さすがはビルダー。
では、本編どぞ。
◇
「お世話になりました……!」
アベルとアリアはすっかり元通りになった修道院の祭壇前でマザーに挨拶をしていた。
祭壇奥の崩れていたステンドグラスは見事修復され、彩り鮮やかな光が入り込んでいる。
「こちらこそ。アベル、アリア。また近くに来た時は寄ってちょうだいね」
「「はいっ」」
マザーの言葉にアベルとアリアは声を揃えて返事する。
「それと結婚式をする時は必ず呼んでちょうだい。例え世界の端に居ようと、どこへでも駆け付けるわ」
「はいっ! 是非お願いします!」
今度はアベル一人だけが返事をし、アリアはにこにこするだけに留めておいた。
「二人の旅の無事を祈っていますね」
修道院の扉前でマザーが笑顔で告げるとシスター達も手を振る。
と、その傍でツインテールの女の子、名前は【クリエ】という……その彼女も笑顔で手を振っていた。
「アベルお兄さんもアリアお姉さんも元気でね! プックルも!」
「またどっかで会うかもな」
クリエの隣に立っていた少年【シドー】も笑みを浮かべ、腕組みしていた片手を軽く挙げる。
マザーやシスター達、クリエとシドーに見送られアベル達は修道院を後にした。
立ち去る際、プックルは「がうがう!」と尻尾を振り振り。クリエに愛想を振りまいて別れている。
……出発する前日、修道院の修繕が完了し ささやかながら修道院では宴が開かれていた。
そこにはポートセルミ、ルラフェンで逢ったクリエとシドーの姿もあったのだ。
どうしてかといえば……、
◇
◇
◇
……つい一週間前まで大工の計算違いにより、屋根の材料が足らずに途方に暮れていたアベル達だったが、オルソーにとりあえず相談してみようと向かったところ、森の中でクリエとシドーにばったり再会。
聞けばクリエ達は東の大陸に行きたいが船が出なくて困っている……とのことだった。
アベルがオラクルベリーまで【ルーラ】で送るよ、と申し出たところえらく驚かれた。
アベルとアリアはオラクルベリーに送るのは先に用事を済ませてから……ということにして、クリエ達に何の用事かと問われ事情を説明する。
アベルが事情を話した途端、クリエの顔がパッと明るくなった。
「なーんだ! それなら任せて!」
なんとクリエは建築が得意中の得意らしく、かなりの安価で屋根を直してくれると言い、アベル達は半信半疑ながらオラクルベリーではなく、修道院へと二人を連れ帰って来た。
修道院に着くなり修繕途中の屋根を見たクリエが「ふむふむ、なるほど!」と、なぜか嬉しそうにほくそ笑みながら腕組みをし修道院の外へと出て行く。
シドーは腕を組んで壁に
アベルとアリアが後を追って行くと、クリエが修道院の外でどこから出したのか、大きな作業台を出して作業を始める。
いったい何をするんだろうか。アベル達は様子を見ていたのだが――。
……何をしているのかがさっぱりわからない。
不思議なのだが、作業台に触れるクリエの手元が発光し光り輝いていた。ハンマーで何かを打ち付けていることだけはわかった。
ただ、音がするだけで何をやっているのかは はっきりしない。
……のだが、光が収まると作業台の上に屋根の材料……既に成形された屋根
「シドー君、運んで~!」
「……なんでオレが……、仕方ねえなぁ~」
遅れてやって来たシドーにクリエがにこにこと笑顔で伝えると、シドーは悪態をつきつつも満更でもなさそうに口角を上げ、積まれた屋根
「す、すごい……。クリエちゃん屋根の部品作っちゃった……、シドー君はあんなに大量に運んじゃうし……」
「だね……」
アリアがシドーを見送りながら告げると、アベルは作業台を片付けるクリエを眺める。
クリエは作業台を【ふくろ】の中に仕舞っていた。
アベルの持つ【ふくろ】に似たものを感じる。
「「いったい何者なんだろう……」」
アベルとアリアの声がハモる。
目の前に起こった出来事に驚いた二人だったが、その後も驚きの連続だった。
……次にクリエは、修道院周りを散歩していたプックルを見つけるなり呼び止める。
「プックル! 背中に乗せて~!」
「がう!? がうがうっ!」
突然呼び止められたプックルは一瞬ビクッと身構えたが、クリエの元へ向かって走って行くと彼女を背に乗せ、屋根へ上って行った。
それだけでも驚いたのだが、クリエは屋根に着くと大工の三倍は早い動きで屋根を修繕していくのだ。
大工が「これで一日200ゴールドだって!? 嬢ちゃんうちに来ないか!? 500は出すぞ!」とスカウトしていたが、クリエは断っていた。
どうもクリエは大工ではないらしい。
【ビルダー】なんだと教えてくれたが“【ビルダー】ってなんだろう……?”とアベルとアリアは首を傾げた。
……そんな彼等の助けもあり、修道院は無事元通りに修繕されたのである。
昨日の宴では「作ってもらったご飯っておいしいねぇ~!」とクリエは嬉しそうに食事をし、おかわりもした。
