“おどるほうせき”は出遭ったら是非屠りたい。
では、本編どぞー。
◇
アベル達は【まふうじの杖】を手に入れ、再び熱い床の上をアリアの【トラマナ】で避け先を進む。
……その先で何度か魔物の群れと遭遇したが、またもアベル達の前に魔物の群れが現れていた。
「あれは……!!」
魔物の群れを前に、アリアが先程手に入れた【まふうじの杖】で魔物の群れを指し、大きな声を出す。
……現れたのは【わらいぶくろ】の上位種である【おどるほうせき】四匹。
【おどるほうせき】は自己の周りに煌びやかな宝石を浮かせ、その宝石に目が眩んだ人間を襲う魔物で、宝石を巧みに操り攻撃して来る。
守備力も高めで下位種の【わらいぶくろ】同様、【ルカナン】・【メダパニ】・【マホトーン】と嫌な呪文の使い手でもある。
一匹ならさっさと潰せばいいが、四匹と遭遇したとあっては骨が折れる。
「っ、踊る宝石か……! アリアっ、僕の後ろに……!」
アベルはアリアを下がらせようとするが、アリアは動かなかった。
しかも、彼女は動かないどころか【おどるほうせき】を見て瞳をキラキラさせているではないか。
「キレイ……! きらきらしてる~!」
「ピエール、プックル! 一匹ずつ集中して叩く! アリア……、宝石が好きなのかい……?」
アベルはピエールとプックルに指示を出し、アリアの前に立ちはだかり背後を窺う。
ピエールとプックルは早々に【おどるほうせき】に攻撃を仕掛けに走り出していった。
「……ん? そういうわけじゃないけど、キラキラしてて綺麗だなって」
「……………………、…………わかった。とりあえず戦おうよ」
――そっか、アリアは宝石が好きなのか……、町で何か売ってたっけ……?
……アリアは宝石好きとは言っていないのだが。
アベルはサラボナに戻ったら何かまたプレゼントしたいなと思いつつ、背に収めた【パパスのつるぎ】を抜くと【おどるほうせき】に向かって走り出す。
「おっけ~! 踊る宝石はお金持ちだもの! がんばっちゃう! えいっ」
アリアも快諾して、【まふうじの杖】を【おどるほうせき】に向かって振りかざした。
すると【まふうじの杖】から怪しい霧が発生、その霧は敵を包み込み【おどるほうせき】四匹の内、二匹の呪文を封じることに成功する。
「おっ、アリア使い方わかってるね!(踊る宝石って金持ちなのか……??)」
アベルは一匹に止めを刺し、アリアの発言を不思議に思うもサムズアップを送った。
「えへへ。こっちが呪文封じられる前に封じちゃえば、怖くないわ。さあ、お金お金!! アベル今だよっ」
「えっ(お金……?)」
――アリアはお金が好き……?
アリアの【おどるほうせき】を見る目が何となく うっとりしている気がするのだが、気のせいだろうか……。
これまで旅の間に手に入れた金はアベルが全て管理しているが、彼女に金をくれと言われたことは無い。
オラクルベリーではカジノで働いた分を寄越してきたくらいだ。
だが彼女は自分の買い物を時々しているし、あのお金はどこから出しているのだろう……。
(お小遣いあげた方がいいのかな……。)
アベルは【おどるほうせき】の二匹目に剣を振り下ろしながらそんなことを考えていた。
【おどるほうせき】はアベルの攻撃で倒れることはなく、反撃を繰り出してくる。
「アリアっ! っ、お小遣いが欲しかったらいつでも言っていいからねっ!」
「へ……?」
アベルは【おどるほうせき】からの攻撃を剣で受け止めつつ、呪文を唱えるため魔力を集中させていたアリアに笑顔を見せた。
戦闘中に悠長なお喋りとはいかがなものか……と、余裕なのはこれまでの経験の賜物だ。
……アベル達はこの辺りの魔物達よりも多少強かった。
「がうっ!!」
プックルの鋭い爪が風を切るように【おどるほうせき】を斜めに切り裂き二匹目に止めを刺す。
……残るは二匹。
二匹とも呪文を封じられ、宝石をぶつけて攻撃して来るか、一か八かの呪文発動に賭け呪文を唱えるか、はたまた逃走するか……。
その行動は限られたものである。
そして、二匹が選んだ行動は呪文詠唱だった。
呪文を唱えるが、呪文は封じられている。発動せず彼等は互いに顔を見合わせ、焦り出していた。
「……お金……いただきます! バギマ!!」
アリアは魔力を集中し終えると【バギマ】を放った。
真空の刃が辺りの熱を伴わせ、【おどるほうせき】二匹を襲う。
【おどるほうせき】からは「ギャァ!」という声が聞こえ、【バギマ】の手応えを感じた。
「お金……」
「踊る宝石はいっぱいお金を落とすの! 私 知ってるんだからっ。お金を稼ぎたい時においしいのよっ」
――ドラクエⅢではお世話になったんだから……! 何度も逃げられたけど……。
