キメラのメッキ―。
では、本編どぞ。
「…………アリア、君、なんか隠してない?」
「隠す……? なにを……?」
アベルの声にアリアは身体を預けたまま返す。
が、アベルは彼女の顎に手を添え上向かせた。
「……なんでそんな不安そうな顔してるんだい?」
――【ステータスウィンドウ】には今日も呪いのマークは無かった、だから呪いは解けているはず……。
けれども、アリアは浮かない顔をしている。
彼女がたまにする この表情はいったいなんなのか……。
アベルは察しが悪い男だったが、わからないなりにいつもアリアを気遣っている。
時折悲しそうな瞳をする理由さえ教えてくれれば解決できるかもしれない。
……そう思って訊いてはみたものの。
「……っ、別に……? そんなことないよ……?」
彼女は目を細める。
……アリアの答えは笑顔だった。
「…………そう? なにか困ったことがあるなら何でも言ってよ。僕が解決してあげるよ?」
アベルは
根掘り葉掘りして、しつこい男だと嫌われたくないのだ。
時が来たら話してくれるだろうと踏んで、たまにこうして多少伺うことだけは心配なのでしておき、いつでも自分を頼って欲しいことを伝えておいた。
するとアリアがアベルにぴったり、強く抱きついて来る。
「……ううん、なんにもないよ。アベルの傍にいられて しあわせだなって思って……、こんなにしあわせで いいのかなって不安になっちゃっただけだよ。……えへへ♡」
「アリア……」
――ああ、もう可愛いこと言ってくれちゃってさーっ!
急に抱きついて来た彼女にアベルはヨシヨシと頭を撫で、頭頂のつむじに口付けを落とした。
……そんな風に二人が抱き合っていると。
ツンツン。
アベルの肩を誰かが突いて来る……。
「…………?(今
アベルはピエールか誰かが呼びに来たのかと思い、少し待つ様にと肩に触れる何かを片手で追い払った。
だが、
ツンツン。
ツンツン。
またも何かがアベルの肩を突いて来る。
先程より強い衝撃を感じた。
――なんか痛いんですけど……?
ツンツコ、ツン。
肩を突く攻撃は次第に激しくなりアベルは眉を顰める。
「っ……痛っ!? ああもう、誰っ!? 今いいところなんだから邪魔しないでおくれよ……!!」
「ぁっ、アベルっ! きめぇ……」
あまりの痛みにアベルが肩を見るのと同時、アリアの目が見開かれた。
「え? キメェ?(僕、気持ち悪いの!?)」
「らぁああああっっ!!」
アリアの叫び声と共にアベルは後ろに突き飛ばされる。
彼女は咄嗟に膝を折りその場にしゃがみ込んだ。
アベルが後ろに尻餅をつき、アリアがしゃがむ頭上を、ハゲタカと蛇を合成し生まれた【キメラ】のクチバシが猛スピードで襲い掛かる。
ガッツガッッ!!
【キメラ】のクチバシはアベル達の背後にあった岩を砕いていた。
大きく砕くほどではないが、岩がひび割れてカラカラと小石が転がり落ちている。相当な力だ。
今のをまともに喰らえば大怪我をしていたことだろう。
「えええええっっ!?(どうりで痛いわけだよ……!!)」
驚くアベルの肩からは血がダラダラと垂れていた。
さっきから突いて来たのは【キメラ】だったのだ。
「っ、ホイミ! アベルっ、戦いましょう!」
アリアはすぐさまアベルの肩に回復呪文を掛けると彼を起こす。
【キメラ】は始めアベルを狙っていたが、当てが外れ岩を砕いた後で振り返ると鋭い目付きでアベル達を睨んでいた。
「ああ! アリア下がって……!」
「うん……!」
アベルはアリアを下がらせ武器を抜くと【キメラ】に斬り掛かる。
アリアも援護するように【ベギラマ】で攻撃、あっという間に【キメラ】を倒したのだった。
◇
「……ふぅ。アリア平気? 怪我しなかった?」
「うん、私は平気。びっくりしたぁ……。やっぱり町の外は油断できないね。……真っ黒こげ……」
アベルとアリアに屠られた【キメラ】が黒焦げで目の前に倒れている。
だが、その顔はなぜか安らかだった。
二人はそれを見下ろしながら地面に散らばったゴールドを拾った。
「ね。でも せっかくのラブラブタイムを邪魔した報いだ、しょうがないよ」
「も~~……アベルってば すぐそういうこと言うんだから……、って、あ」
「あ……」
二人の目の前で、死んだはずの
「……メッキッキッ(邪魔しちゃってゴメンナサイ。これ、つまらないものですがお近付きのしるしに……)」
【キメラ】は申し訳なさそうに頭を低く、自らの翼の中に隠していた【キメラのつばさ】を差し出していた。
先程とは打って変わって、目付きが優し気である。
「これは……、あ、ご丁寧にどうも……」
「仲間にして欲しいってこと……かな……?(ふふっ、アベルったら……)」
アベルが会釈し手を差し出すと、【キメラ】はそっと【キメラのつばさ】を彼の手にのせる。
そうして【キメラ】は瞳をうるうるさせ、アベル、そしてアリアを交互に見つめた。
どうやら仲間になりたいらしい。
「仲間になってくれるのは嬉しいけど……、どうしようかな」
「ん……?」
「誰をモンスターじいさん送るか迷うな……」
「あっ、そういうこと?」
アベルが顎に手をあて思案すると、モンスターじいさんに誰を送るか迷っている。
アリアは“誰を送るのかな~?”と続きを待った。
……と、思ったら。
「アリア、誰を送る?」
「ええっ? 私に訊いちゃうの!?」
急に振られてアリアは驚く。
仲魔の管理はアベルがしているのに、なぜ私に訊くの? とでも言いたげだ。
「ははっ、訊いちゃうよ。ピエールとプックルとスラりんは送らないでしょ? だとすると、残るはサイモン、ジュエル、ロッキー……だけど、このキメラも強くなりそうだから よく考えないとね」
「う~ん、そっか。行く先々でどんどん魔物が強くなってるから、仲間になる魔物も強い子達が多いのね。そうね、今後のことを考えると難しい選択ね」
アベルの言葉を理解したのだろう、アリアは少しでも安全な旅にするために腕組みして考え込んでいた。
「ジュエルとロッキーは仲が良さそうだから離すと可哀想だしなぁ……」
――アリアって察するのが早いな……!
理解が早くて助かる……と、アベルは死の火山で仲間になった二匹を思うと引き離すのが忍びない。
「……とすると、サイモンか、この子……」
「メッキッキッ(メッキ―と申します、以後お見知りおきを……)」
バサッバサッ。
【メッキー】は翼を優雅に羽ばたかせ恭しく頭を垂れて、アリアに擦り寄った。
そんなメッキーの頭をアリアは優しく撫でる。
「あ、メッキ―って云うのね、よろしくね。ふふっ、とっても礼儀正しいのね(頭つるつるしてる……)」
頭を撫でるアリアを嬉しそうに見上げながら、メッキ―は目を細めていた。
メッキ―はベホマラーを覚えるので割と最後まで連れて行っていた記憶があります。
----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!