シドーはお腹が空いていないと言い、飲み物だけ口にしただけであまり食べていない。
不思議な少年少女に助けられ、マザーは二人に“行く宛がないならここに居てもいいのよ”と伝えたものの、二人は旅をする目的があるらしくこれも断っていた。
旅の目的が何なのかアベルは訊ねたが、“カケラを探している”とだけ……。
それ以上は「言ってもわからないと思うから」と教えてはくれず。
言いたくないということかな、と受け取ったアベルはそれ以上訊ねなかった。
クリエとシドーは二、三日修道院で世話になってから旅を再開するらしい。アベル達とはここでお別れだ。
大工やヨシュアは昨日の宴後、それぞれ【ルーラ】でオラクルベリーとラインハットに送り届けている。
ヘンリーには夜だったため会えなかったが、いつでも来ようと思えば来れるので特に別れは告げていない。
◇
「アベル、またよろしくね」
「こちらこそ、アリア。また二人きりだね……」
修道院を出てアベルとアリアは手を繋ぎながらしばらく歩く。
何となく
「っ……ピエール君もサイモンも居るんだけど?」
アリアは後衛のピエールとサイモンをチラッと見やる。二人は何やら話をしている様子でアリアの視線には気付いていなかった。
するとアベルはアリアの腰を引いて顔を近付ける。
「仲魔達は僕達の邪魔をしないよ……?」
「っ……んもぉ…………ん」
アベルの唇がアリアの唇を塞ぐ。
パトリシアと馬車からスラりん達が覗いていたが、二人は足を止め口付けを交わした。
アリアは仲魔の前でのキスもすっかり慣らされてしまい、されるがままに受け入れている。
「はぁ……しあわせ……。行こっか」
「ぅん……私もしあわせだよ?」
アベルは紅い顔のアリアを一度 ぎゅっと抱きしめてから再び彼女の手を取り繋ぐ。
そしてルラフェンへと【ルーラ】するイメージを膨らませた。
……そんな時アリアが口を開く。
「あ、ねえ、アベル。次の目的地はどこなの?」
「うん? あ、あの時アリア居なかったんだっけ……」
「ん?」
次の目的地はどこなのだろうか……。
気になったアリアが訊ねると、アベルは八か月前にデール王から聞いた話を思い出していた。
「もう随分前になるんだけど……、デール王が勇者に関する情報を調べてくれたんだ」
「そうなんだ。それで何か情報を掴めたのね?」
行く先が決まってるなら良かった……とばかりにアリアはアベルの話に耳を傾ける。
「ああ。サラボナという町に勇者の使った盾があるらしいよ」
「えっ、サラボナ!?」
突然アリアが大きな声を上げた。
アベルはアリアの珍しく大きな声に目を瞬かせる。
「え、うん、サラボナ。ルラフェンの南にあるんだってさ……って何、アリア知ってるのかい?」
「あっ……えと。うん、サラボナに……ルドマンさんていう人がいるんだけど……」
アベルの質問にアリアは薄っすらと目蓋を閉じ、微笑んだ。
アリアの目の奥が痛んで来る。
「あー……何か大臣がそんなこと言ってたなぁ。大富豪で大きな船をいくつも持ってるって……て、アリア……?」
「……ん……?」
「……なんでそんな悲しそうなの……? 僕何か変なこと言った……??」
アベルの目に映るアリアの顔が悲し気に映り、彼女の瞳には涙が滲んでいるように見えた。
「ぁ……ちが……」
「主殿、アリア嬢……? どうかされたので……」
アリアがアベルの視線から逃れるため両手で顔を隠そうとしたところで、馬車が中々進まないのを不思議に思ったピエールが二人の元にやって来て訊ねる。
「……っ、あははっ! 何でもないよ! アベルっ、ルーラ私がしてみてもいい!?」
「えっ!? アリアってルーラが使えるの!?」
「わかんないっ、前はダメだったの。でも もう一度試してみようかなって!」
アリアはピエールと目が合った途端笑顔を見せて、魔力を集中させた。
――うーんと、行きたい町をイメージして……。ルラフェン、ルラフェン……。
「っ、ね、アリア。それはいいけど、サラボナのルドマンさんっていったい……」
魔力を集中させるアリアにアベルは気になったことを問い掛ける。
――どうして さっき泣きそうだったんだい……?
アベルの問い掛けにアリアは答えず、魔力を集中させていた。
「サラボナの……ルドマン氏……」
ピエールがボソッと呟いてすぐに……
“【ルーラ】!!”
アリアの放った移動呪文は見事発動し、アベル達をルラフェンまで飛ばした。
ピエールの小さな呟きがアベルに聞こえることは無かった……。
クロスオーバー回でした。
クリエちゃん、ルーラでびっくり。
この世界に彷徨ってどれくらいかはわかりませんが、この世界でルーラ使ってる人を見るのが初めてだったようですw
アリア、ルーラが使えるようになりましたね! 解禁ってやつです。
説明は後々出て来るかも出ないかも(適当)
今回切りどころが……以下略。
いつもよりちょっと長めです。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!