サラボナ教会の神父は高位の人だった……!
では、本編どぞ~。
◇
……教会へとやって来たアベル達はアリアの呪いを解いてもらうよう事情を話し【おはらい】をしてもらう。
サラボナの教会は海辺の修道院を除けば今まで立ち寄ったどこの教会よりも大きく、いくつもの長椅子が置かれており、奥に見えたステンドグラス窓も随分と立派なものだった。
アリアが神父の前に跪き【おはらい】を受けている間、アベルは彼女を見守りつつ“立派なステンドグラスだなぁ……高そうだ”と奥のステンドグラス窓を見上げる。
……先程歩いて来た扉から祭壇まで続く赤絨毯には金糸で装飾が施されており、絨毯自体の感触もふかふかだ。
床に使われている石も光沢を放つ磨かれた石で、恐らくこれは……大理石と呼ばれるものではなかろうか。
アベルは建築に疎いためよくは解らなかったが、修道院の修繕で多少なりとも材料費がどれだけ掛かるかくらいは知っている。
大工やクリエが雑談していたのを聞いたことがあった。
この教会にはかなりお金が掛かっていそうな気がする。
(もしかしたら、ルドマンさんが寄付しているのかも……いや、そもそもルドマンさんが建てた教会なのでは……?)
「はぁ~……」
アベルは教会を見回し“ルドマンさんてすごい人なんだな……”と溜息を吐いた。
そうこうしているうちに俯き祈りを捧げていた神父が顔を上げる。
うわさのほこらで彼が高位の神父だという話を聞いてはいたが、本当なのだろうか。
ここでアリアの呪いを完全に解くことが出来ればいいのだが……。
呪いが完全に解ければ彼女との旅が終わってしまうかもしれないが、アリアが死ぬよりはずっといい。
【ルーラ】が使えるアベルにとって、今のベストはアリアが笑顔で元気にいてくれることである。
呪いが解けたら修道院かサンタローズにでも住んでもらって、自分は旅を続け会いたくなったら【ルーラ】で会いに行けばいい。
彼女との旅の始めは どこか心の奥底で“呪いなんて解けなければいい”と思っていたアベルだったが、うわさのほこらで命の危機に瀕した彼女を目の当たりにし、自分との旅を優先させるのはエゴだと感じていたのだ。
……一刻も早く、アリアの呪いを解いてやりたい。
ただ これまでどの聖職者も彼女の呪いを完全に解くことは出来なかった。
祭壇で待つ神父と話をするまで心配だったが、顔を合わせるとそんな心配など吹き飛んだ。
神父は【エアル】と名乗り、アリアを見た途端、
『ようこそいらっしゃいました。さあ、おはらいを始めましょう』
……アベル達の話を詳しく聞く前に慈愛の笑みを浮かべ話し始めていたのだから。
――この人なら期待出来そうだ……。
アベルはそう踏んで、アリアの【おはらい】を頼んでいたのである。
「……ふぅ……。お嬢さん、よくここまで頑張りましたね……。これまで各地の教会を回られたのですね」
「はい……」
【おはらい】の祈りが終わり顔を上げた神父が喋り出すと、アリアも閉じていた目を静かに開いた。
神父は穏やかな瞳でアリアを見下ろし、続ける。
「……初めてのことでご不安もあったことでしょう。私もこのような症例は初めてですが、呪いは解けたと言っても良いでしょう。正確には引き剥がした状態です。今はまだ呪いの残渣が貴女の周りを漂っていますが、その残渣もその内消えていくことでしょう。体調不良などが発現することはもうないですよ」
「あ……ありがとうございます……!(ああ……身体が随分と軽くなったと思ったらやっぱり呪いが解けたのね……!)」
エアル神父の説明にアリアは心の底から安堵したような顔でお礼を告げていた。
そんなアリアにアベルは手を差し伸べ、彼女を立たせてから口を開く。
「神父様、あの……一昨日の症状はいったい何だったんでしょうか。一昨日、今まで一つずつ……あ、時には二つ……、現れていた症状がいくつも一度に現れて……彼女、もう少しで死ぬところだったんです」
アリアの呪いが解けたも同然……というのは嬉しいが、まだ残渣が残っているとはいったい……。
アベルは不安で仕方なかった。
彼女が死に掛けた理由を訊ねる。
すると、エアル神父は丁寧に説明してくれた。
……アリアの呪いは特殊で強力なものであったが、各教会を回ることで複数の聖職者による【おはらい】を受け、徐々に薄れて来ていた。
そもそも呪いは基本的に少しずつ心と身体を蝕み、掛けられた者をゆっくりと死に至らしめるものである。
アリアに掛けられた呪いも特殊ではあるが、解呪方法が解らなかっただけで、本質は同じ。
