修道院の裏で……?
では、本編どぞ。
◇
マザーの説明が終わるとヨシュアは一度ラインハットに戻るということで修道院を出て行った。
護衛が必要かと訊ねたが、必要ないとのことだったのでアベル達は外のアーチまで見送る。
「急ぎデール王とヘンリーさまにお伝えし、人員を送れないか訊いてみる。ラインハットでも水害で復旧作業を行っているので もしかしたら多くは見込めないかもしれないが、復旧作業が完了すれば手配して下さるはずだ」
「ええ、お願いします。ここから先ずは東に向かって……」
オラクルベリーの北の橋は不通のため、ヨシュアは修道院を南下し、旅の扉を通って戻るらしい。
アベルは【ふしぎな地図】を手にヨシュアに
「道中気を付けて下さいね」
「……アリアさん。優しくしないでください……!」
修道院のアーチを潜るヨシュアから切なげな声が聞こえる。
「え」
――優しくも何も……ただの挨拶みたいなものだけ、ど……?
ヨシュアの声にアリアは首を傾げた。
「……あなたの様な可憐な女性に優しくされるとその……、揺らぐので……」
ヨシュアは振り向かないままに語る。
「は?」
「私にはマリアだけで充分……。どうぞアベルさまとお幸せに……っっ!!」
「えと……? あっ……! ヨシュアさん……!?」
訳が分からずアリアがポケーっとしている間にヨシュアは駆け足で去って行った。あっという間にヨシュアの姿が小さくなって行く。
随分と足が速い。
あの足の速さで大神殿から逃げて来たのだろうか……。
「…………な、何だろ……? ね、アベル、今のどういうことかわかる……?」
「あはは……さあね~? 幸せにって言ってくれてたし、いいんじゃない?」
アベルはヨシュアがシスコンのままだろうと、アリアに懸想しないならどうでもいいのだ。
上機嫌にアリアを見下ろし、手を握った。
「っ……、ん、ぅん……」
「さあ、僕達はオラクルベリーに行かないとね」
アベル達はこれからしばらく、修道院の修繕が終わるまでここに滞在することに決め、先ずは手の空いている大工を捜しにオラクルベリーへ行くようにとマザーに依頼されている。
アベルの仕事は大工捜しと、屋根の修繕、修繕に伴う資材の調達、吹き飛んだ鐘の捜索と多岐に渡っていた。
他の人員確保はヨシュアに任せて……恐らくヘンリー頼みになるだろう。
アリアは修道院に居る間は資金稼ぎの品々を作るシスター達の食事の世話や洗濯、掃除といった身の回りの手伝いをし、出来上がった物品を売りに行くことを任され、アベルが修道院を出る際には共に行動することになった。
始めはアベル達に遠慮していたマザーだったが、なんだかんだとアベルとアリアにしっかり仕事を任せている。
アベルとアリアに指示を出している内にマザーの顔が明るくなっていったのでアリアは嬉しそうだった。
アリアが嬉しそうにしているとアベルも嬉しいらしく、ついアベルの目元も緩む。
◇
「……アベル」
「ん?」
「……旅の途中なのに ありがとう……。実は私、ひとりで残ろうかと思ってたんだ」
「……いいんだよ、アリアが喜んでくれるならそれで」
オラクルベリーで大工を何とか一人確保し(作業は明日からになっている)、修道院に戻って来たアベルは今日の仕事はこれで終わり、とアリアが夕食の準備に入るまでの間、修道院の裏へと二人でやって来ていた。
立っていると窓の外を見た誰かに見つかってしまうかもしれないので、二人は壁に背を預け、窓の下に座っている。
仲魔達は馬車にて休憩中だ。
ピエールとスラりんは修道院内でシスター達と談笑していた。
アベル達がオラクルベリーに行っている間にマザーの計らいで仲魔達に関しては周知されていたようで、一部仲魔に驚くシスターも居たが、修道院内に入れる時点で他の魔物とは一線を画すため、その内慣れてくれるだろう(通常魔物は聖なる力に弾かれ修道院に入ることが出来ない)。
「……えと……」
アリアは隣に座るアベルに身体を向けると、彼の
無防備にアベルからキスされるのを待っている。
「っ、あっ、憶えててくれたんだ……?」
――いっぱいしていいって言ってたよね……!!
