サラボナに到着です……!
はーるばる来たで、サーラボナへ~♪
さて、サラボナ編の始まり始まりです!
では、本編どぞー。
第四百二十七話 大富豪の住む町サラボナ
◇
サラボナに辿り着くと町の前に馬車を停車させ、アベルはアリアをキャビンから降ろした。
アリアはサイモンと交代である。
「よっ、と……着いたね」
「ありがと、うん……、着いちゃったね……」
アベルはアリアを抱きあげ地面に降ろすとサラボナの町の入口で町を眺める。
アリアも隣で町を見渡していた。
サラボナの町……――。
そう規模は大きくない小さな町は、うわさのほこらから南の洞窟を抜け、大陸から橋を渡った島に位置していた。
町のすぐ隣に高い塔が
ここにはアリアを助けてくれた大富豪であるルドマンが住んでいるという。
ルドマンの娘であるフローラもこの町に帰ったと うわさのほこらで聞いている。
アベルはラインハットでデールからここに“勇者の使った盾”があると聞きやって来たのだ。
「さ、じゃあアリア、教会に行こうか! 教会に行ったら道具屋に行って色々買い足して……」
アベルはアリアと手を繋ぎ歩き出す。
……が、
「うん……あっ、ちょっと待って。お買物メモ忘れちゃった……! アベル先に町に入ってて~」
アリアはハッとして馬車の中で書いた買物メモを忘れたと、アベルから手を放し馬車に戻って行った。
「あっ、アリアっ……!」
「すぐ行くから~」
アベルが一緒に戻ろうとするも、アリアがニコニコと笑顔で告げるのでアベルは先に町に入ることにする。
(しばらく町に寄ってなかったもんな……メモがないと買い忘れるか……)
修道院を出る前、旅の準備をオラクルベリーで済ませてはあるが うわさのほこらには店が無かったため、食料や消耗品などの在庫が減っていた。
アベルはサラボナで不足分を購入しようと、馬車待機のアリアに必要なものリストを作ってもらっていたのだ。
それをアリアはうっかりキャビン内に置いて来てしまったらしい。
「ははっ、アリアってそそっかしいな……(そんなところも可愛いよね~……)」
――戻って来たら からかってやろうかな……、涙目になっちゃったりしてね……!
もはやアリアの何を見ても可愛いのだろう。
彼女の欠点すらも愛おしいアベルはピエールが無言でじっと見ている中、サラボナの町へと足を踏み入れた。
◇
馬車に戻ったアリアを置いて、アベル、ピエール、プックルはサラボナの町を歩き出す。
『わんわん!』
町を歩き出したアベルの前方から、猛スピードで駆けて来る白い犬が見えた。
そして、その後ろに青い髪の女性が息を切らし走って来る。
『誰か! お願いです! その犬を捕まえて下さい!』
「…………あ」
アベルは女性の声に やって来た白い犬の前に躍り出た。
白い犬は突然通せんぼして来たアベルに驚き急停止し、おすわりをする。
後ろから青い髪の女性が近付いていた。
「はあ、はあ……。ごめんなさい。この子が突然走り出して……。いったいどうしたのかしら? さあ、いらっしゃい。リリアン!」
「わんわんっ! く~んく~ん」
ハーフアップの青い髪に大きな淡い赤紫のリボン、白のワンショルダーの膝丈まであるトップスに、髪に付いたリボンと同色のロングスカートを身に纏った可憐な女性が犬に追い付くと、犬の名を呼んで連れて行こうとしたが【リリアン】はアベルに撫でで欲しそうに見上げ、動こうとしなかった。
「…………リリアン……」
アベルは柔和な顔で告げると そっとリリアンの頭を撫でてやる。
白い毛が何となくアリアを思い起こさせた(アリアは犬ではないのだが……)。
「まあっ!? リリアンが私以外の人に懐くなんて初めてですわ。あなたはいったい……」
「……えっと……」
青い髪の女性は驚いたように目を丸くし、アベルを見つめて来る。
彼女の視線にアベルは照れたのか、頭の後ろを掻いていた。
「…………、…………。……あら、いやだわ。私ったらお名前も聞かずにボーッとして。お名前は……」
