ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

アベルがお兄ちゃんに……。

では、本編どぞー。



第四百三十九話 アベル、お兄ちゃんになる

 

 

 

 

 

 ……ルドマンの屋敷に入ると召使女性が恭しく頭を垂れ、先程とは違う態度でアベル達を迎え入れてくれる。

 

 

「アリアさま、お待ちしておりました。どうぞ、応接間にてお待ちくださいませ。ルドマン様もすぐに参られますわ」

 

「ど、どうもご丁寧に……」

 

 

 こちらです……と召使女性は応接間の扉まで送ってくれ、ご丁寧に扉まで開けてくれたのだった。

 アリアは軽く会釈する。フローラの婿候補とは扱いがえらく違うではないか。

 

 

 ……そうしてアベルとアリアは応接間へ通される。

 アベルはニ回目だ。

 

 

「誰も居ないね……。すぐ来るって言ってたし……座って待ってよっか……」

 

 

 応接間にはまだ誰も居らず、がらんとしている。

 アリアは先程アベル達が座っていた椅子の一つに腰掛けて「ふぅ……」と深く息を吐いていた。

 

 

「アリア……、これ……どういう……?」

 

「さ、さあ……。私にもさっぱりで……」

 

 

 アベルもアリアの隣に腰掛けるが、やはり状況が飲み込めない様子でアリアを窺う。

 だが、当の本人の彼女もよくわかっていないらしい。困ったような顔で微笑んでいた。

 

 

 ……少しして、階段からルドマンが駆け下りて来る足音がしたと思ったら……。

 

 

「おおっ!! アリアっ!! やっと来てくれたのだな……!! 待っておったよ……!! ここまで来るのに苦労したろう? 言ってくれれば使いをやったのに。怪我はしていないかい? 呪いは解けたのかい? 解けていないなら、お父さんが腕のいい神父を雇っておいた。教会に行けばきっと力になってくれるだろう」

 

 

 ルドマンは階段を駆け下りると そのままの勢いで言いたい放題、アリアの元まで一直線にやって来る。……話が長い。

 

 アリアに飛びついて来そうな勢いだったが、手前の席にアベルが居たため、彼は先ほど座った向かいの席に膝を着き、身を乗り出しテーブルの上に置いたアリアの手を取った。

 

 その表情は目を細めており、先程のフローラ同様 満面の笑みを浮かべているではないか。

 

 

「まあまあ、なんて美しい娘なのでしょう。あなたのお話は主人やフローラから聞きましたよ。私達の娘になってくれるというお話でしたわね、待っていましたよ」

 

 

 続いてルドマンの奥さんと思しき女性がフローラと共にテーブルへと近づいて来て優しい笑みを浮かべる。

 フローラも夫人の後ろで嬉しそうに にこにこと頷いていた。

 

 

 ……どうやらアリアはルドマン一家にかなり歓迎されているようだ。

 

 

「えと、そのことなんですけど……お断わりをしに……」

 

「それはいかん! アリア、お前はもう私の娘も同然なのだよ? これからは何不自由なくここで暮らすと良い。父さんがお前をあらゆるものから守ってやろう」

 

 

 アリアがおずおずと言い出すが、彼女の発言を遮るようにルドマンは直ぐ様真剣な顔付きでアリアの手を強く握る。

 そして優し気な笑みをアリア(彼女)に送っていた。

 

 

「……は、話が……読めない……」

 

 

 ――何? アリアを養女にって断れないのか……?

 

 

 アベルはアリアの隣で一部始終を見ていた訳だが、何が起こっているのか未だ掴めずに頭を抱える。

 

 

「お父さま! アリアお姉さまはこちらのアベルさんの生き別れたご令妹だそうなのです。ですから養女となるにはアベルさんの許可なしでは……」

 

「っ、妹って……どう……(いうこと?)」

 

 

 フローラがアベルの存在にハッとして慌てて説明をした。

 “妹”の言葉にアリアは隣のアベルに視線を移す。

 

 

「あ……っ、……ご、ごめん……」

 

「アベル……そう…………、……………………お兄ちゃん♡」

 

 

 アベルが気まずそうに謝るとアリアは一瞬悲しそうに目を伏せるも、直ぐに微笑む。

 上目遣いに甘えたような声で告げていた。

 

 …………ノリノリだ。

 

 

「っっ!?!?(……萌えっ!!)」

 

 

 ――お、お兄ちゃんとか……歳の近い女の子から言われるの初めてなんですけど……!? ナニコレ、イイ……♡ アリア……♡♡♡

 

 

 アリアの悪ノリにアベルの胸がきゅぅぅんと、ときめいてしまう。

 心を射抜かれたのか胸の痛みに「ぅ」と胸元を掴んだ。

 

 アベルはひとりっ子のため、お兄ちゃん呼びはとても新鮮だったらしい……。

 

 

「…………お姉さま……?」

 

「……あ、えと……、ははっ。お兄ちゃん、私がルドマンさんの家の娘になるのはダメだよね……?」

 

 

 アリアはアベルの様子を窺った。

 

 

「…………うん、ダメ(お兄ちゃんって響きいいな……!!)」

 

 

 アベルは深く頷き却下しながらアリアの“お兄ちゃん”呼びに酔いしれる。

 

 

 ――ああアリア、もっと“お兄ちゃん”と呼んでくれ……!!

