ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

サラボナの町はフローラの結婚相手の話でもちきりです。

では、本編どぞー。



第四百三十話 サラボナの町を歩く ~教会を後にして~

 

 ……彼女の心が病んでしまうと、呪いがまた戻って来る……。

 

 残渣が消えるまでどのくらいなのかはわからないが、最悪アベルがアリア以外と結婚する前に消えてくれるよう願わずにはいられない。

 アベルの結婚でアリアが心を病んでしまっては元の木阿弥である。

 

 

『なあ、何だか町がざわついているようだが……――……――――?』

 

 

 ピエールが考え事をしていると、教会の前に立つ婦人に中年の立派な髭を貯えた戦士が話し掛けていた。

 

 戦士の話にピエールは何となく耳を傾ける。

 戦士は四十代半ばといったところか……旅人のようで、教会に寄る前に町の賑わいに何事かと婦人に訊ねていたのだった。

 

 耳を澄ませば町のあちこちから「ルドマンさんの家の娘さんが……」「フローラさんの結婚相手は……」などという声が聞こえている。

 

 

「ルドマンさんもやっと娘を嫁にやる気になったみたいだね。娘さんはフローラといってね、まるで白いバラのように清純な娘さんで……。これまで何人もの男たちがフローラさんに言い寄ったけれど……。父親のルドマンさんが絶対に相手にさせなかったんだよ」

 

 

 婦人は町の声をまとめるように戦士に教えていた。

 

 

「ほう……そんな娘を嫁にねえ……。俺ももう少し若ければチャンスがあったかもしれんな。いや、今でもイケるか……?」

 

「やだよぉ! アンタじゃ釣り合わないさぁ!」

 

 

 ダンディを気取り胸を張ってドヤ顔を見せる戦士に、婦人は軽くペシペシと彼の腕を叩く。

 “冗談も休み休み言え!”ということなのだろう。

 

 四十半ばの男が二十以上離れた若い娘を嫁に貰おうなんて正気の沙汰ではない。

 

 

「なっ……これでも昔はかなりモテたんだがなぁ……」

 

「あっはっはっは! 歳には勝てないもんだよ。若い者には若い者がお似合いさ。……結婚は早くした方が良かったね」

 

 

 心外だなという顔で機嫌を悪くする戦士に婦人は笑うが、その目は笑っていなかった。

 婦人に笑い飛ばされた戦士はガクンと頭を垂れる。

 

 

「そうなんだよなぁ……。この歳まで独りだと淋しくてな……、はぁ……(どこかに嫁になってくれる女はいないものか……)」

 

「……まあ、頑張んなよ」

 

 

 急に落ち込み出した戦士を婦人は面倒臭そうに宥める。

 と、教会の扉が開いてアベルとアリアが出て来たのだった。

 

 

「あ……カワイイ……」

 

「おいおい、言った傍から……(歳の差が過ぎるだろっ!)」

 

 

 アベルに手を引かれ すれ違うアリアに戦士が目を奪われ頬を赤く染めると、婦人が苦笑いを浮かべていた。

 “ありゃもう売約済みだよ!”と婦人の声が聞こえる。

 

 そんな中。

 

 

「あ、ピエール、プックルお待たせ、行こう。道具屋は……あっちか」

 

 

 アベルは待っていたピエールとプックルを引き連れ、特に誰かに話し掛けることもなく道具屋を探す。

 

 

「アリア、何が足らないんだっけ?」

 

「えっと……、メモには……――――……――……――」

 

 

 アベルに訊ねられたアリアは馬車待機中に作った“必要なものリスト”を読み上げていた。

 

 

「そっか、了解。そういえば、キャビンの中ってお尻が冷たいよね?」

 

「お尻……? あ、床が板だから?」

 

「ああ。悪路もあるし、下に何か敷こうかなって」

 

「ふぅん?」

 

 

 アベルの話にアリアは今更何なのだろうかと首を傾げる。

 

 

「床がふかふかだと温かいし、悪路も痛くないよね?」

 

 

 ――教会の絨毯よりも ふかふかな……布団みたいなものがいいかな……。

 

 

 教会の赤絨毯を歩いている際に感じたことなのだが、床は硬く冷たいのに絨毯の上は柔らかく温かかった。

 アベルはこの先 寒い地域に行くこともあるかもしれないし、馬車の中にも絨毯……もしくは布団があればいいのにと考えていたのだ。

 

 そうすれば今後馬車でアリアが過ごすことになっても過ごしやすいだろう……、ついでにいつでも一緒に休むことだって出来るじゃないか……、と。

 

