ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

バルコニーはプックルがいれば おりられる。

では、本編どぞー。



第四百四十七話 メソメソアリア

 

「っ、アベルぅぅ……!」

 

 

 アベルの頭上でアリアのアベルを求める悲痛な声が響く。

 彼女は手摺りを掴み再び蹲って顔を伏せてしまった。

 

 

「っ……アリア…………」

 

 

 ――何でそんな悲しそうな声で僕を呼ぶんだ……? まさかルドマンさんに何かされた……!?

 

 

 アリアの表情は暗くて読み取れないが、アベルは彼女が「ぅっ、ぅっ」と口元を覆いながらも嗚咽を漏らしている様に胸を痛める。

 

 アリアに何があったのかはわからないが、今すぐ駆け付けて抱きしめてやりたい……。

 

 ……アベルは隣で同じようにアリアを見上げるプックルに視線を移した。

 

 

「プックル、僕を乗せてバルコニーまで上がれる?」

 

「がう? がうがう」

 

 

 プックルはアベルの願いに応えるように頷く。

 

 

「じゃあ、お願い」

 

「がうがう(任せるがよい、主!)」

 

 

 アベルがプックルに跨ると、プックルは華麗に浮かび上がりバルコニーにあっという間に着地した。

 

 

「…………アリアお待たせ」

 

 

 アベルはバルコニーに降り立つとプックルから離れ、蹲るアリアに声を掛ける。

 

 

「ぅっ、ぅっ……」

 

 

 アリアはバルコニーにやって来たアベルとプックルには気付いていない様子だ。

 そこでアベルがそっとアリアの頭を撫でようとしたが、プックルが一足先に前足をアリアの頭にのせていた。

 

 

「がう……」

 

 

 ――まあ、その……何だ、我が来たからそう泣かずとも良かろう? お前の泣き声がうるさくて眠れん、早く泣き止むが良い。

 

 

 プックルが前足を乱暴に前後に動かす。

 と、アリアがその勢いに負け尻餅を搗いた。

 

 

「……ぁっ、ぃた……ぁ、プックルぅっ!!」

 

 

 アリアはプックルに気付き、彼に抱きつく。

 アベルがその後ろで眉を寄せ不満顔をしていた。

 

 

「がうぅ……?(おお、熱烈抱擁……! 悪くない、悪くないぞ!!)」

 

 

 プックルは満面の笑みを浮かべて、縋りつくアリアの髪を一舐め、二舐め慰める。

 

 

「ぅぅっ、プックルぅ……!」

 

 

 アリアはプックルを抱きしめる腕に力を込めた。

 

 

「っ、アリア、そんな大きい声出したらルドマンさん起きちゃうんじゃ……?」

 

「はっ!? あっ、アベル……! いたのね……!」

 

 

 アベルの声にやっとアベルが居ることに気が付いたアリアはプックルの背後を見上げて目を瞬かせる。

 

 ……アリアの涙は驚いた拍子に止まった。

 

 

「いるよ……アリアが僕を呼んだんでしょ……(いたのねって……そんなあっさりとした言い方……)」

 

 

 ――僕が来ないと思ってたわけ……?

 

 

 今まで泣いていたくせに、涙が引っ込んだのか あっさりとしたアリアの物言いにアベルは少しばかり傷付いた。

 

 だが彼女との距離が近くなり はっきりとアリアの顔が見えると、思っていた程辛そうではなかったので、そこは安心する。

 

 

「っ、来てくれてありがと……。ぐすっ、私を下まで おろして……」

 

「ああ、もちろん」

 

 

 アリアが鼻を一(すす)り。手を伸ばすと、アベルはその腕を引いて立たせ彼女を抱き寄せた。

 

 

「ぁっ……、っ、……アベルっ……」

 

 

 ――アベルの腕の中だ……、温かい……、…………まだ、大丈夫…………もう少し一緒に……。

 

 

 アベルに抱き寄せられ、アリアは大きな背に腕を回し、耳を彼の胸に押し当てる。

 トクトクトク……と、少しだけ早い鼓動が聞こえた。

 

 

「…………っ…………と、とりあえずプックルの背に乗ろう、か……」

 

 

 ――アリアさん……、場所……変えませんか……、いや……このまま抱き上げてもいいんだけどね……。

 

 

 アリアに抱き返されたアベルの頬が熱くなる。

 

 このまま抱擁を交わしていたいところだが、ルドマン等に見つかるとまずい。

 先ずは地上に降りることが最優先だ。

 

 

「プックル、頼むよ」

 

 

 アベルの言葉にプックルがアリアのマントを ちょいちょいと甘噛みして引っ張る。

 アリアが振り返るとプックルは「がうっ」と小さく一声。

 

 

(二人を乗せるのは少々重いが、飛び降りるくらいならまあ良いか。)

 

 

 プックルは背に乗るよう促し、前をアリア、後ろにアベルと……二人が乗ったのを確認すると、早速飛び降りようとした。

 

 

「ひゃっ……ングッ!?」

 

 

 突然の浮遊感にアリアが悲鳴を上げそうになったので、アベルはさっと後ろから彼女の口を手で覆う。

 もう慣れっこなのか、アベルの手付きは手慣れていた。

 

 そうして二人は地上へと降り立つ。

 

 

「……っ、も、平気。……ありがとう……二人とも……」

 

 

 アリアは自分の口元に添えられたアベルの手を剥がし、プックルから降りて頭を深々と下げた。

 