 

 

 アベルに新たな属性が加わった気がした……。

 

 

「そんなっ……!! 私の姉となるお方は お姉さましかいないと思っておりましたのに……」

 

 

 アベルの返答にアリアが ほっとした顔を見せたが、フローラは食い下がるように眉を顰めアリアの腕に触れる。

 と、フローラの話を聞いたルドマンはアリアから手を放し腕組みをした。

 

 

「……フムフム、そうか……。アベルはフローラと結婚したいのだったな?」

 

「えっ、あっ!」

 

 

 ルドマンが深く考え込むように口にするとアベルは はっと気付く。

 隣に座るアリアの反応を瞬時に窺った。

 

 

 ……アリアの瞳が揺れている……。

 

 

「アベルがフローラと結婚すれば、アリアはフローラの姉になれる……ということか……」

 

「いやっ、それはっ」

 

 

 ルドマンの話は続いており、アベルは何とか言い訳をしようとするのだが、上手い言い訳が出て来ない。

 

 

 ――アリアっ、そんな悲しそうな顔しないでよ……! 誤解だよ……!

 

 

 アリアが愁いたように見えたアベルは彼女を安心させようとじっと見つめたが、見つめただけで意思疎通など図れるはずもない。

 

 アリアはアベルの視線に気付いて一瞥するも、すぐに目を逸らしてしまった。

 

 

「……しかし既に他の候補者にも条件を出してあるからなあ……」

 

 

 ルドマンはまだ話を続けている。

 ……そんな中、アリアが静かに手を挙げた。

 

 

「……あ、あの……私、本当はアベルの……」

 

 

 ――アベルとは兄妹じゃなくて……、姉弟なんだって言わなきゃ……!

 

 

 アリアはアベルの結婚を邪魔するつもりはないため、彼と恋仲であることなど言うつもりはない。

 

 アベルが兄と伝えてしまった手前、修正するのは気まずいが、恋仲になるまでは姉のように接して来たため、アリアは今後のことを考えるとボロが出そうで嫌だったのだ。

 

 兄妹ではなく、姉弟……と、そこだけ修正しておきたい。

 

 

「アリアっ、ちょ、ちょっとこっち来て……!! すみません、ちょっと失礼します。すぐ戻ります……!」

 

「えっ、あっ、アベルっ!?」

 

 

 アリアの発言にアベルは慌てて彼女の手首を掴むと、応接間の奥の部屋へとアリアを連れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルドマン達はアベルの突然の行動に面食らったものの、もしかしたらアリアにフローラの結婚相手としてアベルが名乗り出たことを話しておらず、説明のために連れ出したのだと都合良く解釈してくれたようだ。

 

 ……応接間から「生き別れた兄と妹がやっと会えたのだ、まだそんなに日も経っていないだろうし、齟齬(そご)がないよう説明するのは大切なことだろう……」などというルドマンの言葉と、フローラと夫人の頷く声が聞こえている。

 

 

「……アベルどうしたの? ルドマンさんの話終わってないよ……?」

 

「……勝手に君を妹にしてごめん。申し訳ない……! だけど、訳は後でちゃんと話すから今は話を合わせてくれないかな? 本当は恋人だっていうのは内緒で……」

 

 

 ――今恋人だってバラされると、【水のリング】が手に入れられないかもしれないんだ……!!

 

 

 アベルはルドマン達からは見えない位置までアリアを押し込めると、手を合わせて頭を下げていた。

 

 

「え? 私、アベルのお姉ちゃんって言おうと思っただけなんだけど……?」

 

「え……あ、そ、そうなんだ……? っ、いや、でも今更そういうわけには……。頼むよ、アリア」

 

 

 アリアが恋人同士だと暴露するわけではないと解ったものの、嘘を吐いたと思われると心証が悪い。

 アベルは再び頼み込んでいた。

 

 

「……………………、………………わかった」

 

 

 ――アベルは……、私がアベルの恋人だって言うと思ったのね……、恋人がいるのにフローラさんの結婚相手に名乗り出るなんて、印象が悪いものね……。

 

 

 アリアはそう理解し、拝みながら頭を下げるアベルに承諾する。

 

 ……胸が痛んだがしょうがない。

 アベルが幸せになれるならと、口角を上げた。

 

 

「……アリア、念のため誤解しないで欲しいんだけど……僕は君のことしか見ていないよ……?」

 

「………………大丈夫。フローラさん優しいし、可愛いもの」

 

 

 あまりルドマン達を待たせるわけには いかないため、アベルは今は詳しく説明できない。

 ただ、自分の気持ちはアリアにあるということだけは伝えておく。

 

 ところがアリアは今にも泣き出しそうな瞳で微笑み、応接間へ独りで戻ってしまった。

 

 

「あっ、アリアっ!?(誤解してるーー!!)」

 

 

 ……アベルは独りその場に取り残される。

 

 

 ――ああっ、今のすごく不味(マズ)くなかった……!? アリア泣きそうな顔してた……!

 

 

 ここにピエールが居れば冷静に判断してくれただろうが、頼みのピエールは宿屋だ。

 アベルはアリアの泣きそうな笑顔に胸を掻き乱された。

 

 

「…………けど、水のリングを手に入れるまでは……」

 

 

 ――後できちんと説明しよう、そうすればわかってくれるよ……ね?

 

 

 なんとしても【炎のリング】と【水のリング】を手に入れたいアベルは後でアリアにどう説明したものかと悩みつつ、正直に話すしかないと結論付けて応接間へと戻るのだった。

 




アベル……恋人いるのに婚活とか……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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