ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

アベルの未来改変プランはどこまであるのか。

では、本編どぞ。



第四百八十七話 次のプランは……?

 

「あっ、いえ……、なんでもないです。今のは忘れて下さい」

 

 

 ――ルドマンさん、圧がスゴイ……!!

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ……と、ルドマンから地鳴りが聞こえて来そうな気配を感じる。

 

 ……アベルは。

 

 

 “あ、これ【炎のリング】を渡さないとダメだ。地の果てまで追って来そう……、プランCで行くしかない……!”

 

 

 ……あっさりとプランBだったらしい計画を諦めた……。

 

 

「ほう……? アリア()のことは知らないとでも言うつもりかね?」

 

「っ……いえ、アリアは僕と一緒にいます。あ、今は町にいませんからね!? 別の安全な場所で元気にしています。あの子が僕と一緒にいることを望んでいるので、養女の話は無かったことにして下さい」

 

 

 アベルが“藪蛇した!?”とアリアの話題をはぐらかそうとしたが、ルドマンは抜け目のない男である。

 

 額に青筋を立てて黒い笑みを浮かべているではないか。

 

 ……ルドマンとはどの世界でも良好な関係だった気がするのだが、彼のこんな顔を見るのは初めてである。

 

 

「……わっはっは。やあ ゆかいゆかい! いやそんなわけには行かないと前にも話しただろう?」

 

 

 不意にルドマンがアベルに顔を近付け、大音量で唾を飛ばして笑った。

 

 アベルの顔面にルドマンの唾が掛かるが、拭うことはせずにここはグッと堪える。

 

 高らかに笑うルドマンの目は笑っておらず、怒りに満ちていた。

 アリアを無断で連れ出したことが相当気に入らないらしい……。

 

 

「ぐ……(全然目が笑ってない……、娘を攫われた父親の目か……コワイ……!)」

 

 

 ルドマンのアリアへの執着を知っているアベルは一瞬怯んでしまった。

 

 

 ――……けど、アリアは渡せない……!!

 

 

 ルドマンは笑い終えると、憮然とした顔でアベルを睨み付ける。

 

 ……ここで目を逸らしてはアリアを奪われてしまうと思ったアベルは彼の視線を受け止めつつ、ゆっくりと顔に掛かった唾を拭い、真っ直ぐにルドマンを見据えた。

 

 すると、ふっ、とルドマンの険しかった顔が弛む。気の良さそうな貴族の男の顔に戻っていた。

 

 

「……まあ、あの子が無事ならそれでいい。君の様子を見るにアリアもきっと無事なのだろう。水のリング探しにも連れて行こうというのだな?」

 

「はい、僕が彼女を守り抜きます。だからどうか心配しないで下さい」

 

 

 ――あれ? さっきまでの怒りはどこへ……? ひょっとして……。

 

 

 ルドマンの急な態度の軟化にアベルは面食らったが、ひょっとしたら彼はアリアを諦めたのかもしれない。

 

 毎度強引に話を進めて来るルドマンがこんな簡単に折れてくれるとは思わなかったが、こちらも強引にアリアを連れ去ったことで、手に負えないとでも思ってくれたのだろうか……。

 

 

(まだ油断はできないけど……、まあ、アリアは僕の手の内だし、今はいいか……。)

 

 

 アベルはこのままルドマンがアリアを諦めてくれればいいなと思いながら、彼女を連れて行くと伝えておく。

 

 

「…………ふむ、わかった。アリアを君に任せよう……。ではまず炎のリングを持って来たまえ。船の話はそれからだ」

 

 

 アベルの言葉にルドマンは顎髭を(もてあそ)びながら なにか思案している風で頷くと、別世界と同じく、やはり【炎のリング】を持って来いとアベルに言い渡したのだった。

 

 

「はい……」

 

 

 ――結局、こうなるのか……。

 

 

