ようがんげんじん、再び。
では、本編どぞー。
……その内、階段下へと行ったスラりんから焦ったような声が聞こえて来る。
「ピキー……! アリアちゃん、アリアちゃん!! 大変だよぉっ!!」
「んー……? ……あっ! スラりんこっちへおいでっ!! ジュエル、ロッキー、パティと一緒に奥へ……!」
スラりんの声にアリアは慌てて【まふうじの杖】を手に構える。
アリアに呼ばれたスラりんはアリアの元へと駆け出していた。
ジュエルとロッキーはパトリシアと共にフロアの最奥へと退避。
階段上から高温で粘り気のあるオレンジ色の液体が部屋の温度で冷え、白い煙を纏わせながらゆっくりと流れ落ちてくる。
それは意思を持っているかのような動きで、涼しかったフロアの温度をあっという間に上げた。
シュー。
シュー。
ジュウゥゥゥ……。
シューシューというガス漏れのような音を立てながらオレンジ色の液体がすぐ階段側の泉にまで到達すると、清水を涸らすかの如く大量の真っ白い蒸気を上げる。
途端アリア達の視界は白い蒸気で不明瞭に遮られてしまった。
……だが それも次第に薄れていき、最後に残ったのは……。
「っ、なに……? ここに魔物は入れないんじゃ……」
オレンジ色の液体が徐々にアリア達の元へと近付いて、姿を現していく。
液体は蒸気を纏い、少しずつその形を変えて行った。
「っ……、なに、ヌーバみたいな……でも、熱っ……はぁ……」
アリアは形を変えていくマグマのような存在に身体中の汗が吹き出すのを感じる。
【まふうじの杖】をその存在へと向け様子を窺った。
「ピ、ピキー……、アリアちゃん、アレ、敵でしょ……? あつっ、熱い……ボク コワイよう……溶けちゃう……」
「……っ、大丈夫だよ。スラりんは強いんだから……! 私も頑張るから、スラりんも頑張って……?」
“【フバーハ】!!”
アリアの隣でスラりんが異形の存在に身体を震わせる。
戦いは突如始まり、アリアは相手の出方はわからないが、何だかヤバそうなのは解った。
ブレス系の攻撃をして来そうだなと予測し、とりあえず【フバーハ】を唱えておく。
……優しい光の衣がアリア達を包んだ。
「う、うん……! ボクがんばるっ。アリアちゃんを守るんだ……!」
「スラりんっ!?」
スラりんは武者震いしながらアリアの前に立ちはだかる。
異形の存在の姿は【ようがんげんじん】へと変化していった。
「っ、熱っ……! こういうのは……アレアレ。えっと氷系の呪文ね!」
――逃げられたら一番いいけど、地面が燃えてて今は歩けない……!
【ようがんげんじん】が階段上から来たため、その後ろには溶岩が続いている。
【トラマナ】で抜けられそうにもない程に熱を感じるため、逃げられそうにない。
このフロアは上の階よりも気温が低いから しばらく経てば溶岩も落ち着くだろう。
それまでなんとか凌げれば、アベル達が戻って来て助けてくれる。
アリアは倒すのは無理としても時間を稼ぎたかった。
「っ……倒せたらラッキーだけど……、私で倒せるかな……?」
“【ヒャダルコ】×2!!”
アリアは【ヒャド】の上位呪文【ヒャダルコ】を二度放ち【ようがんげんじん】に何とかダメージを与える。
スラりんは【スクルト】を唱え、守備力を強化した。
「はぁ、はぁ……、うん。効いてる効いてる。よし、もう一度……」
アリアがもう一度【ヒャダルコ】を放とうと魔力を集中させるが、それを待ってくれる程敵は甘くない。
【ようがんげんじん】は燃え盛る火炎を吐き出していた。
ゴォォォォッ……! と、勢いよく燃え盛った炎がアリア達に襲い掛かる。
「あっ、っぅうういっっ!!(痛いぃぃぃ!!)」
「アチアチアチチチ……!! ピキー!!」
アリアとスラりんの身体に【ようがんげんじん】の吐き出した火炎が触れ、二人は火傷を負ってしまう。
後ろに居たジュエルとロッキーにも届いたが、ジュエルは無傷、ロッキーは少々熱かったようだが大した火傷は負わなかったようだ。
パトリシアはもっと奥に居たため届かなかった。
アリアはすかさずスラりんと自分に【
回復に魔力を移行したため、【ヒャダルコ】を打てなくなってしまった。
「っ、どうしよう……ヒャダインを唱えてもいいけど、身体が追い付かないから魔力の消耗が激しいのよね……」
アリアが再び魔力を集中させ、【ヒャダルコ】のさらに上位の呪文【ヒャダイン】を唱えようかと思ったのだが、まだレベルが伴っておらず使用できるが魔力消費が激しい。
レベルに見合わない呪文を使えばあっという間に魔力が枯渇してしまうことだろう。
(でも、【ヒャダルコ】二回より【ヒャダイン】二回の方がいいのかな……。)
――こんなときアベルがいたら指示を仰げるのに……!
