ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

アンディさんはフラフラと彷徨っている。

では、本編どぞ。



第四百五十六話 フラフラアンディ

 

 

 

 

 

 ……アベル達は再び洞窟内を()く。

 

 

「はぁ……暑いな……。アリアは平気?」

 

「うん……大丈夫……、ぁ。アンディさんだ……」

 

 

 汗を拭いながら二人は会話しつつ、前方にまたしてもアンディの姿を発見した。

 先程別れたアンディがアベル達の目線の先でフラフラと同じ場所を行ったり来たりしている。

 

 ……その彼の目が虚ろだ。

 

 

「ん……アンディさん……? っ、アンディさん……っ!!」

 

 

 アンディの様子がおかしい気がしてアベルは駆け寄り、彼の肩を軽く叩いた。

 

 

「うーん暑いなあ。くらくらする……。でも負けないぞ……」

 

 

 アンディは意識が朦朧とするのか頭を左右に振り振り。アベルの声掛けにも気付いていない様子でぶつぶつ呟き通路の奥へと行ったと思ったらすぐに戻って来る。

 

 

「フローラ……。待ってて……、フローラ……」

 

「アンディさん! しっかりして下さいっ!」

 

 

 アベルは、焦点の合っていない瞳で“フローラ”と連呼するアンディの両肩を、今度は真正面から掴んで揺すった。

 

 

「アベル……(魔物にやられたわけじゃなさそうだけど……)」

 

 

 アベルの後ろでアリアが心配そうに様子を窺っている。

 

 

「アンディさんっ!」

 

「…………フローラ…………ハッ! あなたは……!!」

 

 

 アベルが一喝すると漸くアンディの目の焦点が合い、アベルをはっきりと認識してくれた。

 

 

「アンディさん、良かったら一緒に行きませんか……?」

 

「な……あなたは何を言って……!?」

 

 

 アベルがアンディの目を真っ直ぐ見ながら告げると、彼は眉根を寄せ不快感を露わにする。

 

 そのアンディは汗をぐっしょり掻きながら赤い顔をしている。

 ……アベル達からはアンディが随分と体力を消耗しているように見えた。

 

 

「……炎のリングを渡すことは できませんけど……ここからあなたを無事に連れ帰ることくらいは できますから……」

 

 

 アベルがチラッとアリアに目配せする。

 

 

「うん、アンディさん。このままここに いたらあなた倒れちゃいます。あなたが倒れたらフローラさんが悲しみますよ……?」

 

「相談したいこともありますし、とりあえず馬車に乗って下さい」

 

 

 アベルに応えるようにアリアが続けると、アベルはアンディの肩から手を放した。

 

 

 ……だが。

 

 

 アンディがその場から動くことは無く、“二人とも余計なお世話だ……ボクは独りでも絶対に指輪を手に入れてみせる……”と、彼はアベルとアリアの言葉に息を詰まらせる。

 

 

「ぐ……、ボクは情けが欲しいんじゃない……! 指輪が欲しいんだ……! 放っておいてください……! あなたには ま、負けませんよ……!」

 

 

 ――独りでも……絶対手に入れてみせる……!

 

 

 アンディはフラフラしながら またも去って行った。

 

 

「アンディさん……」

 

 

 ――やっぱり話は聞いてもらえない……か。

 

 

 アンディに相談を持ち掛ける二度目のチャーンス! と思いきや、そうではなかったらしい。

 アベルは仕方なくアンディの背中を見送った。

 

 彼は頑なに【炎のリング】を求め彷徨っている。

 

 ところがアンディは少し先まで行くと、戻って同じ場所をまた行ったり来たり。

 

 ……通路の周りではマグマの海が止めどなく波打っている。

 あれでは【炎のリング】を手に入れる前に干乾びてしまうのでは……。

 

 

「……アベル……」

 

 

 ――死んじゃったりしないよね……?

 

 

 アリアはどうしたらいいのかわからずアベルのマントを掴んでいた。

 

 

「…………アンディさんも負けられないんだ。僕も負けられない、先に進もう」

 

「……うん……」

 

 

 アベルはアリアの手を取り、再び歩き出した。

 

 

 

 

 そして少し先に進むとマグマが冷え固まり、歩いて行けそうな床が見えて来る。

 

 けれどもその冷え固まった岩と岩の割れ目から熱い蒸気が。マグマの熱が漏れ出ていた。

 冷え固まっている……とはいえ岩のすぐ下はマグマのようだ。岩の下で燃え続け、隙間から蒸気と共にオレンジ色の明かりが垣間見え、床もかなりの高温だと思われる。

 

 

「……そこ歩けそうだね」

 

 

 ――遠くに……宝箱……?

 

 

 マグマの上に出来た床は歩けそうではあるが、相当の熱さだろう。

 火傷をし兼ねないが、その先に宝箱が見えるではないか。

 

 アベルは“アリアがいるし渡らない方がいいかな……”とも考えたのだが、視界の先の宝箱は欲しい。

 

 

(さて、どうしよう?)

