ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

“いのりのゆびわ”は消耗品。

では、本編どぜう。



第四百二十三話 いのりのゆびわ

 

 

 

 

 

 ……アベルはあくる日、昼休憩の時間を利用してアリアをサンタローズの旧自宅地下へと連れて来ていた。

 地下室で二人、ピクニック気分で敷物を敷き、昼食のサンドイッチを食べ終え 他愛のない話をしながらまったり過ごす。

 しばらくして“ご飯も食べたし、そろそろ戻ろうか?”と立ち上がり背を向けるアリアにアベルは声を掛けた。

 

 

「ね、アリア、左手の手の平を下に向けて出して」

 

「ん……? 左手……? はい」

 

 

 アリアが振り返り、言われた通りに左手を差し出すと、アベルは跪く。

 アベルの手にはとある指輪が握られていた。

 

 

「……僕が十八になったらさ。結婚してくれないか……?」

 

「えっ……?」

 

 

 アベルは目を瞬かせるアリアの左手薬指に【いのりのゆびわ】を嵌める。

 【いのりのゆびわ】はぴったりとアリアの指に納まっていた。

 

 

「これ……祈りの指輪……?」

 

「うん。ポートセルミの福引きで当てたやつ。とりあえず予約ってことで……サイズを直してもらったんだ。その内もっと良い物を贈るから魔力が足りない時は使って」

 

「あはっ、これ何回か使うと崩れて消えちゃうやつだよね」

 

 

 ――お別れが決まってる私達にぴったり……!

 

 

 アリアは左手に納まる【いのりのゆびわ】を見下ろし目を細める。

 ギュッと胸の奥が締め付けられるように痛んだが気にしなかった。

 

 

「えっ! そうだったっけ!? っ、ごめんっ! 別のものをすぐ用意して……」

 

 

 ――崩れて消えるなんて縁起が悪いな……!

 

 

 アベルは慌ててアリアから指輪を取り返そうとするが、アリアは首を左右に振る。

 柔和な顔で、アベルに微笑んでいた。

 

 

「ううん……、アベルありがと。なるべく使わないようにするね」

 

「アリア……ごめん……。僕、祈りの指輪が壊れるってこと忘れてて……」

 

 

 アベルは落ち込み項垂れる。

 プロポーズをするのに指輪が必要なことは知っていたが、まさか使うと崩れ去る指輪を贈ってしまったとは……。

 

 

「ふふっ、大丈夫だよ? 可愛いよね、祈りの指輪。デザインが素敵じゃない?」

 

 

 アリアは手を掲げて左手薬指に光る【いのりのゆびわ】を眺めた。

 

 

 ――気持ちだけでもうれしいよ……。

 

 

 ……【いのりのゆびわ】は消耗品である。

 二人の仲と同じように時期が来れば崩れ去る代物……婚約指輪には到底向いていない。

 

 それでもアリアはアベルの気持ちが嬉しかった。

 

 

「アリア……、じゃ、じゃあ……結婚……してくれる……の?」

 

 

 アベルは恐る恐る訊ねる。

 

 

「ん? …………ん~…………、これ消えちゃうからなぁ……」

 

「っ、すぐ別のものを探すよ……!」

 

 

 アリアが眉根を下げて苦笑いを浮かべると、アベルはアリアの手を握った。

 

 

 ――うあああああっ!! 失敗したぁああああっっ!!

 

 

 アベルの脳内でパニックが起きる。

 せっかく彼女の指のサイズをこっそり測って指輪を直してもらい、プロポーズをしようと計画したのに……!

 

 

 

 

 ……そう、アベルは前日ヨムシスに言われるまでもなく、近々アリアにプロポーズしようとずっと思っていたのだ。

 

 そして、たまたま昨日ヨムシスに云われ(ヘンリー達にも云われている)背を押された気がして今日、勇気を出したのだが……失敗に終わった……。

 

 

 ――僕のバカ……!

