ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

集まった善意に感謝です……!

では、本編どぞ!



第四百十三話 集まった善意

 

 

 

 

 

「アリアお待たせ」

 

「あ、アベル! どうだった? 上手くいった?」

 

 

 馬小屋に入るとアベルは中に居るであろう彼女に声を掛ける。

 

 アリアはノアにブラッシングしながら、呼ばれた方へ振り向いた。

 ノアが気持ち良さそうに「ブブブブ……」とアリアを優し気に見下ろしている。

 

 ピエールの姿は小屋にはなく、先程まで小屋内の清掃をしていたのだが、中の掃除を終えて現在は馬小屋周りを掃除して来るとのことで、外に出ているようだ。

 

 プックルは……隣の房で鼻提灯を作り眠っている。

 ……いい気なものだ。

 

 

 アベルはアリアを見つけるなり駆け出していた。

 

 

「ああ! アリアのお陰だよっ」

 

「ん? 私? あっ……アベル……っ!」

 

 

 アベルは ぎゅっとアリアを背後から抱きしめる。

 急に抱きしめられたアリアは手に持っていたブラシを足元に落としてしまった。

 

 

「うん、アリアと……料理上手なシスター達のお陰かな」

 

 

 アリアの耳元でアベルはそっと囁く。

 

 

「ン……お料理……?(アベルの声が明るい……上手くいったみたい……?)」

 

 

 アベルの吐息が耳に触れるとアリアは身を捩じらせた。

 不意にアリアの顔に影が掛かり、アベルの唇がアリアの唇を塞ぐ。

 

 

「ン……?」

 

「……今日はもう戻ろう。明日またここに来なきゃ」

 

 

 軽い口付けの後でアベルは再びアリアの耳元で静かに話し出す。

 

 

「っ、ぅ、ぅん……。アベルっ耳元で話さないで……くすぐったいよ……」

 

 

 アリアの頬が紅く染まった。

 

 

「っ、アリアって敏感過ぎない……?」

 

「っ……び、敏感ってヤダ……そんなこと言わないでよ……」

 

 

 アベルの指摘にアリアは両手で顔を覆う。

 耳が真っ赤に色付いていた。

 

 

「…………うわ……可愛い。食べちゃいたい……!!」

 

「へ? や、ちょ、ちょっとアベル……!?」

 

 

 きゃあっ! とアリアの声がすると同時、アベルは彼女の身体を反転させ、彼女の首筋に齧りつく。

 前歯だけ僅かに歯を立てると、チリッとした小さな痛みがアリアの首筋に走った。

 

 

「ぃっ!?!? あっ、アベルっ! っだ……」

 

「……もうホント、早くアリアを食べちゃいたいよ……」

 

 

 ――でも、まだダメなんだよね……、僕がまだ十七だから。

 

 

 アリアに“ダメだよ”と言われる前にアベルは彼女の肩に顔を埋めるようにして抱きしめる。

 うなじからなのか髪からなのか、優しく甘い香りがアベルの鼻腔を(くすぐ)っていた。

 

 

「……アベル……お腹空いたの……?」

 

 

 おやつ(マフィン)を持たせたはずなんだけど……と、アリアは“自分(アリア)を食べたい”の意味を理解している癖に知らない振りをしておく。

 

 

「……アリア戻ろう?」

 

「う、うん……」

 

 

 アリアの白い首に小さな紅い痕を付けたまま、アベルは謝らずにプックルを起こしてから馬小屋を出る。

 外に出るとピエールが待っていた。

 

 

 ……アベル達は【ルーラ】でオルソーの集落を後にしたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……修道院に戻ると、ヨシュアがラインハットに報告を終え独りで戻って来ていた。

 日が傾き始め、もうすぐ夕暮れだ。

 

 

「なるほど、上手く交渉出来たようで何よりです。こちらもデール王とヘンリーさま、それにマリアから私に修繕を手伝うようにと……。しばらくまたこちらでお世話になります」

 

 

 アベルがオルソーとの交渉が上手くいったことを報告すると、話を聞いたヨシュアはマザーに頭を下げる。

 

 

「ええ、ええ。こちらとしても男手があるのは助かりますわ。ヨシュア、頼みますね」

 

「お任せ下さい、妹の頼みです。何が何でも元の修道院に戻しましょう!」

 

 

 ヨシュアは自信満々に自らの胸をドンと叩いた。

 

 ヨシュアの話ではヘンリー夫妻から修道院の修繕費をいくらか寄付してもらえることになったらしい。

 人員についてはラインハットでも足りていないため、検討したが今は送れないそうだ。その代わりヨシュアが修繕終了まで修道院に滞在することになった。

 

 ヨシュアはマリアと離れたくなかったが、他でもないマリアたってのお願いで修道院の修繕に名乗り出ることにしたらしい。

 ヘンリーはさぞかし喜んだことだろう。

 

