プックル足早いよね。
では、本編どぞー。
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……さっきアリアと一緒に寄ったにも関わらず、酒場ではマスターがアベルに向けて「お客さんもフローラさんと結婚したいんだって? いやあ大変だねえ」なんてニヤニヤ。
バニーガールには……
「…………あら? あらあら? あなた……あの子と結婚するんじゃなかったの? うわっ、乗り換えたの?」
……なんて訝し気に眉を顰められ嫌悪の顔を向けられる。
金持ちの女に乗り換えた最低な男……、に見られた気がした。
「誤解です! そういうわけじゃないですよっ!」
アベルがそう言うと「フーン……?」と冷ややかに睨まれる。
その後で、
「ウワサだと炎のリングは南の方の火山の洞窟に眠っているって話よ」
“その山、死の火山て呼ばれているんですって!”彼女はそう教えてくれたのだった。
ルドマンが言っていた古い言い伝えは有名な話のようだ。
古い言い伝えの不思議なリングが今も残っている……、ということは相当危険な場所にあるわけで。
アベルは今回もやっぱり骨が折れるなと、景気付けに酒を一杯注文した。
「怪物がウヨウヨしてるのに ふたつのリングなんて探せないよ」
アベルの元に酒がやって来ると、先程酒場に寄った時にはいなかった近くの席の客が残念そうに嘆いている。
マスターがアベルに酒を提供し終え「縁が無かったねえ、飲みな飲みな飲んで忘れちゃいな」などと嘆く客に慰めの言葉を掛けていた。
アベルがそちらを見てみれば、呟いたのはルドマンの家に来ていた若者だとわかる。
「……………………ごちそうさまでした」
――一人脱落か……、ということはフローラさんは道具屋の男か、アンディさんと……?
アベルは一気に酒を飲み干し、酒場を後にしていたのだった。
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「火山の洞窟は危険だよね……」
酒場での出来事を思い出したアベルはアリアを連れて行くのは止めた方がいいのかも……と
――けど、離れてしまうとアリアは そのままどこかへ消えてしまいそうだし……。
アリアには離れ離れになった十年間だけでなく、再会してからも何度も姿を消され、アベルは肝を冷やしている。
本人のせいではない時もあるし、そうであっても悪気はないのだろうが、目の届かないところに行かれると心配で堪らない。
怪我してないか、とか。
呪いが再発してないか、とか。
困っていないか、淋しがっていないか……等々。
これは多分 庇護欲で、アリアには過保護だと笑われているが心配なものは仕方がないのだ。
(アリア、僕が居なくて眠れてるかなぁ……。)
アリアが今どうしているかを考えながらアベルは頭を抱えて“はぁ”と溜息を吐いた。
「主殿……」
――主殿は随分アリア嬢に入れ込んでしまったようですね……、そのお気持ち、わからなくもないですが……まあ、そうですよね……。
あれほど忠告していたのに……と、ピエールは兜の下で眉を寄せる。
どういう形になるのかはわからないが、未来が変わらず このまま二人が別れることになったらアベルはどうなってしまうのだろうか。
病んでしまうんではないかと一瞬危惧した…………、ものの。
(まあ、主殿は大丈夫でしょう……。)
アベルはアリアと別れたとしてもビアンカかフローラがいる。
どちらかの女性が悲しみのアベルを癒してくれるだろう。
そうしてただ順当な時が流れていくだけ……。
未来を変えるなどという行動はいつしか諦めて行くのだ。
そうなった時、ピエールはアリアについて行くつもりでいる。
アベルとは決別することになるが、彼女を独りにしたくなかった。
ピエールがそう考え至ると、自分もアベルと同じだなと自嘲してしまう。
……男二人が互いに黙り込んでいると、部屋の扉をカサカサッと引っ掻く音が聞こえてくる。
扉の方へと目をやってみれば、プックルが扉を掻いていた。
「…………プックルどした? 寝ていたんじゃないのかい?」
「がうがうっ(扉を開けてくれ、主!)」
「……今、真夜中だよ? おしっこに行きたいのかい?」
プックルの様子にアベルは立ち上がり扉へ。
「がうがうっ(我は大人だぞ!? 小便など寝る前に済ませてあるっ!)」
「……しょうがないな……」
扉の前にやって来たアベルは“今考え事してたのに……、プックルとアリアって似てるとこあるよね……”と自由に振る舞うプックルの頭を撫で、扉を開け放った。
ところがプックルが部屋を出る様子は無い。
「…………? 出ないの?」
「がうがうっ、グルルルル……」
アベルが様子を窺うと、プックルは突然アベルの服に噛みつき、外へと出そうとしてくる。
「あっ……ちょ、プックルそんな引っ張ったら破れ……、っ、わかったよ。今一緒に行ってやるから……。ピエール、ちょっと留守にする。プックルおしっこみたいだ」
「解りました。私は先に休んでおりますね」
「ああ、そうして」
アベルは就寝のため外していたターバンはそのままに、
◇
……アベルと共に宿屋を出た途端、プックルが走り出す。
「ハッ、ハッ、ハッ……!」
「プックル……!! はぁっ、はぁっ……(いったいどこへ……)」
プックルはアベルに振り返ることなく
町の人が驚くためプックル単独で行動させるわけにはいかない。
アベルは置いて行かれないよう、プックルを追い掛けた。
「ちょっ、プックルどこへ行くんだい!? そっちはルドマンさんの屋敷で今はみんな寝てる時間…………、……え?」
アベルが追い掛けて行くと、プックルがルドマンの屋敷の前に座っているのが見えて来る。
ルドマンの屋敷までやって来たアベルはプックルに話し掛けたが、ふと目に入った二階のバルコニーに人影が見えて足を止めた。
――誰か居る……?
アベルは人影が気になり、徐々に近付いてバルコニーを見上げる。
『…………ぅっ、ぅっ……』
バルコニーに居る人物は蹲っていてよく見えないが、泣いているようだ。
小さな嗚咽が漏れ聞こえていた。
アベルはその声に聞き覚えがあり、静かに語り掛ける。
「…………アリア…………?」
『……ぅ……ぐすっ……?』
泣いている人物はアベルの声に気付いたのか顔を上げた。
「……アリア、泣いているのかい……?(何で……?)」
「…………っ、その声……、アベル……?」
アベルが訊ねると蹲っていた人物が顔の前で何かを振り払う様な仕草をした後で立ち上がり、手摺りから顔を出す。
アベルは泣き声で確信していたが、蹲っていた人物はやはりアリアだった。
「…………やっぱりアリア……」
「アベルっ……。わた、私もっ連れて行って……!」
「えっ」
ポッ、とアリアの涙なのだろうか、不意に雫がアベルの頬に触れた。
――やっぱり泣いてる……、何があったんだ……? フローラさんが何かするとは思えないけど……。
ルラフェンで取り乱した時よりはましだが、アリアの頬が月の光を反射させキラキラ光っている。
何かあったんだろうかとアベルは心配になってしまった。
「っ……ここから連れ出して欲しいの……!」
アリアはバルコニーの手摺りから身を乗り出し、飛び降りようとする。
「っ、アリアっ、そんな高い所から落ちたら危ないよ……!」
「この世界じゃ落ちても死なないんでしょっ? 早くしないとみんな起きちゃうよっ」
「……落とし穴とか崖なら大丈夫だけど……。でもそこは……」
――怪我をする気がする……。
なぜかはわからないが、冷たい石畳みの地面をチラリと見下ろしアベルはそう感じた。
落とし穴とか、崖等落ちると想定されている場所は落ちてもOKで落ちると想定されていない場所からのダイブは怪我をするっていう……。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!