ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

メ、メ、メ……。

では、本編どぞー。



第四百六十四話 メガンテ

 

 

 

 

 

 しばらく時が経ち……――。

 

 

「……はぁ、はぁ……、魔力切れ……」

 

 

 ――頼みの綱の回復の泉が……溶岩で消えちゃったし……。

 

 

 アリアは【まふうじの杖】を地面に突きながら何とか立っているが、身体は火傷だらけだった。

 服も(すす)けて黒く汚れてしまっている。

 

 スラりんもジュエルもロッキーも、ぐったりしつつもアリアを守るようにして【ようがんげんじん】を睨み付けていた。

 

 

 ……あれからアリア達は戦いを続けていたのだが、魔力切れでアリアが回復の泉に走り出そうとした途端、【ようがんげんじん】が回復の泉の上に溶岩を撒き散らし回復の魔法陣を分断。

 

 それにより癒しの光が消滅……使えなくしてしまったのだ。

 

 アリアは仕方なくアベルに貰った【いのりのゆびわ】に祈り僅かに魔力を回復させたものの、焼け石に水である。

 

 そろそろ倒れてもいいんじゃないかと思う程に戦っているのに、【ようがんげんじん】が倒れる気配はない。

 

 【やくそう】が入った【ふくろ】はアベルが持っているため、現在回復はアリアの回復呪文のみ。

 

 アリアは既に回復呪文しか唱えられず、攻めに出られていなかった。

 スラりんとジュエル、ロッキーの地味な攻撃が少しずつ【ようがんげんじん】の体力を削ってはいるが、彼等の攻撃は些細なものだ。

 

 ……圧倒的に火力不足である。

 

 その中で【ようがんげんじん】のブレス攻撃が毎度痛い。

 しかも時折マグマを投げつけて来るため、火傷が絶えない。

 

 

(……万事休す……、なのでは?)

 

 

 わかってはいるが、アリアは諦めきれなかった。

 

 

「……ごめんね……、私がしっかりして いないばっかりに……! でも、あなた達は守るからね……」

 

 

 アリアは咄嗟にスラりん達の前に飛び出し、【いのりのゆびわ】に祈ろうと手を組んだ。

 

 

 ――アベルに貰った【いのりのゆびわ】……そろそろ限界かもしれないけど……でもこの子達を助けるためなら……!

 

 

 アリアが祈りに目を閉じようとしたその時、背後に隠したはずのロッキーが突如として躍り出てくる。

 

 

 ドンッ、

 

 

 と、アリアにわざと体当たりして行くので、アリアは体勢を崩してすぐ後ろにいたスラりんに受け止めてもらっていた。

 

 スラりんのすぐ隣にいたジュエルは突然アリアが倒れてきたことに驚き、煤けた袋姿で引き攣り笑いを浮かべる。

 

 

「えっ、ロ、ロッキー……?」

 

 

 アリアはどうしたのかと目を瞬かせた。

 

 

 ……ゴロゴロゴロ。

 

 

 ロッキーはアリアに笑顔を見せながら素早く左右に回転し、おどけてみせる。

 そうしてロッキーはアリア、スラりん、ジュエルに体当たりし、三人を思い切りパトリシアのいるフロア奥へと弾き飛ばした。

 

 

「あうっ!?(ロッキーなにを……!?)」

 

「ピキーッ!?」

 

「キャー!!」

 

 

 アリア、スラりん、ジュエルの驚く声がフロアに響き、三人はロッキー独りを【ようがんげんじん】の前に残し、パトリシアの足元に転がった。

 

 パトリシアは「ブブブブ……」と転がってきたアリア達を憂いの瞳で見下ろしている。

 

 

「えっ、ロ、ロッキー……? ……っ! ダ、ダメっ……!」

 

 

 アリアはすぐさま起き上がろうとしたが、パトリシアにマントを踏まれて動けない。

 

 

 

 

「っ、ダメぇええええっっっ!!」

 

 

 

 

 ……アリアが叫んだその時既に。

 

 

 

 

 【ようがんげんじん】に向かってロッキーが自己犠牲呪文【メガンテ】を唱えていた。

 

 フロア中央付近で大きな爆発が起き、そこに白い煙が上がると様子は見えないが爆風がアリア達に向かって吹いてくる。

 

 その風とともにロッキーの破片なのか小さな小石が飛んで来ていた。

 

 

 ……その一部がアリアの足元にコロコロ、と。

 

 

 小石は先程ロッキーがアリアの前で笑顔で回転してみせたように、何度か転がり、そして、止まった。

 

 

 

 

「っ、……いやぁああああっっ!!」

 

 

 

 

 アリアは絶叫し、ジタバタもがく。

 

 “すぐに破片を拾って蘇生させなくては……!”そうは思ったものの、パトリシアにマントを踏まれていて立ち上がれなかった。

 

 

「ピ、ピキー……ろっきぃ~~……! うわぁああああんん!!」

 