 大工(男)と、ヨシュア、そしてアベルの三人……それに加えてアベルの仲魔達もいることだ、これだけの男手があれば梁の設置が何とか出来る。

 ただ資材についてはやはり手配が難しく、アベル達が西の国で交渉したのは正解だったようで、アベルとアリアは互いに「オルソーさんに頼めてよかった……」と、ほっと胸を撫で下ろしていた。

 

 

「これなら何とかなりそうですね。ね、アリア?」

 

「うん……! 良かった……! 一時はどうなることかと……」

 

 

 アベルが同意を求めるとアリアは嬉しそうに はにかむ。

 その笑顔にアベルもほっこりしていた。

 

 

「そうですわね。アベル、アリア、そしてヨシュア……修道院の代表として感謝しますわ……(デール王さまに、ヘンリーさま、マリアも……)」

 

 

 ――ああ、神さま! この者たちとの巡り合わせに感謝致します……!

 

 

 マザーはアベル達に目礼し、手を組み神に感謝し祈る。

 そしてもう一度アベル達を見て微笑んだ。

 

 日数は掛かるが これだけの協力が得られれば修道院の修繕は一年以内に終えることが出来るだろう。

 つい先日までは、修繕が終わるまでいったい何年掛かるのかと絶望していたが、もう憂う必要もない。

 

 マザーは若者たちに悪いなと思いつつ、彼等の善意に心から感謝したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……その日の晩……。

 アベルはアリアを特別室に送ってから客室へ。

 

 客室ではヨシュアがベッドの上で本を読んでいた。

 アベルが部屋に入って来るなりヨシュアは本を閉じ、やって来たアベルを見上げる。

 

 

「アベルさま、明日からよろしく頼む」

 

「こちらこそ……って、アベルさま(・・)って何だか変な感じですね……」

 

「……アベルさまはヘンリーさまのご友人だからな。そう呼ばせてくれ」

 

「ははは……そうですか。自由に呼んで下さい」

 

 

 ヨシュアの物言いが時折ちぐはぐな気がしてアベルはベッドに潜り込むと笑った。

 

 

「……アベルさま達が戻ってくる前にマザーに聞いたのだが、アリアさんはここに十年もの間住んでいたとか……」

 

「ええ、そうみたいです」

 

「では修道院に対する思い入れも人一倍だろうな」

 

「……そう、だと思います。彼女は修道院を出た身ですが、マザーのことをとても大事に想っているようですから」

 

 

 ――アリア、自分の貯めたお金も出そうとしてたもんな……。

 

 

 修道院に着いて事情を知ったアリアはすぐに持っていた財布をマザーに渡していたが、その後オラクルベリーに行った際、ゴールド銀行に預けていたお金をも渡すために下ろそうとしている。

 その金はアリアが旅の間 お金に困らないように……と、バイトで貯めた彼女の全財産だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……一昨日のことである。

 

 オラクルベリーへやって来ていたアベルとアリアは、なんとか大工を見つけられたものの、需要供給の法則により雇用費用が通常より(かさ)むことを告げられた。

 

 若い男達の殆どが北の橋へと出向いており、大工仲間も被害のあった集落へと出張中である。

 残ったのは中年……よりやや歳を取った男……今回契約を交わした大工のわけだが、男は言い値でないと仕事はしないそうで、今 町に居る大工は自分だけで「今すぐ契約しなければ別の人と契約をするけどどうする?」と修道院の事情を話していたアベル達は足元を見られてしまった。

 

 そのためアリアは大工と契約を交わすと、ゴールド銀行へと走っていた。

 

 アベルは金を下ろそうと窓口に並ぶ彼女に訊ねる。

 

 

「アリアの全財産なんでしょ? 止めた方が……」

 

「でも、魔物退治すればお金入るよね? お金ならまた貯めればいいし……」

 

 

 ゴールド銀行には先客が居り、アベルとアリアは順番待ちをしながら話をしていた。

 

 

「そうだけど」

 

「なら大丈夫、大丈夫! ご飯は修道院で食べられるし……旅は続けられなくなっちゃうからアベルとは別行動になるけど……時々会いに来てくれたら嬉しいな……」

 

 

 突然のアリアの離脱宣言に、列を前に詰めようとしたアベルの動きが停止する。

 

 

「は? 旅を続けられないって……? いやっ、それはちょっと……!! いや、会いに行くのはいいんだけどっ、そもそも別行動は嫌だよ!? アリアだって淋しいでしょ!?」

 

 

 ――今更旅を止めるなんて言わないでおくれよ!!

 

 

 アベルはアリアの肩を掴んで訴えていた。

 




アリアは義理堅い娘である。

命懸けにはなるけど、モンスターを倒せばお金が入るシステムがある限り、食いっぱぐれのない世界……、アリ……、かもなぁ……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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