お姉さま……。
では、本編。
「あなたには なんだか懐かしい雰囲気を感じますわ。もしかしたら、ずっと昔どこかでお会いしたのかも知れませんね」
フローラの言葉にアベルは「ぁ」と小さい声を漏らす。
「…………それ、多分、僕 憶えています」
「え……?」
「……もう……、十年以上前になるかな……。ビスタの港で、僕はあなたに会っています」
――アリアを見つけた後に……君と出会ったんだ。
可愛い子だなって……、そう思ってた。
それと、懐かしい感じがした……のは記憶が降りて来た時に気付いたんだけど。
フローラさん、君は憶えているかな……?
アベルはビスタの港で出会ったことをフローラに伝えてみる。
すると、
「まあ……! もしかしてあの時の男の子があなた……!? あのっ、逞しいお父さまに連れられていらっしゃった……!?」
フローラは口元に両手を添えると瞳をきらきらと輝かせた。
「………………はい、多分」
「……ああ……、懐かしいですわ。お元気でしたか? 私、もう一度あなたに お会いしたいと思っておりましたの」
アベルが頭の後ろを掻き掻き頷くと、フローラは今度は優しく目を細める。
「……はは……」
――フローラさん……、そんな優しく笑い掛けないで……。
フローラのその優しい笑顔にアベルは気まずくなって目を逸らした。
「…………そう……。あなたが……、ふふふっ。道理で懐かしいと思いましたわ。懐かしいついでに、私、あなたにお訊ねしたいことがございますの」
「……え?」
「…………先ほど教会をお訪ねでしたわね?」
「え、あ、はい……行きましたけど……」
――なんだ……? フローラさんは いったい何を訊ねるつもりなんだ……??
フローラが穏やかな笑顔で笑ったかと思うと、思い掛けない質問を投げかけて来る。
こんな質問をフローラにされたことは
初めてのことにアベルは目を瞬かせ頷いていた。
「……お連れの方は……いったい……」
「えっ、あっ、えっと……」
フローラに訊ねられ、アベルの額に汗が滲む。
――今、アリアを僕の恋人だと言うわけには行かない……! ごめん、アリアっ!!
今アリアが自分の恋人だとバレてしまうと、【炎のリング】はともかく、【水のリング】を取りに行くことが出来なくなってしまうかもしれない。
【水のリング】を手に入れるには船が必要なのである。
……船はルドマンに借りなければならない。
アリアが恋人だと知られれば【水のリング】の入手が出来なくなる可能性が……。
アベルは初めて“ここは別世界と同じ未来になるように!”と頭をフル回転させ、どうにか切り抜けることにした。
「い、生き別れた……妹です……。は、半分しか血が繋がってなくて……似てはいませんけど……」
「妹……さん……ですか? 姉……ではなく?」
目を泳がせながら言葉を紡ぐアベルの答えにフローラは訝しげに窺ってくる。
「は、はい……? ……………………はいっ!(ごめん、アリアっ!!)」
――しまった……!! アリアは僕より一つ年上だった……! アリア可愛いからつい妹って言っちゃったよ……!!
アリアはアベルの一つ年上であるが、年齢のことをすっかり忘れていたらしい。
今更言い直すのもおかしいのでアベルは大きな声で返事をした。
「そうですか……。あの、妹さんに会わせていただけませんか?」
アベルの返事にフローラは納得したような していないような顔をしたが、その後でアベルをじっと上目遣いに見上げる。
「え?」
――アリアに会わせろと……?
フローラさんをアリアに会わせてもいいのだろうか……。
アベルは瞬時に判断が付かなかった。
「……あの、あなたの妹さん……、私のお友達に似ているのです。もしかしたらと……いえ、もしかしなくても彼女は…………!!」
アベルの返答を待たずフローラは手を組み瞳を輝かせると、恍惚とした顔で天井を見上げる。
彼女の頬は赤く色付き、小さな唇は弧を描いていた。
「えと、フローラさん……?」
――な、何だ……? フローラさんの表情が……うっとり……??
フローラの思わぬ表情にアベルは いったい何事かと目を瞬かせる。
別世界で自分にそんな顔を見せたことあったっけ……、と思う程に彼女は幸福そうに見えた。
「ああ、早くお会いしたい……! ……はっ! ……あの、あなたのお名前をお聞きしても?」
さっきまで恍惚としていたフローラがハッと我に返りアベルに問い掛ける。
「あ、アベルです」
――あれぇ? ……なんか、いつもとフローラさん違くない……??
