ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

いつも笑顔の人がいつも楽しいわけではない。

では、本編どぞ。



第四百五十七話 いつも楽しいわけじゃない

 

 “【トラマナ】!!”

 

 

 アリアはトラップ回避呪文【トラマナ】を迷うことなく唱える。

 

 毒沼やダメージ床、バリア床で使えば身体に傷を負うことなくその上を歩くことが出来るゲーム上(・・・・)ではかなり重宝する呪文だ。

 

 アリアが呪文を唱えた途端、アベル達の身体を何か(・・)が覆った気がした。

 

 

「……? 何だろう……これ……、アリアわかるかい?」

 

 

 アベルやピエール、プックルの身体の周りに目に見えない何か(・・)が纏わりついている。

 アベルは自身の身体を見下ろし訊ねていた。

 

 

「……一見に如かずも何も……見えないんだね……。でも周りにある(・・)のがわかる……なるほど……」

 

 

 アベルに訊ねられたものの、アリアもわからないらしい。

 ただ何か(・・)が身体に纏わりついていることだけはわかった。

 

 

 ――もっとこう、キラキラ~って光り輝くとか、わかりやすい効果だと格好良いのに……。

 

 

 アリアは【トラマナ】を理解するも、ちょっぴり残念な気持ちでアベルを見る。

 

 

「私も初めて使ったの。これで多分火傷しないと思うから下りてみようよ。ふふっ、ダメなら回復しながら行けばいいんじゃないかな?」

 

「……………………ぁ、アリアのそういうところ……、無謀だと思うけど……フ……そうしようか」

 

 

 駄目なら仕方ないとあっさり諦め、アリアは回復しながら行くことに方針転換。

 アベルは目を瞬かせて呆れるが次には口角を上げて頷いた。

 

 アリアはあまり深く物事を考えないタイプなのかもしれない。

 怖がりな癖に常に楽天的で何を考えているのかさっぱり読めない不思議な女性……。

 基本的にはアベルに従ってくれるが、彼女は風のように自由気ままに振る舞う。

 

 猫のように気まぐれな一面もあり、アベルは毎度振り回されているが、自分にはない彼女の底抜けの明るさに救われている。

 

 

 ――アリアは元天使だもんな……、人間の僕とは考え方が根本的に違うんだな……。

 

 

 ……念のため【ふくろ】の中の【やくそう】の数を確認しておくアベルだった。

 

 

「ふふっ、ドヤ顔してごめんね?」

 

「ううん いいよ、君の得意気な顔も大好きだから」

 

「っ、も、もぉ……、アベルったら……」

 

 

 アベル達は熱い床へと足を延ばし、遠くに見える宝箱を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

 アベルは 宝箱を 調べた!

 なんと まふうじの杖を 見つけた!

 

 アベルは まふうじの杖を

 手に入れた!

 

 

 

「……魔封じの杖だ……」

 

「おぉっ! これが有名な魔封じの杖ね! やった~☆」

 

 

 ――これがあれば……【マホトーン】を唱えなくて済むわね、その分の魔力を他に使える……!

 

 

 アベルが手にした【まふうじの杖】にアリアは手を ぱんっと叩き合わせて笑顔を見せる。

 

 あれからアリアの唱えた【トラマナ】は有効だったようで、アベル達は火傷を負うことなく無事に宝箱のある場所まで辿り着いていた。

 

 ここに来るまでにアベルが“アリアは優秀だなぁ”と感心し、彼女を褒めようとしたタイミングで魔物の群れと遭遇。

 マグマの床上でのイチャ付きは危険と判断、さっさと宝箱のある場所まで移動した。

 

 宝箱のある場所はマグマの床より少し高い位置にあり、熱い床からは離れることができる。

 

 ……高い位置から見渡せるため、魔物が来てもマグマの床を気にせず戦えるから安心だ。

 

 

「…………くくっ、有名なんだ?」

 

「うんっ」

 

「くくくっ、アリアって何でいつもそんなに楽しそうなの?」

 

 

 アリアの大袈裟な反応に、笑いが込み上げアベルは腹を抱える。

 

 自分は何度も死の火山(ここ)【まふうじの杖】(これ)を手に入れているからか特に感動はないが、代わりにアリアが喜んでくれているのが嬉しかった。

 

 そんなアベルにアリアは目をぱちぱち。

 

 

「え? 別にいつも楽しいわけじゃないけど……?」

 

「えっ、そ、そうだったの……!?」

 

 

 ――えぇっ!? どういうこと……!?