「ろっきぃ……! ウッ、ウッ、ウッ……」

 

 

 スラりんとジュエルはロッキーが消えてしまったことにショックを受け泣き出してしまう。

 

 

「うぅっ、パティ放してぇ……! ロッキー……、っ、ロッキーの破片を拾いに行かなきゃ……!」

 

 

 アリアは足元に転がって来た小石を拾い、残りの破片も拾いたいからとパトリシアを見上げた。

 涙を零し訴えるアリアにパトリシアは弱り目で足を退けてくれる。

 

 

「っ、うぅ……なにもメガンテしなくても……。せっかくちょっと仲良くなれたのに……(アベルになんて言えばいいの……?)」

 

 

 ――あれだけの爆発だったんだもの、マグマの魔物も吹き飛んじゃったよね……、ロッキーありがとう……。

 

 

 とりあえず戦いは終わったんだと、アリアは目蓋を拭いあちこちに散らばっているロッキーの破片を拾いながら、フロア中央へ近づいて行く。

 

 フロア中央では未だもくもくと白い煙が上がっており、“シュー、シュー”という音がしていた。

 

 ロッキーの自爆によって【ようがんげんじん】がバラバラになり急激に身体が冷えていっているためだろう……、アリアはそう思っていたのだが。

 

 

 

 

「……ウソ……。でしょ……?」

 

 

 

 

 白い煙が徐々に晴れて来る……。

 

 

 するとアリアの足元にパラパラ……。

 

 

 パラパラ、と。

 拾い集めたロッキーの破片が散らばった。

 

 

「アリアちゃんっっ!! そいつ生きてるよっ! 近付かないで……!」

 

 

 スラりんがパトリシアの傍でアリアの名を呼んだが一歩遅く、アリアは【ようがんげんじん】の目の前で立ち尽くした。

 

 

 

 

「あ。私のバカ……」

 

 

 

 

 アリアの小さな自責の言葉はスラりん達には聞こえない。

 ただ、彼女はアベルのくれた【いのりのゆびわ】に触れ、諦めたように口角を上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……白い煙が落ち着いた頃【ようがんげんじん】は再び姿を現し、アリアに向けて燃え盛る火炎の息が吐き出される。

 

 アリアはその攻撃に死を覚悟し目蓋をギュッと閉じて身構えた。

 

 

「ああ、もうダメだぁ……もぉ、お手上げっ。私ってバカね……」

 

 

 ――戦うなら敵が倒れたかどうかちゃんと確認をしないとでしょ……! でないと寝首を掻かれてこっちが痛手を負うんだから……!

 

 

 前の世界でもそうだったじゃない!?

 営業成績で油断したら追い抜かされたじゃない……!

 締め日前日まで月トップだったのに……!

 

 あぁ、月一位の臨時ボーナス……久しぶりだったのに……、いっつも最下位だった後輩に最後の最後で持ってかれたぁああああっ!!

 

 

 ……アリアの脳裏には懐かしの営業グラフが浮かび、珍しく自分がぶっちぎりの成績トップだったはずが、たった一日で覆された。

 

 そんな苦い記憶が蘇る。

 

 

(思い出したら腹が立って来ちゃった。って油断してた私が悪いのか……。今度からは最後まで気を抜かないようにしなきゃ……! 営業成績一位を目指すぞ、おー! やる気出ーせ♪ 根気だーせ♪ 我ら栄光の○~○~社~♪)

 

 

 命が懸かっているというのに、アリアは前世の仕事を思い出していた。

 

 しかも残念なことに洗脳された社畜魂はまだ抜けていないらしい。

 社歌まで思い出してしまったではないか(営業に向かう前に毎朝歌っていた)。

 

 過去のことを突然思い出すなんてこれ、走馬灯かな?

 ……なんて、自分は死んでしまったのだろうか……。

 

 

 アリアは“アベルにお別れも言えなかったなぁ……”と、今更ながらにアベルを思い出し涙をほろりと一筋零す。

 

 

 ……ところがアリアは死んではいなかった。

 

 

 アリアが諦めの言葉を吐いたその時……――。

 

 




残念、ようがんげんじんにメガンテは効きませんでしたとさ。

ロッキーがおちゃめで結構好きです。
ジュエルって喋れるよね……、というのは私の勝手な見立てなのですが、呪文色々使えるから喋れるっしょっていう。

このジュエル、ゲーム中だとかなりの耐性持ちのため、実は超おすすめ仲間モンスターなんですよね。何も装備させずとも炎、氷、眠り、混乱無効とかいうすごい奴。
ただ、かしこさが上がらないのでドーピングせねば扱いにくいですが。


▼久しぶりの現在メンバー
パーティー>アベル・ピエール・プックル・サイモン
留守番>アリア・スラりん・ロッキー・ジュエル

out:パペック、ヌーバ(モンスターじいさん送り)
※ホイミンは諸事情で修道院滞在中に離脱。

次回は4/1に更新します。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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