アベルはフローラさんてこんな人だったっけ……、と疑問に思ったが訊かれるままに答えた。
するとフローラの瞳が再び輝き出す。
「アベルさん! 私を彼女に……………………アリアお姉さまに会わせて下さいませ……!」
「お、おねえさま……!?」
――なんだ、この展開……!?
予期せぬ展開にアベルは事態が飲み込めず、ルドマンに話をしに行く暇もなくフローラと共にルドマンの屋敷を後にした……。
◇
……フローラを伴い、アベルが先に屋敷の玄関扉を開き外に出て来る。
アリアは屋敷の庭の緑に囲まれたテーブルでピエールと共に談笑していたが、アベルが出てきたことに気付いたのか、立ち上がって手を振り出迎えてくれた。
「アリア」
「あ、アベル! おかえ……」
「アリアお姉さまっ!!」
アリアがアベルに“おかえり”を言い終える前に、アベルの後ろからフローラが飛び出す。
ガバッ!! と、フローラはそのままアリア目掛けて勢いよく抱きついた。
「っと、わぁっ!? フ、フローラさんっ!?」
――ええっ!? な、なになに……!?
フローラのあまりの勢いに、アリアは彼女を受け止めたまま尻餅を搗いてしまう。
フローラよりも背が低いアリアは彼女をその場で受け止め切ることが出来なかったのだ。
「ああっ、やっと。やっと来て下さったのね……!! 私、今か今かとお待ちしておりましたのよ……!」
「っ……く、苦し……っ!(首がっ……!)」
ぎゅうぅぅっ。
フローラがアリアを強く抱きしめる。
フローラのその瞳には薄っすらと涙が滲んでいた。アリアも強く抱きしめられ正面からフローラのヘッドロックが決まってしまい苦しそうに半泣きである。
「ぇっと……?」
――何だ……?
アベルはいったい目の前でなにが起こっているのだろうと、緑の絨毯の上で抱き合う可愛い女の子二人の画に、よくはわからないが“いい……♡”と心躍らせた。
アリアが「フローラさん……苦しい……(しぬぅ)」と訴えていたが、フローラはしばらくアリアを放さず、ほんのり頬を赤く染めくっついたままだった。
その内フローラはアリアの肩に顔を埋めてしまう。
ひっく……と小さな嗚咽が聞こえたような気がした。
するとアリアは少しフローラの力が緩んだのか、放してくれとは言わず、
(あ。そういやアリアとフローラさんは……、知り合いだったんだっけ……)
アベルは二人の間にどういう絆があるのかは知らないが、アリアがフローラを慰めているように見えた。
……そうしてしばらく経つと。
気が済んだのかフローラは漸くアリアを解放し、立ち上がる。
「……はぁ……、アリアお姉さま。お父さまも首を長くしてお待ちしていましたのよ? ささっ、中へ……!」
目を赤くしたフローラは座り込むアリアに手を差し伸べ、彼女を立たせると屋敷扉を手の平を上に向けて示した。
「っ……えっと……私……(アベル……も来てくれるよね……?)」
アリアはマントに付いた草を払いながらアベルにチラッと目を送る。
「アリア……?」
「あ、フローラさん、アベルも一緒でいいかな……?」
アリアはアベルと目が合うとフローラに訊ねていた。
「もちろんですわ。アベルさんも是非! あ、私、先にお父さまにお姉さまのことをお伝えしてきますわ……!」
フローラは快諾し眩い笑顔を見せてくれる。「すぐ来てくださいね」と屋敷へ戻って行った。
アリアはフローラが屋敷内に消えるとアベルに気まずそうに笑い掛ける。
「……じゃ、じゃあ……アベル、行こっか……?」
「…………えっと、………………………………ドユコト?」
アリアが屋敷扉を指差すとアベルは状況が把握できずに首を傾げていたが、二人はピエールに宿屋に先に戻るよう告げ、再びルドマンの屋敷へ向かった。
真正面からの~ヘッドロック♡
アリア「ギブ! ギブ!(首絞まってるぅっ!)」
フローラ「お姉さまっ!!(必死)」
アベル「いい……♡(萌え~)」
……助けてやってくれアベル…。
デボラ「お姉さまっ……て、ちょっと私は!?」
フローラ「……何か……忘れているような気がしますわ……(遠い目)」
……スミマセン。
デボラさんはDSリメイク以降の世界なのでSFC、PS2の世界にはいないのです……。
最初はデボラも入れようかと思ったんだけど、よく知らないから愛が足りなくて入れませんでした。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!