り締めた。

 

 

「…………父……? そなた……パパス殿の……?」

 

 

 アベルの静かな怒りに触れた太后は、アベルが誰であるか気付くと崩れ落ち、床に膝をつく。

 アベルは無言で太后を見下ろしていた。

 

 

「そ、そうか……そなたはパパス殿の……!! っ……わ、わらわは何ということを……!!」

 

 

 太后は両手で顔を覆い、身体を震わせる。

 

 あの宴の日は牢から漸く解放され、息子デールとの再会、義理の息子ヘンリーとの和解、そしてラインハットの行く末だけが気になっていてアベルのことなど考えもしていなかった。

 

 宴の最中の太后は、ただ穏やかにデール達がはしゃぐ姿を眺めていただけで、アベルと話もしていないし、アベルも太后には話し掛けようとはしていなかったので、彼がパパスの息子だということなど気付きもしなかったのだ。

 

 

「……………………僕からのお願いです。もう二度とヘンリーを傷付けないで欲しい」

 

 

 アベルは自分の憎しみをぶつけることはせず、跪く太后を無表情で見下ろし親友(ヘンリー)の幸せだけを(こいねが)う。

 

 

「ああ、ああ……もちろんじゃ! …………っ、そなたにも謝らねば……。魔が差したといえばそれまでだが、すべては浅はかな わらわが招いたこと…………あい すまなかった……この通りじゃ…………うっ、うっ……わらわがもっとしっかりしておれば…………」

 

 

 太后は崩れた膝を正し、端座すると頭を深々と下げ泣き崩れた。

 アベルはそれを見ても何とも思わなかった。

 

 

 ――今までこんな風に謝ってもらったことはないけど……、謝ってもらってもすっきりしないもんだな……。

 

 

 太后のしたことは謝って許されるようなことではない。

 

 

 “許す……”

 

 

 ……という気持ちは今のアベルには持てそうになかったが、彼女に自分の想っていることを伝えられたことは良かった気がした。

 

 別世界の自分なら、太后と話などしようとも思わなかっただろう。

 軽く挨拶して終わっていたように思う。

 

 アベルは気の良い男だが聖人ではない。何もかも許せるようになるかは時が経たないとわからない。

 

 

「……どうぞお元気で」

 

「うっ、うっ…………」

 

 

 アベルは蹲り嗚咽する太后をそのままに、隣の部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(……はぁ、何だってこんな部屋に結婚式の記念品なんて……)

 

 

 太后との話を終えて、少々憂鬱な気分でアベルは【子分のしるし】が入っ……ていなかった宝箱へと近づくと、しゃがんだ。

 

 宝箱は少々くたびれていて、時を感じさせる。

 

 

 アベルは宝箱を調べた!

 しかし宝箱は空っぽだった……

 

 しかし宝箱の底になにやら文字が刻んである……。

 アベルはその文字を読んだ。

 

 

「……なになに……?」

 

 

 

 アベル。お前に直接話すのは照れ臭いから ここに書き残しておく。お前の親父さんのことは今でも1日だって忘れたことはない。

 

 あのドレイの日々にオレが生き残れたのは いつかお前に借りを返さなくてはと……そのために頑張れたからだと思っている。

 

 伝説の勇者を捜すというお前の目的はオレの力などとても役に立ちそうにないものだが……、この国を守り 人々を見守ってゆくことがやがてお前の助けになるんじゃないかと思う。

 

 アベル、お前はいつまでもオレの子分……じゃなかった友達だぜ。

 

 ヘンリー

 

 

 

「……………………これ、彫ったのか……。すごいなヘンリー……!(よくこんな細かい字をたくさん……!)」

 

 

 読み終えたアベルは宝箱の底にびっしりと彫られた文字に感心する。

 

 

「……ハハッ、こっちだって照れ臭いって」

 

 

 ――ヘンリー……。

 

 

 ヘンリーの想いを知り、アベルは胸が温かくなるのを感じた。

 

 アベルの父パパスが死んだのはヘンリーの所為ではない。だが、ヘンリーはずっと気に病んでいたのだ。

 奴隷の間、アベルを叱咤激励し支えてくれた。

 ヘンリーが居なければ、アベルは文字も書けなかったし、生きようともしなかっただろう。

 借りを返すなどとんでもない、ヘンリーにはそれ以上の借りをアベルは貰っている。

 

 別れがあまりに あっさりしていたから薄情なんて思っていたが、違ったのだ。

 

 

「…………っ、なんだよ……、何も入っていないじゃないか……!」

 

 

 アベルは空っぽの宝箱を閉じて立ち上がる。

 その瞳には涙が滲み、唇は弧を描いていた。

 




物申したかったのはそうです、私ですw

太后……その後隠居生活へと入り行方不明になるっていう……www
どこ行ったw

アベルとヘンリーの友情っていいですよねぇ……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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