アベルが“アリアは宝石よりお金が好きなのか……”と考えるも、アリアは笑顔で【おどるほうせき】について教えてくれる。
これまで【おどるほうせき】と遭遇したことが無かったため、彼女が戦ったことはないはずなのだが、前世の記憶によるものなのだろうか。
「そ、そうなんだ……? アリア詳しいんだね……」
なにはともあれ、アリアが顎に伝った汗を拭って艶っぽく笑うのでアベルは“色っぽいなぁ……♡”とつい見惚れて他のことはどうでも良くなってしまった。
ところがアリアの【バギマ】は【おどるほうせき】二匹に痛手を食らわせたものの、倒すまでには至らず彼女の眉が寄せられる。
「……って、ンもぅ! 倒せなかったぁ……! アベルっ、トドメをお願いしますっ(結構頑丈なのね……)」
「っ! ああ、任せて!」
アリアが鼻にかかったような声で云うので、アベルはドキッとしつつ、彼女が望む通りに残り二匹をピエールとプックルと共に倒したのだった。
◇
◇
◇
「アリア、終わったよ」
「お疲れ様~☆ さすがはアベルねっ。あっという間に倒しちゃったね、すごいっ」
残り二匹を仕留めると、アベルは背の鞘に剣を収めアリアに微笑み掛ける。
アリアはゴールド拾いを一時的に中断し、両手を合わせて眩しいくらいの笑顔を見せていた。
「いやぁ……それほどでも……。そんなに褒められると照れるよ……」
――もっと褒めて……!
頭の後ろを掻き掻き。
アベルの口から出た言葉と心の中は裏腹である。
「うふふっ、照れたアベルって可愛い♡」
「っっ!? 僕は可愛いよりも格好いいって言ってくれた方がいいんだけど……」
――なんでアリアは僕を可愛いって言うんだ……? ……別に嫌じゃないけど未だに子ども扱いされてるみたいでちょっと凹むんだよね……。
アベルがそれとなく伝えると、アリアは目を丸くした。
そして彼女は改めて口を開く。
「あ、そうだね。アベルはカッコイイよ♡ ……いつもそう思ってる……よ?」
「っ、本当かなぁ……」
「あら、私信用されてないみたい」
訝しむアベルにアリアが優し気に目を細めてクスッと微笑み、地面に転がるゴールドを拾い出す。
これまで出会った他の魔物よりも多くのゴールドに、アリアは“たくさんあるけど……思った程じゃなかったなぁ……”と残念そうな顔をしていた。
……いったいどれだけの金額を期待していたのだろうか。
「そっ、そんなことないよ!? けど……アリアいっつもあっさり言ってくれるから本心なのかなって……(まあ、それでも嬉しいんだけどね……)」
アリアの残念そうな顔を勘違いしたのだろう、アベルは慌てて言い直す。
「ふふっ、そっか。言葉の重みがないわけね? ごめんごめん、でも本当だよ? あ、はい、これ」
「……うん、ならいいんだ……。ありがとう」
――あれ? アリア今落ち込んでなかった……?
アリアがすぐに破顔し拾ったゴールドをアベルに手渡して来るので、アベルは表情を読み間違えた気がして目を瞬かせ 礼を告げた。
「アベルはそのままで素敵だよ。ちょっとエッチだけど、可愛くて格好良くて私の自慢の彼氏なんだから、そんなにへこまないで? どのアベルも私は大好きだし、とっても頼りにしてるの。あなたはもっと自信を持っていいと思うな」
「へこ……あ、えと……へこんでな……いよ? そっか……アリア僕のこと大好きなんだね……ハハッ、そうだよね。大好きだから可愛いって言っちゃうんだね……」
「うん、その通りっ」
「ハハ……なら、しょうがないか……」
アリアの言葉にアベルは頭の後ろを掻いて渋々笑う。
アリアの目に映る自分は常に格好良い男でありたかったが、彼女がどんな自分でも好きだというなら それはそれでいいかと受け入れることにした。
そうして二人は辺りに散らばったゴールドを急いで拾い集める。
「ん~……思ったほどゴールドが落ちなかったなぁ。これでおしまい」
「……そう? 君の言った通りかなりの量だと思うんだけどな……」
拾い集めたゴールドをアベルに渡したアリアが残念そうに眉を寄せると、アベルはゴールドを入れた財布を持ち上げ揺らした。
財布はジャラジャラと音を立て、ずっしりと重い。
【おどるほうせき】一匹につき200ゴールド。四匹いたから計800ゴールド。
嫌な攻撃をするため進んで戦いたい相手ではないが、金を稼ぐには持って来いの相手だ。
強さに余裕のあるアベル達には丁度いい路銀稼ぎになった。
おどるほうせきはⅢでは1023Gももらえるんですよ。
けどⅤでは200……。
アリアの記憶違いではなく、タイトル違いっていう。
この辺りの魔物は多くても55Gくらいだったかな? ……なので、おどるほうせきは破格っちゃ破格かな。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!