 

「……アリア、何で泣いてたの……?」

 

 

 アベルもプックルから降りると、頭を垂れるアリアの頭を撫でる。

 彼女は ぱっと顔を上げた。

 

 

「……何のこと……? 泣いてなんかいないよ……?」

 

「いや、泣いてたよね? 涙のあと残ってるんだけど……、何でそんなすぐばれる嘘吐くんだい?」

 

 

 アリアは笑っていたが、目が腫れているのがわかる。

 それに加えて涙のあとが乾き始めていた。

 

 アベルが彼女のバレバレの嘘に冷静に訊ねる。

 

 

「…………ぅ。そ、それは……、だって……、………………――から……」

 

「ん……? 何? 聞こえない……、もう一回言ってくれる?」

 

 

 アリアの声が小さくてうまく聞き取れない。

 アベルは耳に手を添え、彼女の口元近くへ身体を屈めた……。

 

 

「…………っ、あの……、本当大丈夫だから」

 

「……そんなわけないでしょ。言ってごらんよ。怒らないからさ」

 

「ぅ……」

 

 

 アベルの顔が近付いたことにアリアは驚き、押し退けようとするのだが、アベルは優しく穏やかに告げる。

 ……アリアは気まずそうに眉を顰めていた。

 

 

「アリア」

 

 

 アベルはまっすぐにアリアを見下ろす。

 彼女は間近でじっと見下ろしてくるアベルの視線から逃れられないと観念したのか“こくり”と唾を一飲みしてから口を開いた。

 

 

「っ、ぁのね……、泣いたちゃったことが……恥ずかしかった、だけなの。本当に大丈夫だから……」

 

「…………本当に?」

 

「うん……、本当に……」

 

 

 アリアが申し訳なさそうにおずおずと言葉を組み立てると、アベルは疑っている様子で小首を傾げる。

 が、アリアは小さく二度頷き肯定した。

 

 

 ――泣いてるとこ見られたなんて恥ずかし過ぎる……。

 

 

 アベルには以前何度か泣きついたことがある。今更な気もするが、恥ずかしくて頬が熱くなってしまった。

 

 

「そっか……わかった。……で、何で泣いてたの……?」

 

「えっ!? 話戻るの!?」

 

 

 再び泣いてた理由を訊ねられ、話が戻ってしまったとアリアは目を丸くする。

 

 

 ――私のことなんか気にしなくていいのに……。

 

 

 ……そう思ったのだが。

 

 

「戻るよ。気になるし。僕 諦めずに何度でも訊くから、さっさと理由言った方がいいよ……?」

 

 

 アベルが穏やかな顔で静かに諭してくるので、アリアの眉根が寄せられた。

 そうして、彼女は気まずそうに目を逸らし、ぽつぽつと語りだす。

 

 

「ぅ……。アベルって……そういうとこあるよね……っ……、ぁの……、恥ずかしいん……だけどね…………ぇと……………………」

 

「う、ん……? 何々、僕がいなくて淋しくて泣いてたって……?」

 

 

 言葉が上手く紡げないのか、アリアが途中から口篭もってしまう。

 

 そんな彼女の言葉が待ち切れなかったのか、アベルはアリアを困らせたのかと思い、おどけて自分の願望を告げていた。

 

 

「……………………」

 

 

 アベルの言葉にアリアは黙り込んでしまう……。

 

 

「なーんて……ははっ、そんなわけないか」

 

 

 ――いっつも僕の方が淋しがってる側だもんな。

 

 

 頭の後ろを掻き掻き。

 アベルは自嘲しつつ、アリアの頭を撫でた。

 

 するとアリアの瞳が潤いだす。

 

 

「そう、なの……。淋しくて……心細くて……、アベルともう一緒に旅が出来ないのかと思ったら涙が止まらなくて……」

 

 

 ぽろっ、と。一滴。

 

 

 アリアの頬を伝い涙が零れ落ちていた。

 アリアはハッとして、泣き顔を見られたくないのか慌ててアベルに抱きつく。

 

 

「えっ……」

 

「っ……アベルが来てくれて嬉しかったの……。来てくれるなんて思わなかったから……ありがとう……」

 

「っ、ぁ…………、っ、うんっ、アリア。僕も会いたかったよ……。君がいないと……淋しかった……、…………独りは淋しいよね」

 

 

 ――そうだったんだ……そうだったん…………っ、ぁぁあぁああああああ…………、もう可愛いぃぃぃ~~~~!!

 

 

 縋りついて来るアリアが可愛くてアベルは彼女を抱きしめ返す。

 アベルの心の中は大騒ぎだったが、アリアに伝える言葉は紳士的に穏やかに。

 

 彼女の頭を優しく撫でながら腕の中の確かな温もりに、アベルは自分の元にアリアが戻って来たことを実感していた。

 

 

「うん、アベル……っ」

 

「アリア……」

 

 

 ……二人は再び抱擁し、その内彼女がそっと顔を上げるとアベルは静かに口付けを落とす。

 

 その後でアベルはアリアを引き連れ宿屋へ戻ることにした。

 




アリア『ぅぇっ、ぅぇっ……(泣)』

プックル「…………(アリアがうるさい……眠れん……)」

アリアのメソメソ声は宿屋まで聞こえてたっていう。
ネコ科(?)なキラパンは耳が良い。

猫は犬より二倍も耳が良いのです。

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