アリアはお留守番。
パーティーを二つに分けます。
では、本編どぞー。
「…………? そう、かなぁ……?」
アベルの声色が少し悲し気に聞こえた気がして、アリアはまだ目を合わせられないが、小さく首を傾げる。
「うん、わかってない。僕の想いの深さを全く理解していない」
刹那、グイッ。と。
アベルはアリアの手首を引っ張り彼女を自分の膝の上に座らせ、後ろから ぎゅっと抱き
その拍子にアリアの手からバケツが離れ、地面に転がりカランカランと音を立て転がる。
「あっ! ……ちょ、ちょっとアベル……? どう……(な、なに……!? ひ、アベルの膝の上っ……!?)」
アリアは突然のバックハグに目を見開いて身動ぎするが、当然アベルの力に敵うはずもない。
その内アベルはアリアの肩に顔を埋めて耳元で呟き出した。
「……アリアは……僕からもう、逃げられないんだよ……? それがどういうことかわかってる……?」
「逃げないよっ!?(って耳、くすぐったいってば……!)」
――私が消えるのは あなたと別れた後だから、
アベルがビアンカかフローラと結婚した後まで自分を傍に置いておくことはしないだろう。
さすがのアリアも愛人になってまでアベルと共にいようとは思わない。
それならそれで潔く身を引くまで。
それでも逃がさないというのなら、アベルは自分勝手な男だ。
……アベルがそんな男ではないと、アリアは信じている。
耳にアベルの熱い吐息が掛かり、身体がビクッと勝手に反応してしまうのはサラボナの一夜のせいなのか、はたまたこれまであちこち触られ慣らされたせいなのか。
アリアはアベルが声を発する度ぴくぴくと勝手に反応する身体が恥ずかしくて目をぎゅっと閉じ耐えていた。
「……………………フゥン? あ、キャンプの準備しようか! 多分今頃夜なんじゃないかな……? 今夜は僕がご飯を作るよ」
不意にアベルは“ちゅっ”とアリアの頬にキスをしてから立たせてやる。
名残惜しいがあまりくっついているとムラムラしてしまうので致し方ない。
外の様子は判らないが、体感的にかなり時間が経っているはず……。
アベルはキャンプ道具を取りにキャビンに向かって歩き出した。
「あ、ありがと……(……アベル……??)」
アリアはもうちょっと くっついていたかったなと思いつつ、転がったバケツを拾い、食事用の水を汲みに行く。
……そのアリアの背中をアベルは振り返り愛おし気に見ていた。
◇
回復の泉フロアにて、アベル達は今夜は急遽キャンプすることにし、今回はアベルが食事の準備をしている。
今夜のメニューは【キノコ豆乳スープ】に、魔物肉の串焼き、そしてちょっぴりパサパサのパンである。
スープにはクリエから買った豆乳と、マッシュから新たに植え付けてもらった原木栽培の自家製キノコをふんだんに使ってある。
それに、修道院で作ったアリアのパンもあった。
「よし、あとは煮えたら出来上がり。……アリア、煮える前に僕ちょっとこの先の様子を見て来るよ。火と味の調整頼める?」
「あ、うん。任せてって、え……独りで行くの……?」
アベルは天井を指差し、上の階の様子を見に行くと道具の整理を始め、共に行こうと、ピエールとプックル、サイモンに声を掛けていた。
そうして同行を頼む仲魔達にアベルは【やくそう】を分け与える。
「…………、…………ちょっと近くの様子を見て来るだけ。すぐ戻るよ。アリアはスラりんとロッキーとジュエルとでゆっくりしてて」
アベルはアリアにこの場に残って火の番を頼んでいた。
スラりんと、アンディを助けた際に仲間になった【ばくだんいわ】の【ロッキー】と……ここに来る直前に仲間になった【おどるほうせき】の【ジュエル】を残して行くようだ。
……それまで連れていたヌーバとパペックはどうなったのかというと。
ヌーバはロッキーが仲間になった際、泥であるのが
アリアはアベルから事後報告を受け「さよなら泥パック……」と名残惜しそうにしていた。
パペックもアリアに踊りの伝授を終えていたため馬車に乗っていたが、ジュエル加入時に念のため火山の熱で燃えない様、こちらもまたモンスターじいさんへ送ることにしたのだった。
