アベルが来てくれた……?
では、本編どぞー。
“【バギマ】!!”
階段上からアベルの声がフロアに響く。
アベルから放たれた中規模の竜巻が【ようがんげんじん】の【かえんのいき】を、アリアに届く前に吹き飛ばしていた。
アリアの長い髪が風に靡いて揺れ、生暖かい風が横切ってゆく。
(…………? なに? 【かえんのいき】じゃない……生暖かい風が吹いただけ……?)
――不発? 弾切れ? 息切れ? ……そんなことある?
アリアは目を閉じたまま覚悟を決めていたため、何が起こったのかわからない。
とりあえず自分がまだ生きているっぽいことだけはわかった。
アベルの呪文詠唱の声は呼び出した竜巻に掻き消され、アリアには届かなかったようだ。
彼女は目を閉じ身構えたまま固まっている。
「アリアーーッ!!」
生暖かい風が吹いたそのすぐ後で、アベルの声が階段の方から聞こえて来る。
アリアはアベルの声に閉じていた目蓋を開いた。
「っ、アベル……!!」
アリアの瞳に、アベルが走って来る様子が映る。
ロッキーの爆発のおかげなのだろう、【ようがんげんじん】がばら撒いた溶岩は既に冷え固まり、歩けるようになっていたようだ。
アベルは後ろに続くピエール達に「ピエール、プックル、サイモン! 背後から総攻撃!」と指示を出し、自らはアリアの元へ駆けていく。
「……君、諦めるの早過ぎでしょ! 簡単に諦めないでよ……!!」
「アベルだぁ……! アベルが来てくれたぁぁ……アベルぅぅ……!」
アベルはアリアの元に辿り着くと、【ようがんげんじん】と彼女の間に割り込み【ようがんげんじん】を睨み付けた。
【ようがんげんじん】はアリアに再び攻撃しようとするも、背後に回ったピエールが斬り掛かったため、背をくるり。
反転してピエール達と戦い始め、徐々にその姿を小さくしていく。
……アリアは縋るようにアベルのマントを掴んでいた。
「……アリア、よく頑張ったね。もう大丈夫だよ」
アベルは背に隠したボロボロのアリアをそっと窺い、優しく語り掛ける。
アリアは泣いていた。
――アリアの泣き顔、可愛いなぁ……。
泣いて自分に縋る
(けどアリアをこんなボロボロにした奴は許さない……!!)
アベルはピエール達にボコられている【ようがんげんじん】を冷ややかな目で見下ろし、「いいぞ、もっとやれ!」と黙って念じた。
【ようがんげんじん】一匹程度、しかもアリア達が体力を削った後である。ピエール達だけで楽々倒せてしまうだろう。
……勝利は目前、あとは時間の問題だ。
放置しといても問題なしと判断し、アベルはアリアに向き直った。
するとアリアがすぐにアベルの懐に飛び込んで来る。
「っ、アリアっ……怖かったよね? ごめんね!」
――アリアが生きてて良かった……!! 僕が置いて行ったばかりにこんな目に合わせてしまった……!
アリアは怖がりだって知っていたのに。と、アベルはアリアを強く抱きしめ、彼女が生きていることを確認し安堵したが、すぐに留守番させたことを後悔した。
ところが、アリアは抱きしめたアベルを押し剥がすように腕を突っ張ってくる。
……仕方ないのでアベルは腕の力を緩めて彼女を窺った。
「っっ! そんなことはどうでもいいの! アベルぅっ!! ロッキーが! ロッキーがメガンテしちゃったのっ……!」
「え、なっ……!?(あれ? 怖くなかったの? どうでもいいの?)」
アリアが必死にロッキーが犠牲になったことを訴えて来る様子に、アベルは面食らう。
ロッキーが【メガンテ】してしまったことにも驚いたが、怖がりだった彼女が強くなった気がしてちょっぴり淋しい気もした。
「私っ、あの子を生き返らせようと思ったんだけど魔力足りなくって、急がないとロッキーが消えちゃう……! どうしよう……!」
「そっか、大丈夫だよ。ロッキーは消えたりしないよ。生き返らせればいいんだね?」
アリアは敵対していた頃のロッキーと勘違いしているのだろう。死ぬと消えてしまうとでも思っているようだ。
……かなり狼狽えている。
アベルの仲間になった魔物は例え戦いに倒れても消えることは無い。
アベルとの
実は修道院生活中に一度だけ、ホイミンが材木に挟まれ無残に潰れて死亡していたのだが、マザーに蘇生してもらったのをアリアは憶えていないのだろうか……。
それまでもホイミンがふわふわと浮遊しながら屋根の修繕現場に差し入れを持って来てくれたりしていたのだが、触手を板に挟まれたり、釘で打ち付けられたりと不運な目に遭っていたから、蘇生後にモンスターじいさんに預けていたのだが……。
――そういえば、あの時アリアは食堂で仕事中だったっけ……。
……アベルは思い出してアリアに微笑み掛けていた。
【ようがんげんじん】と戦う直前、アベルはレベルが上がり【
……幸い魔力もまだ残っている。
「回復の泉も今使えないから 魔力が回復できないの。私、
アベルの言葉の意味が理解できなかったのか、アリアは自らロッキーを蘇生させると右手を掲げた。
アリアの右手薬指にはアベルがあげた【いのりのゆびわ】が収まっている。
「っ……その指輪って僕があげたやつ……(ヒビが……)」
アベルがアリアの右手に注目すると、彼女の右手薬指に嵌った【いのりのゆびわ】に小さな
――せめて結婚式を挙げるまでは壊れないで欲しい……!