 ルドマンの表情はもう怒ってはいなかったが、【炎のリング】を持って来なければ話を進めることは無い……と有無を言わせない瞳で玄関ホールに続く扉を眺め、アベルに部屋を出て行くよう促していた。

 

 アベルは断ることができずに一度アリアの元へ戻ることにし、ルドマンの屋敷から出て、トボトボと歩き出す。

 

 

「…………(こうなったら【水のリング】だけを持って逃げるしかないな……!)」

 

 

 アリアと指輪奪取逃避行のプランBが使えなくなったため、【水のリング】だけを持ってトンズラするプランCへと計画を移行することにした。

 

 【水のリング】だけでも【いのりのゆびわ】とは違い、崩れ去ることもないしいいだろう。

 

 だが一つだけでは結婚のための指輪交換ができない……。

 それに義理堅いアリアは納得してくれないかもしれない。

 

 アベルはアリアのために二つのリングを手に入れようとしているが、元々はフローラとの結婚のための指輪探しである。

 

 フローラと友達であるアリアが素直に受け入れるわけがない。

 

 現にアリアは【炎のリング】を預かっておくと言って持っているだけで、正式に受け取ってはいないのだ。

 

 

「……うーん……(プランCもダメか……?)」

 

 

 早々に計画の見直しを図る必要がありそうだ。

 

 

 なにか未来を変える良い方法はないものか……。

 

 

 アベルはルドマンの屋敷を後にし、人目に付かない場所で遊んでいたスラりん達を引き連れ考え込みながら来た道を辿る。

 

 そうして噴水広場に差し掛かると、ふとアンディの家が目に入った。

 

 

(そういえばアンディさんは無事に帰って来たのかな……? 行ってみるか……。)

 

 

 昼間アリアを連れているとルドマンに見つかりかねない。

 

 今は丁度彼女がいないし、アンディが戻って来たか確認だけでもしておこう……、そう思ったアベルの足は既にアンディの家へと向いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……アンディの家に入るなり、アベルは「お邪魔します……」と、以前会った彼の母親に会釈する。

 

 前回の訪問を覚えていてくれたのか、アンディの母親は“またアンディを訪ねて来たのかい? でも今は会えないよ”などと眉を寄せ弱り目をしていた。

 

 

「なにかあったんですか……?」

 

「アンディが溶岩の流れる洞窟で大ヤケドしたんだよ。フローラにまで心配かけてしようのない息子だよ」

 

 

 アベルの質問にアンディの母親は困ったような顔で微笑む。

 心なしか嬉しそうに見えるのは気のせいだろうか。

 

 

「大ヤケド……ですか。では、お見舞いを……(薬草でも置いて行くか……)」

 

「そうかい? なら二階に上がっておくれ。今フローラがアンディのために(・・・・・・・・)看病しに来てくれているんだよ」

 

 

 アンディの母親が“アンディのためにフローラが来ている”と強調するように語気を強めるので、先程微笑んでいた理由がアベルにもわかった。

 

 

「あ、そうなんですね。では手短にします」

 

 

 洞窟で会ったアンディが大ヤケドを負ったことを聞いたアベルは、話せるかはわからないが一応顔を見て行くことにした。

 

 

 フローラも居るなら、彼女にも相談できないだろうか。

 

 フローラが自分に好意を寄せていなければできるのだが、とりあえず様子を見てから切り出せそうなら切り出してみよう……。

 

 記憶を思い出しているとはいえ、断片的である。

 印象深いことは はっきり思い出しているが、他は相変わらずの曖昧さ。

 

 だが、思い出せているだけでも儲けものだ。

 

 フローラが別世界と同じく、自らに惹かれてくれているなどと……都合よく自惚れてはいけない。

 

 

 ……ともかくアンディに会いに行こう。

 

 

 アベルは自己を戒めつつ、二階に続く階段を上った。

 




アベルによる未来改変プランは現在はCまで。
あれもこれも中々上手くいかなくて可哀想ですね。

アベルの思惑が(ことごと)く打ち砕かれていくスタイル。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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