ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

汗だくなので、水浴びします。

では、本編。



第四百六十八話 水浴び

 

 

 

 

 

 パシャパシャ。

 パシャパシャ、と。

 

 

 水の跳ねる音が馬車の後ろで聞こえる。

 パトリシアが前方で眠っているため、キャビンの下を覗いてもアリアの姿は見えないだろう。

 

 

「……よし、綺麗になった……(石鹸を使えないのが辛いところだけど、環境破壊はよくないもんね)」

 

 

 アリアはところどころ黒く汚れた いつも着ている白い服を洗っていた。

 ここには排水設備がないので、石鹸は使わない。

 

 では、いったい何で洗ったのか……というと。

 

 

 ――生活の知恵ってすごい……! 灰で服を洗うなんてね……!

 

 

 ……修道院で服を洗う際は主に灰を使っていた。

 

 石鹸ももちろんこの世界に存在するのだが、石鹸はわりと高価なため 修道女たちは皆、かまどに残った灰と水を混ぜたものを使い洗濯をしていたのだ。

 

 たまにルドマンから石鹸を贈られることもあるが、そんなものは毎日の洗濯ですぐに消費してしまう。

 

 

 アリアは どうせ水浴びするし、半日もあれば乾くだろうと下着の上下もついでに洗ってキャビンの乗り口の縁に掛け乾かすことにした。

 

 

 ……素っ裸になって清水に浸かると、熱かった身体が冷えていき心地が良い。

 

 

 先程の【ようがんげんじん】のせいで水の温度も上がっていたのか、温泉ほど温かくはないが、かと言ってそれほど冷たくもない。

 

 

「……フン、フンフンフン♪ フンフン♪ フン、フーン……♪」

 

 

 ――超ぬるま湯って感じね……! 気持ちいい~~♪

 

 

 こうして全身で水に浸かって水浴びをするのはいつ振りだろう。

 修道院を出て以来ではなかろうか。

 

 

 アリアは身体も灰で洗えるかな、と洗濯に使った余りの灰汁(アク)を手に取り擦り付け身体を洗ってみた。

 擦り付けた瞬間は黒くなるが、水に流すと身体のべた付きが落ちていく。

 

 

(べた付きが落ちた~♪ やだっ、最高っ! 気持ちいい~~♡)

 

 

 アリアは上機嫌に鼻歌を歌いながら独り、時間も気にせず水浴びを楽しんだ。

 

 オラクルベリーの宿屋では風呂は共同。入浴時間が限られているから風呂には入れるがゆっくりは出来ない。

 修道院も行水するだけであった。

 

 アベル達は一度眠ってしまえば朝まで起きないし……、せっかくだから思う存分ふやけるまで浸ってやる……とつい、泳いでしまう。ちなみに泳法は平泳ぎだ。

 水の中は足が一部届かないところもあるが、一度潜って底を蹴れば問題ない。

 

 

(素っ裸で泳ぐってなんか変な気分……。ふふっ♡)

 

 

 ――(アリア)が何者であるかはさておき……異世界楽しい♪

 

 

 現実(元の)世界から比べると生きるのが超厳しいこの異世界で、少なくとも十年余りを生き抜いて来たアリアは、初めて心からこの世界が楽しいと思えた(……八年間眠っていたから実際は三年ちょっとである)。

 

 ……そうしてしばらく水浴びを楽しんでいたアリアだったが、そのまますんなり水浴びが終わるはずもなく……。

 

 

「はぁ~~……さっぱりしたぁっ! 解放感たまんないなぁっ♪」

 

 

 ざばぁっ!! っとアリアは勢いよく水面から顔を出し立ち上がる。

 

 

 ぽたぽた。

 ポタポタ……。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ……そろそろ身体も冷えて来たし上がろうかな、とアリアは水辺から上がるため、水深の浅い水際に向かいながら長い髪を伝っていく水分を絞った。

 

 ぎゅうっと手に力を込め絞ると清水が髪の間から溢れ出てくる。

 長いからか一度絞ったくらいじゃ水分は抜けきらない。

 

 アリアは手元を確認しながら少しずつ髪を丁寧に絞っていった。

 

 

 そんな時……――。

 

 

「…………ぁ、アリア…………?」

 

 

 アベルの声がなぜかすぐ傍で聞こえる。

 その声にアリアが顔を上げると、アベルがアリアの上がろうとしていたはずの岸で目を見開いたまま立っていたのだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………え? アベル?」

 

「…………あ…………」

 

 

 アリアは一瞬何が起こったのかわからず、髪を絞る手をそのままに首を傾げる。

 アベルの目はアリアの顔……というよりもっと下、腕……?

 いや、彼の目は大きく見開かれ、アリアの上から下を何度も往復するように凝視していた。

 

 

 ……その視線にアリアはようやく気が付く。

 

 

「え? あっ……きゃ」

 

 

 ――私、今、すっぽ……す、すぽぽんっっ!?

 

 

 ……否、すっぽんぽんである。

 

 

 大声を上げようとしたアリアだったが、なんと。

 

 

 バッシャーーン!!