アベルはもうこれ以上、その指輪を使って欲しくなくてアリアの右手を掴む。
「ごめんね、アベル。もうすぐこれ、壊れちゃいそうなの。でも仲間を助けるためだから許して……?」
「…………アリア、大丈夫だよ。僕がロッキーを蘇生させるから」
申し訳なさそうに告げるアリアにアベルは首を左右に振って目を細めた。
「え……?」
「だから、これとりあえずアリアに渡しておくね」
アベルは腰に下げた袋に手を突っ込み、中から【炎のリング】を取り出すと、アリアの左手薬指にそれを嵌める。
「ぶかぶか……(でもキレイ……石の中に炎が……揺らめいている……の……?)」
【炎のリング】はサイズが大きく、アリアの指に合わずに ぐらぐらと不安定に揺れていた。
【炎のリング】たる由縁の中石はの燃えるように朱く、よく見ると石内部で朱い炎が揺らめいている。
そして、ほんのり温かい気もした。
――さすがは異世界、不思議な石があるのね……キレイ……。
朱い石をじっと見ていると なぜだか心が落ち着いて来る。
石の中に閉じ込められた小さな炎は音もなく絶えず燃え続けていて、辺りが暗くなっても見えなくなることは無さそうだ。
……アリアは【炎のリング】を眺めてぼーっとしてしまった。
「………………、そっか。まあ……そうだよね……僕がする指輪だし……。とりあえず預かってて」
アベルは惚けたように指輪を見つめるアリアの頭をぽんぽんと撫でる。
――
アリアはやっぱり宝石が好きなのかな……?
アリアが気に入ったならそのリングもあげてもいいんだけど、でも結婚指輪だからどうしたもんかな……。
アリアはただ“不思議で癒される指輪だなぁ~”程度に見ていただけなのだが、勘違いしたアベルはサラボナに戻ったらサイズを直してあげようかと考え始めていた。
「っ、あ、うん」
預かっておいてとアベルに頼まれたアリアはすぐに抜け落ちてしまいそうな【炎のリング】を右手で包む様にして押さえる。
なぜアベルが急にそんなことをして来たのかは知らないが、失くすと大変なのでアリアは責任重大とばかりに深く頷いた。
すると アベルは「ロッキーの破片てこれかな……?」と、足元に転がっていた辺りの地面の色とは違う、青みがかった灰色の小石を拾ってアリアに訊ねる。
つい先程アリアが拾い集めたロッキーの破片を落としていたため、辺りには似た色の小石が散らばっていた。
「あっ、多分そう。この辺りの地面と違う色だし」
「ははは、ずいぶん派手に弾けちゃったんだね」
アベルが手に取った小石は指先で摘まめる程度の大きさしかない。他にも近くに転がってはいるものの、似たようなサイズの小石しか見えないので、アベルは苦笑してしまう。
「うん……すごい爆発だったの……“ははは”って……、アベルなに笑って……ロッキー死んじゃってるんだよ……?」
アベルの笑みにアリアは弱り目で首を傾げていた。
怒ったのだろうか。その瞳は涙を湛えアベルを訝し気に見つめている。
「……っ、大丈夫だよ。僕の仲魔達は簡単に消えたりしないから」
――あっ、アリア また泣いちゃいそう……泣きそうなの我慢してるの可愛い……!!
アベルは涙を堪えるアリアについ萌えてしまい、苦笑した顔を戻せないまま目を閉じ魔力を集中させた。
ヒロインのピンチを助けるヒーロー、アベルの回でした。
きゃあ! アベルカッコE~♡www
と、大人のアベルはかなりイケメンに育ってる気がします。
これもう王子様よ……。
ゲマに無残にやられた幼き頃とは違い、アリアの危機に駆け付け、余裕で助けるられる大人の男に成長したのです。
アリアの尻ばっかり追い掛けてる(w)イメージの強いアベルですが(w)やる時はやるのです。
カッコカワイイヒーローを目指して書いておりますが、どうですかね……。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!