ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

追いかけっこです。

では、本編どうぞ!



第四十話 追いかけっこ

 

 タッタッタッタ……。

 

 

 長閑な村に子供の駆ける音が聞こえる。

 

 

「はぁっ、はぁっ。アベルっ、アベルってば! 手ぇ痛いよぉっ」

 

「っ、あっ、ごめんっ」

 

 

 自宅の前の井戸までやって来ると、アベルは漸くアリアの手を放したのだった。

 

 

「っ……。もう……強引なんだから……」

 

 

 アリアは痛いのか、掴まれた手首にふぅふぅと息を吹き掛けている。

 その手首は赤く腫れていた。

 

 

「……ホイミ」

 

「あ……、ありがとう……(赤いの消えた……痛みも。魔法ってすごいなぁ)」

 

「……ううん、僕の方こそごめんね」

 

 

 アベルは申し訳なさそうにアリアに詫びる。

 

 

「ね、アベル。さっきのお兄さんのことだけどね」

 

「う、ん? さっきの……、アリアが素敵とか褒めてた人……? それなら聞きたくないや」

 

 

 ぶすっと、アベルは口を尖らせる。

 

 

「……アベル……? 何拗ねてるの……? まあ……別にいいか……」

 

 

 話したいことがあったんだけどなぁ……。

 

 

 アリアは先程青年に見せてもらった光る玉を触った際、頭に痛みが走り、ちらりと記憶の断片を垣間見た気がしたのだ。

 それをアベルに伝えたかったのだが、アベルが訊きたくなさそうなので諦めることにしたのだが。

 

 

「アリア、プックルが遊ぼうって! 井戸まで競争だって言ってたのにアリア来ないし、だから呼びに行ったんだよ?」

 

「あ、うん、すぐ行かなくてごめんね。お兄さんに呼び止められてて、でね、そのお兄さ……」

 

 

 話題を元に戻すチャンス!

 

 

 そう思い、アリアはもう一度お兄さんの話を振ろうと試みる。

 ところが。

 

 

「…………、井戸の周りで追いかけっこしようよ」

 

「えぇ?」

 

「僕が追う側で、プックルとアリアは追われる側。そこの焚火から三周して捕まった方が負けね」

 

 

 アベルはアリアを一瞥しただけで、プックルに「追いかけっこするよー」とルールを説明する。

 なし崩し的にアリアの話を流してしまうのだった。

 

 

 何となく、()の話をアリアの口から聞きたくない。

 

 

 ……何でだろう?

 ……僕だけの友達で居て欲しいから……?

 

 

 アベルは早くアリアと一緒に遊びたかったんだ、と、そう思うことにした。

 

 

 

 

 

「ちょ、それ私絶対不利なやつ!」

 

「だから三周逃げ切ればアリアの勝ちだよー! 負けたら僕のお願い聞いてよねっ」

 

「うそーっ!! ムリー!! アベルが勝つ前提で言うのなしだよっ」

 

 

 アリアが頭を抱えてどうしようと考えようとするもアベルが目を閉じて、

 

 

「スタート場所は井戸周辺ならどこからでもいいし、どっち回りでもいいよ。焚火から三周数えてね! 十数えたら追いかけるから逃げてね~。じゅー、きゅー、はーち……」

 

 

 と、アベルは自宅の扉の前でカウントダウンを始めてしまった。

 

 

 ……ので、

 

 

「っ、プックルはあっち。私はこっちに逃げるからね!」

 

「グルルルル!」

 

 

 仕方なくアリアはプックルに指示を出して走り出した。

 プックルも言われた通りにアリアと逆方向へと走り出す。

 

 

「い~っち、……ぜろっ! よ~いどんっ!」

 

 

 アベルはカッと目蓋を開いて、瞬時にアリアとプックルの居場所を特定する。

 アベルの位置からはプックルの方が距離が近く、すぐに捕まえられそうだった。

 アリアは少し離れた場所で、焚火に中る若者の後ろでアベルを窺っている。

 

 

「……どっちにしようかな~」

 

 

 ちらっとプックルを見ると、プックルは後ろ足で頭を掻いていた。

 こちらが近づいてもすぐに逃げ出せるとでもいうのか、その表情は余裕綽々である。

 そして、次にアリアの方を見ると、若者の後ろにさっと隠れてしまう。

 

 

「…………かくれんぼじゃないんだけどなぁ……(隠れてるつもりなのかな……バレバレなんだけど)」

 

 

 プックルにはあっさり逃げられそうなので、アベルはアリアに向かって走り出していた。

 

 

「っ、ひゃあああああっ! こっちに来ないでぇぇええ!」

 

 

 アベルが焚火の方へと一目散にやって来るので、アリアは迫るアベルから逃げるように走り出した。

 

 

「アリアっ、かくれんぼじゃないよ! 追いかけっこだって言ったよっ?」

 

 

 アベルはわざとアリアに追い付かないぎりぎりのところで、速度を緩めて彼女を追いかける。

 

 

「いやぁああああっ! アベル足早いもんっ!」

 

 

 これまでアベルを見て来たアリアは、アベルの脚が遅いわけがないと確信しているのか速度を緩めることなく走っていた。

 

 

「待ってよ! アリア早くて追い付けないよ!」

 

 

 ウソだけどねっ!