 

 

 アベルはちょっと泣きそうになってしまった。

 そんなアベルにアリアは穏やかな笑みを向け続けている。

 

 

「ふふふっ、ありがとう……」

 

「ぅ……、アリア、今日のことは忘れて。プロポーズも仕切り直させてくれ……!」

 

 

 アリアの手を握り締め、アベルは彼女に必死に告げた。

 

 

「…………………………ん、わかった。忘れるね? この指輪返そうか?」

 

「いや……、それはそれで使ってくれていいよ……」

 

 

 アリアが【いのりのゆびわ】を外し差し出すと、アベルは首を左右に振り振り、押し返す。

 

 

 ――魔力を回復してくれるものだからアリアに使ってもらうのが一番いい。

 

 

 アベルはそのままアリアに【いのりのゆびわ】をプレゼントしたのだった。

 

 

「ありがとうアベル。大好きだよ」

 

 

 アリアはにこにこと機嫌が良さそうに笑顔を見せてくれる。

 

 

「……アリア……」

 

 

 ――アリア何で怒らないんだ……?

 

 

 プロポーズをするのに、使用すると消える指輪を贈る男なんて怒って当然だろうに……。

 それともアリアは僕と結婚したくないっていうのか……?

 

 

 今までアリアに何度か結婚の話を持ち掛けているが、「まだ早い」とか「いつかね」と笑顔で(かわ)され真に受けて貰えていない。

 

 アリアが可愛くてつい軽く言ってしまいがちだったので、時と場所を選ばないとダメなんだとアベルは思っていたが、ここ一、二ヶ月程は三日に一回くらいは言っていた。

 真に受けてもらえないのも無理はないのかもしれない……。

 

 だから今回は真剣だということをわかってもらうため指輪を用意したというのに。

 ……指輪を用意してもダメとは……。

 

 

 アベルは落ち込みそうになったが、すぐに思い留まった。

 

 

(……アリアからの拒否など拒否に非ず……!!)

 

 

 求婚の件だけでなく、これまで自分がどれだけ拒否されていると思っているのか。

 徐々にアリアを懐柔して来たアベルはアリアのことをよくわかっていた。

 

 

 ……彼女は優しい女性であり、そして押しに結構……弱い……!

 

 

 ――絶対アリアを手に入れてみせる……!

 

 

 量産品の指輪(いのりのゆびわ)ではなく、唯一の指輪を用意すればアリアだって拒否できまい……――。

 

 

 アベルはそう考え、その指輪を手に入れたら今度こそ、彼女を逃がさないと心に決めていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ということがあってね……」

 

 

 プロポーズ失敗談を語り終えたアベルはバツが悪そうに頬を掻く。

 

 

「なるほど……。確かに祈りの指輪で婚約はどうかと……」

 

 

 ――そんなに求婚しておられたとは……、情熱的なのですね……。

 

 

 ピエールはアベルの行動力に感心しつつ、アリアに甘えているアベルの姿を思い出していた。

 

 アベルはピエール達の前では頼もしいリーダーであり、キリっとしていることが多いが、アリアの前だと相好を崩す。

 何度か二人きりで居るのを目撃した際、アベルがアリアの胸に顔を埋め、頭を撫でられ喜んでいた。

 所謂“ぱふぱふ”なわけだが、アベルは素面(しらふ)のアリアにさせている。

 

 その際にアベルは毎回「結婚しよ」と云っていたわけだ。

 が、アリアは たわわを揉まれているため、顔を紅くし小さく声を漏らすだけ。アベルの頭を撫でるので精一杯で答えられなかった。

 

 それを見たピエールは二人の会話の内容は知らないまでも、“主殿は我々の前とアリア嬢の前では立ち居振る舞いが違うのだな……”と男女の不思議を感じていた。

 

 

「だよねぇ……ハハッ、僕ってそそっかしいよね……!」

 