アベルは口付けを待つアリアの唇を魅入るようにガン見してしまう。
アリアの唇は艶々と潤っていた。
「っ……ん……。今二人きりだから……いいよ……?」
「あっ……、うん……(改まって言われるとなんか照れるな……)」
アリアの誘う言葉にアベルは頬が熱くなる。
――舌入れてもいいかな……。
ルラフェンの一夜を思い出し、また彼女の甘い舌を味わいたいと思ってしまった。
……あの時のアリアは泥酔していたが、今は酒など飲んでいない。
(……少しずつ、少しずつ……)
アベルはそっとアリアの唇に近付き、唇を重ね合わせる。
既に何度もしている柔らかい感触が唇から伝わると、ただ触れ合っただけなのに興奮して来る。
――アリアも興奮してるかな……?
アベルは彼女の反応を見ながら少しずつ進めていくことにした。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、と啄むような可愛いキスの合間に隙を見て、アベルは“ぺろっ”と、アリアの唇に舌を割り入れてみる。
互いの舌先が僅かに触れ合った。
「ひゃっ!?」
即座にアリアが驚き目蓋を開く。顔を離そうとしたがアベルが彼女の手首を押さえていたため二人は至近距離で見つめ合ってしまった。
「…………っ、イヤだった?」
「……ぁ……っ……ん。ぅうん……、その……びっくりしたの……。大人のキスはもう少し待って欲しい……、ごめんなさい……」
熱い瞳のアベルに見つめられたアリアは顔を真っ赤に染めて泣きそうな顔でアベルを見つめ返していた。
彼女の肩が少し震えている。
「………………そっか、…………わかった」
――まだ早かった……!? 一昨日濃厚なやつしてるのに……? ……くっ、辛い……っ、けど我慢だ……っ!!
ていうか、顔が真っ赤なアリアってカワイイ……!!
(……少しずつ、少しずつ……)
酒を飲ませればアリアはノリノリになってくれるのかもしれないが、修道院に酒などあるはずもない。
「……ンッ……、くすぐったい……ぁッ……」
アリアの耳の裏にアベルの唇が触れると、彼女の身体は強張る。
アリアの吐いた吐息がアベルの耳に掛かり、アベルの鼓動が高鳴った。
「…………ぁ、っ。アリア、そういう声出されると僕抑えが効かなくなりそう……」
――う~ん……クるなぁっ……!!
アベルは一度顔を遠ざけ、アリアを見つめる。
「えっ? ご、ごめんなさいっ、くすぐったくって…………ってもう そろそろ気が済んだかな……?」
アリアは真っ赤な顔で恥ずかしそうに瞳を潤ませながら微笑んだ。
「え、全然。まだするけど?」
「っ……そ、そっか……」
「アリア、さっきいっぱいして いいって言ってたよね?」
「ぅ……、ぅん……言っちゃった……かも……」
――でも、し過ぎじゃないかな……??
アベルに問われてアリアは たどたどしく答える。
さっきから あちこちに口付けされ、アベルのスキンシップがやはり過剰になってきている気がする。
“いっぱいしていい”なんて言わなければ良かったな……と気まずそうな顔をしていたアリアだったが、アベルは理解しているのか目を細めていた。
「ははっ、自分で言ったことは守ってもらわないとね」
「っ……わかった。我慢する……」
アベルの笑顔にアリアは観念して目を閉じ拳を握り締める。
「っ、我慢って……、そんなに嫌だった?」
「あっ、嫌じゃないよ。擽ったいだけなの、なんだか ぞくぞくしちゃって……」
鳥肌立っちゃう……とアリアがぶるっと肩を震わせ自らの両腕を擦った。
紅い顔で目を伏せ地面に視線を移す様が何だか色っぽい。
「っ、そうなんだ?(それ感じてるってこと……だよね)」
――アリア……色っぽいなぁ……!!
アベルは息を呑んで目の前の彼女を凝視していた。
「うん、だからアベルの気が済むまで…………どうぞ?」
アリアは伏せていた目を閉じ、顔を上げる。
先程アリアの“我慢する”の言葉に凹み掛けたアベルだったが、彼女が顎を突き出すので許されたと判断し心の中で奮起した。
「っ、アリア…………好きだよ……」
――ああもう、めちゃくちゃ好きだ……!
アベルはしばらくの間、震えるアリアに好きなだけ口付けをする。
アリアの小さな色のある声が口付けされる度に漏れて、アベルの耳奥にたっぷりと沁み込んでいった……。
修道院裏でこっそり逢引。
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読んでいただきありがとうございましたっ!