アリアの背中にどくばりを刺したくて堪らないポワン様と、急所を突かれたくないアリアの回。
では、本編どうぞっ!
「っ、こ、殺さないで下さいね……」
アリアはビクビクしながら手を擦り合わせ「ナンマンダブ、ナンマンダブ」とお経を唱える。
「あら、不思議な呪文ですね。けど、今のあなたには魔力がありませんから効き目はありませんよ。任せて下さい。間違っても急所を突いたりはしませんから…………(たぶん)」
「……っ!? や、やっぱりやめますっ!(ポワン様っ! 今、たぶんって心の声が聞こえましたよ!?)」
アリアは頭の中で【にげる】を何度もコマンド入力するが、
―― しかし まわりこまれてしまった! ――
の、一文ばかりが表示される。
「さあ、いきますよ」
ポワンの持つ【どくばり】の切っ先がキラリと光る。
「うぅ……アベル……。助けて……」
先程の決意はなんだったのか、結局最後にはアベルの名を呼んでしまう涙目のアリアであった。
すると、
ヒュンッ。
シュルルルル……。
と何かが風を切る音が聞こえ、その音がポワンとアリアの方へと近づいてくる。
「あっ!」
ポワンが大きな声を出したかと思うと、床にカランッと音を立て【どくばり】が転がっていた。
ポワンは手首を捻ったのか、眉間に皺を寄せる。
風を切る音はまだ続いていて、そちらに目をやるとブーメランが飛んでいた。
それは階段の方へと向かっている。
「っ、アリアーーーーっ!!」
不意に声が聞こえ、戻って来たブーメランをキャッチし、【毛皮のフード】を身に着けたアベルがベラと共に走って来ていた。
「あ、アベル……!」
「はぁっ、はぁっ、ポワン様っ、アリアに何するつもり……!?」
アリアがアベルの顔を見てほっとした顔をする中、アベルは頬を膨らましながらポワンを強く見つめる。
後ろにいたベラはハラハラしながら様子を見ていた。
「アベル。こ、これは違うのです。アリアが呪文を使うためにプスッと……」
「はぁ、はぁ……。プスッとって……、それ、どくばりでしょ? アリア死んじゃったらどうするの!?」
アベルは抗議し、翼を掴んでいたポワンの手を剥がす。
「急所は狙っていませんよ。きちんと
「「狙ってるじゃん!」」
アベルとアリアの声が重なる。
やるって、……
「ポワン様……」
ベラは三人のやり取りを見守っている。
「と、とにかく、アリアに痛い事とか禁止! この子弱いからちょっとでも傷付いたら死んじゃうかもしれないよ!? 本当、弱いから!」
「えぇー……さすがにそこまでひ弱じゃないよ……(てか弱い弱いって言わないでよ……)」
現実世界じゃ魔法なんてないんだよ、これが普通なんだって……。
魔物も出ないし……。
アベル達とは強さの基準が違うんだよ……。
アベルがポワンから庇ってくれたのだが、馬鹿にされた気がしてしまったアリアだった。
「彼女が望んだのですよ? 呪文が使えるようになるためには、プスッとしないといけません、プスッと」
「……どういうこと?」
ポワンの言葉にアベルはアリアに顔を向ける。
「……あ、えっとね、翼にすっごい強い魔法が掛かっててね。私の魔力を覆ってるんだって。解くことができないと呪文使えないみたい。けどポワン様じゃ解くことは無理みたいなの。でも、魔力の道……? っていうのを開けてあげれば、私の魔力が流れ出して呪文が使えるらしいの」
「ええ、ですからプスッと!」
ポワンは床に転がる【どくばり】を拾い上げ、にこにこと微笑む。
「っ……、でも、どくばりじゃ……」
アベルは
「アベルは心配性ですね。そんなに心配ならアベルがやって差し上げれば良いのです」
ふぅ。とポワンが手にした【どくばり】をアベルに差し出す。
「え……」
「私の魔力を込めたこのどくばりで、アリアの翼の根元を少し刺してあげるだけで刺激され、彼女本来の魔力が外に流れるはずですよ」
目をぱちくりさせるアベルにポワンは【どくばり】を無理矢理握らせたのだった。
「……っ、えー……ぼ、僕が……?」
「……アベルが……?」
アリアがアベルを上目遣いに見て、黙り込んでしまう。
「ほんの少し、針の先を刺すだけですよ」
ポワンは親指と人差し指で数ミリ分だけよと手振りで教え、深く刺したりしないこと、と注意した。
「……そ、そんな。ど、どうしよう……」
急に僕に振られても困る!
アリアの急所を突いてしまったらどうすればいいんだ!?
アベルは握らされた【どくばり】を見下ろした。
「……アベルになら、いいよ」
アリアは迷い
「っ、で、でも」
「……っ、早くして。運悪く急所に入ったらそれまで。私このまま何も出来ないままで居たくないの」
背を向けたままのアリアの肩が震え、彼女は瞳をぎゅっと閉じていた。
「さあ、アベル。プスッと行きましょう。プスッと! こうしている間も春の訪れを待っている者達がいるのですよ?」
「そうよ、アベル。アリアが呪文を使えるようになれば、春風のフルートを取り返すのも容易になるわ!」
ポワンとベラが、「「プースッと! プースッと!」」とプスッとコールを始めてしまう。
「……他人事だと思って……」
アリアは身体を強張らせたまま呟いた。
「…………、……わかった。じゃあ……いくね?」
「……っ、うん! よろしく!」
アリアは付け根が見えやすいように翼を広げる。
「……こ、この辺……?」
ポワンに訊ねながら、アベルが狙いを定めた。
そして……。
「いっ……!!!?」
チクリ。
と、アリアの背骨近くに針の感触が確かにしたのだった。
「……だいじょう……ぶ?」
「……う、うん……。少しチクってしたけど、平気……」
これで魔力通るのかな……?
アリアは広げた翼を元に戻す。
「…………まあ……。何ということでしょう……」
「ビ〇ォーア〇ターですか!!」
ポワンの声にアリアは即座にツッコミを入れる。
ポワンは目を丸くし、口を開けていた。
「……アリア、あなた何者なの……?」
「え……?」
不意に、ベラが声を発する。
「だって、あなたの魔力……」
「ベラ。良いのです。今はまだ、話す時ではありません。アリアが自分を思い出せば理由がわかるはず」
ベラが何か言おうとしたが、ポワンはそれを遮ったのだった。
さあ、呪文使ってみようってことで、次回!
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