新婚さんのヘンリー君にお悩みが……!
では、本編どぞ。
「っ、ヘンリー君っ、私達別にイチャついてなんて……っ!」
「アベルっ! お前はいいよなっ!」
アリアが弁解しようとするも、ヘンリーはそれを遮り なぜかアベルを睨み付ける。
「え? 僕??(何で……?)」
「誰気兼ねなく、どこでもアリアとイチャつけてさ!!」
ヘンリーのやさぐれたような態度にアベルは首を傾げた。
アリアもどうしたんだろうと、目を瞬かせている。
「…………? ヘンリー……、君、マリアさんと結婚して幸せなんだよね……?」
――僕が独りで来た時、ヘンリーとマリアさん いちゃいちゃしてなかった?
アベルは散々見せつけといて今更何なんだと思ったのだが、ヘンリーの様子がどうもおかしい。
「ああ、幸せだよ!? けど……だな……」
ヘンリーの歯切れが悪い、何か悩みでもあるのだろうか。
「何か…………、あったんだ……ね?」
アベルは目を落す親友の悩みを訊いてやることにした。
「っ、聞いてくれるか……? あ、アリアさんも良かったら聞いてくれ。実はさ……」
ヘンリーはアベルとアリアを見上げ ぽつりぽつりと語り出した。
アベルの思っていた通り、やはりヘンリーは悩みを抱えていたようで、その悩みというのは他でもないマリアとのことだった。
先程ヘンリーとマリアがイチャイチャしているのを見せつけられていたアベルは最初は何だと思って聞いていたのだが、どうやら悩みの種はヨシュアにあるらしい。
ヨシュアはヘンリーとマリアが結婚した後でかつてのアベル達と同じく修道院に流れ着き、しばらく起き上がることも出来ずに静養していた。
そんな中マリアが修道院に顔を出した際に兄妹の再会を果たし、なんとヨシュアは全快、どころか超回復してしまう。
マリアがラインハットに戻る時には自分もついて行くと云って、マリアを守りながらラインハットにやって来たらしい。
ヨシュアの強さはマリアを迎えに来たラインハットの兵士達をも凌駕する程だったようだ。
ヘンリーが気を遣いヨシュアに家を与えると伝えたのだが、ヨシュアは固辞し、ヘンリーとマリアの護衛を買って出ていた。
二人の結婚については一応喜んではいたようだが、内心快くは想っていなかったのだろう、昼間はともかく、夜になり夫婦の時間……となると、先程のように咳払いをしたり、マリアを呼び出したりと何かと邪魔をして来るということだった。
ヘンリーもマリアの兄だから邪見にすることも出来ず、マリアも兄だからと強く出られず、はっきり告げてはいないが、出来ればもっと二人でゆっくり過ごしたい……というのが二人の総意らしい。
まさかヨシュアとの再会がヘンリーの結婚後に影響を与えるとは……。
「……そっか……、なんか…………、ごめんね」
「ん? 何でお前が謝るんだ?」
「……はは……」
ヘンリーが首を傾げるとアベルは気まずくて頬を掻いた。
「……そっかぁ、新婚さんだもの、もっと二人きりで居たいよね……。ねえ、アベル。何かいい方法無いかな?」
「……うーん……」
アリアが同情して腕組みをすると、アベルも同じ仕草で考え込む。
「はは……、聞いてくれるだけでいいんだ。お義兄さんだって再会した妹が既に結婚していただなんて驚いただろうしな。マリアとお義兄さんは子供の頃から二人で暮らしてきたって言ってたし……強い絆で結ばれているからオレとの結婚を理解してもらうまで時間が掛かりそうだ」
「ヘンリー君……」
――義家族問題か……、ヘンリー君は王族なのにそこは関係無いんだね……マリアさんのお兄さんはシスコンってことかな……?
