ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

アンディ、あんた漢だよ……!

では、本編どぞ。



第四百五十一話 洞窟内で独り戦う男

 

「っぅぅ……、アリア、君って子は……(本当可愛いんだから……!)」

 

 

 ――ああ、早く宿屋に泊まっていちゃいちゃしたい……!

 

 

 微笑むアリアの汗ばむ額に張り付いた髪が色っぽく感じられて、アベルは繋いでいない方の手で前髪を避けてやる。

 指先に彼女の汗が付着するとついそれを凝視してしまった。

 

 

(アリアの汗……とか……ナニコレ……、なに……舐めていい……? いいよね?)

 

 

 危険が隣り合わせの場所であるにも関わらず、ドッドッドッとアベルの鼓動が早くなる。

 何せずっとお預け状態、アリアの汗だけでも興奮してしまえるのだ。

 

 アベルはそーっと濡れた指を口元に持って行こうとしたのだが……。

 

 

「……あ、私、汗掻いてて……気持ち悪いよね。ごめんね」

 

「えっ、ぜ、ぜぜん……って、あ…………ぁぁ…………」

 

 

 アリアは鞄からタオルを取り出し、アベルの濡れた指先を拭いた。

 アベルは落胆し項垂れてしまう。

 

 

「……アベルどうかしたの……? やっぱり気持ち悪かったよ……ね? でもごめん、この洞窟暑いから汗が止まらなくって。ここを出たらちゃんと綺麗に拭くからちょっと汚いけど許してね」

 

「いや、汚いなんて思ってないけど……(舐めたくなっただけです……)」

 

 

 アリアに何故か許しを請われ、アベルは首を左右に振った。

 

 

「あっ、じゃあ臭う? やっぱり手を繋がない方がいいかな? 手も汗出て来ちゃってるから臭いって言われるの嫌だし……」

 

 

 アリアは自らのニオイを確認するように嗅いでみるが、自分ではよくわからなかったようで、手を放してアベルから距離を取る。

 彼女の行動にアベルは眉を寄せていた。

 

 

「な……いったい何の話? ……ち……がう、違う違うっ、何でそうなるんだ?」

 

「え?」

 

「アリアは汚くなんてないよっ!?」

 

 

 アベルが大きな声を上げ否定する。

 

 

「え? なに、どういうこと? 汗、汚いじゃない。臭くなっちゃうし。制汗剤もつけてないんだよ? 近くに天然温泉でも湧いてたらいいんだけど……(火山といえば、温泉だよね……!!)」

 

「温泉は気持ちいいよね! ……ってちっがーーーーう!! 僕はアリアの汗に興奮してただけっ!」

 

 

 アリアが自分を汚いと蔑んでいるように思えて、アベルは温泉に同意しつつもはっきりと本音を告げてしまった。

 

 

「え、こうふん? えっ……ええっっ!?!? なんでっ!?(汚いし臭いのに!?)」

 

 

 アベルの本音を聞いてしまったアリアは驚きに目を丸くする。

 

 

「アリアが汚いなんて思ったことないよっ! それに臭いとか……、好い匂いだし、例え臭くてもそれはそれでいいって言うか……むしろ嗅ぎたいっていうか……」

 

 

 アベルは大きな声で否定した後で、もじもじ……と。

 両手人差し指をイジイジしながら恥ずかしそうに呟いていた。

 

 

「……………………っ、アベルってヘンタイ……」

 

「う……、またヘンタイって言われた……。まあ……今更だからいいけど……。と、とにかく僕はアリアの汗が舐めたかっただけだから、うん。さあ、先に進もう!」

 

 

 アリアに変態呼ばわりされたが、彼女の気持ちが離れることがないのはわかっているアベルは甘んじて受け入れる。

 

 

 ――素直な気持ちを伝えて何が悪い! いつか絶対舐めてやる……!