 

 

 アベルは腕組みして遠くの宝箱を眺めていた。

 

 

「…………うわぁ……ここを歩くの……? 火渡りみたいね……」

 

 

 アリアから聞いたことのない単語(ワード)が飛び出す。

 

 

「火渡り?」

 

「うん……詳しくは知らないんだけどね、お寺の修行の一つでそういうのがあるらしいの。お寺の敷地内で燃やした木々の上を裸足で歩くものなんだけど、毎年どこかのお寺でやってるのよ。あ、お寺っていうのは修道院や教会みたいな施設のことね」

 

おてら(・・・)は修道院……。フフッ、前世の話かな? それは熱そうだね」

 

 

 ――マザーなら一瞬で通り抜けられそうだな……。

 

 

 アリアの話にアベルはマザーの見事な走りっぷりを思い出しつい吹き出す。

 

 

「ん~……私はやったことないから知らないけど、熱くないらしいよ……?」

 

「へえ……。けどここは火傷しそうだ(アリアを怪我させるのはやっぱ違うな。別の道を行くか……)」

 

「そうだね、マグマの上だもの」

 

 

 宝箱は諦め別の道を行こうとアベルが考えていると、アリアが燃える床を見下ろし頷いた。

 

 

「……アリアは小さい頃の記憶は無いのに前世の記憶は はっきり憶えてるんだ……不思議だね」

 

「ふふっ、ね~。なんでだろうねっ。あっ! アベル、あそこに宝箱があるよ! 行ってみようよ!」

 

 

 アリアと話をしつつ、別ルートを探し始めたアベルに彼女は燃える床の上を行こうと誘ってくる。

 

 

「いいの? 下りて歩くにしても……高温だから気を付けないと火傷するよ?」

 

 

 ――アリアの服は水に濡れたら透けるし、燃えたら灰になって裸になっちゃうんじゃ……?

 

 

 それいいね! 僕は大歓迎だ……!

 

 

 アリアも宝を手に入れたいのだと解り、自分の気持ちと同じなのが嬉しい……と思ったところで彼女には紳士的に真面目に答えつつ、これまでお預け中のアベルの(中で)は同時に別のことも考えていた。

 

 暑さのせいだろうか、身体が熱くてついよからぬことが過ってしまう。

 

 

「ふむふむ。ダメージ床ってやつね……! ふふっ、うん、なら私に任せて!」

 

 

 いかにもダメージを負いますよ……という床にアリアは腕組み、数度深く頷くとパッと明るく破顔した。

 

 

「え?」

 

「フフフ……アベル、私は憶えている呪文なら大抵何でも使えるのよ?」

 

「ほう……? つまり火傷しない方法がある、と……?」

 

「うんうん」

 

 

 自信満々で語るアリアの楽しそうな顔が可愛くて、アベルは徐々にアリアとの距離を近付ける。

 アリアは目を閉じてから人差し指を一本立てた。

 

 ……そうして目蓋を開いて自慢げに語り出す。

 

 

「ダメージ床っていったら、あの(じゅ)も……ンッ?(アベル……?)」

 

 

 呪文……と言おうとしたアリアの唇にアベルは軽くチュッと唇を重ね、すぐに離れた。

 

 

「……あ、ごめん。なんか可愛くて」

 

 

 へへっ、とアベルは頭の後ろを掻いて笑う。

 

 

「な」

 

 

 アベルの突然の行動にアリアは絶句してしまった。

 

 

「それでダメージ床だっけ…………? どうぞ続けて?」

 

「な……。…………コホンッ、では……………………って、続けられないよ! 何で突然キスするのっ?」

 

 

 ――……びっくりしたっ! すごくびっくりしたっ!!

 

 

 絶句したアリアにアベルが続けるよう促すので、話の続きをしようと試みたができない。

 

 二人の直ぐ後ろで“ピュゥ”とピエールなのかはわからないが口笛が聞こえ、アリアは思考を停止、頭は真っ白に。

 頬は真っ赤になってしまった。

 

 

「アリアが可愛いから……?」

 

 

 ――得意気なアリアもいいね……!

 

 

 アベルは最近見ていなかったアリアの得意気なドヤ顔が可愛くて愛おしくてしょうがなかったらしい。

 

 

「っ……、わ、わけわかんないんですけど……。ぁう、何の話してたんだっけ……(忘れちゃったよ……って、私すぐ記憶飛んでない? やっぱり痴呆……!?)」

 

「だからダメージ床の話」

 

「っ! そうだった……! うん、百聞は一見に如かず、やってみるねっ!」

 

 

 ――アベルってば……みんなの前なのになんで平気でキスして来るの……。

 

 

 アベルにツッコミを入れられアリアは思い出すも、彼の行動が不可解過ぎて頭の中は疑問だらけだ。

 

 

(ダメージ床といったら、この呪文……!)

 




アベルの溺愛が過ぎる。とにかくアリアに触りたいらしい。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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