ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

違和感を感じたら。

では、本編どぞー。



第四百八十一話 違和感

 

「ん……?」

 

「…………アベルは私と結婚したいの……?」

 

「うん」

 

 

 アベルは訊かれたままに頷く。

 

 

 ――未来が変わってるんだ、君とだってきっと結婚できる……! いや、してみせる……!

 

 

 今のアベルにアリア以外の女性と結婚するという選択肢はなかった。

 

 フローラとビアンカが嫌だというわけでは決してなく、今の自分には今傍にいる彼女が大切でかけがえのない存在なのだ。

 

 

 ……別世界ではビアンカと。

 また別の世界ではフローラと。

 

 

 幾度となく二人の女性のどちらかと結婚して来たアベルは、この世界では初めて別の女性と結婚しようとしている。

 

 

 ……それを叶えるためには、行動するしかない。

 

 

 自分が望む未来を勝ち取るには、新たな未来を信じて行動するしかないのだ。

 

 

「っ……、即答なんだね……」

 

「アリアは嫌?」

 

 

 アリアが息を呑み、恥ずかしそうに目を伏せる。

 アベルは優しい瞳で静かに問い掛けて首を傾げた。

 

 

「…………イヤ……」

 

「ええっ!?(嫌なのっ!? ウソでしょ!?)」

 

 

 ――アリア、ヒドイ……! 僕のバナナ食べたくせに……!

 

 

 アリアの返答にアベルの顔が驚愕に青褪め、泣きそうになってしまう。

 

 

「…………というより……、ふふっ、アベル忘れてるんじゃない?」

 

 

 泣きそうなアベルとは対照的にアリアは笑みを溢していた。

 その笑顔が何だか淋し気に見える。

 

 

「何を……?」

 

 

 ――アリア……何考えてる……?

 

 

 アベルは首を捻るが、アリアはくすくすと口元に手を添え可愛く笑っている。

 

 何がそんなに可笑しいのだろうか。

 今そんな笑えるようなことを言った覚えはアベルにはないのだが。

 

 

「ふふふっ、やっぱり忘れてるね」

 

「…………? なにアリア? 何のこと……?」

 

「……忘れてるなら……、それでもいいと思うよ? どうせ……」

 

 

 アリアはアベルに優しく微笑み掛けて、告げる。

 “どうせ……”の後は声が小さくてよく聞き取れなかった。

 

 

「……アリア……、なに? はっきり言ってよ」

 

 

 ――何で、そんなに悲しそうな顔で笑ってるんだ……!? なんで君はいつも突然そんな顔をするんだ……?

 

 

 アリアの顔は笑顔なのに、なぜだか泣いているように見えるのは気のせいなのだろうか。

 

 ……さっきまで温泉に行けることを楽しみにして弾けるような笑顔を見せていた彼女が、今にも泣き出しそうな顔をしている理由を教えて欲しい。

 

 

 アベルは何度も訊ねたが、アリアは教えてくれなかった。

 

 

「……ううん、何でもない。変なこと言ってごめん。そろそろ休みましょ?」

 

 

 アベル酔ってないみたいだから、先行くね。と、アリアはアベルから離れ、独りで歩いて行ってしまう。

 

 

「アリア」

 

 

 ――なぜだ……? アリアは何を気にしているって言うんだ……? 彼女が気にしてるのは僕の年齢だけじゃないのか……??

 

 

 故意に返答を避け去って行くアリアをアベルは呼び止めていた。

 

 けれども彼女は足を止めてはくれたが振り返ろうとはしてくれない。

 ……仕方ないのでアベルは追い掛け、アリアの手を引く。

 

 

「ね、アリアってば」

 

「…………明日から水のリングを取りに行くんでしょう?」

 

 

 振り返らせたアリアはいつもの優しい柔和な顔をしていた。

 さっきの悲しげな様子は夜の闇でそう見えただけなのか。

 

 アベルは拍子抜けしてしまった。

 

 

「あ、ああ……」

 

 

 ――あれ? 僕の気のせいか……? でも、確かに泣きそうな顔をしていたと思ったんだけど……?

