アンディの家に行ってみます。
では、本編どぞー。
「行く必要あるでしょ……」
「……アリア……?」
照れるアベルの横でアリアがグラスに目を落としぼそり。
アベルは彼女を窺う。
「……この町に勇者の使った盾があるんでしょう?」
「……うん、そう聞いてるよ」
「……それって、ルドマンさんの家にあるんじゃないのかな……」
「……………………、かなぁ……」
まだ誰かに勇者の盾のことは訊ねていないが、由緒ある盾ならば富豪が持っている可能性が高い。
アリアの指摘にアベルは“さすがはアリア!”と黙り込んでから答えていた。
アベルはそのまま腕組みをし、何かを考えるように目を閉じる。
そんなアベルにアリアは……、
「……その盾、借りたり出来ないかな……?」
「……借りる……?」
「うん、借りるの。ほら、もし家宝とかだったりしたら簡単に譲ってくれないでしょ? だから借りられないかなって」
勇者の盾を借りる……。
貰うではなく、借りる。
アリアの提案にアベルは「うーん」と首を捻っていた。
「……家宝を簡単に貸してくれるかな……?」
「……そうよね……、貸すのだって簡単じゃないよね……」
譲ってもらうよりはいいかと思ったのだが、やはりそんな上手くは行かないか……とアベルに指摘され、アリアもアベルと同じように腕組みして難しい顔をする。
と。
「…………いや、アリア。それいい案かも」
アベルは目を細めて彼女を優しく見つめ、アリアの耳に触れていた。
「え?」
「……その件、僕に任せてくれないか……?」
アベルは ぽっと頬を紅くしたアリアにはにかみ、耳に触れていた手で今度は彼女の髪を一房手にして指先で撫でる。
「……っ、アベル……」
アリアは人前ということもあり、耳まで紅く染めて俯いてしまった……。
◇
しばし酒場でゆっくりした後、アベル達は酒場を後にしサラボナの教会前、噴水広場にやって来ていた。
広場にある大きな噴水の周りには、町の人や町にやって来た旅人など、多くの人で賑わっており、あちこちでルドマンやフローラの話が飛び交っている。
内容は教会の前でピエールが聞いていた話と大体同じで、ルドマンが一人娘の結婚相手を募集しているという話だった。
その結婚相手には条件があるらしい。
しかも、結婚が決まれば家宝の盾もくれるという。
……家宝の盾……、恐らく勇者が使ったという盾のことだろう。
「……アリア、今の聞こえた?」
「うん、家宝の盾が貰えるんだって。家宝の盾って、やっぱりアレよね?」
アベルが町の人の話を聞いたか訊ねると、アリアもしっかり聞こえていた様子で、ルドマン家の家宝の盾について訊いて来る。
「……うん、勇者の盾かな……」
アベルは頷いていた。
「……アベル、結婚相手に名乗り出るのね?」
「何で……?」
アリアの問いにアベルが首を傾げる。
「え? だって、勇者の盾が貰えるんだよ?」
アベルの反応にアリアも首を傾げた。
――やっぱり、
アベルがフローラと結婚するにしても、ビアンカと出会ってからのはず……と、アリアは予測していた。
……先程酒場のテラスにピエールを呼びに行った際、アリアはピエールに言われてしまったのだ。
◇
◇
◇
『アリア嬢……時が近付いています。アベル殿はまだ何も思い出せていない様子。私も何とかしようと足掻いてはみたのですが……このままでは同じ結末となりましょう……』
『ビアンカちゃんと出会わないと、結婚出来ないよね……?』
ピエールの言葉にアリアは宿屋の二階、酒場のテラスに吹く風に髪を靡かせビアンカの存在を訊ねる。
『……ビアンカ嬢……確かに彼女と出会わなければアベル殿は……。ですが、それも決められた未来のこと……。アリア嬢が願う未来は望めないかと……』
ピエールはビアンカについて言葉を選ぶように告げていた。
