ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ピエールの提案とは……?

では、本編どぞー。



第四百二十一話 ピエールの提案

 

 

 

 

 

 ……数時間後……――。

 

 

 アベル達は【うわさのほこら】からまだ出発出来ずに滞在中である。

 

 

「……あれは、本当ヒドイ。あんなことってある……?」

 

「ごめ……にゃさい……」

 

 

 アベルはベッドの傍の椅子に腰掛け、半身を起こしたアリアの鼻を抓んで頬を膨らましていた。

 アリアは「ぅぅ」と呻きながら怒るアベルを見上げている。

 

 アベルはぐりぐりとアリアの鼻を弄ってから涙目の彼女から手を放した。

 

 

「僕はアリアを失ってしまうんじゃないかと……(ちょっと泣いちゃったんだからねっ!)」

 

 

 ――まさか、あの後イビキを掻いて寝始めるとは思わなかったよ……。

 

 

 ……数時間前、意識を失ったと思われたアリアだったが、アベルが叫ぶ中イビキを掻き始めたのだ。

 

 

 “くぁー……”

 

 

 アベルは叫んでいて気付くのが遅れたが、彼女のイビキに気が付くや否や【ステータスウィンドウ】を確認する。

 するとアリアの低下していたHP(体力)値が増え始めており、顔色も体温も徐々に戻って来て漸く 胸を撫で下ろすことができたのだった。

 

 

「私も死ぬんじゃないかと思ったよ……。でも……ほら、寝てれば治るって言ったでしょ……?」

 

「聞こえなかったよ!!」

 

「あはは……ごめんなさい……。話すのも辛くって……伝えたつもりだったの」

 

「もう平気なのかい?」

 

 

 ――HP(体力)は戻ってるけど……呪いのマークは付いたままだな……。

 

 

 【ステータスウィンドウ】にはアリアの今の状態が数値化されており、体力は半分以上戻っていた。

 だが、呪いのマークはついたままで、今日は移動しない方が良さそうだ。

 

 

「うん、あの辛いのは抜けたかな。でも、今日は動けそうにないや……旅の邪魔しちゃってごめんね……」

 

「大丈夫。いいんだよ、アリア。……今日は移動しないでもう一泊しようか。明日アリアが元気になったら出発しようよ」

 

 

 アベルは穏やかな顔で申し訳なさそうに謝るアリアの頭を優しく撫でる。

 彼女はアベルの笑みに呼応するよう薄っすらと微笑んだ。

 

 

「アベル……。いつも優しくしてくれてありがと……。そういうとこすき……」

 

「な、なに? あ、改まっちゃって……。僕が優しいって今頃気付いたわけ?」

 

 

 アリアに礼を云われ、アベルはつい照れてしまう。

 彼女の優しい瞳に照れ臭くなって つい目を逸らした。

 

 

「ふふっ、そんなことない。アベルはいっつも優しいよね……!」

 

「…………そ、そんなこと言って褒めたって何も出な……、あ、ちょっと待って」

 

「ん……?」

 

 

 尚も褒めてくれるアリアにアベルは【ふくろ】を漁り、白い液体の入った竹筒を取り出すと彼女に差し出した。

 

 

「…………はい、これあげる」

 

 

 アベルの手に握られたそれは、アリアの元の世界で見たことのある飲み物によく似ている。

 アリアはそれを受け取り くんくんと匂いを嗅いだ。

 

 

「これって……、あ。甘酒!? どうしたのこれ? ひょっとしてクリエちゃんに貰ったの?」

 

「ああ、買ったんだよ。甘米汁って言うらしいよ? 今度オラクルベリーに売りに行くって言ってたからいくつか譲って貰ったんだ」

 

「そうだったんだ。クリエちゃんて何でも作れるのね、すごいなぁ……。……ん、甘くておいしい……♡」

 

 

 アベルの話を聞きながらアリアは【甘米汁】を口にする。

 とろっとした白い液体はお米のみの自然の甘さが特徴だ。

 

 アリアの元の世界での甘酒といったところだろう。

 甘酒は“飲む点滴”なんて言われたりもするから、体力の落ち込んだ今のアリアにピッタリな飲み物かもしれない。

 

 元の世界では米麹と米と水で作れるものだが、クリエは【酒ダル】に米をぶち込むだけで作るらしい。

 

 クリエの販売するものは全て安価である……。

 それでは商売あがったりなのではと心配し、「お兄さんは雇い主だし、一杯くらいあげるよ!」と云われたが、アベルは悪いと思い購入していた。

 

 その値段は10ゴールド。

 以前ポートセルミで購入した時より値上げされている。

 

 突然の値上げに疑問を持ったが、シド―が「5ゴールドは安すぎじゃないか?」とクリエを説得したということだった。

 それでも安いので、アベルはありがたく いくつか購入しておいたというわけだ。

 

 

「味見させてもらったら美味しかったから、アリアにも飲ませてあげたくて」

 

「ありがと……。アベル……(もう、だいすき……♡)」

 

 

 【甘米汁】のカップを傾けるアリアの頭を撫でて、嬉しそうにアベルが目を細めると、アリアは彼をじっと見つめる。

 そうして互いに目が合うと【甘米汁】に負けないくらいの甘い時が流れた。

 