 アリアが焦ってるの可愛いっ、面白いっ!!

 

 

 アベルは一生懸命走るアリアを見るのが楽しくて仕方なかった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 ぐる~り、ぐる~り、ぐる~……

 

 

 井戸の周りを三周まであと少し。

 これを逃げ切ればアリアの勝ちである。

 

 プックルは既に三周終えて、焚火に中る若者と睨み合っていた。

 

 

「……鋭いキバだね……ハハ……触ってもいいかい?(珍しいネコだな……)」

 

「ガルルルル」

 

「ま、まあ、温まっていくといいよ、寒いからね……」

 

「ガルルルル……」

 

 

 若者に声を掛けられるも、プックルはツンとそっぽを向いて毛繕いを始める。

 一方で、アリアはといえば逃げ切れたかというと、

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……。ヤダ~! 捕まりたくないぃぃ~!(あともうちょっと!)」

 

「……あっ! アリアずるいぃ~! 降りて来てよーっ!」

 

 

 もう少しで三周という所で捕まえてやろうと算段していたアベルだったが、目論見が外れアリアは宙に浮いていた。

 すっかり飛ぶのに慣れたらしく、アリアはパタパタと規則的に翼を羽ばたかせ、地上二メートル程の高さからアベルを見下ろしている。

 

 

「はぁ、はぁ……だって、飛んじゃダメって言ってなかったでしょ? はぁー……これで三周おしまいっと、私の勝ちっ!」

 

 

 アリアは焚火の前に降り立つと、腰に手を当て勝ち誇った顔でアベルにVサインを送った。

 

 

「っ、何でだよぅ! あんな高いとこにいたら捕まえられないでしょ!」

 

 

 アベルが悔しそうに頬を膨らませ抗議しながら、焚火の前にやって来る。

 

 

「……ふふっ、アベル私が足遅いと思ってわざとゆっくり走っていたでしょう? お見通しなんだからねっ!」

 

 

 アリアは喜色満面に告げたのだった。

 

 

 最後の最後で捕まえようとしてたんでしょうけど、私には翼があったのよね~!

 

 いつまでもポンコツじゃないのよ、うん。

 負けるわけにはいかない戦いがここにあるって、こういうことなのねっ!

 

 

 と、

 

 

 得意げにうんうんと頷くが、走っている時に“そういや私飛べるんだった”と思い出して宙に浮いただけだったという……。

 

 

「ちえっ……。僕も……かっ……にな……」

 

「……え? 何?(何て言ったの……?)」

 

 

 アベルがぽつりと呟くが、アリアには聞き取れなかった。

 

 

「……まぁ、今度でもいいや。次の勝負に勝ったらその時こそ、お願い聞いてもらうから」

 

「あぁ! お願いごと? 次も私が勝ったら、お願い聞いてもらおうかなぁ?」

 

「えっ、アリア何か僕にお願いしたいことあるの? 言って言って!」

 

 

 アベルは瞳を輝かせながらアリアに詰め寄る。

 至近距離で見つめられ、アリアは目を見開いた。

 

 

「ええっ!? 今は別に……(って……近い!)」

 

「今回はアリアの勝ちだし、何でも言ってよ。今回だけじゃなく、アリアのお願いなら勝負関係なしに聞くよ!」

 

 

 アベルはアリアの肩に手を置いて、興奮気味に話すのだった。

 

 

 アリアが云う言葉はアベルが今まで聞いたことの無いことばかり。

 また(・・)と感じることがなかったのだ。

 

 アリアは常に新鮮さを感じさせてくれる存在で、アベルはいつもそれ(・・)を求めているのである。

 

 

「っ、いや、だから今は別に…………、……あ! ……じゃあ、さっきのお兄さんのことなんだけどね……」

 

 

 丁度良かった、渡りに船じゃない? と、アリアは先程断念した青年の話題を振ってみた。

 

 

 が。

 

 

 

「それは聞けない」

 

 

 

 アベルは目を細め、作り笑いし即答する。

 

 

「なっ、何でぇ!? 今何でも聞いてくれるって……!」

 

「僕が聞けることなら何でもいいよって意味ね!」

 

「っ、ずるいぃぃ……(くそぅ、気分屋六歳児ィー……)」

 

 

 アベルがアリアに微笑みかけると、アリアは納得いかない顔で嘆いたのだった。

 




以上、謎ルール追いかけっこキャッキャウフフの巻きでした。

子供って、自分で言ったこと守らないよね……。
天邪鬼だし。

次回、やっとベラちゃんと会える……?

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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!
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