ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

そろそろヒロインの背景にも切り込んでいこうかと思います。

では、本編どうぞっ。



第四十六話 保護魔法

 

「……アリア……」

 

 

 三階へと続く階段をアベルは見上げ、瞳を揺らす。

 

 

 ……アリアはそのままで別に構わないのに。

 

 

 急にアリアと引き離され、何が起こったのか理解が追い付かなかった。

 

 

「ポワン様ったら私をお供に付けるだなんて……。やっぱり心の中では小さな子供じゃ不安だと思っていらっしゃるのかしら……」

 

 

 そんなアベルの隣で、ベラが腕組みをして考え込んでいた。

 

 

「……アベルを連れて来たのは私だから、責任取らなくちゃね。さて、アベル。春風のフルートを奪った奴を捜しましょう。先ずは装備から整えないとね」

 

 

 ベラは「ここから出て南に行けば、防具屋があるの」と先導し、前を歩いて行く。

 二階の階段を下りて、一階へ。

 一階へと下りると、妖精の一人が話し掛けてきた。

 

 

「まあ、あなたがフルートを取り返すため呼ばれた人間の戦士ね!? フルートを奪った盗賊は何でも氷の館に逃げ込んだそうよ」

 

 

 ベラと同じくらいの背丈の妖精が本を抱えて、アベルを期待の眼で見つめる。

 

 

「そうなのね。じゃあ、目指すは氷の館ってわけね。情報ありがとう」

 

 

 ベラがアベルに代わり妖精にお礼を云うと、妖精は「頑張ってね!」と応援して、本棚へと行ってしまった。

 

 

「……氷の館……?」

 

 

 アベルはその場所を思い出せないか考えてみるが、また(・・)の記憶はこういう時にまるで役に立たない。

 

 

「んー、そうね……氷の館のことなら二階のシスターが詳しかった気がするわ。戻って来たら訊ねてみましょう」

 

「うん、そうだね」

 

 

 ベラも詳しくないらしく、先ずは装備を整えることにしたのだった。

 大きな切り株の建物を出て、蓮の葉の橋を渡り南へと向かうと、左手に防具屋の看板が見えてきた。

 

 

「アベル、アリアを連れて行くなら防具も揃えてあげないと」

 

「ん……? アリアは殆どの魔物から姿が見えないはずなんだけど……?」

 

「この世界ではあの子の姿は丸見えよ?」

 

 

 ベラがとんでもないことを云う。

 

 

「えっ、どういうことっ!?」

 

「ここは人間界とは違うの。彼女の保護魔法も無効になるわ」

 

「え……??? 保護、魔法……?」

 

「そうよ。アリアの翼には、とても強い魔法が掛かってる。けれど、それは人間界でしか効力をなさないものなの。人間と魔物から目を欺くために掛けたのでしょうね」

 

「……身を護るために……?」

 

「多分ね。この世界は人間界と波長が違うから彼女に掛かってる魔法の意味がない。私の姿が人間に見えないのとは少し違うもの。あの子、とっても弱いから誰かが心配して掛けたんだと思うわ。どこかから逃げて来たのかしらね?」

 

「っ……、アリアの姿が見えないのは……、そういうことだったの……?」

 

 

 どこかから逃げて来た……?

 アリアが……?

 

 

 アベルは瞳を瞬かせながら、考え込む。

 

 

 そういえばアリアは一体どこから来たのだろう?

 考えもしなかったな……。

 

 

 ただ、彼女と居ると新鮮で楽しくて。

 

 

 ……アリアは一体、何者なんだろう……?

 

 

 アベルは口元を手で覆った。

 

 

「ええ。でも、アベルはアリアが見えるのよね。ポワン様が仰った通り、アベルには不思議な力があるんだわ」

 

「……うん、……だといいけど……」

 

 

 二人はそんな話をしながら防具屋へと入ると、防具を買い揃えポワンとアリアの居る大きな切り株の城へと戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 一方で、アベルが買い物へと向かっている間、アリアはというと。

 

 

「……つまり、この翼に魔法が掛かっているということですか?」

 

 

 アリアは翼に掛かっている魔法についてポワンに訊ねていた。

 

 

「ええ、そうです。とても強力なものです。これほど強い魔法はあまり見たことがありません。これだけ強い魔力が掛かると、あなたの姿を人間や魔物から覆い隠して見えなくしてしまっていたでしょうね。あなたの身を護る意味もあったのでしょうが、あなた本来の魔力も封じられてしまっていましたから……不便ではありませんでしたか?」

 