 

「うん、まあ……(急にどうしたんだろう……?)」

 

「……じゃあ、敷くものも購入するってことで……って、あれ……?」

 

 

 アベル達の前に道具屋が見えて来たものの、道具屋には誰も居なかった。

 

 

「今日はお店お休みなのかな?」

 

「…………残念。今日はこの町で一泊するし まあいいか。じゃあアリア、宿屋で今晩の予約をして、酒場に行こうよ」

 

 

 アベルは道具屋が休みだと判るや否や身体を反転させるとアリアの肩に手を置く。

 

 

「えっ。酒場?」

 

「うん。ゆっくりしよって言ったよね?」

 

「言ってたけど……(ルドマンさんのところに行かなくていいの……?)」

 

 

 アベルがアリアの肩を押すので、一行はそのまま宿屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お早いお着きで! うちの宿はメシもベッドも最高だよ! ひと晩たったの40ゴールド! お泊りになりますね?」

 

 

 宿屋のフロントで受付の陽気なマスク男が手を揉み揉み、明るく案内して来る。

 

 

「では一部屋お願いします」

 

 

 ――うわさのほこらに泊まらずに進んでいたら安く泊まれたな……、いやでもアリアのためだったし、これでいいんだ……!

 

 

 アベルは うわさのほこらよりも安い宿代に笑顔で40ゴールド差し出した。

 

 

「いや~お客さん、早い内に部屋を確保しておくなんてさすがだな~!」

 

 

 マスク男は出された代金を回収しながらアベルを褒める。

 こうしてお客を褒めておくと、リピート客になってくれることがあるらしい。

 

 

「じゃあ奥の部屋へどうぞ~」

 

 

 アベル達は受付を済ませると伝えられた部屋へと向かい、武器などの重い荷物を置くと部屋を出た。

 その際 プックルは疲れたと言って部屋に残っている。

 

 

「アリアは なに飲む?」

 

「ん~……どうしようかな。まだ明るいし、アルコールはやめておくね」

 

 

 酒場は宿屋の二階に位置しており、宿屋を出てすぐの外階段を上がったところにあった。

 アベル、アリア、ピエールの三人は話をしながら階段を上がって行く。

 

 

「えー……」

 

 

 アルコールを飲まないと告げるアリアにアベルの顔は不満そうだった。

 

 

「アベル……? 何でそんな残念そうな顔をしているの?」

 

 

 階段を上り切り、キィィ……。と酒場の扉を開く。

 アベルはアリアに先を譲った。

 

 

「……アリアは少しお酒を飲むくらいが丁度いいんだよ?」

 

「えぇ……。すぐ酔っぱらっちゃうもの、昼間はダメだよ……」

 

 

 アリアが先を譲ってくれたアベルに会釈し酒場に入ろうとすると、後ろにいたピエールが我先にと無言のまま中へ。

 

 

「あっ、ピエール君!?」

 

 

 ピエールらしからぬ行動にアリアは目を丸くしていたが、先に店内に入ったピエールはカウンターテーブルには着かずに店の奥の扉を開け、先に見えた二階のテラスへと出て行った。

 

 

「ピエール……」

 

 

 ――まだ怒ってるみたいだな……、けどピエール、僕はもう君の云うことを聞くのは嫌なんだよ……。

 

 

 アベルはピエールを追い掛けようとはしなかった。

 

 

 ……ピエールは新しい未来を期待しつつも、その流れに大きく逆らうことはしない。

 それは未来が変わると心から信じていないからに他ならない。

 

 アベルは未来を知っているピエールからそれとなく忠告されたり、指図されたりすることに苦痛を感じていた。

 相変わらず記憶は突然降って来るのだが、それも結局は同じ結果になるだけ……、振り回されるだけ。

 

 自分で気付く分にはしょうがないが、誰かに忠告を受け続けるようなら知らない方がまだいい。

 

 

 確かに(未来)が判れば頼もしい部分はある。

 だが、それは未来が決まっているということで……、未来が決まっているなんて思いたくはない。

 

 

 ――また同じ結果になるって……? ……違う。

 

 

 ……アリア(彼女)と出会ったアベルの今回の人生は、全く違うものなのだから。

 




教会前の婦人と話している戦士はゲーム中には居ないオリジナルのおっさんキャラです。
フローラの結婚相手としては……まあ、無理だな。

そしてアベルはアベルで何か色々考えてるっぽいですねえ……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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