最近はアベルに指令を任せきりだったアリアは判断をつきかねていた。
(だって、私 元OLだよ!? こんな魔物と戦うなんてなかったものっ!)
魔物……
こんなマグマから生まれた化け物では決してない。
……そんなわけで、アリアはまごまごしている。
「ピキー……!!」
「あっ、スラりんっ!」
アリアがまごまごしている間に、スラりんが飛び出し【ようがんげんじん】に体当たりをかました。
熱い身体に体当たりしたスラりんの身体は一瞬オレンジ色に変わり、ドラクエⅤには出て来ないが【スライム】の色違い【スライムベス】を連想させる。
「アチチチ……!! ピキーッ! このぉっ、アリアちゃんに怪我させたなぁっ!! 主さまが黙ってないぞっ!! このっ、このっ!!」
スラりんは火傷を負いながらも必死で体当たりを繰り返していた。
「っ、スラりんっ……! ダメッ、溶けちゃうっ!!」
【ようがんげんじん】の周りにはスラりんから滲み出た油が飛び散っている。
中々良質な油っぽく、料理に使えそうではあるが、今はそれどころではない。
――どうしよう!? スラりん溶けてる!? ……あっ!!
アリアはハッとフロア中央の回復の泉に目を向けた。
(そうだ、回復の泉があるなら魔力使い放題じゃない……!)
今のアリア達が居る場所よりも【ようがんげんじん】の居る場所の方が回復の泉に近いが、光に触れることさえ出来れば回復は可能。
アリアは魔力を集中させ【ヒャダイン】を使うことにした。
ただ、上位の呪文を使うには魔力の集中が必須である。
いつもならアベルやピエール、プックルが庇ってくれるが彼等は今いない。【ようがんげんじん】背後の地面も多少冷めては来ているが、火は上がったままの状態で、まだ逃げ道は確保できなさそうだ。
……火傷を負ってでもやるしかない。
生きてさえいれば回復は出来る。
……すぐ傍の回復の泉に触れれば全快できる。
(うーん……、無謀だけど これで行くしかないよね……! その内アベルも戻って来てくれると思うし……!)
アリアが目を閉じ魔力を集中させていると、再び【ようがんげんじん】から燃え盛る火炎の息を吐き出された。
ゴォォォッ! という轟音に、スラりんの「ピキーッ!! あつぅぅぅいっ!!」の叫び声。
(うわっ……また来る……!?)
アリアが次は自分だと火傷に身構えるが、その炎はアリアには届かなかった。
「っ……………………、…………ん? あれ? 熱くない……って、あっ! ジュエル! ロッキー!!」
恐る恐る目を開けたアリアの前にはジュエルとロッキーが立っている。
二人はアリアが無事なことを確認すると【ようがんげんじん】に向かって行った。
アリアの足元にはスラりんが
本当に溶けてしまったというのか。
「うわっ……スラりん! 今 回復するね!」
「ピ、ピキー……」
“【ベホマ】!!”
ヨレヨレのスラりんにアリアが回復呪文を唱えると、スラりんの身体は立ちどころに回復した。
「……はぁ……よかった……(けど、魔力使っちゃった……。回復しないとスラりん死んじゃうし……)」
――これ、堂々巡りなんじゃ……。
【ようがんげんじん】はさっきから【かえんのいき】ばかり吐いていて、アリアは回復に回るため攻撃が出来ない。
先手必勝でさっさと【ヒャダイン】……いや、氷系最上級呪文【マヒャド】を使えば良かったとアリアは後悔していた。
「うぅ……、アベルぅ……早く戻って来てぇ……私、あなたがいないとダメみたいぃ……」
つい、弱音を吐いてしまう。
結局アリアはすぐに放てる【ヒャダルコ】を二回唱え、【ようがんげんじん】になんとかダメージを与えた。
ジュエルも宝石をぶつけてダメージを与え、ロッキーも体当たりで応戦。
……アベル達が戻って来るのを待っていた。
ボス戦はやっぱ書かないとね~。
パーティー二分割、別行動も面白いよね。
FF6をふと思い出した私でした。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!