どこで何をする時に出会う……などと、具体的な言葉を使おうとすると息が詰まり話が出来なくなる。
『未来を知っているというのに申し訳ありません、アリア嬢……』
ピエールはアンドレから降りてアリアに土下座していた。
そんなピエールにアリアは慌てて立つように促す。
『ううん 違うの、もう少しアベルと一緒に居られるか確認したかっただけだから気にしないで? ビアンカちゃんと会うまでは大丈夫そうだなってわかって安心しちゃった』
……
アリアはサラボナですぐアベルとお別れというわけではないと解り、安堵していたのだった。
◇
◇
◇
……アベルは勇者の盾を求めてこの町にやって来た。
フローラとの縁談に名乗り出るのがアベルの
それならアリアも協力しなければ……と思ったのだが。
「……………………アリアこっち」
アリアの話にアベルは不機嫌そうに彼女の手を取り、道具屋の方へと強引に引っ張って行く。
「え、ちょ、ちょっとアベル、どこに行くの? ルドマンさんの家ってそっちなの……? さっき道具屋さんに誰も居なかったじゃない」
「……用があるのは道具屋じゃないよ」
「え……?」
噴水広場から南に向かうと道具屋が見えて来るが そこにはやっぱり誰も居なかった。
道具屋の店主もルドマンの家に行っているのだろうか……。
アベルはアリアの手を引きながら道具屋の向かいにある、一軒の民家へと入って行く。
「あっ、アベル……? ここがルドマンさんの家……なの?(大富豪の家という割りには小さい気がするけど……?)」
“おじゃまします……”
見知らぬ民家にずかずかと上がり込むのはゲームならではだ。
アリアは民家に入ると頭を下げていた。
民家では部屋の奥で老夫婦がお茶をしている姿が見える。
『アン……がん……だよ……!』
と、老夫婦の方から何かの呟きが聞こえた。
老夫婦の内、老爺が家に入って来たアベル達に気付いたようだが、老婆は扉に背を向け座っているので気付いていない様子でまた「アン……がん……んだ……!」と呟いている。
“アリアはここで待っててね”と、アベルはアリアを扉前に置いて老夫婦の元へと独りで行くことにした。
「…………あの、すみません。ちょっとお訊きしたいことがあるんですが……」
「おや? 旅の人だね。うちの息子のアンディも あんたくらいの年頃でね。早いとこ花嫁をみつけなきゃ安心できやしないよ。あんたは もういい人がいるのかい?」
アベルが扉に背を向けている老婆に話し掛けると、老婆はアベルに 自分の息子の結婚について語りだす。
老夫婦にはアベルと同世代の【アンディ】という息子がいるらしい。
町では今、ルドマンの娘フローラの結婚の話で持ち切りだからか、夫婦で丁度その話でもしていたのだろう。
アベルに花嫁に関することを訊いて来たのだった。
「ええ、いますよ」
アベルは首を縦に下ろし、入口で待つアリアをチラッと見やる。
『ルドマンさんの家じゃないみたいね』
『そうですね』
扉の前ではアリアとピエールが話し込んでいた。
アリアはアベルの視線には気付かず、ピエールと共に部屋の中を見回している。
「やっぱりねえ。旅をしてれば女の子との出会いもたくさんあるんだろうね」
「実は、あの子が僕の花嫁になる人なんです」
老婆がにっこりと微笑むと、アベルは身体を扉の方へと向けてアリアを手の平を上にして指し示す。
アベルの発言に老爺が「ぉおっ! なんとっ!」と声を発すると、老婆も振り返り扉の前に居るアリアを漸く見つけた。
老爺はともかく、老婆はアリアとピエールの存在に気付いていなかったらしい。
アリアは老婆と目が合うと恥ずかしそうに会釈したのだった。
アベルはいったい何をしようとしているんでしょうかね。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!