 

 

 僕と結婚するのがそれほど嫌なんだろうか……と、落ち込みそうになるも、アリアがアベルの手を大切そうに握り、穏やかな笑みで見上げて来るので そんな思いはすぐに消えた。

 

 

「……私、明日はルドマンさんの家には行かないで あそこで待ってるね」

 

 

 不意にアリアは町の隣にある高い塔に視線を転じる。

 

 ルドマンの屋敷に行けば、再び家の中に閉じ込められる可能性もあるだろうから、顔を合せない方がいい。

 

 ……アベルとの旅がもうすぐ終わってしまうのだ。

 

 時が許すまでアリアはもう少しアベルと一緒に旅をしたかった。

 

 

「あそこって……、確か……見はらしの塔か……」

 

 

 ――ルドマンさんに会ってまた軟禁されたら困るもんな……、明日はピエールとプックルを付けて、僕一人でルドマンさんの所に行こう……!

 

 

 そして、船を借りて【水のリング】を……!

 

 

 アベルがアリアの視線の先を追って、町の隣にある【見はらしの塔】を眺める。

 

 

 “アリアも僕と一緒にいたいと思ってくれている。”

 

 

 そう感じたアベルは胸をきゅぅと締め付けられ、彼女に口付けしたくなってそっと顔を近付けた。

 

 だが、アベルの唇がアリアの唇に触れそうになると、彼女が声を発して遮る。

 

 

「……見はらしの塔っていうのね。アベルはかなり色々思い出してるんだね」

 

「え? あ、ああまあ……」

 

 

 訊ねられ、アベルは口付けをやめてアリアの質問に答えていた。

 

 

「……フローラさんとビアンカちゃんのことも……?」

 

 

 アリアは続けて、おずおずと二人の女性のことを訊ねて来る。

 

 

「…………それは…………、その……」

 

 

 ――そうだよ、僕はフローラさんとビアンカと別世界で結婚したことがあるよ……!

 

 

 アリアの質問には なんでも答えてやりたいアベルだったが、フローラとビアンカに関しては気まずくて言葉に詰まってしまった。

 

 

「ふふっ、やっぱりそうなんだね」

 

 

 ――アベル、二人と結婚したこと思い出してるってことなの……? やっぱり今回もどちらかと結婚するんだよね……?

 

 

 アベルの態度にアリアは目を細める。

 どうあっても覆らないアベルの結婚。胸が痛むが、しょうがない。

 

 

 ……しょうがない。

 

 

(期待なんてしたらダメ。ここはゲームの中の世界なんだから……。)

 

 

 アベルがどれだけ自分を愛してくれているか……、アリアは身に染みてわかっている。

 

 

 ……けれど、きっと。

 

 

 

 

(アベル、未来は変わらないんだよ……。)

 

 

 

 

 アリアは笑顔を崩さなかった。

 

 

 

 

「ア、ハハハ……けど、今の僕は君だけだから……」

 

「……うん、わかってる……。ありがとう……」

 

 

 ――でもね、アベル。

 

 

 アベルが気まずそうに頬を掻いた後で、アリアの頬に手を添え真剣な表情で語るが、アリアはニコニコと はにかんだだけだった。

 

 

「っ……えと……、アリア、あの、さ……」

 

「もう、寝よ? ふわぁぁ……私、もう眠くって……」

 

 

 アリアの笑顔に何か誤解を与えてしまっているのではないかと、アベルは息を詰まらせる。

 

 ところがアリアは口に手を当て大きな欠伸(あくび)をして再び身体を反転させ宿屋に歩いて行ってしまった。

 

 

「アリア」

 

「……ビアンカちゃんと会えるの楽しみだなぁ……」

 

 

 アベルがすぐさま追い掛け、呼び止めてもアリアは振り返らない。

 彼女はビアンカのことを呟いて独りさっさと宿屋に入って行く。

 

 

「そうだねビアンカと……あ……、あれ? え? アリア……さっきのどういう……?」

 

 

 ――アリア……、君、さっきなんて言ってた……?

 

 

 アベルがいまさらに違和感を感じアリアを呼んだが、彼女は既に宿屋の中だ。

 独り外に取り残されたアベルはアリアの呟きに目を瞬かせていた。

 

 なぜかはわからないが、さっきの一連の会話の中、一部が妙に引っ掛かる。

 

 

(…………アリア…………?)

 

 

 アベルも宿屋へすぐに戻り、アリアに訊ねようと追ったのだが……。

 




アベルが感じた違和感はいったいなんなのか。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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