ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

408 / 822
いつもありがとうございます、はすみくです。

修道院が……!

では、本編どぞ。



第四百六話 変わり果てた修道院

 

 ヨシュアの淡い期待は早々に霧散し、アベル達一行は修道院まで何度か魔物達と遭遇しながらも向かっていた。

 

 

「アリア、もうすぐだね」

 

「うん、みんな元気でいるかな……?」

 

「元気だと思うよ? アリアが帰って来たって喜ぶんじゃないかな」

 

「……だといいけど……、あ! 見えて来た……! アベル、修道院だよっ」

 

 

 修道院が遠目に見えて、アリアは指を差す。

 明るい笑顔で駆け出したアリアだったが、修道院が近づくにつれその足を速め駆け出していた。

 

 

「っ、アリアっ!? 一人で行ったら危な……」

 

 

 アベルがアリアの目前に迫る魔物の群れに気付き咄嗟に駆けるが、彼女は爆発系呪文の【イオ】を二回唱え一掃してしまう。

 

 

 ――っ、問題なかったぁっ……!! アリア強いな……!

 

 

 感心しながらアベルはアリアに追いついて彼女の腕を引く。

 

 

「っ、はぁっ、アリアっ! 一人で行ったら危ないよ!」

 

「はぁっ、はぁっ……アベルっ……! 様子がおかしいの……!!」

 

 

 アベルに引き留められ、アリアは額に汗しながら修道院の方へと視線を送っていた。

 

 

「え……?」

 

「修道院……の屋根……、屋根が無いの……!!」

 

「え……………………………………っっ!?」

 

 

 ――どういうことだ……!?

 

 

 アベルはアリアの言葉に彼女から修道院へと目を向ける。

 すると修道院の青い屋根が見えず、それどころか建物自体が崩れているようにも見えた。

 

 

「っ、嘘だ……! こんなこと……一度だって無かったのに……!」

 

 

 アベルは修道院の荒れた様子に固まる。

 

 

「っ……ウソ、ウソ、ウソッ!!」

 

 

 アリアの瞳から大粒の涙が ぼろぼろと零れ落ち、アベルの腕を振り解いて彼女は走って行く。

 

 

「あっ、アリアッ……!!」

 

 

 アベルも慌ててアリアを追ったのだった。

 

 ピエールも驚愕しつつ、パトリシアを引き連れ修道院へと急ぐ。

 ヨシュアも「なんてことだ……」と額に手を当て茫然としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はっ……うぅっ、やっぱり屋根が無い……!! 崩れて……!?(そんな……マザー……!!)」

 

 

 修道院のすぐ傍まで走って来たアリアは溢れ出る涙を拭いつつ、修道院の脇を通りながら柵向こうの建物を近くで確認する。

 

 修道院の建物は屋根という屋根がなく、かつてアリアが鳴らした鐘も見当たらなかった。

 だが、よく見ると屋根が見当たらないだけで、建物が大きく崩れている様子は無い。

 

 いったい何があったというのか……。

 

 

「っ、アリアッ、転ばないように前見て前!」

 

「はっ……あっ、うん!」

 

 

 余所(よそ)見し走っていたアリアにアベルが注意すると、アリアは地面に飛び出していた岩を避ける。

 

 

「はぁっ、転ぶところだった……! ありがとアベル!」

 

「ああ! 急ごう!」

 

「うん!」

 

 

 アリアがお礼を告げるとアベルが手を差し伸べ、彼女はその手を取った。

 二人はそのまま走って修道院の入口、アーチを目指す。

 

 

「はぁ……、いったい何が……」

 

「……はぁっ、はぁっ…………これは……はぁ、はぁ……」

 

 

 アベルとアリアは到着するとアーチを潜り、呼吸を整えながら修道院を見上げた。

 修道院をよく見てみると鐘を吊るしていた部分と、屋根だけが無い。そして一部二階の上部が崩れている。

 

 魔物の襲来でもあったのかと危惧していたが、どうも違うようだ。

 アベルは修道院の様子をじっと眺めて口を開いた。

 

 

「……これ……魔物にやられたというより、風で飛ばされたみたいな……」

 

「っ、はぁ、はぁ……」

 

 

 アベルの言葉にアリアは呼吸を整えながら周りを見回す。

 修道院の屋根は無いというのに、辺りの花々は咲いたまま、一階の扉も特に壊れた様子が無かった。

 

 

「……アリア。僕、この経験は初めてだ」

 

「はぁ、はぁ……。そう……なんだ……? はぁ、はぁ……」

 

 

 アベルが息苦しそうなアリアの背を撫でて「大丈夫?」と声を掛け、アリアの呼吸が整うまで待つ。

 

 

「……ピエール達が後から来るけど、待ってないで先に入ろう」

 

「……はぁ……ふぅ、………………うん」

 

 

 アリアの呼吸が整うと、アベルはアリアと共にピエール達より一足先に修道院へと入ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アベルが修道院の扉を開くと、いつもは響く扉の音が天井が無いために響かず軽く感じる。

 

 

