ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

「ありがとう」

では、本編どぞー。



第四百六十六話 その意味は「アリガトウ」

 

(……ううむ……アリアの視線を感じる……。ここは一発で成功させないとな……。)

 

 

 しばらく魔力を集中させ黙り込んだ後で、アベルは手にした小石に魔力が流れ込むようにイメージを膨らませる。

 

 そうして準備が整うと静かに蘇生呪文を唱えた。

 

 

 “……【ザオラル】!!”

 

 

 アベルが蘇生呪文を唱えると、地面に散らばっていた小石たちがカタカタと動き出し、一箇所(アベルの前)に集まり出す。

 集まった小石たちは瞬く間にくっつき、その形を元の姿に戻していく。

 

 

「あ……すごい……。身体が……!」

 

 

 気が付けばアベルとアリアの目の前にロッキーの姿が復元されていた。

 

 

「………………(よしっ……!)」

 

 

 ――けど、僕もこれで魔力切れだ……、はぁ……疲れた……。

 

 

 アリアが感嘆の声を上げるとアベルは無言でグッと拳を握って肘を引く。

 アベルの魔力もここに来るまでに消耗していたため、一か八かの一発勝負だったのだ。

 

 

 ……【ザオラル】は蘇生呪文ではあるが、その成功確率は安定していない。

 

 失敗することもよくある呪文だということを、アベルは幼い頃 父パパスに聞いたことがある。

 

 

『――……いつか覚えることがあったら、魔力に余力のある時に使う呪文だ、失敗したら魔力が無駄になるからな。戦闘中なら仕方ない時もあるだろうが、先ずは自分の身を回復させる方がいいだろう。使いどころはきちんと見極めねばな。一か八かで使うんじゃないぞ?』

 

 

 旅先の昼の酒場でたまたま【ザオラル】の話を耳にした幼き日のアベルは、どんな呪文なのか訊ねたところパパスはそう教えてくれたのだ。

 

 

『はぁい。そういえば父さんのホイミって……――――』

 

 

 そのついで……話の流れで、アベルは父の【ホイミ】が【ザオラル】のようだと熱賛する。

 

 それに対しパパスは晴れやかな笑顔を見せた。

 

 

『ん? 父さんのホイミはすごい? ザオラルみたいだって?? はっはっはっはっ! そうだなあ、父さんのホイミは特別だからなあ! なにせ愛が込められているからな!!』

 

 

 褒められたパパスは小さなアベルを抱き上げ頬擦りをかます。

 

 アベルは「おひげが痛いからやめて!」と全力で拒否していたが、パパスはイヤイヤする愛息子に構わず頬擦りを続けていた。

 

 

 

 

 ……幼いアベルが傷付いた時、パパスは毎度【ホイミ】で回復してくれていたが、アベルが毒になっても、気絶をしても【ホイミ】の一言で立ちどころにアベルを全快させている。

 

 パパスは“愛”だと言っていたが、あれが愛だとしたら愛とは なんと偉大なものなのか……。

 

 当時のアベルはパパスの愛が重く、ちょっとウザかった(嫌いじゃないけど……)。

 

 

 ……そんな偉大な父の笑顔が現在のアベルの脳裏に過ぎった。

 

 

 

 

「あぁ……ロッキー……!」

 

 

 丸い岩の身体が完全に復元されると、ロッキーはゴロゴロゴロと身体を左右に転がし、アリアに顔を向け、ニヤッ。

 

 いたずらっ子のような顔で笑った。

 

 

「ロッキー……!! もぉぉおお~~っ(心配させてぇええっ……!)」

 

 

 アリアはロッキーが生き返ったことに喜び、復元された動く丸い岩に抱きつく。

 彼女の目には涙がほろり。

 

 

「バカぁっ……! 突然メガンテするなんて……! なんてことしてるのよぉっ。もう会えないかと思っちゃったじゃない……!!」

 

 

 アリアに抱きしめられたロッキーの頬(?)辺りが赤黒く変色している気がする。

 

 ……と、なぜかロッキーの口からは「メ……メ……、メ……」と不穏な声が聞こえだした。

 

 

「っ、ロッキー!? ちょ、アリア! ロッキーから離れた方がいい!!」

 

「え? な、なに……?」

 

 

 アリアはロッキーに抗議していたため気付かなかったが、ロッキーから発せられる不穏な声にアベルは危険を感じ彼女の腕を引く。

 

 

「メ、メ、メ……」

 

 

 ロッキーから多少距離を取ったものの、この距離で【メガンテ】されてしまっては たまったものではない。

 

 

「ロッキー……! ダメだってば……! なんでっ?」

 

 

 アリアがロッキーを止めに入るが……。

 

 

(こんな至近距離で【メガンテ】されたらみんな無事じゃないぞ……!? なに考えてるんだロッキー!?)

