さて、アリアさんの覚醒(という程のものでのないけど)の回です。
では、本編どうぞっ。
「……な、何……?」
アリアは不安気に、ポワンとベラを交互に見る。
「どゆこと……?」
アベルはわけがわからず首を傾げていた。
「……フフッ。そんなに怯えなくても大丈夫ですよ。道は無事に通ったようですから、これで魔法が使えますよ」
「え……あ、本当ですか!?」
ポワンの言葉にアリアの表情が明るくなる。
「ええ! 試しに覚えた呪文を唱えてみてはいかがですか?」
「覚えた呪文……?」
「はい。習得してはいませんか?」
「そういえばさっき……、ポワン様は
「ええ。習得済みのものならば使えますよ」
「……何にも覚えてなかったら……?」
アリアは訊ねる。
だって、○○を覚えた! なんて感覚なかったもの。
アベルは戦いを重ねる途中途中で、使えるようになっていってるみたいだけど……。
「あら、そうなのですか? あなたからは火や氷、風といった呪文を過去に使った痕跡を感じるのですが……」
「ええっ!? そ、そうなの!?」
アリアは驚きに大きな声を出してしまう。
何ソレ。
急にチート級なんですけど!?
そしたら一気にポンコツ卒業じゃない!?
「そうなんだ! アリアすごーい!」
アベルは手をぱちぱちと叩き合わせたのだった。
「じゅ、呪文を覚えるってどうするの……?」
アリアはアベルに訊ねる。
「え? あ、えと、魔物と戦って勝つと時々、何か身体にこう……湧き上がって来る……感じ?」
「……そんなの、感じたことないよ……」
「そっかぁ……」
アベルの説明にアリアががっくりと肩を落とす。
やっと、私の時代が来たと思ったのにな……。としょぼくれていた。
「……………………、アリア」
アベルとアリアのやり取りを見ていたポワンがアリアに語り掛けてくる。
「はい……?」
「あなたの魔力は表に出てきましたが、まだ使える魔力は随分と少ないです。鍛えて、総量を増やすといいと思いますよ」
「え……総量……? えと……、それってつまり……」
最大MPが低いよってこと?
時々レベルアップのSEは脳内に流れてるけど、ゲームなのに数値が出ないから、今自分がどれくらいのレベルでどれ程のHPとMPでってのがわからないんだよね……。
今私どのくらい強くなったんだろう……?
実際は戦ってないけど、アベルに同行してるから恩恵受けてるのよね……。
アリアはポワンの話す内容を何となく理解したのだった。
「アベル。アリアが非力なのは呪文が得意だからだと思います。そこをカバーしてあげてくださいね」
「え? あ、うん。わかった! 任せて!」
ポワンに云われ、アベルが了承する。
「いやっ、まだ呪文、使ったことないんですけどっ!?」
アリアは二人にツッコミを入れてから、「どういうことよ……」と自分の両手の平を見下ろしていた。
「……ベラ、火の点いていないたいまつを持って来て下さい」
「は、はい只今」
ベラはタタタタッと、走って階段を下りて行くと、火の付いていない【たいまつ】を持って戻って来る。
どうぞ、とポワンに渡すのだった。
「……それを、どうするんですか?」
「アリア、火の玉を出す呪文を覚えていますか?」
ポワンがベラから火の付いていないたいまつを受け取り、その様子を見ていたアリアに逆に訊ねる。
「え……? 覚えているって……えと……」
習得してるのかどうかはわかんないけど、知ってはいるよ?
だって、大好きなドラクエだし!?
ビアンカちゃんも使ってたし!
考え込むアリアにポワンはたいまつをアリアに向ける。
「どうですか? 人差し指を一本立ててみて答えてください」
「え……? あ、火の呪文といえば……、メラ?(っ、えっ!?)」
ポワンに云われるままに、片手人差し指一本を立てて告げると指先がチリっとして、
ボウッ!