 

 

 気を取り直してアベルはアリアの手を取り、歩き出した。

 アリアはサラッと言われた最後の一言に頭をぶん殴られたくらいの衝撃を受けた様子で「舐めたかったってナニ……」と顔を真っ赤に染め連れられて行く。

 

 

 “アベルは主人公なのに なんでそんなこと言っちゃうの……”

 

 

 アリアが呆然となりぶつぶつと何か言っていたが、アベルは彼女を横目に口角を上げつつ、行く先を警戒しながら進んだ。

 歩いて行くと少し先に人工的な橋が見えて来る。

 

 古い言い伝えの【炎のリング】が眠るであろう この死の火山の洞窟は、(いにしえ)の民たちが宗教的な儀式にでも使っていたのだろうか。

 もしかしたら昔はマグマもここまで多くはなかったのかもしれない。

 石を組み立て造られた人工的な橋はマグマ上の通路と通路を結んでいた。

 

 

「こんなところに よく橋なんて架けられたね。昔の人ってすごいな……」

 

 

 アベルが感心しながら橋に近づいて行くと、男の声が聞こえて来る。

 

 

 

 

『――っ……そぉっ! ……れでもくらえっ……! っ、ぅぅっ、ボクは負けないぞっ!』

 

 

 

 

 “こんなところに来る人間なんて自分たちくらいのものじゃないか?”などとアベルが耳を澄ましていると、その声に何となく聞き覚えがあるような気がした。

 そして、魔物達の呻き声も聞こえる。

 

 ……どうやら男が魔物の群れと戦っているようだ。

 

 

「っ、アベル、向こうで人の声がしたよ。苦戦してるみたい……! 助けなきゃ!」

 

「ああ 行こう!」

 

 

 これまで ぼーっとしていたアリアも気が付いたのか、ふと我に返りアベルの手を引く。

 アベル達は声のする方へと走り出した。

 

 

「ヒャドっ! うわぁあっ、あっちち!!」

 

 

 アベル達が声がした現場に駆け付けると、アンディが魔物の群れに取り囲まれていた。

 

 彼を囲んでいるのは、馬やヤギ、コウモリといった複数の動物の特徴を併せ持った悪魔【ホースデビル】と三匹と、岩石から生まれた魔物【ばくだんいわ】一匹の群れだ。

 

 アンディは果敢にも氷呪文【ヒャド】で応戦しているが、多勢に無勢。

 【ホースデビル】から放たれる【メラ】の上位呪文、【メラミ】によって火傷を負い、【ばくだんいわ】がじっと様子を見ているため気になって下手に手出し出来ない様子で魔物達を睨み付けている。

 

 

「ハァハァ……っうぅっ! フローラっ……! ボクは負けないぞ……絶対炎のリングを持ち帰ってみせる……! ハァハァ……」

 

 

 アンディが火傷を負った身体で勇気を振り絞り、もう一度【ヒャド】を唱えようと目を閉じ魔力を集中させるのだが、魔物が【ヒャド】を放つまで待ってくれるわけがなかった。

 

 残酷にもアンディが【ヒャド】を唱える前に【ホースデビル】が再び【メラミ】を放つ。

 

 ……燃え盛る炎の音がアンディに向かって行った。

 

 

「ハァハァ……ぁ…………っ、くそっ……」

 

 

 アンディは炎の音に気付き目を開けたが、火傷で傷ついた身体で逃げるにはもう遅い。絶望を見たような青い顔で大きな炎の玉がやって来るのを見ていることしか出来なかった。

 

 

 ――こんなところでボクはもう終わりなのか……? フローラにプロポーズもしていないのに……!

 

 

 

 

 ……………………フローラ……。

 

 

 

 

 どうか幸せに…………。

 

 

 

 

 本当はボクが幸せにしてあげたかったけど…………、ごめん。

 

 

 

 

『……ディ……!』

 

 

 

 

 ……アンディが覚悟し諦めたように目を閉じたその時、フローラの声が聞こえた気がした。

 

 




女の人は汗をとても気にするのです。

アンディはいい人……!

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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