アリアはアベルと共に教会巡りで呪いを解こうと手探りで旅を続け、サラボナで十箇所目となる。
各地を巡ったのが功を奏し、アリアの身体は快方へと向かっていた。
ところが呪いは生物のようにアリアの中に根差し巣食っており、【おはらい】を受ける度に払われることを拒む魔族の念が彼女を苦しめていたらしい。
それは【おはらい】されればされる程強くなり、呪いが薄れれば薄れる程、身体に現れる頻度は減るものの重くなった……という。
一昨日の重症化は、あくまでエアル神父による見解だが、修道院という神の影響下に長く居たための反動だということだった。
反動……。
エアル神父の話に そういえばアリアもそんなことを言っていたなとアベルは思い出す。
自分のことは自分が一番よくわかる……と言うことなのか。
とはいえアベルは心配でしょうがなかったため、それは結果論だ。
「……最後のあがきだったのかもしれませんね。どうにも しつこい呪いのようです。彼女には神の加護を付与致しました。その加護のお陰で呪いの残渣は漂っていますが、再び彼女の中に戻ることは無いでしょう。彼女の心がよっぽど病まない限りは……」
「心が病まない限り……ですか?(鬱になるなってこと……?)」
神父がアベルからアリアに視線を移すと、彼女は首を傾げる。
「……人間の心の闇を、魔族は好みます。これまで呪いのせいで酷く落ち込むこともあったでしょう。それは魔族の思う壺で、呪いはそれを糧にし深く貴女に浸潤していったはず。呪いの残渣が消えるまで、どうか心穏やかにお過ごし下さい。そうですね……楽しいことや、嬉しいことを経験することが、悪しきものを消し去る近道となりましょう」
神父はアリアに優しく微笑み掛けていた。
(それはつまり、アリアが楽しくしていないと呪いが戻って来る可能性を示唆している……?)
「なるほど……」
神父の言葉にアベルは思案するように顎に手を当て頷く。
――まだまだアリアを一人に出来ないってことだな……!
アリアには悪いが、まだ一緒に旅を続けられそうだとアベルの顔は綻んでいた。
「楽しいことと……嬉しいこと……かぁ……」
笑みを浮かべたアベルの隣でアリアは小さく呟く。
これから別れが待っているというのに“楽しい”も“嬉しい”もくそもない。
「……アリア、大丈夫だよ。僕が君を楽しませてあげるから」
「ぁ、ありがと、アベル……」
アリアの頭の上にアベルは手をぽんとのせると、優しい笑みを浮かべた。
アリアも応えるように目を細めたが なぜか元気がなさそうだった。
「……疲れたかい?」
「え? あ、ううん……大丈夫……。身体、すごく軽くなった感じがするよ」
【おはらい】に疲れたのだと思ったアベルはアリアの様子を窺う。
訊ねられた彼女は元気がない気がしていたが気のせいだったようで、穏やかな顔で微笑んでいた。
「そっか、よかった。……では神父様、ありがとうございました」
「どうか この先もご無事で旅を続けられますように……」
アベルとアリアはエアル神父にお礼を告げて祭壇を離れた。
条件付きだけどもアリアの呪いが解けて良かったねっ、と。
実はアリアと結婚するためのフラグ的扱いで、各教会を10箇所回れば解ける設定にしておりました。
1:修道院、2:オラクルベリー、3:サンタローズ、4:アルカパ、5:ラインハット、6:ポートセルミ、7:カボチ、8:ルラフェン、9:うわさのほこら、10:サラボナ……の計10箇所。
他にもフラグが幾つかあって、それを満たさないと結婚出来ないっていう……。
なんていうゲーム的思考で書いております。
もはやドラクエ世界で乙女ゲー(ギャルゲー)? みたいな感じですかねw
昔ゲームを制作したことがございまして(あ、ど素人の同人ゲーです)、ここでこの行動をしないと……とか考えるのが好きなのです。
分岐とか考えるのも楽しいですよね……!
エアル神父は当方オリジナル名です。
高位の神父なのですが、ルドマンさんに呼ばれて来たとかいないとか。
何かあった時にはエアル神父に頑張ってもらわないと……ということで、ルドマンさんがお金のチカラで何処から連れて来たとかいうウワサw
エアルとはギリシャ語で春を意味します。
呪い=冬みたいなもんかなと思い、雪解けの意味を込めて「春」という名前に。
シスターにも名前付けてやった方がいいかな……?
話す機会が増えそうなら名付けようかな。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!