ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

464 / 822
いつもありがとうございます、はすみくです。

二匹? 三匹?

では、本編どぞ~。



第四百六十二話 二匹じゃない、三匹だ

 

 

 

 

 

 ……【炎のリング】の眠るフロアを後にし上の階へ戻って来ると、アベルは口を開く。

 

 

「……はぁ……さっきなにか、違和感があったんだけど……。指輪も手に入ったし、まぁ……いいか……(気のせいだよね……?)」

 

 

 握っていた【炎のリング】を失くさないよう袋にしまい、アベルは首を傾げた。

 

 この階も暑いには暑いが、先程の完全にマグマに囲まれた通路よりはまだマシだと思える程、アベル達の身体は暑さに慣れて来ている。

 朦朧としかけた頭も平常に戻り、話すのもそこまで苦ではない。

 

 ……アベルの身体は環境に適応するのが早いようだ。

 

 

「主殿もですか?」

 

「え? ピエールも? なんだろう……? さっきマグマの魔物と戦った時に感じたんだけど……」

 

 

 ピエールもなにか(・・・)を感じ取ったらしく訊ねて来るので、アベルは歩きながら それがなんだったのか……何とか思い出そうと腕組みをした。

 

 

「サイモンはなにか感じなかった?」

 

「戦いの後の一服はたまらんね」

 

「……そう。よくこんな暑い中で吸えるもんだね……息苦しくないのかい?」

 

 

 サイモンにも訊ねてみたが、サイモンはいつも通り相変わらず戦闘後の一服を堪能中。

 マグマの熱気で息苦しかったからか、一応さっきのフロアで吸うのは控えていたようだ。今頃煙管を燻らせている。

 

 

「あの手強い魔物を二匹も倒したのだ。一服とは言わず二服くらいさせてもらわねば。アベル様は吸わないから解らないかもしれんが、この一服が次の戦いのエネルギーとなるのだよ……!」

 

「ははは……、まあ、好きに吸っててくれて構わないけどさ(アリアもいないことだし?)」

 

 

 アベルが呆れ顔で云うと、サイモンが“煙管は紳士の(たしな)み”だとかなんとか講釈を垂れ出すので、アベルは呆れ顔のまま乾いた笑いを浮かべた。

 

 【炎のリング】は手に入れたのだ、多少気を緩めても構わないだろう。

 

 それに、洞窟内の魔物の気配が先程よりも減った気がする。

 【ようがんげんじん】を倒したせいなのか、下手にアベル達に手出しするのは危険と見ているのか……襲って来る魔物が行きよりも少ない。

 

 サイモンが暑い中でもまったり煙管を吸えるのはそんなこともあってのこと。

 

 サイモンの煙管をアリアは嫌っているが、未だにサイモンはそのことを知らないでいる。

 

 

 ……そんなアベルとサイモンの会話を聞いていたピエールがブツブツと何やら呟く。

 

 

「…………二匹も倒した…………、……二匹……? 二匹……!?」

 

「ピエールどした?」

 

「主殿! そうですよ、二匹ですよ!」

 

「ん?」

 

 

 ピエールが違和感(なにか)に気付いたのかアベルのマントを引っ張った。

 

 

「マグマの魔物は二匹しかいませんでした……! 私の記憶が正しければ、あそこに出る魔物は……」

 

「あ」

 

 

 ――そうだ、さっきあのマグマの魔物は二匹しか出て来なかった……!

 

 

 ピエールの言葉にアベルも思い出す。

 

 

(あそこに出る魔物の数は確か……)

 

 

 

 

「「三匹……!」」

 

 

 

 

 アベルとピエールの声が重なる。

 そう気付いた瞬間、アベルは目を見開いた。

 

 

「っ、ど、どういうことだい? 未来が変わっているということかい?」

 

「そ、そのようです……」

 

 

 手強かった【ようがんげんじん】との戦いに危なげなく勝利出来たのは、相手が二匹だったから……と言えなくもない。

 ……それ程に【ようがんげんじん】は強かった。

 

 そう、いつも(・・・)よりも戦う対象が減っていたのだ。

 

 

「ま、まあ……楽に倒せたってことで良しとしようよ」

 

「はい…………」

 

 

 アベルはアリアのように楽観的に応えてみる。

 が、ピエールの返事は暗かった。

 

 

「ピエールどうしたんだい? なにか問題でも?」

 

「……そんな簡単に未来が変わるものでしょうか……? 我々は特に何もしていませんよ……?」

 

「……どういうこと……?」

 

「パトリシア殿やアリア嬢達を置いて来たとはいえ、我々はいつも通り(・・・・・)に指輪を取りに行き、いつも通り(・・・・・)に戦ったように思うのです」

 

 

 アベルが首を傾げる中、ピエールは俯き冷静に語る。

 

 

「……うん、まあ……そう、だけど……」

 

「残り一匹はどうしたんでしょうか……?」

 

「え、だから未来が変わって一匹出なかっただけなんじゃ……?」

 

「…………そうでしょうか……。……アリア嬢達が気になります。急ぎましょう」

 

 

 ピエールは胸騒ぎがするらしく、アンドレに「急げ」と命令していた。

 

 

「えっ、ちょっと待ってよ、ピエール。それって……。だってあそこは魔物が出るような場所じゃないよ、ね……?」

 

 

 ピエールの発言にアベルの血の気がサッと引いていく。

 自然と足も速くなった。

 

 

「……急ぎましょう。念のため回復もしておきましょう」

 

「ピエール」

 

 

 ――嘘だっ、そんなことあるわけないじゃないか……!

