ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

死の火山にやって参りますた。

では、本編どぞ。



青年期・前半【死の火山】
第四百五十話 死の火山


 

 

 

 

 

 ……サラボナを出てもうどれくらい経ったのだろうか。

 

 アベル達一行は荒野を進み【死の火山】と呼ばれる【炎のリング】が眠る洞窟を目指していた。

 死の火山へと至るには連なる山脈を越えて行かねばならない。

 

 山脈の奥に一際大きな山があり、その頂から噴煙が上がっているのが見える。

 アベルから目的地の説明を受けていたアリアは【死の火山】を遠目に眺め一言。

 

 

「死の火山っていうから、死火山なのかと思ったら違ったのね……別の意味なんだ……(そりゃそうよね……)」

 

 

 何かを察したらしく、不安そうな顔をしていた。

 恐らく怖いのだろう。

 

 

 アベルは“僕がいるから大丈夫だよ”とアリアの頭を撫でて励ましながら歩みを進め、途中途中でキャンプをしつつ確実に死の火山へと近付いて行く。

 

 

「アリア、もうすぐ死の火山の洞窟だよ」

 

「うん……」

 

 

 多くの山々を抜けた先で開けた荒野が広がり、死の火山の全貌が現れると、麓にぽっかりと大きな穴が開いているのが見えた。

 そこが恐らくルドマンや町の人が言っていた【炎のリング】が眠る洞窟だろう。

 

 ……死の火山の洞窟。

 

 入口の穴は大きく、アベル達を中へと誘うように ただ静かに口を開けて待っている。

 

 アベルが洞窟の入口を指差すと、アリアはごくりと唾を飲み込んだ。

 

 

「あの広さなら馬車ごと入れそうだ。アリア大丈夫かい? ここまでよく歩いたね。足疲れてない? 疲れたら馬車の中で休んでていいからね」

 

「……ううん、大丈夫。がんばるよ」

 

 

 アベルがアリアの頭を撫でて労うと、彼女は笑顔を見せた。

 ただ、その笑顔が少しだけ強張っているように見える。

 

 

「…………ね、アリア。僕が頑張ればいいんだから、君はそんなに頑張らなくていいんだよ?」

 

「え……? でも」

 

「戦いは僕や仲魔達で何とかなるし、アリアは僕を癒してくれればそれでいいっていうか……」

 

 

 ――アリアの笑顔が明日の活力になるんだよね……。

 

 

 アベルは洞窟へと向かいながらアリアの手を取り繋いだ。

 

 

「癒す……? あ、回復呪文ね! うん、任せ……」

 

「っ、ちがうっ! そうじゃないっ!」

 

 

 アリアが“回復呪文なら任せて!”と言おうとしたが違ったらしい。

 アベルは立ち止まって彼女の手を強く引いて抱きしめていた。

 

 

「え、あっ……アベルっ?」

 

 

 アリアの頬が瞬時に真っ赤に染まる。

 逞しいアベルの身体に包まれ 昨夜を思い出してしまったようだ。

 

 

「……アリアは僕の傍で笑っててくれたら それでいいんだよ。あ、出来ればハグしてもらえると嬉しいけど」

 

 

 ――一日お疲れ様って、こう……ハグして甘やかしてくれると癒されるっていうか……。

 

 

 アベルはアリアを抱きしめながら愛おしむように絹髪を数回撫でてから離れた。

 

 ここは町ではない。

 キャンプ中でもない。

 

 いつ魔物が現れるかわかったものではないから、ハグは短めにしておかないと命取りになる。

 

 

「……ははっ、魔物がいつ現れるともわからないから、外じゃハグは難しいね」

 

「アベル……」

 

 

 アベルが辺りを警戒して見回すが、今は魔物の気配はないようだ。

 ここに至るまでにも幾度となく戦ったが、宿屋で会った若者が言うにはこの先の洞窟内にも魔物がウヨウヨいるらしい。

 

 アリアに怪我をさせないのはもちろん、全員無事で【炎のリング】を手に入れたいものである。

 

 

「洞窟に入るのは怖いかい? この中多分暑いし、魔物も多いよ?」

 

 

 ――アリアが怖いなら馬車に待機してもらっててもいいんだけどな……。

 

 

 アベルはアリアに訊ねていた。

 ところが彼女は頭を左右に振る。

 

 

「……ん、少しね……。あっ、でもアベルがいるから平気だよ? だから一緒に歩きたいの、お願い」

 