アベルを見つめ しばし固まったままだった彼女はハッとして頬に手を添える。
女性の声は柔らかくしっとりとしていた。
物腰も柔らかく、お淑やかそうだ。
「……あ、アベルです……」
名を訊ねられ、アベルは照れ臭そうに頭の後ろを掻きながらはにかむ。
「そうですか、アベルさんと仰るのですね。本当にごめんなさい。またお会い出来たら きっとお礼をしますわ。さあリリアン、帰るわよ。いらっしゃい!」
「わんわん!」
青い髪の女性はアベルに頭を下げると、さっきよりも少しだけ語気を強めてリリアンと共に元来た道を戻って行った。
アベルはそれを黙って見送る。
……その傍でピエールはアベルをじっと見ていた。
「アベル……」
青い髪の女性とリリアンを見送るアベルの後ろからアリアの声が聞こえて来る。
メモを手に戻って来たようだ。
「ん……? あ、アリア!」
「今の人……」
アリアの声に振り返ったアベルは破顔し、アリアに駆け寄る。
アリアは青い髪の女性の背を見つめ呟いていた。
「あ、うん、犬が逃げたとかで捕まえてあげたんだ……と言っても、あの犬が勝手に止まったんだけどね」
「……そっか(フローラさん……)」
“僕って動物にも好かれるんだよね~”とアベルが笑うので、アリアはアベルに笑顔を返しつつ、再びチラリとフローラの背を見つめる。
――アベルとフローラさんが出会っちゃった……。
アベルも何だか嬉しそうな顔してたし……、やっぱり私はもうお払い箱かな……?
アリアはアベルに頼まれていたメモを手にしてすぐ、アベルを追いかけていた。
そこでアベルとフローラが出会う様子を目撃してしまったのである。
取って来たメモを手に声を掛けようとしたが、フローラの姿が見えて遠慮したのだ。
何故かといえば、アベルを見つめるフローラの瞳が ぽーっと惚けていたことに気付いたから。
アベルもまた、後ろ姿であるにも関わらずフローラと話す間、照れていたように思う。
二人の様子に割って入ってはいけない気がして、アリアは物陰に咄嗟に隠れたのだった。
――サラボナでフローラさんに逢うと、アベルはフローラさんに恋をするようにプログラミングされているのかもしれない……。
【原作の意志】は大きな流れから逸脱することを嫌うはず……。
ならば、半ばバグのようなアベルの自分への想いはもう掻き消されてしまったのかもしれない。
(アベルが幸せになるならそれでいい……! それを見届けて私は笑顔でお別れしよう……! そして気ままな異世界フード食巡りの一人旅を……!!)
アリアは覚悟するように目を閉じる。
――アベルはもう、私のことなんかどうでもよく思ってるはz……
……ところが。
ぎゅっ、とアベルはアリアの手を握っていた。
しかも指を絡め、恋人繋ぎである。
「じゃ、教会に行こうか」
「えっ、あっ、えっ……??」
アベルの声にアリアは目蓋を大きく開く。
アベルの瞳はいつもと変わらず優し気だった。
「ん……? ほら、おはらいをしてもらって買物して、それからゆっくりしようよ。酒場もあるし、今夜は一杯飲んでもいいね」
「え、あ、ぁ、うん……?」
――あ、れ? アベル、私への想い消えていない……?
アベルが花嫁候補と出会うとそっちに惚れてしまうとばかり思っていたのだが(しかも自分への想いは消えるとも)、どうやら違うらしい。
アリアは思っていた展開と違う……と首を傾げながらアベルに手を引かれるままに教会へ向かう。
……その様子を遠目でフローラが見ていたことに、アベル達は気が付かなかった。
フローラちゃんにやーっと会えました……!
ここまで長かったわ……。
これからアベルとアリアとフローラの三角関係が……?
ビアンカと再会したら四角関係に……?
どうなっていくんでしょうかねw
……お楽しみに。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!