状況確認が終わったら……。
では、本編どぞ。
階段下のパイシスから見えない場所までアリアを連れて来ると、壁際に彼女を追い詰め自分が壁になるようにして こっそりと相談を持ち掛ける。
「アリア、あのさ……」
「アベル急にどうしたの? 何か気になることでもあった……?(こんな隅にわざわざ追いやってどうしたんだろ……)」
――壁ドンじゃないけど、ちょっと緊張しちゃうな……。
そうは思ったものの、アベルが真剣な顔で見下ろして来るのでアリアは不思議顔で見上げていた。
「……屋根の修繕作業なんだけど……、僕が手伝ってもいいかな……?」
「えっ……。でも、アベルは旅があるよね……?」
アベルの申し出にアリアは目を丸くする。
「……アリアの呪い、悪化しちゃうかな……?」
――そこだけが心配なんだよね……。
……修道院の修繕に人手が足りない。
しかも男手が必要だが、北の橋の修繕で人員の確保が難しい……となれば自分が手伝えばいいのでは……?
そう思いアベルは旅を一時中断し手伝うことにしたのだが、アリアの呪いだけがネックだったため訊ねていた。
「あっ、ううん、呪いは修道院の中だと発現しないから多分大丈夫だと思うよ。でも……いいの? アベルは勇者さまを捜してるんでしょ……?」
アリアの呪いは修道院に居る間は聖なる力に護られ発現しないらしく、悪化することはなさそうでアベルはホッとする。
「うん……、ここはアリアの実家みたいなものだし……、困ってるなら手伝いたいなって思って……」
「アベル……」
アベルが頭の後ろを掻き掻き照れ臭そうに話す様子に、アリアの胸が きゅうっと締め付けられた。
――勇者さまを早く捜さなきゃなのに……、アベルって優しい……お人好しっていうか……昔からホント優しいよね……。
もう……、顔も身体も好きだけど、そういう優しいところ大好き……尊い……。
アリアの瞳孔が開き、目の前のアベルを見上げポーッと見惚れている。アリアからアベルはこれ以上にない いい男に映っているようだ。
「……アリアが嫌なら旅を続けるけど……、アリアがいいなら僕は手伝いたいんだ」
――ん……? アリアなんかボーッとしてないか? まさか呪い……!? いやでも修道院じゃ発現しないって言ったばかりだよね……?
熱でもあるのかな……?
話しながらアベルはアリアの体調が心配になって彼女の頬にそっと触れる。
「っ、嫌なわけないよ……うれしい……。アベルは人が良過ぎるよ……」
アリアはアベルの手が触れると すりすりと頬を寄せて穏やかに微笑んだ。
子猫が甘えるようなその仕草にアベルの鼓動が跳ねる。
「っ……アリアが喜んでくれるなら僕はなんでもするよ……?」
――熱はないけど……カ・ワ・イ・イ!!!!
アベルはにこにこしながら上目遣いしてくる彼女を見下ろしキスをしたい衝動に駆られた。
「ん、ぅんっ、ありがとう、アベル大好き……♡」
アベルの言葉にアリアはふにゃっと顔を崩し破顔する。
自分を愛おしむ柔らかい表情の彼女にアベルの脈が速くなった。
「っ……じゃあ、お礼にキスしてくれる……? アリアがキスしてくれたらそれだけで僕、頑張れるから」
――ああっ、アリアが可愛い……、今すぐキスしたいっ!!