「…………うん、そっか。わかった。じゃあ……」

 

 

 アリアのお願いにアベルが嬉しそうに改めて手を差し出すと、彼女はその手を取り、再び一行は洞窟へと歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……死の火山の洞窟に入ってすぐに下り階段が見える。

 その奥からムワッとする熱気が昇って来るのがわかった。

 

 

「……うわ……熱っ……」

 

「……だね、マグマが近いのかな。アリア、足元気を付けてね」

 

 

 ――確かマグマの側を歩いた記憶が……。

 

 

 熱気を浴びたアベル達の皮膚は瞬時に汗を滲ませる。

 アリアが額に浮いた汗を拭うと、アベルも顎に伝う汗を手の甲で擦り階下を見下ろした。

 洞窟の入口は暗かったが階段を下りて行くにつれ、明るくなっていく。

 

 

「っ、アベルっ、マ、マグマ……! すぐ下にマグマが……!(どうりで暑いと思ったよ……!)」

 

「あんまり端っこに行かないようにね。落ちたら大変だ」

 

 

 洞窟の一階層(地下一階)に下りると奥へと続く通路があるものの、そこは切り立った崖の様で、下にはオレンジ色のマグマが流れているのが見えた。

 どうやらこのマグマの明るさで洞窟内が明るく見えるようだ。

 

 マグマはボコボコと煮え滾り、その蒸気が立ち昇って洞窟内に熱気を充満させている。

 その蒸気は上へ上へと時に灰や白色を纏いながら火口を目指し昇っていった。

 

 そんなマグマをアリアが恐る恐る確認すると、あまりの恐怖にその場にへたり込んでしまう。

 

 

「落ちたら大変って……なに悠長なこと言って……、こんなの落ちたら死んじゃうよ……。溶けてなくなっちゃうよ?」

 

 

 ――おしっこ ちびっちゃうかと思ったよ……、でも思った程暑くはないかな……。

 

 

 ゲームだから……かな?

 

 

 予想していた程の暑さはなかったものの、暑いには暑い。

 汗がさっきからじわりじわりと染み出ていた。

 

 ただ、呼吸はなんとか出来るので換気は行き届いているようだ。何処かに天然の換気口でもあるのだろう。

 

 ……アリアがへたり込んでいると、汗を拭いながら地下一階フロアを見渡していたアベルがやって来る。

 

 

「確かに……。アリア、怖いなら馬車に乗っててもいいんだよ?」

 

 

 アベルはどう行けば良かったんだっけ……、などと道のりを思い出そうとしていたが、洞窟内部まで憶えているわけもない。

 

 とりあえず前に進まねばとアリアの手を引いて立たせてやった。

 

 

「ううんっ、大丈夫! ここはゲームの世界だからねっ。……でも、やっぱりちょっと怖いかな……」

 

 

 アリアはへたり込んだくせに また恐る恐る通路()下を見下ろし「ぅっ」と熱気に顔を背ける。

 怖いもの見たさというやつだが、じっと見ているとオレンジ色の河に吸い込まれそうで うねるマグマは恐ろしくも美しい。

 

 そんな彼女の様子を見てアベルは目元を緩めた。

 

 

「……フッ、しょうがないなぁ。アリアは子どもみたいに怖がりだからずっと手を繋いでてあげてもいいけど?」

 

 

 ――ほらほら、僕の手を繋いだら怖くないでしょ? ……ってこんな風に言ったら怒るかな?

 

 

 ほらほら。

 

 

 アベルは澄ました顔でアリアの前に手をプラプラさせる。

 子ども扱いしてしまったため、怒られるのを覚悟したのだが。

 

 

「っ…………ずっと……いいの? 離さない?」

 

 

 意外にもアリアはその手を取ったのだった。

 

 

「えっ、あっ…………っ、もちろんだよっ」

 

「……ふふっ、これなら安心……。アベルって頼もしいねっ! 戦闘中はちゃんと離れるから安心してね?」

 

 

 アベルの手指から離れないよう、しっかりと指を絡め合わせ手を繋ぐとアリアは繋いだ手を持ち上げ破顔する。

 

 彼女は ほっとした顔をしていた。

 




死の火山て、洞窟内部でマグマが渦巻いてるんですよね。
噴火はしてないけど、リアルだと恐怖しかないと思うのです。

そして、めっちゃ熱いんだろうなぁ、と。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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