ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ご苦労さまでした。ではお気をつけて……。って……。

では、本編どぞー。



第四百四十三話 ご苦労さまでした。ではお気をつけて……

 

「そう……言われても……、……………………」

 

 

 ルドマンの言葉にアベルは再び黙り込んでしまった。

 

 

 ――そりゃ、ルドマンさんの娘になれば何不自由なく幸せに暮らせるとは思うけど……。

 

 

 ……僕はアリアと離れたくない……!

 

 

 “それ相応の援助”……とは金銭的援助ということなのだろうが、アリアを金で売るつもりは毛頭ない。

 

 富と名声を持つルドマンに勝てる要素は若さくらいしか自分にはないが、それでもアリアを食べさせていくくらいは出来る。

 

 アリアだって自分と一緒がいいと言うはず……。

 

 

「…………マリア殿は元気にしていたかね?」

 

 

 アベルが黙り込んで それ以上何も言わないため、ルドマンはまた話題を変えて来た。

 

 

「? ……あ、ええ……とても」

 

「そうか……よかった」

 

 

 アベルの答えにルドマンが ふっと柔らかい笑みを浮かべる。

 マザーの下りを語る時、ルドマンはちらちらと夫人を窺いつつ零していたが眠っていたため聞かれていないようだ。

 

 マザーとどういう仲なのかは気になるところだが、マザーの優しさや強さを鑑みるに、歳の差もある。

 憧れみたいなものなのかなと何となく感じた。

 

 

「……あの、ルドマンさん、やっぱりアリアを養女にするのは……」

 

「……君はフローラと結婚したいのだったな?」

 

「あ……えっと……」

 

 

 アベルが“養女の件は認められない”と漸く口を開くが、ルドマンはまたしても話題を変えて来る。

 アベルは再び答えられなくなってしまい、口篭ってしまった。

 

 

 ――僕は二つのリングが欲しいだけで、今回はフローラさんとは結婚出来ないんです……!!

 

 

 “それと、勇者の盾が借りられたら……。”

 

 

 ……などとアベルが言えるはずもない。

 ルドマンはアベルの返答を待たずに話を続けた。

 

 

「他の候補者達から随分遅れを取っているが……、頑張りなさい。そしてアリアのことも よくよく考えるように。君がフローラと結婚すれば、どの道あの子は私の娘となるのだよ? ……できれば君からの了承を得たいのだよ」

 

「……………………、アリアは僕の大切な人です。僕のたった一人の愛する……っ」

 

 

 ――幾度も渡り歩いた世界の中で唯一、出会った奇跡の女性(ひと)……。

 

 

 もう、この世界以外でアリアとは会えない気がする。

 

 

 ……ルドマンの話にアベルはつい余計なことを口走りそうになり、口元を手で覆った。

 

 

「……そうだね、たった一人の愛する家族だものな……。……君は見たところ旅人だね? あの子を連れ回し、危険な目に合わせ続けて彼女は幸せなのかな? ずっと旅をしていたらアリアは結婚出来ないのでは? 私ならあの子に最適な相手を見つけてやれるが……?」

 

「……っ、それは……」

 

 

 矢継ぎ早に質問を畳み掛けられ、アベルの眉が寄せられる。

 ルドマンはアベルに話をさせないつもりなのだろうか。

 

 

 ――危険な目に合わせてるのは心苦しいところだけど、アリアは僕と結婚するから余計なお世話ですよ……!!

 

 

 どうしてもアベルに了承させたいのだろう、さっきからルドマンのペースに乗せられ、アベルは上手い言い返しが出来ていなかった。

 

 

「兄と妹……まだ再会して一年くらいじゃあ離れたくもないか……。なんだったら君も私の養子になるかね?」

 

「あ、いえ、結構です」

 

 

 ルドマンは場を和ませるようにおどけてみせるが、アベルは即答していた。

 自分のことならすぐ答えられるのに、アリアのことはやはり嘘を吐いているからか躊躇ってしまう。

 

 

「ははははは、冗談だよ。だがしかし、君が私の息子になるかも知れんのだなあ……、わっはっは。ゆかい ゆかい!」

 

 

 ルドマンは「良い返事を期待して待つことにしよう」とアベルの背中を叩いて笑っていた。

 そうしてルドマンは突然アベルの腕を引き、半ば強引に立たせ……、

 

 

「わはははっ! さあ、もう行きなさい。アリアは君が戻って来るまで預かっているから心配しないように……!」

 

 

 アベルの背をグイグイッと押し、応接間から追い出してしまう。

 アベルも抵抗したが、ルドマンの力は意外と強くあれよあれよという間に玄関ホールへと追いやられてしまった。

 

 

「なっ……! ルドマンさんっ!? 今晩だけって話だったでしょう!? 話が違うっ!! っ、今すぐアリアを返して下さい!」

 

「わはははは。そうだったかね? フローラが待っているぞ。頑張りたまえ」

 

「ちょ、ルドマンさんっ……!! 僕の話を聞い……!」

 

 

 ルドマンは口角だけ上げ、作ったような笑い顔でアベルの健闘を祈ると さっさと応接間の扉を閉めてしまう。

 

 

 バタンッ!! ガチャリ!

 

 

 扉が閉じてすぐ、鍵の回る音がした。

 ご丁寧に鍵までかけ、扉向こうではルドマンが去っていく足音が聞こえる。

 

 

 

 

「…………はぁああああああっっ!?(強引過ぎない……!?)」

 

 

 

 

 ガチャガチャガチャ。

 

 

 アベルはあまりの強引さに憤りの声を上げて、閉じられた扉に手を掛けるが鍵が掛かっていて開かない。

 

 

 ガチャガチャガチャッ!

 

 

 何度かドアノブを弄ってみたが、やっぱり開かなかった。

 

 

「え、ひどくない……?」

 

 

 ――アリアを取られた……!?

 

 

 勇者の盾の話もしたかったのに……!

 

 

 アベルが閉じた扉の前で茫然と立ち尽くす。

 

 

 ……そうしていると。

 

 

「ご苦労さまでした。ではお気をつけて……。フローラさまは とてもお優しい人ですから きっと良い奥さまに なられますわ」

 

 

 召使女性が背後にやって来て“おかえりはあちらです”と玄関扉へと促して来た。

 

 

「………………」

 

 

 アベルが召使女性に目を向ける。

 召使女性はにこにこと目を細め、アベルが動き出すのを待っているようだ。

 

 アベルは目の前の扉をどうにか開けてもらおうと声を掛けたが、『ごくろうさまでした。ではお気をつけて……。フローラさまは とてもお優しい人ですから きっと良い奥さまに なられますわ』と張り付いた笑顔のまま同じことしか言わない。

 

 ……彼女の使命なのだろう……、少々不気味だが時々こういう人々と出会うことがある。

 

 アリアに“ゲームの中だから”と聞いているから なるほど納得。

 アベルはそういう人(・・・・・)たちが いるということだけ理解し、深く考えないことにした。

 

 

(……これは……埒が明かないな……)

 

 

 アベルは仕方なく今夜は宿屋に一泊することにして、ルドマンの屋敷を独りで後にする。

 

 

 

 

 パタン……。

 

 

 屋敷の扉が静かに閉まり、アベルは屋敷から離れた。

 

 

「……………………アリア…………」

 

 

 去り際、アベルはアリアが居るであろうフローラの部屋を見上げてから宿屋へと向かった……。

 




アベル、独りで追い出されちゃいましたw

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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