アベルはアリアの頬を両手で包む。
彼女からキスして欲しいのに返事が待てず、そっと顔を近づけていった。
「っ、ここじゃイャ……………………いやっ、しょうがないなぁ…………」
アリアはアベルを上目遣いに見つめ頬を紅くする。
アベルが壁になってくれてるし、みんなにバレないならいいかと目を閉じた。
“ちゅっ”
柔らかいアリアの潤いのある唇としばし触れ合うと、離れる際小さな水音がする。
「っ……アリア、もっとキスしてもいい?」
「っ……、ここじゃダメだよ……。ここがどこだかわかってるの……?」
唇が離れるとアベルはもっとと催促するが、アリアは赤い顔のまま瞳を潤ませ見上げている。
「…………ぅ、修道院です……」
アリアに問われてアベルは眉を顰め答えた。
そう、ここは修道院。
……厳格な戒律のもと、自給自足の生活をしている女の園。
本来なら修道院内でキスをするなどもっての外である。
ただアリアは修道女ではない。アベルにはここがどこだとか、そんなもの。どうでもいいことだった。
――そんな頬っぺた赤くしておいて何言ってんの……!? アリアだってしたいくせに……!!
僕、知ってるんだからね! アリア僕のことめっちゃ好きでしょ!?
アベルはアリアに好かれている自信があるのか独りで勝手に盛り上がり、もう一度唇を彼女に近付けて行く。
そんな暴走を始めたアベルの唇にアリアは人差し指を一本立てた。
指先だけでアベルの口付けを止める。
「…………アベル、後で外……裏に行ってこっそりしよ? いっぱいしていいから……ね?」
アリアはにっこりと
「アリア……っ、うんっ!」
アベルはあっさりと承諾し「マザーの所に戻ろう!」とアリアの手を取り二階の祭壇に向かうのだった。
……単純である。
【モンスターつかい】のアベルを上手く操るのはアリアくらいのものではなかろうか……。
◇
……マザーの元へと戻りアベルが修道院修繕の手伝いを申し出ていると、丁度ピエール達も到着し、ヨシュアと共に修道院内へと入って来た。
シスター達が怖がると申し訳ないため、アンドレは修道院の外に置いて来たようでピエールは背の高いヨシュアの歩幅に合わせるべく速足で歩く。
ヨシュアは修道院の様子に驚き上を見上げ、キョロキョロしながら二階の祭壇へと向かった。
ピエールも同じように屋根の抜けた空を見上げていた。
「これはいったい……(屋根が全て抜けている……?)」
「まあ、ヨシュア。お元気でしたか? マリアも元気でやっていますか?」
ヨシュアが祭壇に辿り着くとマザーが目を細める。
「あ、はい。お陰様で……。その節はお世話になりました。あの、マザー……これはいったい……」
二階の祭壇から階下を振り返り、修道院全体を見渡してからヨシュアはマザーに向き直った。
「…………うふふ、人数が多くなってしまいましたわね。講堂に下りて説明しましょう。アベル、アリア、話が重複しますが宜しいですか?」
「「はい」」
「では先に下で席に着いていて下さい。私はお祈りをしてからすぐに参ります」
マザーの指示通り、アベル達は一階の講堂へと下りる。
一つの机には二人座れるため、アベルとアリア、通路を挟んだ席にピエールとヨシュアでそれぞれ着席していた。
「いったい何があったというのだ……」
――静養していた部屋しか よくは憶えていないが当然屋根はあったはずだ……。
ヨシュアは相変わらずキョロキョロと屋内を見回している。
アベルとヘンリーが滞在していた客室でヨシュアも静養していたのだが、その時は確かに屋根はあった。
今は二階部分が多少崩れているものの、ほぼほぼ綺麗に屋根だけがない状態。
そんな修道院の様子にヨシュアは困惑していた。
「主殿……こんなことは初めてなのですが……」
ピエールがコソッと話し掛けて来る。
「ああ……そうだね」
「…………っ(アベルってば……)」
アベルはピエールに笑顔で相槌を打ちつつ、机の下で繋いだアリアの手の甲を撫でていた。
アリアは黙ったまま頬を紅く染めている。
少し経つと祈りを終えたマザーが階段を下りて来た。
「……お待たせしました。では先日この修道院で起こったことをお話します。そして、今後の予定も……」
マザーは一階に下りて来ると通路の真ん中で語りだした……。
いちゃいちゃしながら修道院のお手伝いをして行こうかと……。
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読んでいただきありがとうございましたっ!