 

 

 アベルはロッキーを止める間もなく、刹那アリアを庇うように抱きしめた。

 

 

「メ、メ、メ……、……………………」

 

 

 ロッキーは左右にゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロ。

 

 

 言うのか?

 言ってしまうのか?

 

 

 ……その場にいた誰もが大怪我を覚悟した。

 

 

 

 

 そして……――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「メルシ―……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……は?)

 

 

 

 

 【メガンテ】を覚悟し目を閉じていたアベルは、固まった。

 そしてアリアもロッキーの一言に固まっている。

 

 いつの間にか【ようがんげんじん】を倒していたピエール達も身構えていたのだが、氷のように固まってしまった。

 

 

 

 

「……………………って、フランス語かーぃ!」

 

 

 

 

 固まっていたアリアはしばらくの沈黙の後、……叫んだ。

 

 

「ふ、ふらんす?」

 

「あ、いいからいいから。もう大丈夫だよ、アベル」

 

 

 アリアがアベル越しにロッキーを覗くと、ロッキーはお礼を言えたことに喜びゴロゴロと左右に転がっている。

 

 満足したのか その後は無言だ。

 

 

「そ、そう?」

 

「うん、ロッキーはお礼を言いたかっただけみたい。“ありがとう”だって。アベルも庇ってくれてありがと……♡」

 

 

 アリアは安堵して、アベルにぎゅっと抱きついた。

 

 

 ――アベルが助けに来てくれた……うれしい……。

 

 

 アベルに抱きつくと、少し汗臭い。

 

 ……高温の中 戦っていたのだ、自分も汗をいっぱい掻いたから多分一緒……、アリアはそれよりもアベルが戻って来てくれたことが嬉しくて、彼の胸に頬を摺り寄せていた。

 

 

「ぁっ……、うん。アリアが無事でよかった」

 

 

 無邪気にじゃれついてくるアリアの様子に、アベルの胸がきゅうきゅうと締め付けられる。

 

 

 ――なに、アリア 子ネコみたい……! ああもう、可愛いし甘酸っぱい匂いがするんだけど!?

 

 

 “いいかげん僕のものになりなよ……!”喉から出掛かった言葉を呑み込み、彼女を抱きしめたい衝動に駆られつつ、アベルはそっとアリアの頭を撫でた。

 

 

「……アベルも無事でよかったよ……」

 

「……………………っ、はい……(あの、アリアさん……あんまり抱きつかれていると興奮して来ちゃうんですが……)」

 

 

 ――ああ、また僕は試されているのか……!?

 

 

 互いに汗に濡れた服で密着していると、どうにもムラムラしてしまう。

 しかもさっきまで命懸けの戦いで興奮していたから尚の事。

 

 だが、まだアリアはアベルに最後まで身体を許してくれていない。

 ……最後どころかアベルはアリアの裸を見ることさえも許されていないのだ。

 

 アベル自身も始めは彼女がいいと言うまで手を出さないつもりでいたのだが、そこは若者。我慢できずにちょっとだけ手を出してしまった。

 

 意外にもお触りとキスまでは許されてしまったため、中途半端のまま毎度お触りだけしてあとは自家発電で賄っているわけで。

 

 

 ……それも段々と辛くなって来ていた。

 

 

 いつでも手に入れることが出来るのに、決して手に入らない宝物(アリア)はいつもアベルの傍で楽しそうに笑っている。

 

 彼女が笑顔でいてくれるのは嬉しい。

 確かに嬉しいのだが。

 

 こんな生殺し状態がいつまで続くのか……。

 

 

(十八までもたないよ……!!)

 

 

 ……アベルは泣きたくなってしまった。

 

 

「……っ、アリア、ごめん、ちょっと離れて……」

 

「え……、あ……うん……。ごめんなさい……(私やっぱり汗臭いかな……?)」

 

 

 アリアは自分の腕を嗅いで首を傾げている。よく匂いを気にする娘だ。

 

 

「あ、いや、謝らなくていいよ……」

 

 

 そういうことじゃないよ……と伝えたかったが、アベルは余裕が保てなくて言えなかった。

 

 




「ありがとう」という言葉は言ってもよし、言われても嬉しい大好きな言葉の一つです。

ロッキーはテレテレしながら言ったんです。
きゃわわw

そうそう。戦いの後って、絶対興奮してますよね。
アドレナリンドッバドバでしょうから。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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