「ははは……。お茶目ですなぁ……(ってそうじゃない!!)」

 

 

 アベルが笑顔で頭の後ろを掻くと、ピエールも呆れた笑みを零す。

 

 

「まあ とにかく、旅の途中で“これだ!”と思える指輪と出会えたら再チャレンジするつもりでいるよ」

 

 

 アベルは「ピエールが心配しなくても大丈夫だよ!」と笑った。

 

 

 唯一の指輪……、アベルはそれを求めているらしい。ピエールはその指輪が何なのかを知っているのだ。

 

 

「アベル殿……(だがそれでは遅いのです……)」

 

 

 ――やはり未来は変わらない……か。

 

 

 ピエールは眉を顰めたが、兜の下でアベルが気付くことはない。

 

 

 ……指輪探しはアリアのためではなく、別の女性のために行くことになる。

 

 “ゲームの世界”というのは、未来に起きることが既に決まっているもので、それ即ち宿命とでもいうのだろう。

 身に宿った宿命からは逃れられないのだとピエールは絶望した。

 

 

 どれだけアベルがアリアを想っていても、アリアがアベルを想っていても、そんなもの宿命には敵わない。

 

 誰もその大枠から外れることなど出来ないのだ……――。

 




祈りの指輪のデザインが可愛いくて何となく思いついたお話でした。
壊れる指輪でプロポーズはないわな……。

アベル、素面のアリアにぱふぱふしてもらってるんですよ……。
いつの間にかね……。

アベルは結構策士なのでね……アリアはついころっと騙されるわけです。
そのエピソードはまたいつかどっかで。
修道院滞在記は……外伝かなぁ……。

……さて。

今回のお話で投稿開始から毎日投稿し(ウソ、一日だけ休んだけど)、一年が経ちました。
始めは毎日投稿するつもりではなかったのですが、途中から「一年間は毎日がんばってみよー」とかいう目標を掲げてしまったため、低クオリティにてお届け致しました。

いやぁ……楽しかったけどしんどかった……w

投稿は別に義務じゃないんだけど、挑戦したかったのです。
挑戦した結果を発表すると、楽しいだけではなかった……しんどい、ツライ、苦しい……なんというネガティブ感情……かぁらぁのぉー、やりきった感……!

そう、これこれ!

やってやったぜ……! っていうただの自己満足ですwww
まだお話は半ばですが、解放された気分です。ワーイ!

明日からしばし投稿をお休みします。
あ、二月中には多分戻ります。

元々ただ自分が楽しむためだけに書いている妄想文のため、投稿するのはどうかなと思っていたのですが、作ったものはシェアせよとのさるお方からお達しがありましてシェアしているわけです。

お読みくださっている方、評価、お気に、感想下さった方々ありがとうございました……!
独りでも妄想に突っ走ってはいたと思うのですが、ここまで続けられたのはお付き合い下さった方々のお陰です。どれ程支えになったことでしょうか。

これを読んで下さっている あなたさまはとても尊い存在です。
そして、尊いあなたさまにお話を楽しんでもらえているならこれ程嬉しいことはありません。

ありがとうございます。

これからも毎日投稿を続ける……というのはさすがに体力的にキツイので、今後は不定期投稿とさせて頂きます(不定期でまとめて何話か公開……みたいな形になるかもしれません)。
実はストックはまだ結構先まであったりします。
以前より速度は遅くなりましたが、相変わらず増殖中デス。エヘヘ。

最近えちえち展開ばかり浮かんじゃって投稿するのはどうかなと悩んでますが大丈夫かしら……大丈夫ですよね!(開き直りw)

まだフローラとビアンカに会っていないのに既に420話超えです……。
完結するまで1000話超えそうで戦々恐々としております。
とはいえ、早く完結もさせたいのでこれはもう、妄想を楽しむしかありませんね……!

では、またそのうちお会いしましょ~!

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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!
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