 

 

 あそこは神聖な気で満たされていて、魔物が入れるような場所じゃ……。

 

 

 どうかアリア達に何も起こっていませんように……、そう願いながらアベル達は回復の泉のあるフロアを目指す。

 

 熱いマグマの床を踏み締めダメージを受けても、アベル達は進むのを躊躇しなかった。

 

 

 この先には回復の泉があるだけで、今はアリア達が寛いでいるはず。

 アリアが食事の用意をしていて、「おかえり」と自分達を笑顔で迎えてくれるはず。

 

 

 そう想像しながらも、鼓動がドクドクドクと逸るのはなぜなのか。

 ピエールの胸騒ぎが伝染し(うつっ)たようにアベルの心臓は強く脈を打ち続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……時はほんの少しだけ遡る。

 アベル達が【ようがんげんじん】と対峙している頃、アリア達はといえば。

 

 

「……ん~♪ 好い匂い。魔物のお肉だけど、どう見てもトリ肉ねっ」

 

 

 アリアは串に刺した肉を焼いていた。

 薪の火は落ち着き炭になっているため、網の上で焼く串付きの肉はさながらバーベキュースタイル。

 

 アリアはこれが結構楽しいらしく、黙々と作業をこなす。

 いつもはアベルと一緒にやるのだが、彼とは焼き方が違うため独り作業の方がいいなと思っていたりいなかったり(アベルは高火力で焼き上げるため外側だけ焦げて内側に火が通っていないらしい)。

 

 片側が焼けた肉をひっくり返し、両面がよく焼き上がった肉は網の端によけていく。

 

 

「ピキー、アリアちゃ~ん、こっちも煮えて来たよ~」

 

 

 鍋の様子を見ていたスラりんがスープが煮えて来たことを教えてくれる。

 スラりんは器用に身体を伸ばし おたまを掴み、中身をかき混ぜていた。

 

 

「スラりん 見ててくれてありがと~」

 

 

 呼ばれてアリアは鍋へ向かう。

 ジュエルとロッキーは近くで踊ったり、転がったりと楽しそうに遊んでいた。

 

 ……彼等は仲間になったばかりで【かしこさ】が足らない。

 

 始めはアリアの手伝いをしようと近くに寄って来ていたが、食材の前で固まり何も出来ずに まごまご。

 

 ジュエルは早々に【ふしぎなおどり】を踊り出し逃走。

 

 ロッキーは混乱し「メ、メ、メ……」と自爆呪文【メガンテ】を唱えそうだったので、アリアは慌てて「二人とも遊んでていいよ!」と二匹の母親のようにジュエルとロッキーには自由に過ごしてもらうことにした。

 

 

 ……幸いスラりんが手伝いをしてくれるとのことだったので、アリアとスラりんとで調理することに。

 

 

「にしても主さまたち遅いねえ?」

 

 

 アリアと場所を交代し、スラりんはアベル達が気になるのか、階段下へと向かい上を見上げる。

 だが、アベル達が戻って来る気配はない。

 

 

「うん……だね。ちょっと見て来るだけって言ってたけど……多分…………、でもアベル達は強いから大丈夫だよ。おいしいごはん作って待ってようよ」

 

 

 ――アベル、フローラさんのために独りで行ったんだね……手伝いたかったけど……来て欲しくなさそうだったし、仕方ないよね。

 

 

 二人(フローラと)の結婚指輪に自分が関わるのが嫌だったのだろうと思ったアリアは、無事を祈ることだけしか出来ず、頼まれた火の番を続けていた。

 

 くつくつと煮えるスープに豆乳を入れるのは最後の仕上げ。

 アベル達が早く戻らないかな……とアリアはスープをかき混ぜる。

 

 鍋の中にはきのこだけでなく、ニンジンや【ジャガイモ】、タマネギなんかも入っていた。

 

 野菜たちは修道院で貰ったものや、オラクルベリーやクリエから買ったもの。

 大分材料も減って来たので そろそろ買い足した方がいいだろう。

 

 アベルは野菜を貰った時に一瞬嫌そうな顔をしていたのだが、もしかしたら野菜の内のどれかに何か苦手なものがあるのかもしれない。

 

 アリアが「なにが苦手なの?」と野菜を並べて訊ねたがアベルは「苦手なものなんてないよ!」と答えなかった。

 

 

「……お腹空いて来たな……」

 

 

 ぐぅ。

 

 

 アリアの腹の虫が鳴る。

 肉の焼けた好い匂いが食欲を刺激して、アリアの口の中は唾液が溢れ出ていた。

 

 

 じゅるり。アリアは口元を拭う。

 アベルが戻るまでは我慢我慢と水筒の水を飲んで耐えた。

 




アリア、こっそりつまみ食いすればいいのに。

----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。