と、突然火の玉が立てた指の先に現れたのだった。
「っ、アリアっ!!?」
「えっ、えっ、ええええっっ!!!???(マジでっ!?)」
アベルが目を見開いて驚きの表情をするが、アリア自身が一番驚いていた。
「……ウフフ。やはり使えるようですね。あ、火はこちらに下さい」
ポワンはアリアが出した火の玉を【たいまつ】に移すと、ベラに「はい、持ってて下さい」と押し付ける。
「……い、今の、わ、私が……?」
「っ、アリア、その呪文いつの間に覚えたの!?」
「っ、知らないっ。習得した覚えは……」
アリアが狼狽える中、アベルは興味津々で訊ねていた。
さらに、
「回復呪文も使えるのでは?」
「えぇ……。うそぉ……」
「ここに、掛けてもらってもいいですか?」
ポワンは先程捻った、赤くなった手首を差し出す。
アリアは半信半疑でポワンの手に触れる。
「さあ、回復呪文は何でしたか?」
「クイズみたいだなぁ……ホイミでしょ! あっ」
ポゥ……。
淡い優しい光が患部を覆うと、手首の赤みが消えた。
アリアは自分の手の平を見下ろしぎゅっと握りしめると、「私すごいな!」と自画自賛し翼をぱたぱたと動かす。
余程嬉しいのだろう、顔が綻び花が咲いたようだった。
「ウフフ。ありがとうございました」
アリアの笑顔に釣られ、ポワンも目を細めてお礼を告げる。
「……いえ、こちらこそ、ご教示いただきありがとうございました」
アリアはポワンに深々と頭を下げたのだった。
「アリア、呪文が使えるようになって良かったね」
さっきまで驚いていたアベルもアリアの笑顔に釣られて笑う。
「うん。何かまだ信じられないけど……。これでアベルの役に立てるね」
「……うん、ありがとう。けど、アリアは貧弱だから僕の後ろに居てね。妖精の世界では君の姿が丸見えなんだってさ」
「そうなのっ!? わかった、気を付けるね!(貧弱って言わないでよぅ……)」
アベルの言葉にアリアは首を縦に下ろす。
主人公の言うことは聞いておいて損はないはず。
アベルなら強いし信用出来るもの……と、アリアは素直に返していた。
「魔法が使えるようになって良かったけど、姿が見えたんじゃ狙われることもあるってことかぁ……」
「うん……、残念ながらそうなるね」
アリアが「怖いな……」と続けるので、アベルは弱り目で頷く。
アリアが呪文を唱えられるようになったのはいいことだけど、替わりに姿が見えるようになってしまった……か。
いや、姿はそもそもこの世界じゃ丸見えなのか……。
……つまり、プラマイゼロってとこかな?
あとは、どんな呪文を覚えているのかってことだけど……。
目の前で見たものは覚えてるのかな……。
メラも、ホイミもアリアの目の前でビアンカと僕が使ったことあるけど……。
アリアが危険にさらされないよう気を引き締めないとな、とアベルは唇を引き結んだ。
「……まぁ、何とかなるよねっ! なるようにしかならないわ。女は度胸よ! ふふっ……あははっ!」
アリアは腹を括っているのか、両手拳を握りしめ“ぐっ”と肘を引いて力を込めると、明るく笑い飛ばす。
アベルがそれを見て面食らった。
「! …………アリア、君って……」
「ん……?」
「…………さっき、怖いって云ってなかった?」
「ん、怖いけどね。慣れだよ慣れ。ほら、ドラキーとかスライムとか私のこと見えてて襲って来てたし、襲ってくる魔物の数が増えるだけっていうね。ふふっ、アベル。私頑張るから改めてよろしくね!」
「……うん、よろしく……」
アリアが「あ、でもドラキーは苦手だからアベル担当ね!」と手を差し出すと、アベルは握手したのだった。
問題はアリアがどこまでの呪文を使えるかってことでしょうか。
これまでずーっとポンコツだったのでそろそろ活躍して欲しいなぁ。
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