 

 

 水飛沫が辺りに飛び散り、アベルがアリアの目の前に飛び込んで来たのだった。

 

 

「っ、待ってアリア……! 叫ぶのは止めてくれ……みんな寝てるから……っ!(僕以外に君の裸を見られたくない……!)」

 

「ンむっ!?(アベル!?)」

 

 

 アベルは咄嗟にアリアの口を手で覆って塞ぐと耳元で囁くように告げる。

 

 

「……みんなに見られたら嫌でしょ?」

 

「っ……なに言って(あにいっへ)……(でもそうか……うん、大声出したら起きるよね……)」

 

 

 アベルの言うことは最もだ。

 アリアの悲鳴でみんなが起きてしまうと、自分の裸体が曝されてしまう。恥ずかしいことこの上ない。

 

 アリアはアベルの言うことに頷いていた。

 

 

「………………アリア……」

 

「っ…………見ないで……」

 

 

 アベルが“叫ばれないかな……”と恐る恐るアリアの口元から手を放すと、解放されたアリアは自己を抱くように腕を抱きしめアベルに背を向けてしまった。

 

 

 ……ポタポタ、と。

 

 

 アリアの髪から伝う雫が臍下(せいか)の水面に落ち、波紋を広げていく。

 

 

(……なんて綺麗なんだ……。)

 

 

 彼女の上半身に目をやればアリアの白く柔らかな二匹のスライムが背中からでもはみ出して見えた。

 

 背中の傷は髪のせいでよく解らないが、その目線を徐々に下へと下げていくと、きゅっと括れた腰の下に、水に浸かったぷるんとした形の好い 焼き立ての白く丸いパンが二つ。水面が僅かに揺れているが、はっきりと視認できる。

 

 

 ……ゴクリ。

 

 

 アベルは無意識に唾を飲み込んだ。

 

 

 髪だけでなく、真っ白い陶器のような肌から水を弾くように雫が流れ落ちて行く様は、初めてアリアのすべてを見た気がして、アベルの全身をぞくぞくさせる。

 

 性欲からだけじゃない……。アリアのしなやかな肢体は女神像かなにかじゃないのかと思う程に芸術的で、アベルには美しく映ったのだ。

 

 

「…………アリ」「あっち行って……!」

 

 

 裸体に釘付けになったアベルがアリアの肩にそっと触れようとすると、彼女は声を抑えめに、しかし強い口調でアベルを拒絶する。

 

 

「っ……、どうして……」

 

 

 ――アリア、なんで僕を拒絶するの……?

 

 

 つい先日やっと直接肌に触れさせてくれたというのに、身体を見るのは許されないなんてあんまりだ。

 

 自分はなにも襲おうだなんて思ってないし……(そりゃ少しは触りたいけど……)。

 アリアが嫌なら最後までする気はないのに。

 

 

 ……アベルはアリアの拒絶に急に胸が痛くなった。

 

 

「…………なんで? いっつも朝まで寝てるのに……! どうして今日に限って起きちゃうの……? なんで?」

 

 

 アリアは怒っているのか、縮こまりながら肩を震わせている。

 

 

「なんでアリア……?」

 

「なんで? こっちが訊いてるのっ」

 

 

 アベルが眉を顰めながら静かに問い掛けるが、アリアは怒ったままだ。

 

 

「……そんなに僕が嫌……? ねえ、アリア、こっち向いてよ……」

 

 

 ――そんなに僕を拒絶しないでよ……、僕はいつだって君を真っ直ぐ見ているのに。

 

 

 

 

 “君はどうして、僕を真っ直ぐ見てくれない……?”

 

 

 

 

 ……アリアは自分を愛してくれている。

 ずっとそう思っていたが、彼女は修道院を出てから変わってしまった。

 

 何がきっかけでそうなったのかはわからない。

 

 一見彼女はいつもと変わらないように見えるが、アベルは違和感を感じていたのだ。

 

 修道院に滞在していた頃はいつも真っ直ぐ自分を見てくれていた気がする。

 だが、最近は時々悲しそうに目を逸らす。

 

 ルドマンの屋敷へ行けと言い出したり、夜には自分を求めて泣いていた。

 フローラを推したり、急にお金の話を出したり、甘えて来たと思ったら突き放してくる。

 

 

 ……アベルはアリアの気持ちが わからなくなってしまった。

 

 

 自分と同じ気持ちだったはずなのに。

 いや、自分の想いは以前よりも強くなっている。

 

 

 ひょっとして、重いと想われてしまったのだろうか……?

 

 

 アベルは自分に振り向いて欲しくてアリアの肩にそっと触れる。

 

 

 が、

 

 

「やっ、触らないで……っ! っ、嫌……っていうか、こんな不意打ちはよくないと思う……っ」

 

 

 ぱしんっ! とアリアは肩に触れたアベルの手を叩いていた。

 

 

 再びの拒絶にアベルは顔を俯かせ、項垂れる。

 

 

「……………………アリアって…………、なに考えてんのかさっぱりわかんないや……」

 

 

 ――ああ、駄目だ……僕は彼女に紳士でいたいのに。

 

 




まあ……展開的にそう、なりますよね……w

ちなみにアリアの鼻歌は序曲ですw

灰汁で洗濯を……というのは江戸時代からヒントを得て、オリジナル小説の題材が江戸時代背景のため、出て来た次第です。
江戸時代には灰買いなんて業者がいて、各家庭のかまどで出た灰を買い取ってくれたそうです。

灰はアルカリ性なので、土壌改善やら、肥料やら、洗濯やら、酒の加工に藍染めにと、再利用されていました。エコリサイクル~。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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