 

「それ飲んで ゆっくり休んで。僕も後で薪だけ拾いに行くけど、今日はのんびり過ごすことにするよ」

 

「うん……わかった」

 

 

 それからしばらく二人で他愛のない話をし、アベルはアリアが再び眠りに就くのを見届けてから宿屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……アリアが死ななくて良かった……。ンーーーー!! はぁ……」

 

 

 宿屋の外に出たアベルは思い切り背伸びをし脱力する。

 昼過ぎの強い日差しがアベルの黒髪を照らした。

 

 

「主殿」

 

 

 アベルの背後にピエールの声が掛かる。

 ピエールはパトリシアをブラッシング中だったらしく、宿屋から出て来るアベルを見つけたのだろう、ブラシを手にしたままやって来ていた。

 

 

「あ、ピエール、悪いね。今日の移動は無しだ」

 

「ええ、解っております。あの、……アベル殿」

 

「ん?」

 

 

 普段アベルに声を掛ける時は“主殿”と呼ぶピエールが“アベル殿”と名を付けて呼ぶ時、それは個人的な何かを伝えたいことがあるということである。

 

 アリアのことに集中し過ぎていたアベルがどうしたのかと彼に耳を傾けた。

 そんなアベルにピエールは何か訊きたい様子で、手にしたブラシの毛束を片手で(もてあそ)びながら口を開く。

 

 

「一つ……お訊ねしてもよろしいでしょうか」

 

「え、どうぞ?」

 

 

 ――改まって何だろう……?

 

 

 水臭いなぁ、と思いながらアベルは口角を上げた。

 

 

「アベル殿は……アリア嬢と将来どうなりたいのですか? 将来を考えていらっしゃいますか……?」

 

 

 ――アベル殿、あなたがもし、アリア嬢との未来を考えていないのであればこれ以上彼女に深入りさせるわけには……。

 

 

 ピエールは一晩、アベルとアリアの今後を考え自分なりに出来ることを模索し、アベルに訊ねることにしたのだ。

 

 

 アベルとアリアの気持ちがどうであれ、花嫁はビアンカとフローラのどちらか。

 アベルがアベル(主人公)である限り、それは変わらない。

 アリアもそれをわかっており、受け入れた上で今一緒に居る。

 

 二人の想いが通じ合ってからというもの、二人は毎日幸せそうだが、それもサラボナまで。

 あと、数日で終わってしまうのだ。

 

 アベルはまだサラボナで起こる出来事を思い出せていない。

 

 未来の大筋が変わらないこの世界ではどうしようもないのかもしれないが、昨日アリアの涙を見てしまったピエールは、アベルがアリアを花嫁にする気がないなら別れさせようと思っていた。

 

 サラボナに至るまでにアリアを娶ることが出来れば、もしかしたら未来が変わるかもしれない。

 だが、それが出来ないなら未来はいつも通りになる可能性が高い。

 

 ……アベルにその気はあるのだろうか……。

 

 その気がないならアリアの傷が浅い内にアベルと引き離す。もしかしたら もう遅いかもしれないが……。

 そして主人を裏切る形になるが、自分も仲間を抜けよう……と。

 

 それならアベルの未来は変わらないが、自分の未来は変えることが出来る。未知の出来事は不安だが、アリアと一緒ならどうにかなるだろう。

 

 

 ……それらは全て、アベルの返答次第なのだが。

 

 

「どうって……、それは………………あれだよ」

 

 

 ピエールの質問にアベルは躊躇って目をどこかへ泳がせていた。

 

 

「あれ……とは?」

 

 

 アベルにはぐらかされないよう、ピエールは身を乗り出し再度問う。

 

 

「…………っ、結婚したいに決まってるよ……」

 

 

 ――そんなの前からそう思ってるって……! でも今はまだ……。

 

 

 追い込まれたアベルは照れ臭そうに頭の後ろを掻いていた。

 “何でこんなことピエールに言わなきゃいけないんだよ……”と思いつつ、アベルは「アリアには黙っててよね」と口元に人差し指を立てる。

 

 

「…………そう、でしたか……」

 

 

 ――ですがそれを言葉には出来ていませんよね……!!

 

 

 アベルの気持ちが解り ほっとしたが、実行に移せていないので それでは何の意味もない。

 

 思うだけなら誰でも出来る。

 口に出さなければそれは相手に伝わらないのだ。

 

 そういえばアベルはアリアの記憶喪失中も中々告白出来ずにいたな……と思い出したピエールは、ヘンリーの気持ちが何となくわかった気がした。

 ヘンリーがすぐに結婚したのはアベルを見ていたからかもしれない……。

 

 

 ――……アベル殿も男ならヘンリー殿のように さっさと決めれば良いものを……。

 

 

 このまま何も口にせずにいたら、ただ別れを受け入れるだけで終わってしまうというのに。

 時々臆病風に吹かれるアベルが歯痒くて、兜の中、ピエールは歯噛みした。

 

 

 ……ところが、この後アベルの話にピエールではなく、アンドレが痛い思いをすることになる。

 




ピエールさん、未来を改変する意識が芽生えたっぽい……?

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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