 

 ポワンはアリアの翼に触れながら説明してくれる。

 

 

「はい……。とっても不便でした……。魔法が掛かっているのは知っていたんですが、まさか翼に掛かっているなんて。けど、私が望めば姿を見せることが出来るとも云っていたんですよ……?」

 

 

 パパスさんや、サンチョさん、ビアンカちゃんには姿を見せてもいいんじゃないかなって思ってたんだけどなぁ。

 

 と、アリアの脳裏に三人の顔が浮かんだ。

 

 

「……そうですか。あなたの意思次第ということなんでしょうが、あなたは恐れが強いのでそれが難しかったのでしょうね。忘れているみたいですが、過去に余程辛い思いをしたか、怖い思いをしたのか……。何にせよ、その魔法があなたの身を護っているのは事実ですから、悪い事ばかりではありませんわ」

 

「忘れている……。……じゃあ、記憶は魔法と関係ないんですね……」

 

 

 ポワンの話に、アリアは肩を落とす。

 人間や魔物から姿が見えないのはいい、それよりも記憶が知りたかったな……と。

 

 

「……そうですね。そちらは私にはわかりませんわ。アリア、あなたさえ良かったらしばらくこの国に居ても良いのですよ? ここなら皆、あなたのことを認識できますし、あなたの情報を集めることも出来るかもしれません。それに、何かの拍子に思い出すこともあるかもしれませんし」

 

「え、あ、ありがとうございます。でも、少し考えさせてください。アベルに恩返しもしたいし……あっ、そうだ。ポワン様、私呪文を使いたいんです! いつもアベルに護ってもらってばっかりで。いつまでもアベルに頼るわけにいかないんで! さっき使えるかもって仰ってましたよね!?」

 

 

 ポワンの提案にアリアは気を取り直し、呪文を使えるようにする方が優先だなと思って訊ねる。

 

 

 いい加減アベルに頼るのは止めよう、大人として情けないもの。

 頼るより頼られるようにならねば!

 

 でなければ、私はアベルと離れられなくなるのでは……?

 

 あの子が将来ビアンカちゃんかフローラさんと結婚して、小姑としてくっついていくのは避けたい。

 

 

 アリアは自分一人でも生きて行けるようにせねばと、決意していたのだった。

 

 

「ええ。……この翼に掛かった魔法を解くことは出来ませんが、隙間を開けることなら私でも可能です」

 

「隙間……?」

 

「はい。こう、プスッとね」

 

 

 アリアが首を横に倒すと、ポワンはどこからか千枚通しのような武器を取り出し、アリアの背後に回ると翼をむんずと掴む。

 

 

「っ!? それっ……まさか“どくばり”ですかっ!?」

 

 

 ひぃ! っと、アリアは膝を落とし、ポワンから逃れようとする。

 

 

 急所に命中したら私、死んじゃうじゃん!

 

 

「ウフフッ。ちょーっと翼の付け根に小さな穴を空けて道を作り、中からあなた自身の魔力を表に出すだけですよ? さほど痛くはありませんから」

 

「物理的だなっ!(ってかポワン様も力強いな!)」

 

 

 ポワンの瞳が緩やかな弧を描いて、美しい笑みを見せてくれるのだが、がっつり翼を掴んでいて、アリアを逃がさないようにホールドしていた。

 アリアは身を捩って何とか逃げようとする。

 

 

「ほら、アリア、逃げてはいけませんよ。呪文、使いたいのでしょう?」

 

「っ、使いたいけどっ、それっ! 急所突いて死んじゃったら……!?」

 

「…………、…………、…………大丈夫ですよ?」

 

 

 心配するアリアにポワンはチラッと、既に刺そうと構えていた【どくばり】を真顔で一瞥してから、再び微笑む。

 

 

「間ぁっ!」

 

 

 今、間があったよね……っ!?

 急所に入ったら死ぬってこと!?

 

 

 いやぁっ!!

 

 

 アリアは軽くパニックになる。

 

 

「……魔力さえ通れば、あなたの覚えている呪文は何でも使えるはずですよ!」

 

「…………っ、何……でもっ!?(本当に……!?)」

 

「ええ! 覚えていれば……ですが」

 

 

 さあさあ、とポワンは【どくばり】を構えたまま瞳を輝かせアリアのゴーサインを待っていた。

 

 

「っ、こ、殺さないで下さいね……」

 




ベラといい、ポワン様といい、私に掛かると癖が強くなるっwww

謎ぶん投げ祭り回でした。
その内忘れた頃に判明します。

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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