「あ、……あれ?」

 

「…………っっ……??」

 

 

 扉を開け一歩中へと足を踏み入れたアベルとアリアは目を瞬かせた。

 中は屋根と一部の壁が無いだけで、皆何事も無かったように普通に生活している様子。

 

 講堂には以前会った小さな女の子が何か探している風で、講堂内のそれぞれの机の下を見ては首を傾げており、パイプオルガンの前にいたパイシスが女の子を穏やかな顔で見守っていた。

 

 

「うーん見つからないなぁ…………あ! アリア姉ちゃん!」

 

 

 講堂の中を二階の祭壇に向かって歩いて行くと、女の子がアベルとアリアに気付いて駆け寄って来る。

 

 

「ちびちゃん!」

 

「アリア姉ちゃん 帰って来てくれたの!?」

 

「うん! あ、一時帰宅だけど……」

 

「なぁんだ~。あ、お兄ちゃんと仲良くやってるんだね。いいなあ」

 

「え? う、うん……?(いいなあ……?)」

 

 

 女の子にアベルをチラ見され、アリアもアベルを見上げた。

 アベルはアリアと目が合うと目元を緩めて優しい瞳で見下ろす。

 

 

「マリア姉ちゃんを白馬に(またが)った王子さまが迎えに来たんだよ! それでお嫁に行っちゃったの。いいなあ」

 

 

 女の子は「私も白馬の王子さまが迎えに来るといいのになあ」と手を組み目を閉じた。

 白馬の王子を夢見ているようだ。

 

 

「ね、ちびちゃん。修道院で何があったの? 何でみんな普通に暮らしているの?」

 

 

 アリアは疑問に思っていたことを上空を指差しながら訊ねる。

 

 

「あ、屋根なくなっちゃったの! 夜は少し寒いんだ~」

 

「屋根がなくなった……?」

 

 

 女の子が答えるとアベルは首を傾げる。アリアは不安そうな顔でアベルを見ていた。

 

 

「私 わかんない。ある日寝て起きたら屋根が無かったの。前の晩大きな音がしたと思ったんだけど…………あっ! 見っけ! じゃあ お兄ちゃんもアリア姉ちゃんも また後でね!」

 

 

 女の子は探し物が見つかったのか、机の下から何かを拾って手にすると講堂から出て行ってしまった。

 

 

「あっ……、行っちゃった……。屋根がなくなっちゃったって……どういうこと……?」

 

 

 アリアが女の子を呼び止めようとするも、女の子の足は速く既に居ない。

 

 

「何が起こってるんだ……??」

 

 

 アベルは初めての経験に戸惑いながら上を見上げた。

 上を見上げれば雲一つない青空が見える。

 

 

 ――いい天気だなぁ…………なんて悠長に眺めてる場合じゃない……!

 

 

 シスターに話を聞かなければ……! と見上げた空からパイプオルガンの方へと視線を移す。

 すると、パイプオルガンの傍に居たパイシスが向こうから話し掛けて来てくれたのだった。

 

 

「マリアが修道院に戻って来て幾日も経たない内にヘンリーさまがいらっしゃって……。ヘンリーさまがラインハットの王子さまだと知って私達も とても驚きましたのよ」

 

 

 パイシスはアベルとアリアに「お久しぶりですわね」と目を細める。

 

 

「ヘンリー君やるぅ……!」

 

 

 アリアはパイシスの話に乗っかり“ピュウ”と口笛を吹いた。

 

 

「っ、いやっ、アリアそんなことより……!」

 

「あっ、そっか。シスター! 屋根っ、屋根が……!」

 

 

 アベルにツッコまれ、アリアは上空を指差し訊ねる。

 

 

「あ、気が付かれましたか? ふふっ」

 

「「気付きますよ!!(ふふっ、て……)」」

 

 

 パイシスの言葉に気付けばアベルもアリアも声を大にしてツッコミを入れていた。

 

 

「……そうですわ! アリアさんにお願いがあります……!」

 

「っ、はい?」

 

「屋根が消えてしまってからというもの、マザーに元気が無いのです。顔を見せてあげてくださいな」

 

「マザーはどこに……?」

 

「いつもの祭壇に居ますわ。……と言っても、ここからでは見えませんわね。二階に行ってみて下さいませ」

 

 

 パイシスに頼まれ、アリアはアベルと共に二階の祭壇へと向かう。

 

 

「いったい何があったっていうんだ……?」

 

「……うん……、屋根がないこと以外、みんな特に変わりがなさそうだけど……どういうことなんだろうね……」

 

 

 先程聞いた女の子やパイシスの話に首を捻りながらアベルが零すと、アリアも眉をハの字にしていた。

 

 

「マザーに聞いてみるしかないね。ほら、アリア」

 

「あ、うん……」

 

 

 アベルに手を差し伸べられ、アリアはその手を取る。

 ここを出る時は仲の良い振りだったのに、今ではそれが当たり前のように二人は互いに笑みを交わしていた。

 

 




屋根が無いんですよ……。
修道院で何があったというのか……は次回!

----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。