落ち込むヘンリーの様子に“頑張って……!”とアリアは胸の前で両手拳を握った。
心の中でヘンリーにエールを送るアリアの隣でアベルが口を開く。
「……何か彼に命令することは出来ないのかい? ほら、警護の場所を異動してもらうとか」
「命令? あー……、お義兄さんに関してはラインハットで雇用してるっていうより、マリア個人付き扱いでさ。他の兵士達とは扱いが異なるんだよ」
「へー……、じゃあ彼はずっとそこで……?」
「そう……、もう一週間になるかな……」
ヨシュアに配置換えをしてもらえばどうかと思ったアベルだったが、どうやらそう簡単なことではないようで、ヘンリーは遠い目をした。
「ヘンリー……」
「常にアリアと二人きりでイチャイチャ出来るお前が羨ましいよ」
ヘンリーはアベルとアリアを見上げて「はは……」と憂いの顔で笑う。
「……はは、そうかな……(実際は君が思う程ではないと思うけどね……)」
アベルが隣のアリアを見下ろし乾いた笑いを浮かべる。
アリアと堂々とイチャつけるのは町中くらいのもの(しかも二人きりになった時くらい)で、普段はキャンプ中だと仲魔達のこともあるし、命懸けの戦いに忙しいため それどころではないのだ。
「っ……戦いばっかりで、そんなに いちゃついてませんけどっ!?」
ヘンリーの話にアリアは頬を真っ赤にして否定していた。
「だよね。僕全然足りないし」
「っ!? ……っ、またっ! っ、すぐそういうこと言うぅ。……そういうのダメなんだからっ」
アベルの一言にアリアは自分に注がれる視線から逃れるように両手で顔を隠す。
「…………フフッ(照れちゃって可愛い……)」
アリアの照れる様子にアベルは目を細めていた。
「…………アハハッ、ごちそうさま。アベルとアリアが幸せそうで良かったよ。…………あ、そういやアベル」
「……ん?」
「修道院には行ったのかい?」
「修道院? いや……まだだけど?」
ヘンリーに問われ、そういえば修道院は【ルーラ】しようとした時思い浮かばなかったなと不思議に思う。
「そっか。マリアを迎えに行った時、マザーが二人のことを気にして何か連絡は無いかって訊かれたよ。アベルお前 瞬間移動が出来るんだろ? だったら ちょっと顔を見せに行ってやれよ」
「……修道院か……」
海辺の修道院は大神殿から逃げ出し命を救われ、アリアと再会した場所。
アリアと修道院を出る時、マザーに堂々と彼女を貰い受けると宣言し、連れ出した。
マザーはアリアを本当の娘のように接していたから、きっと心配しているのだろう。
――アリアは僕が引き受けるって伝えてあるから、もう引き留められることはないだろうけど、アリアはもしかしたら行きたくないかな……?
ちらっとアリアの様子を窺うと、彼女も気になったのだろう、目線を床に落としていた。
「マザーが……(元気にしてるかな……)」
「……行きたい?」
「あ……、ん。戻るつもりはないけど……ちょっと顔は見たいかも……。でも旅の途中だし……」
アベルが訊ねるとアリアは素直に頷くが、遠慮する。
「じゃあ行こうか」
「え……いいの?」
「うん、いいよ。ちょっと早過ぎる気もするけど……里帰りだね」
「里帰り……あ、そっか。そうだね。私達マザーに……(結婚するって言っちゃったんだもんね……)」
――アベルと結婚なんて出来っこないのに……。
あんな嘘言わなきゃ良かったな……。
アリアの心に今更ながら嘘を吐いた罪悪感が過った。
いつか嘘がバレた時、自分の帰る場所を失くすようなことを言ってしまったことに多少の後悔はしたが、過去は変えられない。
もう戻ることは無いと思って出たのに、マザーが気にしていると聞いただけで顔を見せに行きたいと思ってしまったアリアだった。
「うん、またフリしないとだね? それとも本当にしちゃうかい? ……なーんて」
アリアの気持ちを知ってか知らずか、アベルは優しい瞳で彼女の頭をそっと撫でる。
「っっ!? フリでっ!!」
「…………そっか(残念)」
アリアが紅い頬と目を丸くして拒否すると、アベルは苦笑いを浮かべたのだった。
――そんな拒否しなくてもいいのに……僕のこと好きな癖にさ……。
結婚はまだ遠そうだなぁ……と、アベルは頬を染めるアリアを見下ろし彼女の頭を撫で続けた。
「羨ましいねぇ……。あ~……、それとなくお義兄さんに席を外してもらう 何か良い方法はないもんかな~……」
アベルとアリアを眺めながらヘンリーは顎に手を当てつまらなそうに呟く。
「うーん……。あ、そういえばマリアさんが何か困っているってヨシュアさんに聞いたんだけど……?」
「ん? マリアが困ってる……? 何だろう……オレは知らないぞ……? マリア何かあったんかな……」
ふとアベルがヨシュアに頼まれていたマリアの困りごとを思い出し口にする。
と、ヘンリーが腕組みして眉を寄せた。
――困りごとがあるならオレに相談してくれればいいのに……。
「ヘンリー、マリアさんが戻って来たら訊いてみればいいんじゃないかな?」
「……そうだな……」
アベルとヘンリーが話をしていると丁度扉を開く音が聞こえ、マリアが戻って来る。
部屋の扉は今度はしっかり閉められていた。
ヘンリー君の新婚生活に暗雲が……w
アベルが未来を変えてしまった代償を、まさかヘンリー君が払うことになろうとは……www
途中離脱した罰ですかねぇ……。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!