 

 

 今めちゃくちゃ可愛く笑ってたよね……!?

 

 

 アリアが首を傾げて訊ねて来るのでアベルも目を瞬かせる。

 

 

「そりゃ……せっかくの旅だから楽しもうとは思ってるけど……。アベルには私が楽しそうに見えてるのね……?」

 

 

 そう告げるアリアがアベルのすぐ傍にやって来て上目遣いに見上げた。

 

 

「あ、うん……」

 

「…………ふふっ、そっか。うん……そうだね、今はアベルと一緒だから楽しいよ」

 

「あ、うん、僕も……!(……ん? 今は(・・)ってどういうこと……?)」

 

 

 アリアが優し気に微笑むと、アベルも同意するが何かが引っ掛かる。

 ……と、思ったらアリアの笑顔がフッと消え、小さな呟きが聞こえた。

 

 

「……この世界は私には生き辛いもの……でも……――――ゃ……」

 

「アリア…………?」

 

 

 最後はよく聞き取れなかったが、アベルを見上げるアリアの表情が……、……ない。

 喜びも怒りも悲しみも、何も無く、無表情のそれだった。

 

 アリアのそんな顔は初めて見る。

 

 

 ――アリア、何を考えてる……?

 

 

 アベルはアリアの無表情に、普段とは違う感覚でドクンと胸が疼いた気がした。

 心臓を……ちくりと刺すような……、そんな感覚。

 

 

 彼女の感情を推し量れなくて、アベルの額から大きな汗粒がひたりと落ちる。

 

 ……冷や汗だ。

 

 初めて見る彼女の一面にアベルは臆してしまった。

 

 

 ……だが、次には。

 

 

「…………怖い魔物ばっかりで嫌になっちゃうっ、アベル、助けてっ」

 

 

 “きゃぁっ☆”

 

 

 アリアが急に笑顔で眉を顰めてアベルに抱きついて来る。

 

 

「っと…………うん、僕が居るから大丈夫だよ……」

 

 

 ――あれ……? いつものアリア……?

 

 

 アベルは違和感を感じつつも懐に入って来たアリアを抱き止め頭を撫でたのだった。

 

 

「………………うん」

 

 

 アベルにナデナデされながらアリアは目を閉じる。

 

 

 ――アベルが結婚したら……、私、どこに行こう……?

 

 

 パペックに踊りを教えてもらったし、旅先の町で路銀稼ぎは出来るけど……、誰か仲間をさがさないと独りはしんどいな……。

 

 

 アリアは呪文が多く使えると言っても、体力はゴミである。独り旅では無傷で済まない。

 

 満身創痍のアンディに、独りだとああなる(・・・・)んだな……なんて、未来の自分を見た気がして思わずアリアは【まほうのせいすい】を手渡していた。

 

 ゲームの中の世界はリアルならさぞや楽しいだろう……と思いきや、想像以上にハードだ。

 町の外はどこを歩いても魔物が我が物顔でうろついている。

 

 ……町から町へ行くのも命懸け。

 

 夜は現実世界よりは夜目が利くが、昼間よりも魔物との遭遇が増えるため移動は控えたい程。

 アリアもピエールと出会っていなければ修道院から出ることすら適わなかっただろう。

 

 ……この世界を生き抜くのはとても難しいことなのだ。

 

 モブキャラの自分……いや、たまたまバグかなんかで生まれたモブですらない存在なのかもしれないアリアは、なるべく無茶はしたくないなと思った。

 

 “アベルとずっと一緒に居れば安心出来るのに”……とはいえ、アベルはビアンカかフローラの夫となる。

 

 自分はそれまでの繋ぎ。

 アベルのことは愛してしまったが、しかし、今更どうしようもない。

 

 アベルが二人の内どちらかと結婚したとして、新婚夫婦について行けるわけがない。

 ならば独りでどうにか生き抜く力を付けていくしかないのだ。

 

 

 アベルが自由だと思うアリアの言動や行動は、全てではないが先を見越したもの。

 キャシーやパペックに教えてもらった踊りも、カジノでの仕事も、ゴールド銀行に貯めているお金も、全ては独りで生きて行くため。

 

 

 ――アベルとお別れするのはとても悲しいけれど、お別れまでにまだ時間があってよかった……心の準備をしておかないとね……

 

 

(……けど。今はアベルのことだけ、考えていたい……。)

 

 

 アリアは自分を包んでくれるアベルの温かな腕や胸に心地良さを感じながら、今は先のことは考えないことにした。

 




好きな人にはできるだけ笑顔で接していたいものです。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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