アリアが「パペックは木で出来ているからしょうがないよね……」と悲し気に目を伏せたものの、次にはジュエルの輝きに目を輝かせている。
……彼女が宝石が好きなのか、お金が好きなのか、アベルにはまだ判断がついていない。
仲の良い魔物との別れに“二人とも火山の熱と相性が悪い魔物だからしょうがないよね……”とアリアが納得してくれたのでアベルは ほっと胸を撫で下ろしている。
その代わり、仲間になったロッキーとジュエルはまだ殆ど成長していない。
魔物の出ないこの空間に残す方が安全だろう。
ここで何かあるとは思えないが、アリア独りを残すのは心配なのでアベルは三匹に残ってもらい、自分は上の様子を見て来ることにしたのだ。
「あ、うん……。アベル」
「ん? どうしたの?」
「……無茶しないでね……?」
アリアが何か感づいている様子で心配そうにアベルをじっと窺って来る。
彼女の紫水晶に見透かされた気がしてアベルは息を呑んだ。
「っ、しないよ!? 僕は慎重派だからね……! 僕が何事も慎重に進めてるってこと、アリアも知ってるでしょ?」
――まさか気付いた!? ……アリアは鋭いからなぁ……。
アベルはこれまで石橋を叩いて渡って来ている。
無理な戦いをしないよう、事前にレベルアップも欠かさず行って来たのだ。
常に先を見越した行動を取るためには、せめて強さに余裕くらいは持っておきたい。その余裕がなければ冷静さを欠いて、未来を変えるための行動に移れない気がする。
闇雲に突っ込んで行った別世界のやり方では、咄嗟に運任せな判断しか取れないではないか。
……時折やって来る気まぐれな運だけに頼るようなやり方を、アベルはしたくなかった。
(だけど、アリアに【炎のリング】を一緒に取りに行かせるのは違うと思うんだ……)
アリアの言葉にドキッとしたアベルだったが、明るい笑顔で返す。
……そう、アベルは今、独りで【炎のリング】を取りに行こうとしているのだ。
アリアにそのことを知られたくなかった。
「ぅ……、そ、それはそう……だけども……(なら、さっき薬草をピエール君達にどうして配ってたの……?)」
アリアはピエール達が【やくそう】を仕舞う様子に何か引っ掛かる様子だ。
「アリア、心配しないで。僕はちゃんと君の元に戻って来るから大丈夫だよ。アリアには残りの食事の用意をしていて欲しいんだ、頼んでもいい?」
「あ、うん……わかった……」
アベルが下拵えした串刺しの魔物の肉の入ったトレーをアリアに渡すと彼女は受け取り頷く。
「…………いい子にしててね?」
アベルはアリアに言い聞かせるように頭をぽんぽんと撫でた。
「……ねえ、アベルぅ……? なんであなたは いっつも私を子ども扱いするの……?」
「ははっ、そういうわけじゃないよ! さあ、ピエール、プックル、サイモン行こうか!」
アベルの掛け声に「ええ、主殿」「がうがう」「はい、アベル様」とそれぞれが返事し階段へと向かう。
……アベルが最後尾についた。
「いってらっしゃい……、すぐ帰って来てね……?」
アリアのか細い声がアベルの背中に届く。
その声にアベルは振り返った。
「…………僕が行っちゃうと淋しい?」
「え…………べ、別に淋しくなんかないもん。お肉っ、焼いて先にみんな食べちゃうんだからっ。戻って来るのが遅かったら食べられないんだからねっ、アベルの好きな私の特製スパイスも もうちょっとで終わっちゃうんだからっ」
「…………もん…………プフッ。アリアってカワイイなぁっ!」
「えっ、わっ!?(ちょ、アベルっっ!!)」
……ぎゅぅっっ。
アベルはアリアに掛け寄り彼女を抱きしめる。
同時、アリアが持つトレーが傾き床にボトボトと肉が落ちてしまった……。
パペットマンとドロヌーバが火に弱いなんて知らんけど、なんとなく燃えそうだし乾いて風に攫われそうだったのでモンスターじいさん送りと相成りました。
ドラクエは愛らしいモンスターが豊富なので書いていて楽しいです☆
アベルとアリアのラブラブはいつも通りですが、モンスターとの交流も大好きなのでどんどん交流させたいと思います♪
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!